第28話 旧都から地霊殿
橋を渡ると目の前には賑やかな街があった。
「随分賑やかな街だな……」
「そうでございますね……」
(ん? ……今何かの気配があった気が……気のせいか?)
とりあえず俺は周りを見て探るがそれっぽいのは見当たらなかった。
「おや? 見かけない顔だな。旧都へ何の用だい?」
そこへ一本角の鬼が現れた。
俺より少〜し身長が高いんだな……。
「ちょいとな。幻想郷巡りで地下に来たわけだ」
「ほう。幻想郷巡りか………。お、自己紹介がまだだったね。私は星熊勇儀。見ての通りの鬼さ」
「俺は風戸響介。霊妖神魔を持つ人間だ」
「私は水姫と申します」
「あんたが風戸響介か。 萃香から聞いてるよ。博麗の巫女と魔法使いを倒した人間だってね」
どうやら地底まで伝わってるようだ。
ん?
今、萃香って言ったか?
「萃香と知り合いなのか?」
「萃香と私は昔は山の四天王だったんだよ」
「四天王か……なら勇儀も強いのか?」
「まぁそれなりにね。で、戦うかい?」
「いや、それは今度で頼む。新月までに幻想郷を回らないといけないからな」
「そうかい。そりゃあ少し残念だ。でもいつか戦ってくれるんだよね?」
「まぁ暇になったらな。恐らく新月を過ぎたあたりで戦えるさ」
「それじゃあそれまで待つとするか。それと地底に来たら地霊殿に行っておきな」
「地霊殿?」
「ここの道を真っすぐ行ったところにある屋敷さ」
勇儀は後ろを指差した。
「わかった。さっそく向かってみよう」
「気をつけろよ。またな」
「あぁ、またな」
「失礼いたします」
俺と水姫は賑やかな街の中央一本道を歩いた。
目の前にステンドグラスのある大きな屋敷が建っている。
「ここが地霊殿か」
「みたいですね」
そんな事を話してると扉が開いた。
中からはピンクの髪をして胸部の辺りに目が浮いてる少女が出てきた。
「あら、お客様ですか?」
「お客で良いのか?」
「良いんじゃないですか?」
「で、何故こんな所に?」
「あぁ、それは………」
「ふむ……なるほど。『幻想郷巡りの途中で地底を巡ってる最中』だと」
「!? …………心を読んだのか?」
「えぇ、私は心を読む妖怪ですから。まぁ立ち話もなんですからお入り下さい」
「そうさせてもらうよ」
「お邪魔いたします」
俺と水姫は地霊殿の中へ入った。
「中々な屋敷だな。他に誰かいないのか?」
「いますよ。私の妹とかわいいペットが」
「で、その妹さんやペットは?」
「妹は今、出かけていて、ペットは仕事中ですよ」
「ペットの仕事って?」
「大体が怨霊の管理をしています。そろそろ休憩の時間ですから来ると思いますよ」
「へぇ……ならしばらくゆっくりしていっても良いか?」
「……なるほど。『友達を作りたいから』ですか。別に良いですよ」
俺達は客間のような場所に通された。
「短い時間だが世話になる」
「主と同文です」
そう挨拶した後、俺は大切な事を思い出した。
「そういえば名前を聞いてなかったな」
「私は古明地さとりです」
「俺は風戸響介」
「私は水姫です」
「よろしくお願いしますね」
「あぁ、よろしく」
「よろしくお願い致します」
「で、一つ気になってるんだが…………」
「なんでしょう?」
「この部屋にもう一人居るのが妹さんか?」
俺がそういうと二人になんか驚いたような目で見られた。
あれ?
もしかして気がついてないのか?
「主? 私にはそんな気配は感じませんが……」
「お兄さん凄いね〜。私の存在を感じ取るなんて」
俺の後ろから帽子を被った少女が現れた。
銀色っぽい色の髪をしてさとりと色違いの閉じた目を持っている。
「こいし? 今までどこ行ってたの? せめて手紙くらい置いていきなさい」
「は〜い」
「この部屋に居たのなら自己紹介はいらないな?」
「うん。自己紹介は全部聞いてたから大丈夫だよ」
「よろしくな。こいし」
「よろしくね〜お兄さん」
俺は水姫の方を見た。
水姫は少し戸惑っていた。
まぁ水姫でも感じ取れなかった気配があったんだからね。
「で、こいし。どうやって気配を消してたんだ?」
「私は無意識で行動してるから他の人が認識を出来なくできるんだよ」
「気配は意識から生まれる物。無意識なら気配は生まれない。しかも他人からは目の前に居ようと気づかれないのか……」
「よくわからないけどそういう事だと思う」
「で、後はペットだが……水姫とさとりも、もうわかっているんだろう?」
「えぇ」
「もちろんでございます」
「ドアの前で話を盗み聞きしやがっている二人組……」
「お燐、お空。入ってきなさい」
ガチャ
「あちゃ〜。ばれてましたか〜」
「で、お兄さん達は誰?」
入ってきたのはゴスロリファッションの猫耳少女と背中に翼を持った鳥っぽい少女だった。
「俺達の話を聞いてたんじゃないのか?」
「聞いてましたよね。響介さんが自己紹介したぐらいから」
「まぁお空は鳥頭だから許してよ」
「まぁ良いや。……で二人がさとりのペットだよな。尻尾とか羽がついてるし」
「あたいは火焔猫燐。お燐って呼んでくれて構わないよ」
「私は霊烏路空。お空って呼んでね〜」
「よろしくな。ところで、今何時くらいだ?」
「もうすぐ正午ですね。お昼を食べていきますか?」
「良いのか?」
「響介さんと水姫さんの事を色々と教えて欲しいから良いでしょ?」
「水姫はどうする?」
「私はどちらでも構いません。ただ他の人の料理を食べてみたかったりします」
「なら頂くとしよう」
「わかりました。すぐに作りますね」
さとりは部屋を出た。
「あ、そういえばお空」
「何?」
「お前、巨大な穴の中に居たよな?」
「居たよ〜」
「何やってたんだ?」
「ずっと核融合してた〜」
「……お前……核融合出来るのか?」
「お空は八咫烏と融合したんだったよね」
「八咫烏………太陽の象徴か。なら核融合出来ても大した問題では無いな」
「主。わかりやすく説明して下さい」
水姫が訳がわからないような顔をしていた。
「水姫。太陽はわかるな?」
「はい」
「太陽は核融合反応で光を放っている。その象徴である八咫烏は太陽と似た力を持ってるんだよ」
「という事は簡単に略して核を操れると?」
「そういう事。だからお空は核融合を操れる訳だ」
「お兄さんって物知りだね〜。私も知らなかったよ」
「本人が知らないって…………まぁ良くある事だな」
「じゃあ響介さん。地獄鴉についてはわかる?」
「地獄鴉………確か外の世界のある所だと地獄に住む閻魔大王の使者って信じられてる鳥で……地獄で死者を喰らい、亡人を苦しめる烏だな。まぁ簡単にまとめれば罪人を苦しめる良い奴だ」
「私って良い人なの?」
お空が首を傾げた。
男への殺傷能力激高……。
「あぁ、良い人だ」
「わ〜い。褒められた〜」
「響介さん。他にも色々な事、聞かせてよ」
「あぁ、良いよ。分かる範囲で頼むぜ?」
ここから料理が出来るまで質問攻めが続いた。