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エピローグ

 火球が無数、小さき月の大地に叩き込まれている。

 敵は、幾千幾万の数。

 空を覆い、地を塞いでいる。


 大地に落ちた、火球、それは地面で破裂し、地面で広がりそして、火柱が天高く舞いあがった。

 また、稲妻が、雷鳴と共に、天空を裂きあらゆる地上の者を、吹き飛ばした。

 嵐と鎌鼬が、岩を裂き大地を穿ち、地上のありとあらゆるものを粉々に粉砕した。


 大地は裂け、地上と言わず、天空と言わず、ありとあらゆるものが怒り狂ったような、振動が衝撃波が、波動が、轟音がこの世の世界を殴りつけた。


 彼は腕に力をため、天の波動と地の波動を一身に溜め、それを血の力と大地の力を融合しそして、放った。

 閃光と、熱と衝撃波が辺りを薙ぎ倒し敵の一団に向かって直進した。

 直撃のはずが、ダメージが感じられない、何ごとも無かったかのような、それは再び無数の火球を吐き出し、大地を舐めつくした。


 再度。

 両手に力を溜めた刹那、父さん、と声を掛ける者がいた。

 ここは、もう無理です。防衛線は突破され、此処も孤立してしまいます。と。

 彼は、父である足元に跪き、訴えた。

 父と呼ばれた者は、息子を一瞥し、そして力を溜める続きにかかった。

 血だらけの、父と呼ばれた彼にはあと数発も放つ力は残されていない。

 それは、分かっている。

 が。

 守らなければならない。

 彼を突き動かすものは、それだけであった。


 義弟よ、と近寄ってきた者があった。

 力を溜め今まさに放とうとする、父と呼ばれていた者に声を掛けた。

 我も手伝おうぞ、と、ゆっくりとした動作で両手を広げ、この大地の、小さき月の、ありとあらゆる力場を集中させた。

 それを、横目で見ながら、父と呼ばれていた者はフッと笑顔がこぼれた。

 やがて二人の、力は放たれた。

 音と、光と、振動と、衝撃波で辺りの大地はめくれ、空間は裂け、空気は焼き付き、大空はその色が抜けてしまった。

 が。

 それは、相変わらず、無傷のままであった。

 一瞬、戦場の空気は凍り付き、何もかも止まった、停止した。

 が、それは単に錯覚に過ぎないと、次の瞬間、その場にいた全員が思い知らされた。

 味方は打ち砕かれ、薙ぎ倒された。

 父と呼ばれていた者は、傍にいた、息子にいいきかせ。母の元に帰るよう諭した。

 この大戦は負ける、この大災厄最終戦争はこの世界を滅ぼし終わろうとしている。

 この父は、我々は、寸刻でも残されたものが生き延びてもらうために、此処で死力を尽くそう。

 下界に残された者の為に、汝は帰れ、孝行を頼む、と。

 しかし息子は号泣し、父の傍で、共にと。

 声にならない声で訴えていた。


 義兄殿。

 と、もう一人遠くから駆け寄ってきたものがあった。

 義兄殿たちと一緒に戦わせてください。最後位は。

 あいにく、義兄殿達の義理妹と夫婦になることはなりませんででした、ですが何卒。

 と、涙を浮かべ彼たちの手を取った。

 側にいた、甥になったであろう彼と共に。


 敵は今、少しの沈黙に入った。

 力を溜めているようだった。


 敵は暫く沈黙していた。


 この隙に遠くから、伝令がやってきた。

 戦場を駆け回り手紙を回収しているという、家族、大切な人のための。

 多分これが、最後の手紙になるだろう、と声を出さず、只無言で、それを託した。

 目が共通の思いを述べていた。

 軽く頷くと伝令は戦場の彼方へ足早に消えていった。


 見送った後、あの手紙が本当の最後の希望だろう、滅んだとしても、あの方法があれば、いずれはまた、相まみえる事も出来るだろう、と。一縷の望みに掛けた。


 そして、最後の攻撃に移った。


 伝令は検閲を終えた手紙を素早く、箱に詰め、今まさに飛び立とうとする、最後の飛行船の中にそれをねじ込み、誰もいない操縦席に行き、自動航行の操作をした後、飛び降りた。

 そして、彼もまた、一矢報いるため戦場に戻っていった。


 舞い上がる飛行船は大いなる月の傍を通り、やがて下界の大地に辿り着くだろう。


 そして。


 その刹那最後の攻撃と防御が始まった。

 攻撃と防御が、この世界の終わりの咆哮が、すべてを飲み込んだ。


 残ったのは。


 砕けた、確かにそこにあった、小さき月。

 全てが終わり、小さき月は星屑の川となり、大いなる月と下界の大地の周りを囲むように周回し始めた。

 遺した者を見守るように。


 飛行船は、その川を泳ぎながら、下界の大地に向け進んでいった。


 最後の希望を届けに。

拙作にお付き合い下さり、誠にありがとうございました。また、彼等に相まみえることが出来ますよう、綴って参りたいと思います。取りあえずは一旦、物語はこれにて。

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