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8/13

可能性 2

 朝、目覚めると、鍋の中に食材を煮ている最中だろう、透明なスープの中で踊っている、皿はテーブルの上にきちんと並んでいて、パンを並べればすぐにでも食べることが出来る状態だ。


 隣の部屋から物音がした。たぶん叔母さんのどちらか、または、従妹だろう。


 従妹。

 先日薬草を採りに出かけた時に。

 あの時もしかしたら、あなたが、召還反魂できたのなら、皆出来るかも知れない、力場が回復する道筋ができるかも、そうすれば、滅びから逃れられるかも。

 と。


 彼女は僕が、異世界からの転移転生者だと分かっている。

 だからと言って、特におかしいと思わないと続けた。

 逆に希望だ、と。


 希望。


 物音は相変わらず鳴りやまない。

 ダイニングで、暫くすれば入ってくるだろうと、身構えるでもないが、それとなく無く待っていても、物音だけで、一向に入ってくる気配がない。


 おかしいな、と様子見をするため廊下に出た。

 最初、なにが起こっているのかそのものを一見してすぐには判断できなかった。

 その形状からすると、明らかに人体の臀部である。


 お尻。


 人は全体から、そのパーツを判断する。

 パーツから、それが何かを判断するのは、特にあるべきものが無い。

 ありえない所に、そのものがあれば、そのものから全体を判断するのは極めて難しい。

 臀部、が壁から出ている。

 最初にそう思った。

 誰の、とか、なぜ、とかはまず出てこない。

 とにかく臀部。

 布にくるまれている、臀部。

 しかも、蠢いている。

 壁の向こうで、何か人の気配と言うか、その臀部が動くたびに掛け声の様なこえが聞こえて。

 そこでやっと、聞き覚えのある声の主、そう母さんだ。

 なんだか、見ていて恥ずかしくなって、何がどうなったのか壁の向こう側に回るため、ドアを開けた。

 確かに母さんがお尻のほとんどを壁に入った状態で、そこから抜け出そうと両手で壁に手をついて抜け出そうとしていた。


 どうしたの、と。

 おばさん、いや大きいお姉さんが部屋に入ってきた。

 見るなり、おなかを抱えて笑い出した。

 いくら、ドジっ子な母さんでも人に笑われるとムッとするもんだ。

 笑ってないで、助けようよ、と言って母さんの手を引っ張った。


 イタタと言いながら、大きなお姉さんと一緒に引っ張ること、暫し。

 抜ける時はあっけないもので、飛び出るように抜けた。

 勢いあまって、俺と大きなお姉さんに覆いかぶさるように飛び出してきた。


 フウと言いながらお尻をさすりながら、顔を真っ赤にしながら、ありがとうと、少女のようにはにかみながら俺達にお礼を言った。

 覆いかぶさってきたとき、母さんから、懐かしい匂いがした。なんだろう、昔背負われてたとき、母さんのあったかい背中のその時の温かさが、匂いとして記憶されていたのだろうか。


 眼の前の母さんは、俺の本当の母ではない転移してきた俺の母ではない、俺の母さんは・・・。


 大きいお姉さんは、母さんにどうしてこんなことになったのか、聞いていた、お尻をさすりながら立ち上がり、穴の開いた反対方向を指さした。

 その方向には開いている天袋があった。


 大きい姉さんはなるほど、と声を上げた、そうしていると小さい姉さんと従妹が部屋に入って来て、どうしたのと。聞いてきた。


 大きい姉さんが天袋の方を指さすと。となにか思いついた様子だった。


 俺が、状況が飲み込めずいると、母さんが、鍋がそのままと言い残し、部屋を飛び出した、若干まだ違和感があるのだろうかお尻を押さえながら。


 残された俺と親族一同は天袋を見つめ、俺の無言の説明を求めに応じ、重ねて、従妹のねえ、何なのと言うセリフでようやく、大きい姉さんは口を開いた。


 父さんと旦那と婚約者の手紙。


 もう一度、召喚反魂を。


 そう、小さいお姉さんはつづけた。


 大災厄最終戦争で、年齢に関係なく男たちは戦場に赴いた。戦場では、残された家族に向け、安心させるよう、手紙を送ることが推奨された。


 定期的に。


 その内、近所の配達が、一人、また一人と届かなくなり、それは、二度とこの地に、再び家族の元に帰らなくなったことを意味し、残された家族は、その定期便に祈りをささげるようになった。


 父が、そしてそれぞれの夫からの配達が遅くなり、やがてこの地域の配達は、郵便事故などで、頻繁に遅れていった。

 だから今回は、何通かまとめて来るだろう。

 そう、郵便の遅れで遅れただけで、きっと。

 そう願いずっと待っている。


 今日は、その配達予定日、天袋に大事に仕舞ってある、今までの手紙を取りだし、虫干しも兼ねてお祈りをするのが、恒例となってる、私たちの手紙もそうしている、そして、差出人が大好きな物を並べて。と。


 それは召喚反魂の為の必要作法らしいと後で聞いた。


 その手紙を取りだそうと、天袋の高い所から転がり落ちて壁に穴開けたって言うのが事の顛末らしい。


 しかし、壁にお尻で穴開けるってどんだけドジっ子なんだ。


 しかも今時、そんなシチュエーションって。



目を通していただき、有難うございます。12/31後半部分を書き加えました。

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