第18話 決着と結末
「魂魄『幽明求聞持聡明の法』!!」
妖夢がスペルを発動させると、人魂が妖夢の姿になった。
「分身? ………違うな。半霊を変化させたのか」
「それじゃ行きますよ!!」
まず本体である妖夢が斬り込んできた。
俺はそれを受け止めた。
だが後ろからもう一人の妖夢が近づいてきた。
「これは本当にまずいかもな……」
俺はもう一人の妖夢の攻撃を避けるため間合いを取った。
しかし本体の妖夢が素早く踏み込んできて、うまく間合いが取れない。
「中々複雑なスペルだな。上手く間合いが取れない」
「お褒めにあずかり光栄です!! まだまだ行きますよ!!」
妖夢が間髪入れずに攻撃してくる。
俺はそれを後ろに行きながら避けていくが、後ろにはもう一人の妖夢がいた。
どうやら押し込むつもりらしい。
俺は後ろに進まずに止まる。
「さて、どうする?」
「こうさせて貰います!!」
妖夢がそう言うと、景色が傾いた。
ガクッ
「うぁっ!?」
俺はいつの間にか近づいてきた、もう一人の妖夢に膝カックンをされて態勢を崩した。
俺は態勢を直そうとするが、
「させません!!」
妖夢に足払いをされて、態勢が直せなくなった。
ドサッ!!
俺は背中から転んだ。
そして妖夢は刀を振り下ろそう
「覚悟!!」
「ま、そんな簡単にはやられないさ。瞬間移動」
俺は妖夢の後ろに移動した。
妖夢は刀を振って来たが、
「そこまで」
俺はその刀を槍で受け止めた。
「響介さん。まだ勝負は着いてませんよ」
「いや、俺の負けだ」
「なんでですか?」
「俺は背中を地についた。それだけだ」
「私はまだ響介さんを追い詰めてないです。 それに明らかに響介さんの方が優勢でした」
「これは俺の信念であり、意地でもある。悪いが譲る気は無い」
「………………」
妖夢は黙っていた。
まぁ信念や意地は他人には動かせない事が多いからな。
「大体、さっきフランと一戦交えてきたから疲れてるんだよな」
「え!? フランさんと戦って来たんですか!?」
「あぁ。全身全霊、本気の勝負でフランを倒したんだ。ただその分疲労が溜まって、これ以上はキツいから頼む」
「………わかりました。勝負は本気でやらないと意味ないですからね」
妖夢が刀を仕舞いながら承諾してくれた。
なんか悪い事したなぁ……。
「次は一戦も交えてない時に戦おう。その時は本気でな」
「はい、もちろん受けて立ちますよ」
「お疲れ様〜。良い勝負だったわよ〜」
幽々子が座りながら言った。
「そういえば幽々子。泊まる事についてなんだが……」
「何かしら?」
「俺にはもう一人、仲間がいるんだけど……呼んでいいか?」
「別に良いわよ〜。人数は多いと楽しめるもの〜」
「わかった。……さてと問題なのは紫がどこにいるか……」
俺がそう言うとどこからともなく声がした。
「呼ばれて飛び出てぇ〜」
「………………」
「あら? 響介? どうしたの?」
「…………紫。登場の仕方古いぞ? それもかなり」
「や、やってみたかっただけよ? だ、だから気にしないでちょうだい!!」
「そんなオドオドしながら言っても説得力無いだろ………」
俺がそう突っ込むと紫は話を変えた。
「コホン!! そんな事より何で響介はここにいるの?」
「成り行きでな。……で紫、水姫をここに連れてきてくれないか?」
「何で?」
「今日、此処に泊まる事になったからな。水姫だけを自宅に残すわけに行かないんだよ」
「わかったわ。とりあえず夕方ぐらいに連れてくるわね」
「おう。それじゃよろしくな」
「じゃね〜」
紫はスキマに消えていった。
俺は妖夢と幽々子の方を向き、頭を下げた。
「それじゃ、今日一日世話になる」
「ゆっくりしていくと良いわぁ〜」
「それで、お昼ご飯はどうしましょうか?」
「俺は良いや。食べてきたし」
「わかりました。それじゃ居間にご案内致します」
「わかった」
俺は妖夢に案内された。
俺は食事をしそうな場所に案内して貰った。
居間であってるのか?
「それではここでお待ち下さい」
「あぁ、わかった」
「早くねぇ〜」
妖夢は台所へ向かった。
「………それにしても眠い。やっぱり疲れが溜まってるのかなぁ……」
「あら、眠いの? 膝枕してあげましょうか?」
「いや、遠慮しておく」
「ふふっ、残念。イタズラしようと思ってたのに」
「……おい」
「冗談よ〜」
なんか掴みどころが無いなぁ……。
まぁ別に良いんだけど、平和ならね。
平和なら殆どは問題無い。
そんな事を考えていると、襖が開いた。
「幽々子様〜。お食事をお持ちしました〜」
「!?!?!?」
「早く食べましょ〜」
俺は驚いた事がある。
妖夢は円卓の上に食べ物を置いていくのは良いが、食べ物の量が多い。
「なんでこんなに量が多いんだ?」
「幽々子様が食べるからですよ」
「こ、これ全部か?」
「はい」
「幽霊は持っている質量が少ないの。だからこれぐらい食べないと足りないのよ〜」
「………見てるだけでも腹一杯だな」
「良く言われます」
妖夢は少し苦笑いしていた。
まぁわかる気がする。
「ねぇ〜妖夢。もう食べて良いかしら〜」
「構いませんよ」
「いただきま〜す!! ……パクッ」
幽々子はとても美味しそうにご飯を頬張った。
凄く微笑ましい光景だ。
「幽々子様、美味しいですか?」
「とても美味しいわぁ〜」
満面の笑みで言った。
凄く可愛い……。
外の世界だったらテレビとか出演するだろ。
そして男の心をくぎ付けにしまくるな、絶対。
「さて、俺はひなたぼっこでもするかな?」
「ひなたぼっこですか? 昼寝では無く?」
「日なたぼっこは気持ちいいからな。まぁ多分、そのまま寝るんだけど」
「結局は昼寝と変わらないじゃないですか」
「ま、気にしない気にしない。夕方になって、寝てたら起こしてな」
「わかりました」
「ごゆっくり〜……モグモグ」
俺は居間を後にした。
俺は白玉楼の廊下をゆっくり歩いた。
そしてすぐに日当たりの良い場所を見つけた。
「ここで良いや。丁度良さそうな感じだし」
俺は壁によっ掛かり、体の力を抜いた。
その後、何も考えずに空を見つめる。
雲の動きをのんびり見ながら太陽の光を浴びていると、何個かの人魂がやってきた。
そして俺の近くを飛びはじめた。
「冷たい…………夏は絶対に便利だろうな」
流石冥界。
避暑に最適だな。
冬は大変そうだけど……いや、そうでもない?
とりあえず俺は人魂達を拒まず、ひなたぼっこを続けた。
そして時が経つにつれ次第に眠気が俺を襲う。
最初は微弱な眠気だったが、徐々に眠気の強さが増していった。
「ふわぁ……………もう寝るか」
俺は腕を組み、足を胡座にして寝る態勢に入った。
胡座で寝てると結構足が痺れやすいんだよな。
廊下を歩く人の邪魔にならない為なら仕方が無い。
眠気に耐え切れなくなった俺の意識は深い夢の中へと行った。