第20話 考え事と歓迎会
俺は居間で寝転がった。
「さてと…………水姫達が戻ってくるまで何してようか……」
白玉楼の天井を見つめたまま、時が流れていく…………静かに、ゆっくりと。
「……………………」
寝転がった直後は"ゆったり出来て良い"と思っていた。
だが、今は"暇だ……暇すぎる……"に変わっていた。
しかしそんな時に閃いた。
「…………あ、久々にあれやるか」
俺は肘を伸ばして、袖の中に指を入れる。
その指をゆっくりと引き抜いていく。
すると中から木の棒がどんどん出てくる。
そして全部出てきたら、その木の棒の端と端を握る。
大きさとしてはテニスラケットぐらい。
ちなみにこの木の棒は、家を建てる時に余った木の棒だ。
それを瞬間移動させただけであるから驚く事では無い。
「久々だから上手くいくかな? …………!!」
俺は手に思いっきり力を込めていく。
すると木の棒はみるみる小さくなっていった。
そして棒が握り拳と同じ長さまでなったら力を抜く。
その棒を握って、手を振る。
すると中から花が出てきた。
出てきた花は白百合だ。
「腕は鈍ってないな。…………それにしても暇だな……」
そんな事を言いながら俺は次々と手品をしていく。
白百合からハンカチ、ハンカチから白い球、白い球から卵へと変えていった。
しかし水姫達はまだ帰ってこない。
「まぁ、3人で入ってるから仕方ないか」
俺はとりあえず手品を繰り返しながら待とう。
「お待たせしました」
「上がったわよ〜」
「……主は何してやがるんですか?」
と思ったらその前に水姫達が居間に入ってきた。
でも俺は手を止めずに卵を割って、中から黄色いボールを出す。
「…………暇だったから手品してた」
「手品ですか?」
「あら、面白そうね〜」
「手品は後で存分にやっていいので、さっさと風呂に入りやがって下さい」
「わかったよ。んじゃ風呂に行ってくる」
俺は水姫達と入れ代わりで風呂場に向かった。
俺は白玉楼の廊下を歩いて、風呂場に向かっていた。
道に迷うかと思ったが、あっさり着いた。
「意外と風呂場ってわかりやすいな」
扉を開けると脱衣所があり、その向こうに扉がある。
風呂場は広いのかな?
「さてと、さっさと浸かるとしよう」
俺は服だけを瞬間移動させて、風呂場への扉を開けた。
なんという事でしょう。
目の前に広がるのは"カポーン"って音がピッタリな、広い風呂場だった。
「和むのはいいが………結構湯気が立ち込めてるな……」
俺は湯気が立ち込めてる風呂場は苦手だ。
何か息苦しいし、視界が開けてないからだ。
だから窓やら換気扇を探してみたが、換気扇は無かった。
唯一の救いは空気の抜ける場所があった事だ。
だが、その窓は小さくて中々空気が抜けない。
「こんな時に能力が便利だな。……………」
俺は湯気が外に抜けるように念じた。
するとどんどん湯気が抜けていく。
通常の3倍ぐらいのスピードで抜けていく。
そして風呂場全体が見渡せるぐらいになったので止めた。
「さっさと洗って湯舟に浸かるとしようっと」
俺は頭から洗い始めた。
頭、体を洗い終わり湯舟に浸かる。
チャプン
「ふぅ……体の疲れが取れていく……」
熱くもなく、冷たくもなく、ちょうど良い温度だ。
その中で俺は考え事をはじめた。
"夢に干渉する力を持つ者"についてだ。
記憶が正しいなら………俺に格闘戦を教えてくれた"あの人"だろう。
俺が幻想郷に堕ちてきた山の守り人、銀狼を俺に与えた人、師匠に当たる人物。
だが、名前と明確な姿が思い出せない。
「まだ記憶は完全じゃないみたいだな………」
この前完全に治ったと思ったんだが……まだ足りない部分があるようだ。
だが発想を変えれば足りない部分はそこだけだ。
その他の部分は全て思い出している。
「ホント……思い出してくれよ……」
俺はどんどん沈みながら呟いた。
そのまま湯舟の中に顔が浸かり、頭まで浸かった。
そのまましばらく沈んだ後、
ザバァ!!
立ち上がる。
「……さてと上がるか。腹減ったしな」
瞬間移動で脱衣所に行き、体を拭き始めた。
俺は会話が聞こえる部屋の前にたった。
「確か居間はここだよな」
俺は障子を開けた。
「上がった…………よ?」
だが、目の前の光景に一瞬フリーズしてしまった。
「あら、おかえり〜」
「遅かったですな。主」
「湯加減はいかがでした?」
「やっと来たわね」
なんかメンバーが若干増えているのだ。
水姫、妖夢、幽々子、紫、尻尾が9本ある狐っぽい人、尻尾が2本ある猫耳少女…………。
「……俺が居ない間に何があった? 水姫、説明プリーズ」
「主が風呂に行ってる間に、紫殿が家族を連れてきやがりました。以上」
「わかりやすい説明だな。水姫感謝」
俺はそう言って水姫の横に座った。
「君が風戸 響介だな? 私は八雲 藍。紫様の式だ」
「式………式神の事か」
「そしてこの子は橙。私の式だ」
「よろしくお願いします!!」
「あ、あぁ。よろしくな」
狐の人が八雲藍、猫耳の方は橙か。
「で、紫。なんでまた来た? さっきも居たじゃないか」
「貴方の歓迎会みたいな事をやるからよ」
「歓迎会? 確か宴会の時に挨拶回りするのがここの歓迎会みたいな物だろ?」
「そうなんだけど、次の宴会まで結構あるから小さな歓迎会をするの」
「まぁ別に構わないが………もう宴会前に挨拶回り終わってるかも」
「なんでですか?」
「今日から幻想郷中を回り始めたからだよ。宴会の時にはある程度交流関係を持ってるだろうな」
「なるほどね。でも一応、歓迎会をやるわよ」
「あぁ構わない」
「私も構いません」
「それじゃあ今日は飲むわよ!!」
紫がそう宣言した。
紫…………多分歓迎会を酒を飲む口実にしてる。
まぁそんな事を思いながら宴会が始まった。
「それにしても……酒ばかりだな」
酒を目の前にそう呟く。
「あら、お酒嫌いなの?」
「いや、飲めなくは無いが苦手でな………いつも酒に見える普通の飲み物を飲んでる」
「あぁ、あの飲み物でございますですか?」
「そう、あれだ。しかし外の世界においてきたから無いんだよ…………」
「いや、ありますよ? 主」
水姫はそう言って、例の飲み物を取り出した。
その飲み物の名前はカ〇ピスウォーター。
外の世界の人から見たら、マッコリに見える…………はず。
しかしその前に聞かないといけない事がある。
「なんであるんだ?」
「紫殿が持ってましたの事ですたい」
「少し前にね。スキマの中にあったのよ。未開封で5本」
「いつの話だ?」
「貴方を幻想郷にスキマで連れてきた後よ」
「…………多分、俺が堕ちてくる前に買ったやつだ」
「そういえば主、帰り道で買ってましたでございましたな」
「じゃあ水姫に渡しておくわね」
「あぁ。だが一本、俺にくれ。ここで飲む」
「はい。どうぞ」
水姫が俺のコップに注いでくれた。
そして俺はそれを一気に飲みほす。
「プハァ!! やっぱりカ〇ピスウォーターは美味いな」
「そいつは良かったです」
カ〇ピスを手に入れて、俺はテンションが上がった。
幽々子達はそれぞれの飲み物を飲み、騒いでいる。
そんな歓迎会は夜遅くまで続いた。