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ネガティブ ハッピー フラワー

作者: アキ夜

はじめまして。

第1作目です。

少しでもニヤリとして頂ければ幸いです!

ヨロシクお願いします。



 クエスチョン:


 圧倒的実力差のある人物を前に、人はどれだけ冷静さを保てるのか?



   ★



「あのさ、俺と付き合ってくれない?」



 この世に生を受けてから18回目の桜咲く春、ワタシは初めて交際を申し込まれた。



「…………え、」


 ええええぇぇぇぇぇええ!!!!!!!!??????


 あまりの突拍子もない出来事に、戸惑いを隠せない。

 隠せないというか、逆に言葉を失い表現出来ない。


 今なんて云った?付き合って…とか云った?


 ないないないない絶っ対有り得ない!!


 だって今ワタシの目の前に立ってそんなことを云いやがりましたコノ方は、学校一の有名人だから。


 成績優秀、スポーツ万能、容姿端麗、爽やか美声、果ては高校生にして職業、人気モデルの肩書きまでも付いている長身眼鏡様。


 まるで暖かい春に堂々と咲き誇る桜のようなコノ方を、ワタシは隠れてサクラ様と呼んでいる。


 片やワタシは……成績は中の中、運動音痴、容姿人並み、人見知り、父はサラリーマンで母は専業主婦と云った一般家庭の一般人。


 まるで道端に生える花の咲かないイヌコハコベのように、目に留まる要素など何も無い。


 とてもじゃないけど釣り合わないこと富士山の如し。


 いや寧ろ日立の樹の如し。



「あの……冗談、ですよね」


 本気で冗談だと思いたい。


 だってサクラ様がワタシの存在を知っていたと云うことですら神懸かった奇跡なのに、こんな道端の雑草なんかに交際申し込みだなんて…………


「いや、冗談とかじゃなくて、本気なんだけど」



 ……………………。


 そうか、今のは幻聴ね。


「あーーあーー」


「…何してるの?」


「こうやって耳を塞いで声を出すと、耳の通りが良くなるんですよ」


 …あ、何故かサクラ様がきょとんとしてる。あんな顔もするんだ。


「もしかして、聞き間違えとも思ってる?」


「違うんですか?」


 …あ、サクラ様が溜息を吐いた。モデルのお仕事で疲れているのかな?


「あのね、俺の座右の銘はアレなの。真実一路」


「はい。雑誌のインタビューで拝見しました。カッコイイですよね」


「括弧つけ、のつもりじゃないんだけど……それはまぁ、イイや。つまり嘘はつかないってコト。解る?花ちゃん」


「アレ……名前」


 サクラ様に名前を呼ばれた。


 雑草に不釣り合いな『花』という名称。完全に名前負けしていて、ワタシは嫌いだった。


 でもサクラ様に呼ばれると、それだけで開花し舞い上がってしまう気さえする。


 でもなんでワタシの名前を知っていたんだろう……?


「そりゃ好きなコの名前くらい、知ってて当然だよ」



 ……………………。


 あら、また幻聴が――


「花ちゃんさ、いつも昇降口出たトコにある花壇の世話、してるよね」


 サクラ様の声がワタシの思考を強制的に遮断する。


「はい……してます」


 もしかして、見られていた?いつも?


「凄い楽しそうに世話してるよね。花、好きなの?」


「はい……ウチがお花屋さんなので」


 真意が解らない質問に、何故だかドキドキする。心拍数があがる…これはなんだろう。


「そうなんだ。それでさ世話してるとき、なんか独り言云ってない?」


「………………、え!?」


 解った!嫌な予感でドキドキしてるんだ!


「アレさ、花につけた名前を呼んでるんだよね」


 やっぱりかっ!!完全に見られてたっっ!!!!


「花壇の右端にあるパンジーから順に、パナップ、ミユキ、ピコ、ソウ……アイスも好きなのかな」


 全部あってるしっ!!そこまで覚えてるのっ!!!!


「枯れ木に花を咲かせましょーう♪…口癖?」


 うわああぁぁぁぁぁ……もうヤメテ……死ぬ……恥ずかしすぎて死ぬ…………



 サクラ様の容赦ない攻撃にワタシの心臓は爆発寸前です。


 ヤメテ、貴方はもっと自分の攻撃力の高さに気付いて。ワタシと貴方ではスキルとか経験値とかステータスの差が激しすぎて、とてもじゃないけど太刀打ち出来ないの。一太刀が重くて受け止めきれないの。




「でもそんなトコが……なんか凄く可愛かったんだよね」


「……はい?」


 云ってる傍からサクラ様は核ミサイル発射。


「すみません、よく聞き取れなかったので、もう一度云って貰って宜しいですか…?」


 それは上空を少しだけ停滞したあと、


「だから……、俺は花ちゃんのことが好きって云ったの!!!!」


 ワタシの頭上へ急転直下してきた。


 好き……?今好きって云った?ワタシなんかを、あのサクラ様が!?


 チビで地味で可愛くなくて花の世話しか取り柄のないこのワタシを!?



 ワタシはまた冗談かと笑い返そうとしたが、



 あ…サクラ様赤くなってる。

 サクラ様でも照れるんだ。


 この顔は、ワタシしか見たことないんだ。


 本当に本気で云ってくれてるんだ……


 どうしようどうしようどうしよう……嬉しいかも。



「あ、あの……本当にワタシなんかで、えと……良いのでしょうか…………?」


「ワタシなんか、なんて云わないで。花ちゃんは可愛いよ、もっと自信を持って。

 ……好きだよ」




 嗚呼、ああ…こういうのを白日昇天の想いと云うのでしょうか。


 神様仏様サクラ様。


 枯れ木だったワタシは、初めて花を咲かせます。


 貴方のおかげで。


 あとで調べたら、どうやらイヌコハコベは極稀に花弁を付けることがあるそうです。


 今のこのワタシのように、小さな花を。


 あ…サクラ様の笑顔が眩しいです……


 トドメを刺してきますね……流石です。ワタシはもう戦闘不能だというのに。


 この攻撃に抗える術をワタシは知らない。いや寧ろ誰も知らないと思う。


 だってコノ方は成績優秀、スポーツ万能、容姿端麗、爽やか美声、果ては高校生にして職業、人気モデルの肩書きまでも付いている長身眼鏡の桜なのだから。



 そしてサクラ様は暖かい春風のような、爽やかな微笑みをワタシに向けると、もう一度云いやがりました。



「だからさ、俺と付き合ってくれない?」



   ☆



 アンサー:


 最初から無理でした!





終わり。


ありがとうございました!


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