クエスト01【ドラゴン討伐】
ここは魔王の侵略に怯えるオイヘンブージ王国。
そしてその王城にて、国王ブージ三世は頭を抱え苦悩していた。
「国王様、どうなされましたか!」
そこに勇ましい足取りで、全身甲冑の騎士が姿を現す。
「おお、騎士団長か……実はな」
御前にて直立不動に立つ騎士団長に、王は己の抱えた苦悩を漏らす。
「先日から、王国隣の森に竜が巣くうているのは知っておるか? アレの対処に頭を抱えておるのだ」
「なるほど、確かゼアンの森にエメラルドドラゴンが姿を現したのでしたね!」
「うむ、騎士団を派遣するにしても、森では上手く隊列も機能すまい、それに竜の機敏さでは重装備は足枷となるだろう」
「確かに! かと言って町の冒険者に依頼を出すにしても、竜を倒せるほどの実力者が都合よく滞在しているのは稀でしょうね」
「住民からの苦情や森近隣の被害報告は日々増えておる、果たしてどうすればよいやら」
そう言って王様は深い溜息を吐いた。
放置して竜が飛び去ってくれるのなら良いが、もし居着くつもりであるならば大問題だ。
ますます顔色を悪くさせる王様に、騎士団長が勇ましく告げた。
「ご安心くださいまし! 国王様、私めが今まさに解決策を持ってまいりました!」
その言葉に、王の顔に光が宿る。
「おお、その言葉誠であろうな騎士団長よ」
「お任せください、国王様! さて、王は教会より選抜された勇者という存在をご存じでしょうか?」
「勇者……確か、セーフ神が民の願いを聞き入れて生み出したとされる奇跡の御業を持つとされる権能者の事か? しかしあれは教会の流布したただの伝説であろう?」
「いやいや王様! 実際に権能者、スキルを持った者は存在するのです! その証拠に今ここに連れてきております!」
「むぅ誠であろうな? 馬鹿にしか見えぬ服を売る商人やら王の耳をロバの耳に変える魔法使いなどお呼びではないぞ?」
「詐欺師の類と一緒にしてはいけません、しかも今回は竜を退治するのに有効なスキルを持つ者を呼んできております」
「ではさっさと連れてまいれ」
「は、しばしお待ちを」
こうして王の前に、三人の若者が連れてこられた。どの若者も自信に満ち溢れてはいるものの、背格好は町の住人と大差なく、とても勇者と呼べるような迫力はない。
「むぅ結構普通だな」
「王よ、彼らを見た目で判断しないことです」
騎士団長はそう言って、一人の若者を指名する。
「ではまずは貴様からだ、その脅威のスキルをを王に語って聞かせよ!」
呼ばれて一人の若者が一歩前にでる。
「私のスキルは千里眼、どんな遠くの景色でも見る事が出来ます!」
「むぅ、それは凄いが……それでどうやってドラゴンを?」
「王よ、彼の目があれば竜がどこへ逃げようとも追跡できるのですよ」
「まぁそれはそうであろうが、それともあれか? この者自身ドラゴンを倒せる強さを」
「さぁ次はお前だ、その脅威のスキルを王に語って聞かせよ!」
王の言葉をさえぎって、二人目の若者が一歩前に出る。
「私のスキルは空中浮遊、空を自由に飛べるのさ!」
「それは確かに凄いが……」
「王よ、彼の話を最後まで聞くのです」
「しかも一人じゃない! 触れた人物なら十人程度なら自由に飛ばすことが出来るんだぜ!」
「王よ! これでドラゴンの翼を封じたも、同然!!」
「いやだから、直接ドラゴンを倒せるスキル……」
「さぁ最後のお前、その脅威のスキルをを王に語って聞かせよ!」
落ち込む王を後目に、最後の一人が一歩前に出る。
「僕のスキルは回復能力、手をかざすだけでどんな病も直す事が出来るんです!」
「……全員、サポートスキル!?」
「どうですか、王よ! これで勝ったも同然!! どんな怪我も怖くない!!」
「いやいやいや……正気か騎士団長! なんかこう、一撃でドラゴンを倒す斬撃を放つ剣士とか、雷を落とす魔法使いみたいなスキルは無いのか?」
「そんな都合のいいスキルはありません。それに彼らはどれも素晴らしいスキルを持っているのですよ? さぁ、この三人の中の誰にドラゴン退治を任せますか?」
「えええ、1人で行かすのか!? 三人一緒でも大分不安なのに!?」
「さぁ王様、勇者をお選びください!」
「「「さぁ!」」」
「何でお前らもやる気十分なんじゃ!」
後日。
「流石は神に選ばれた勇者たちでしたね! 彼らのおかげで見事ドラゴンを退治できました! おや悩みの種が消えたというのに、何をそんな落ち込んでおられるのですか王様」
勇者たちの活躍を称える騎士団長に、ため息交じりに王様が答える。
「だってのぅ……千里眼で竜の弱点を見つけて、飛行能力と治癒能力のサポートを受けた騎士団長が結局ドラゴンを倒してるから……」
「王よ! 優先順位を間違えてはいけません! ドラゴンを倒すことが目的なのです! 勇者たちの能力の凄さを知るのはまたの機会にしましょう!」
「どの口が宣うというのか!」
王の悩みはまだ晴れそうにない。




