第23話 妖怪の山の頂上
俺は水姫の戦いの後、山を登っている。
木の枝の太い部分を使って移動していく。
「水姫。少し急ぐぞ」
「かしこまっちゃいました。加速します」
水姫は加速した。
俺も水姫の速度に合わせて加速する。
「そろそろ昼時か」
「そうですな」
「頂上が見えたら昼飯を食べよう」
「了解いたしましちゃいました」
俺達はそのまま進んでいく。
タッ!! タッ!! タッ!!
(俺が幻想郷にやってきた時の山に似てるな)
木の下を見てそう思う。
確か師匠と一緒にこうやって山の中を飛び回っていた記憶がある。
「本当………思い出したいなぁ……」
「主。どうかされましたか?」
「いや、なんでも無い」
「そうですか…………あ、頂上っぽいのが見えましたよ」
「もう着いたのか…………水姫、握り飯を」
俺は水姫に向かって手を広げて言った。
すると水姫は
「行きます!!」
全力で握り飯を投げてきた。
パシィィィン!!
「危なっ!?」
行きすぎそうだったが、なんとか手で受け止めた。
手が痛い………地味に痛い。
「もう少し優しく投げようか……」
「気にせんでおいて下さいまし」
「まぁ取れたから問題無いかな。とりあえず小休憩で」
「かしこまっちゃいました」
俺達は握り飯を食べた。
モグモグ………。
(美味いな……。あっ、酸っぱ!!)
食べていた握り飯の具は梅干しだった。
酸っぱいの苦手なんだよな。
甘い梅干しが好きなんだけど……。
そんな事を思いながら握り飯を食べていく。
………………。
「美味かった。ごちそうさま……っと」
握り飯を食べ終わりまず合掌、そしてごちそうさまと言う。
「ごちそうさまでした」
水姫も食べ終わったようだ。
「さて、山の頂上に行くとしよう」
「了解でありんす」
俺と水姫はすぐ近くの山頂に向かって走り始めた。
スタッ!!
山の頂上に着いてみると神社になっていた。
「へぇ。山の頂上って神社なのか」
「これなら神力があるのもわかっちゃいますな」
「あら? ご参拝の方ですか?」
俺達のところへ霊夢と似た巫女服を着て緑の髪をした人がやってきた。
「ん〜参拝っていうか幻想郷巡りの途中でな。神力を感じたから寄った訳だ」
「そうなんですか。私はこの守矢神社で風祝をしています東風谷 早苗です」
「俺は風戸 響介。そして俺の隣に居るのは……」
「水姫と申しちゃいます。以後お見知りおきを」
「風戸響介…………もしかしてあの響介さんですか?」
早苗がそう言った。
新聞で広まってるらしいから当たり前かな?
「やっぱり広まってるのか………」
「主も大変でやがりますな」
「まぁ霊夢さん達を倒したら有名になりますよ」
「そんなもんなのか?」
「そんなものですよ」
「そんなもんでございましょう」
「……まぁいいや。で、ここの神様に会いたいんだが…………って会える訳無いか」
「いや、会えるんだな」
「意外と簡単にね」
俺が諦めた瞬間に早苗の後ろから二人の女性がやって来た。
しめ繩を背中につけた人と目玉っぽい物がついた帽子を被った少女だ。
その二人から神力を感じ取れた。
「ここは神様まで女性なのか?」
「そうみたいですね」
「私は八坂 神奈子。軍神で、ここの神社に祭られている」
「私は洩矢 諏訪子。祟り神で神奈子と同じくここに祭られてるよ」
「………俺、自己紹介必要ある?」
「無いね。早苗の時の自己紹介聞いてたから」
やっぱり自己紹介はいらないらしい。
「で、私達に何の用だい?」
「いや。どんな神様か気になって確かめに来ただけだ」
「そういう君も神じゃないのかい? 神力を持ってるようだし」
