第24話 決着、そして天界へ
「まず一撃!!」
俺は回し蹴りの構えで早苗に突っ込む。
「当たりませんよ!!」
早苗は蹴りを避けるため上昇した。
「残念。当たるよ? 瞬間移動」
俺は移動している時の慣性を残しながら早苗の後方に瞬間移動した。
そして俺の回し蹴りは早苗の背中に直撃した。
「くぁっ!!」
「もう一発!!」
今度は早苗を背負い投げで投げた。
ちなみに背負い投げは空中だと受け身不可状態になる。
そしてさらに一撃を撃ち込む為に接近する。
「ラストぉ!!」
今度は巴投げで下に向かって投げる。
これも受け身不可だ。
「瞬間移動」
もしも本気だったらここで霊夢との戦いで使った技「撃符『究極!ゲシュペンストキック』」を使ってる。
受け身不可からの必殺の蹴りはかなり痛いだろう。
だが、今回は満月じゃないし怒ってないし本気を出す理由が無い。
なので俺は瞬間移動で早苗の下に回り込み、お姫様抱っこした。
「終了……っと」
「うぅ………私の負けです」
「まぁ近接戦闘が得意だからな。俺は」
「射撃戦なら?」
「少し危なかったかな?」
「射撃戦に持ち込めば良かった………」
早苗は悔しそうな事を言いながらも笑っていた。
「ちなみにお姫様抱っこしたままで大丈夫か?」
「あ、降ろして下さい。もう大丈夫ですから」
「わかった」
「ふぅ………疲れました」
俺と早苗は水姫達がいるところまで降りた。
スタッ
「ただいま」
「ただいま戻りました」
「お疲れ様でございやがります。主」
「早苗が負けたみたいだね」
「あそこまで一方的になるとは思わなかったなぁ」
「まぁ仕方ないさ。いつもより手加減してないし」
「霊夢さん達と戦った時は手加減してたんですか?」
「今の俺からしたら手加減してたな。あの時はスペルも無かったから」
早苗の質問に正直に答えたら固まった。
「それで勝つって一体何者なんだよ。あんた」
「少なくとも常識外の生き物だな」
「さっきの話についてですが……」
「ノーコメントで」
「私達の神社に住まない?」
「悪いが断る」
「主、次はどこへ行くのですか?」
「上か下かで迷ってる」
怒涛の質問責めっぽいのを全部受けきった。
ちなみに上は天界へ、下は山を降りる。
え? 天界の存在を知ってる理由?
まぁ天界って名前は今適当に言っただけで、上の方に妖力を感じた。
だから上に何かある気がするので、行くのか迷ってる訳だ。
「上には確か天子さんがいますよ」
「天子? 誰だそれ」
「比那名居天子さん。以前に地震で博麗神社を壊した天人です」
「多分霊夢にフルボッコされただろうな………」
「はい。もちろん」
その時の様子が頭に浮かぶ。
…………怖っ。
「行ってみるか。天界」
「行きやがるんですか? 天界」
「とりあえずな」
「了解でありんす」
「もしも泊まる所が無いなら此処にいらっしゃって下さい。喜んで歓迎します」
「なんか悪いな……」
「気にしないで良いよ」
「そうか。了解した。んじゃ水姫、全速力で行くぞ」
「かしこまっちゃいました」
ゆっくり浮いてから足に力を込め始める。
そして一気に加速する。
ゴゥッ!!
守矢神社がどんどん小さくなっていく。
そして雲に突っ込む。
俺達はしばらくその雲の中を一直線に進んだ。
雲を突っ切り、やっと青空が見えた。
随分と高いところまで来たようだ。
「さて、天界ってどこらへんかな?」
「私に聞かれても困ります」
「まぁそうだな……………………ん?」
俺は遠くに何かが見えたので目を凝らした。
「どうかしやがりましたか? 主」
「ん〜…………天界見〜つけたぁ!!」
俺は天界っぽい場所に向かって加速した。
「あ、主。待ちやがり下さい!!」
水姫も俺に遅れて加速した。
時間が掛かるかと思ったが案外速く陸地についた。
そして着地する。
「よっと」
「全く……少しは合図して下さいよ。主」
「悪い悪い。見つけたもんでつい」
「またなんか来たわね」
「……誰?」
声が聞こえたので振り向くと青い長髪の少女がいた。
「私はこの天界、有頂天に住む気高き天人………」
「比那名居天子?」
「最後まで私に言わせなさいよ!!」
「いや面倒だし」
「くっ……これだから地上の人間は……」
「で、"またなんか来た"って事は俺達の前に誰か来てるのか?」
「ん〜………そんな事言ったかしら?」
天子は惚けた振りをした。
「普通に言ってたよ」
「えぇ。確かに」
「それは私の事だろうねぇ」
「誰? ってか鬼?」
「私は伊吹萃香。この天人を倒して領地の少しを貰ってゆったりしてる鬼さ。そんな事よりもあんた」
萃香は俺を見た。
「………俺?」
「ただ者じゃないだろう? それだけの力を取り揃えてるんだから」
「まぁな。弱くは無い」
「名前は?」
「風戸響介」
「種族は?」
「未確認だ」
「戦う気は?」
「全く無い」
「お酒飲む?」
「悪いが断る」
「後ろの奴は?」
「水姫。俺の従者っぽい」
「どうしてここに?」
「幻想郷巡り」
「最後に一言」
「疲れた……」
なんかさっきの神社よりも質問責めされた。
しかし俺は全てキッチリ返した。
ははは。流石俺。
「戦うなら今度にしてくれ。さっき戦ったばかりで疲れてるからな」
「まぁ戦うなら全力が良いからね。……わかったよ」
「さて天界見たから戻ろっかな?」
「え? もう少しゆっくりしていけば良いのに……」
「まぁ時間は余ってるから構わないけど」
「飛びまくりはお断りなのでゆっくりしましょう」
水姫が物凄いオーラを出しながらそう言った。
結構怖ぇな………。
「……わかった。ゆっくりしよう」
「日が暮れるまで雑談でもしないかい?」
「日が暮れるまでって後、3時間はあるぞ?」
「でも宿は確保出来てるから良いと思いますよ」
「神社を宿って言うなよ…………まぁ適当に話をしようか」
「そうだね〜。まず何から話そうか?」
萃香と俺と水姫は雑談を始めた。
すると天子が、
「私を放置しないで!! ここは私の領地よ!? だから主導権は私にあるの!!」
と叫んだ。
「叫ばなくても雑談に入ってくれて構わない。話をするなら人数が多い方が良いしな」
「……え? 良いの?」
「どうぞ。時間を持て余してるのであればここに居て損は無いかと」
「そうだよ。ただし話の主導権は私が握るからね」
「こら!! 主導権は私の特権なんだからぁ!!」
「総領娘様。主導権は特権ではありませんよ?」
今度は紫色の髪をした女性が現れた。
「誰?」
「申し遅れました。私、竜宮の使いをしております永江衣玖と申します」
「竜宮の使い?」
「竜神様から伝えられた危険を人々に知らせる役割です」
「へぇ。あぁ、俺は風戸響介だ。よろしく」
「水姫です」
「よろしくお願いしますね」
「だーかーらー!! 私を放置しないでよぉ!!」
「初見の人に挨拶ぐらいはさせようか?」
「むぅ………まぁ良いわ。とりあえず雑談よ、雑談」
「あぁ、そうだな」
俺と水姫と天子と衣玖と萃香は日が暮れるまで雑談をした。