第2話 記憶の鍵探し
「……ん? 朝か……」
結局昨日は何も思い出せなかった。
理由は考え込んでるうちに寝てしまったからだ。
本当にうっかりしてしまった……。
だが怪我は治ったので俺は退院(?)することになった。
余り長く居座るのも迷惑かと思い、逃げだそうとしたのだが永琳さんに止められた。
「せめて朝ご飯ぐらい食べて行きなさい」
どうやら朝ご飯を食べないと出れないらしい。
なので俺は朝食を食べる事になった。
朝食を食べて今は外に居る。
「それじゃあ道中気をつけてね」
「お世話になりました」
俺は永琳さんに見送られて迷いの竹林を後にした。
俺は自らの記憶と証言の誤差を修正するために今、自らが倒れた場所を探している。
「確か昨日はここら辺で……ん? これかな?」
不確定だが見つけた。
地面に血がついていたから発見は簡単なのだが……俺のかどうかはわからないのでどうしようもない。
「人里に向かってみよう。何かわかるかもしれない……」
俺は人里に向かって歩き出した。
人里の入り口の前に到着した。
外から見た大通りは中々活気があった。
「ここか……中々賑やかじゃないか」
「おや? 見かけない顔だな。何者だ?」
長髪の女性が話しかけてきた。
「えっと……普通の人間です?多分。痛っ……」
また頭痛がした。
「何だ? 自分が何者かもわからないのか?」
「まぁ……記憶喪失というやつです」
「しかしすぐに里に入れる訳には行かない。君からは膨大な妖力を感じるからな」
そんな簡単に入れてもらえないようだ。
って妖力?
また何か引っ掛かる……。
「妖力? ……確か数百年前、首筋の辺りに……あれ? 何かあったっけ?」
俺は自分でもわからない事を言った。
しかも数百年前って……人間の寿命は百年程度じゃなかったっけ?
「首? 少し後ろを向いてみろ」
「は、はい」
俺は後ろを向いた。
「……ん? これは……刻印か」
「刻印? ……なんか色々と引っかかるな……」
どうやらここには俺の記憶を取り戻す鍵がありそうだな……。
「……君。少し待っててくれないか?」
「? ……わかりました」
女性は里の方へ走っていった。
しばらくして女性は新たな女性を連れて戻ってきた。
う~ん……永琳さんや鈴仙もそうだが美人多すぎだろ……。
「待たせてすまないな」
「いえ、大丈夫です。ところで……その方は?」
連れてきた女性は日傘をさしていて扇子を持っていた。
「私は八雲 紫。幻想郷の管理者よ。よろしくね」
「風戸 響介です」
って幻想郷?
なにそれ?
とりあえず後で聞いてみようっと。
自己紹介をすると女性が紫さんに話しかけた。
「紫。ここは任せていいか? 私は寺子屋で授業をしないといけないから……」
「えぇ。構わないわ」
「それじゃ、失礼する」
女性は走っていった。
「それじゃ、後ろ向いてちょうだい」
「また……わかりました」
また後ろを向いた。
何回後ろを向くことになるのだろうか……。
「なるほど……。まだ目覚めていないようね……でも膨大な妖力が漏れ出ているわ………」
「? ………何を言ってるんですか?」
「いえ、何でもないわ。そんなことより貴方……妖力にくわえて魔力や霊力まで持ち合わせているなんて………」
なんか深刻な表情してるぞ?
何故?
「いや……俺に聞かれてもわかりませんよ……」
「そう……。とりあえず荷物だけ確認させて?」
荷物?そんなものは無いよな………。
俺はとりあえずポケットを漁った。
すると手に何か当たった。
「何だ? これ……宝石?」
ポケットから取り出したものは真紅のルビー。
よく見るとルビーの中に黒い蛇のようなものがあった。
紫さんは宝石を見た途端、顔を宝石に近づけた。
「これよ! ……やはりこっちもまだ目覚めてないようね……」
「?…………………」
なんか色々と忙しい人なのかな?
「あとは霊力なんだけど………何か心あたりは無い?」
「記憶喪失の俺に言われても困ります………」
そう言いつつも思い出そうと頑張ってみた。
しかしやはり記憶に靄がかかっていて思い出せない。
その時、頭の中に一筋の光が見えた。
そして記憶の中の一部分の靄が晴れた。
「ん? ……あぁ、そういうことか………」
「ん? どうしたの? なにかわかったのかしら?」
「まぁ少しだけ……。でも話したくないです…………」
俺は先に話すことを拒否した。
こんな普通の人間には関係ないし、関わらせたくない。
「……そう。話せるようになったら話してちょうだいね」
「すいません………。わがまま聞いてもらって」
「気にしなくていいわよ。誰しも話したくない事はあるものね」
紫さんは俺の肩を持った。
優しい人だな……紫さんって。
「それじゃあ……失礼します」
「機会があったらまた会いましょうね」
「また……いつか」
俺と紫さんと別れた。
人里を離れて今は草原の中を歩いている。
「あ、幻想郷について聞くの忘れた。……まぁ今度聞くとしようか……」
その時、激しい頭痛を俺を襲った。
「ぐっ……うぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああ!!」
頭が割れるような痛みだ。
その痛みはさらに増していく。
「ち…畜生……」
俺は何とか見つからないために背丈の高い草が多く生えている場所に倒れる。
「いったい……なんだって言うんだよ……」
俺の意識は痛みによって朦朧としてきた。
そして意識がとても深い闇に落ちていった。
深い闇の中をさまよいやっと出てみると周りは草だらけだった。
「そういえば……隠れてたんだよな……」
俺は立ち上がった。
そして周りを見るとすっかり夜になっていた。
「満月か……とりあえず……すぐ近くに川があるみたいだから顔を洗おうかな……」
俺はゆっくり歩き出した。
川に着くと水面が綺麗に輝いていた。
俺は顔を洗うために水面に屈み込んだ。
すると俺はひとつ異変に気がついた。
「さて顔を洗うとしよう……ん? 左目が赤くなってる……」
そう。左目が真っ赤なのだ。
充血してるわけでは無く、瞳が赤に染まっている。
(治る……よね?)
そう思いながら顔を洗った。
「はぁっ……すっきりした。…しかし目は治らないか………」
俺は立ち上がった。
そして振り向くと
「……………」
金髪の女の子がいた。
「こんな時間に出歩くなんて危ないから帰りな。送ってあげるからね」
「……貴方は食べてもいい人類?」
「いや~食べれないと思うよ~?」
俺は小さい子供だと思っていた。
「そーなのかー」
「そーなのだー」
だってこんな会話してたら普通はそうなると思う。
「ほら、里ならあっちにあるから帰るといい」
「私……人間じゃないの……じつは妖怪なの」
「へぇ……そうなんだ」
俺はただの冗談だと思い、軽く受け流した。
しかしここからはまったく冗談とは思えない事が起こった。