「まぁ神様取り込んでるから神力を持ってる訳だ」
「どんな神様だい?」
「鳳凰」
「……………え?」
「だから鳳凰」
「いや、そうじゃなくて………なんで鳳凰を取り込んでるの?」
「祭られてる神社が無くなったらしく鳳凰の承諾を得て取り込んだ」
物凄く説明を簡略した。
実際はもう少し色々あったんだよな。
「へぇ〜鳳凰も大変ね」
「ま、他にも色々と取り込んでるから大して変わらないんだけどな」
「他にも取り込んでるんだ。……まぁ確かに霊、妖、魔、神の力を普通は持てないもん。持つには"取り込む"か"憑依"をしないと駄目だもんね」
「そんな堅苦しい話はもうやめだ。とりあえず早苗」
「はい」
「響介と近接戦闘有りの弾幕ごっこで戦ってみてくれ」
「わかりました」
早苗は神奈子の指示通り、戦う為にお札を構える。
「仕方ない………"星穿の神槍"!!」
俺は槍を出現させて構える。
「響介さん!! 手加減せず行きますよ!!」
「ま、程々にな」
「せいっ!!」
早苗は開幕早々、お札を数枚投げてきた。
「甘いっ!!」
俺は槍を目の前で回してお札を弾く。
早苗はその間、俺に接近してきた。
そして更にお札を投げる。
「ほっ…と」
俺はそれを飛んでよける。
それを読んでいたのか、赤くて小さい星型の弾を飛ばしてきた。
「瞬間移動」
俺はそれを瞬間移動で避けて上空に出現する。
そしてスペルの名前を叫ぶ。
「念砲『サイキック・インパクト・ブラスター』!!」
ドォォォォン!!
俺は念砲の反動により、さらに空高く飛ぶ。
そして念砲は早苗のところへ向かった。
着弾と同時に神社は煙に包まれていく。
「結構反動がでかいな……もう少し小さいと思ったんだが……」
俺は高度を維持して神社の方を見る。
すると早苗が飛んできた。
「こちらもスペルを使わせて貰います!!」
「おう。いつでも来い!!」
「秘術『グレイソーマタージ』!!」
早苗はスペルを構えた後、星の形の印を結んだ。
すると早苗が描いたその星印の尖ってる部分から弾幕が出てきた。
「面白いスペルだな。星を描き、その星から弾が放たれる」
「ありがとうございます」
「だが……弾のスピードが遅いのが駄目だな」
俺はそう言って弾を全部避ける。
そして一気に懐に突っ込み、
「ていっ!!」
パシィィン!!
「きゃっ!?」
早苗の目の前で手を叩く。
所謂猫騙しだ。
俺は早苗が目を閉じてる間に瞬間移動をして早苗の後ろに回る。
「あれ? 響介さんがいない?」
「いるよ。真後ろにな。……ハァッ!!」
俺は後ろから早苗を波動的な物で吹き飛ばす。
「くぅっ!?」
そして吹き飛んだ後、脚から力をブースト状に出して加速して早苗に近づく。
早苗は体勢を立て直した。
そして俺を見ようとするが、早苗の視界には俺はいない。
「また後ろですか!?」
「その通りだ。………ハァッ!!」
「きゃっ!!」
また早苗を吹き飛ばした。
どっから見ても一方的な戦いだろう。
結構、手加減してるんだよなぁ。
これでもね。
「なるほど……霊夢さん達が敗れた訳がわかります」
早苗は遠くで体勢を立て直してそう言った。
「あの時は本気じゃなかったんだけどな」
「え?」
「色々と体が勝手に動いて勝っちゃったんだよ」
「それで勝てるって……一体貴方は何者なんですか?」
早苗はそう聞いてきた。
「人間でも妖怪でも魔法使いでも神様でも幽霊でも死神でも無くて……ただの化け物さ」
「化け物? それは一体…………」
「話は終わりだ。悪いが決めさせて貰う!!」
「!!」
俺は脚に膨大な力を込めて、超人的な速度で早苗に突っ込んだ。