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転機2

 地響き。


 と共に。


 害獣が、森の奥で蠢いている。

森の奥が騒がしい。

 地響きと共に何かが、こちらに向かって来るのが、地響きの大きさと、間隔が徐々に大きく、そして短くなることで判断できた。


 森の間から飛び出したそれは、楕円形の形をした物体。


 それは、飛行船と呼ばれるものだった。


 かなりの、損傷が激しく、船体のあちらこちらの外板は捲れ、剥がれ落ち、ワイヤーはズタズタに切れていた。

 いきものならば瀕死の状態だろう。


 その飛行船が、森の向こう奥から、地響きをたててその船体を露にした。

地響きは、地面と接触しながら、その姿を見せ。

また、森の中に沈み、地響きの後、森の間からその姿の片鱗を見せ。

また、森のなかに消えた。

そして、地響き。


 地響き毎、森の中から涌き出るように、大小の鳥がとびたち、また、浮き上がりまた大地に激突。


 地響き。


 同じように、森の木々のあいだから、害獣が飛び出してきた。

幸運なことに、その間にある小川が堀の役目をして、直接、此方の畑に、踏み入れられる事は回避できた。


 ただ、丸太でつくった橋はその重量に堪えられず、折れて下流に流されてしまっていた。

 飛行船は、森の中を跳ねながら、明らかに、針路を此方に向けて、進んで来ているのがわかった。


 急ぎ運搬車の元にいき、母に、緊急を知らせ、荷物は破棄して、すぐ逃げるよう、促した。

 母は、運搬車に、荷物を載せている途中だった。

 僕はそんなことはいいからと、腕をつかんで走りだした。


 数回の地響きのあと、森から飛行船はその姿の全体を晒した。

 暫く、浮き、そして、畑の真ん中にその巨体を横たえ、そして、動かなくなった。


僕と母の至近距離に、大地を抉りながら着陸した。


僕は飛行船が大地を抉り、その破片から母を守るため、母の上に、覆い被さっていた。


 あの、熱でうなされて、この異世界に来た時のことを、思い出された。

 静かなこの世に、二人だけの呼吸音しか、聞こえない。

 そして、僕の下で、呼吸毎上下する肩、胸。

この世に本当に二人だけしかいないのでは。

と。

 あの時、鼻腔の奥に覚えている、母の香りがまた、記憶の底から覚ました。


土煙が落ち着き、飛行船の全体が分かった。


 それは巨大な楕円の浮遊装置と、下部に小さい操縦席があった。


 だが、飛行船は動かなくなって物音一つしなかった。

だれかが、乗って操縦しているはず、そう思い、息を殺して、待っていた。


 ひたすら時間が経過するだけだった。


 ようやく立ち上がり、飛行船の様子を見ながら、その場からゆっくり離れることにした、母に危害が及ばない様。


 明日、自分だけで改めて来ることにした。


 薬草だけは、しっかりかかえている母に気づいたのは、飛行船から遠く離れてからだった。


 歩きながら、抱えている薬草を見ていると、折角あなたが採って来たんですもの、と言って。ペロッと舌をだした。


 家にかえると、大きな姉と、小さい姉、従妹が揃って心配そうに、家の前で待っていた。


 僕たちの姿を認めると、駆け寄ってきて、口々に大丈夫だった、なにがあったの、荷物は、どうしたの、怪我はない、など、一斉に駆け寄り安否を気遣ってくれた。


拙作に目を通していただき、痛み入ります。誠にありがとうございます。

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