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第3話 能力の開花

「……うん。だから貴方を…………食べるわ」


金髪の少女から何か強い力を感じた。


覇気のようなものではなく、恐怖を煽る感じの力だ。


「くっ!? な…なんだ?この感じ……」


「それじゃ……いただきます」


俺が僅かながら恐怖を感じた瞬間、少女は俺に迫ってきた。


しかも浮きながら。


「危なっ!!」


俺は回避行動した。


しかし避けきれずに少女の爪が俺の腕を掠る。


服が破れ、血が出る。


「まさか本当に……妖怪……なのか?」


俺は信じられなかった。


こんな可愛い子が妖怪だなんて……。


「よく避けたわね………。でも次は逃さない…………」


少女はまた向かってきた。


俺は何とか避けようとするが…………


「くぅっ!?」


避けきれずに腹の部分の服が切り裂かれた。


激しい痛みが俺を襲った。


俺は地面にうずくまる。


「……」


少女はトドメをさすためにゆっくりと近づいてくる。


「はぁ……はぁ……」


俺はゆっくりと立ち上がった。


「まだ……立てたのね………」


「俺は……まだ……死ぬわけにはいかないんでな……」


「へぇ……でも貴方はただの人間。私は妖怪。勝てるわけがないわ」


確かに彼女の言う通りだ。


勝ち目は0に等しい。


それなのに人里に逃げずに俺は少女と向き合っている。


「なんでだろうね……恐怖は感じるけど……逃げるって答えが出ない」


「そうね……今まで襲った人間は皆、逃げていったわ……でも貴方は逃げてない」


「多分……逃げる必要が無いから……かな?」


「その余裕……どこから出てきてるかわからないけど……粉々にしてあげるわ!!」


少女はさっきより速いスピードで迫ってきた。


俺はそんな中で頭の中に誰かの声が響く。


(伏せろ!!)


「え? 誰!?」


(いいから早く!!)


「あ、あぁ!!」


俺は素早い動きで伏せた。


伏せたら少女の攻撃を完璧に避けることが出来た。


「誰の声だ? ……どっかで聞いた事があるような……」


(はぁ……久々に起きてみたら危ないところだった……全く……お主は何をしとるんだ!!)


頭の中で誰かに怒られた。


「す、すいません!! ……ってだから誰?」


(なんだ……忘れたのか? 儂は銀狼。お主の刻印に宿る妖怪だ)


銀狼と名前を聞いた途端、頭の中の一部分な靄が取れた。


「銀狼……確か数百年前に……"あの人"から貰った妖怪……」


俺は思い出した事を呟いた。


そんな時、少女がゆっくりと俺に向かって歩いてきた。


「誰と話してるの……ってなんで人間にこんなに妖力があるの!?」


「ん? 妖力? ……確か紫さんがそんな事を言ってたな……」


(しかしお主……何故こんなに弱いんだ? 以前はあんなに強かったのに……)


「記憶喪失というやつでな……昔の記憶とか無いんだ」


もし、そんなに強いなら身体が勝手に動いてもいいはず……。


全く……中途半端な記憶喪失だな。


「あ、そういえば名前聞いてなかったな。君の名前を教えてくれないか?」


「ルーミアよ」


「ルーミアか……よろしくな」


「……どうして貴方はそんなに余裕なの!?さっきまで私に食べられそうになってたのよ!?」


「ん~……なんでだろ?」


余裕な理由は俺が一番知りたい。


自分でもわからない余裕ってなんだよ……。


「なっ!?」


「まぁ、何とかなると思ったんじゃない?」


(まぁお主の本来の力は強力だからな……)


「へぇ……そうなんだ」


「もう良いわ!! 絶対にその余裕ごと食べるから!!」


かなり苛立ってるようだ。


何か悪い事でもしたかな?


「銀狼……戦いのサポートを頼む。俺本来の力とやらを引き出す為に」


(よかろう。協力する)


「行くわよ!!」


ルーミアは闇の剣を作りだし、迫ってくる。


「銀狼!!どうすればいい!?」


(とりあえず"武器を出したい"と念じろ)


「あ、あぁ!!」


(そして叫べ!! "星穿(ほしうぎ)神槍(しんそう)"と!!)


「星穿の神槍!!」


俺は銀狼に言われるまま、そう叫んだ。


すると目の前に槍が現れた。


棒の上下に両刃が付いた槍だ。


俺は星穿の神槍を掴み、ルーミアの剣を受け止める。


「貴方……本当に人間なの?」


「……人間じゃない。だが妖怪でもない。……それだけは確かだ」


(うむ……今のお主の姿は本当の姿では無いからな……)


どうやら銀狼は本当の俺を知ってるみたいだ。


あとで聞いてみよう。


「はぁっ!!」


とりあえず俺はルーミアと距離をとった。


「なぁ……遠距離武器は無いのか?」


(あるにはあるが……捕縛技だぞ?)


「それでも良いからさ。教えてくれよ」


(わかった。あ、あとお主の技は基本的に念じる事で発動出来る)


「わかった」


(よし、"動きを封じたい"と念じろ。これで封じれる)


「喰らいなさい!!」


ルーミアは闇の剣を振り下ろしてきた。


「おっと……はっ!!」


「きゃっ!?」


俺は回避してルーミアの動きを封じた。


自らの手を見ると緑色に輝いていた。


ルーミアのからだの周りにも緑色の幕がある。


これを見た途端、頭痛がして何か言葉が蘇った。


「痛っ…。念…動…力…?」


(そう。念動力。お主の能力の名前だ)


「へぇ……なるほど。理解した」


(で、拘束したのはいいがこの後はどうするんだ?)


「そ~だな。……」


俺は考えた。


投げ飛ばす?叩きつける?回す?


なんとなくだがどれも面白くない。


「放してよ!!」


ルーミアは身体を動かせずにいる。


「そうだ。ならばこうしよう」


「ひゃっ!!」


俺は念じてルーミアの上下を入れ替えた。


スカートは念動力で押さえてあるから問題ない。


「さて……どうしようか」


「戻してよ~!!」


「あと少ししたらな」


(何をする気なのだ?)


銀狼がそう尋ねてきた。


「ふふふ………飛ばすだけだ」


「え? ちょっと?」


「しかもただ飛ばすのでは芸が無い。回しながら飛ばす」


「やめてぇ!!」


ルーミアが必死の抵抗をするが、無視。


「んじゃ、またな」


「きゃあぁぁぁぁああ!?」


俺はルーミアをこまのように回転させながら空高く飛ばした。


速度は中々で、綺麗な放物線を描いて山に落ちていった。


「ふぅ……一時はどうなるかと思った」


(全くだ。とりあえずお主は頑張って記憶を取り戻すのだ。わかったか?)


銀狼はそう言った。


「……うん。頑張る」


俺はその銀狼の言葉を曖昧に答えた。


(それでは儂は少し寝る)


「おやすみ。またよろしくな」


(あぁ……おやすみ)


ここで銀狼の声が聞こえなくなった。


「はぁ……とりあえず寝ようかな? 結構疲れたし…………」


俺はその場で寝ようと寝転がった。


そして眠りにつこうとする。


しかしその前に一つ、重大なミスに気がついた。


「銀狼に記憶について聞くの忘れてた……」


俺は失敗を少し悔やみながら眠りについた。

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