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この世界2

 なにかを待っている様子だった。

 家の外に出た家の前の道の続く一本道を、地平線の消失点も遥か向こうをジッと見つめ、何かを待っているようだった。

 やがて、目をつむり深く息を溜めて、そして吐き出し、そして意を決したように踵すを返し家の中に入ろうとした時。

 大きな姉さんが小さな姉さんと共に声を掛けていた、やっぱり今日も無駄にまってしまった。


 と、ふたりならんで、私もその様子を後から見ていた。


 この二人は母の姉と妹だ、一度おばさんと呼んでも返事一つしてくれないので、母に聞いた。

 伯母さんは大きなお姉さん、そして叔母さんではなく小さななお姉さんと呼ばないと、と笑いながら言っていた。


 伯母、いや、大きなお姉さんには旦那さんと、僕の従妹に当たる娘が一人いて、僕の異世界での父同様、戦地に赴き、ついに帰ってこなかった。

 小さいお姉さんには、婚約者がいて、彼もまた。

 帰ってこなかった。


 待っているのは、戦地から送られてくる手紙だ、定期飛行船を待ちながら詩を歌っていた。

 ハープだろうか、琴の音が響いていた。

 とっても明るく、それでいて、どこか物悲しい。


 小高い丘には、数軒の小屋が立ち並び煙突からは煮炊きしている、痕跡の煙がたなびいている。


 今日は、農作業の日だ。

 もう来ない、定期飛行船、を名残惜しそうに、空を見上げながら、母とその姉妹は、その用意に取りかかった。

 農作業道具を手押し車キャリアーに積み込み、出発しようとグリップに手を掛けた時、追いかけてきたものがあった。

 お弁当、と言って息を切らしてやってきた。

 母さんそんなに慌てなくても、と言った。

 言葉も終わらない内に、被せるように、お茶はこれね、と言って背嚢にグイグイ押し込んできた。

 うしろが見えないが、余計後ろに倒されるんじゃないかと思う位グイグイ押し込んできた。


 背嚢の中にお昼ご飯を押し込められ、行ってらっしゃいと、お尻をポンと叩きいたずらっ子の様に片目をつぶり、ウインクをした。その仕草、表情は、彼女が、僕と同い年の女の子がダブって見えた。


 気が付けば、いま、俺の尻を平手で叩いた彼女、つまりこの世界での母だが、その家の息子として転移してきたのは、この肉体の主の記憶を辿り、母との話を総合すると。


 どうも、反魂、召喚の術で、この息子の他、それぞれ、家庭の男子を呼び戻す術を行使したようだが、結果、召喚、反魂されなかったみたいで、それまでに何度か、試みてはみたげ、うまくいかず、ようやく呼び出されたのが俺の様だった。


 その時は、村中お祭り騒ぎで、一晩中お祝いで、にぎやかだった。らしい、その時は、僕が熱でうなされていたからだろう、記憶には薄いが、確か枕もとで、僕だけが呼び出されたことにだれかが何かを言っていたことは、うっすらと片隅にある。


 いずれにしても、こんなに歓迎されるなんて、今までの人生で皆無だった。

 家では、出来る兄や妹と比較され。あからさまに、出来ない俺に親が何かあるわけでもないし、兄や妹から蔑まされる訳でもなく、逆に優しくしてくれるのが辛く、勝手にひねくれて。


 で、そんな自分が嫌で、誰とも関りを待たなくなって、学校では、可もなく不可が若干多い、特に目立たない、かといって、嫌われているわけでもなく、十把一絡げ、一山いくら、一緒くた、要はモブの様な。


 だから、俺の様な存在がここでは認められ、必要とされ、ているのが心地いい。


 元々、体を動かすのは嫌いではない方なので、農作業や、なにか手伝いをするのは、苦には成らない、むしろ喜んでくれたり、感謝されるのが心地良い。


 だがまだ、彼女達は、何か言っていない事があるみたいだ。

 それは僕も同じで、僕そのものが、異世界からやってきた転移者だとはまだ気付いていない。


 純粋にこの肉体の持ち主のおそらく息子だろう、彼の魂、精神が蘇って召喚されたと思っているようだ。


 そして、お隣の従妹の家を指し彼女は一緒じゃないの、と聞いてきた。


 思わず顔が真っ赤になってしまい、それを隠すのに日よけのつばの広い帽子を目深に被り直し、行ってきますと言って。


 肩に力が入りながら、それで一輪車の操作が安定せず珍しくフラフラしながら、出発した。青い空に小さき月が細かく砕けて空に架かる川の様に、キラキラ白く薄く掛かっていた。


 その大いなる月の、周りにもそれが取り巻いていて、大地と空とが川でつながっている錯覚に陥ってしまいそうになる。


読んでいただき、ありがとうございます。読んでいただいた方の、お時間を頂くだけの拙作でありますように、と祈る気持ちです。ありがとうございます。

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