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この世界がボクから独立するまで  作者: 月 千颯(つき ちはや)
第一章 惑星カティアスの誕生
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第4話 「世界創造神も驚いた」

がんばって考えた草案が、ほんの少しの調整だけで世界創造神からOKが出ました!

あ~、本当に安心した。

普段、兄さま、姉さまたちの仕事の話って聞くことなかったから、とても新鮮だった。意外だったのが、カティアテリビス兄さまが、ソフィアテリビス兄さまとエムラカディア姉さまに、たくさん質問していたこと。今までも色々と聞いていたと思うのだけど、実際に計画書とか企画書とかを書いたり、細かいところを詰めたりし始めたら、違った問題とかが見えてきたりするのかもね。大人って大変だね。


ぼくね、結構発表会って得意、とまでは言えないけど、苦手ではないんだ。なぜなら、一番年が近いカティアテリビス兄さまですら2000年ほど年が離れているから、ぼくが何を騒いでも「はいはい」と頭なでなでされて、全く相手にしてもらえないわけ。だから、物心ついた時から、とにかくちゃんとした理由を言って、相手にしてもらえるよう、いつもがんばって訴えていたからね!自分の考えをちゃんと主張するすべを15歳という年齢で身に着けてしまったわけです。幸か不幸か・・・。

 夕食後、居間(パーラー)でルウィージェスは出来上がった草案を、メテス銀河創造神の父、時間と空間の神の母と、新惑星カティアスの創造神となる兄カティアテリビスに見せた。

 テーブルの上には食後の紅茶が並んでいる。淹れたてなので湯気が立っている。


 三人はルウィージェスから受け取った草案を見て、一様に驚いた。

「がんばってね~」と率直な感想を述べた兄カティアテリビス。

「ハハハ、これはまた…、驚いたな…」と半ば絶句したのは父ラティファルス。

「これは、想像以上だわ~」と半ば呆れたような反応を示したのは母ミナーヴァだ。

「はい、本当に、本当に、すっごく頑張りました!」ドヤるルウィージェス。

「なぜ、ここまでしっかりとした枠組みを作ったのか、聞いてもいいかい?」

父ラティファルスが聞いた。


 ルウィージェスは、ちょっと考えるような仕草をした。

 「この間の世界創造神と兄さまとの話の時に感じたのですが、」

いったんルウィージェスは言葉を切った。頭の中で文章を組み立てているような感じだ。

 「世界創造神は、『巨大な魔力を行使する魔道生物の創造』に重きを置いているように感じました。だから、初めに大きな力を持つ魔道生物の創造とその影響力について考えてみました。普通に考えて、大きな力を持つ者は、縦の繋がりにも横の繋がりにも大きな影響力を持っています。なので、不都合が発生してから縦横の繋がりに大きな影響を及ぼす大きな生物の追加は、まず不可能だと考えました。あまりにも影響が大き過ぎるから。ですが、自然淘汰(しぜんとうた)だったら大きな影響を及ぼさないと考えました。なので、巨大な影響力を持つ生物たちは(あらかじ)め用意しておいて、不都合(ふつごう)が生じたら自然消滅(しぜんしょうめつ)させてバランスを取る方法が良いと考えました。上をいじるより、下で辻褄(つじつま)合わせをする方が、バランスを崩さずに済むし、関与する力を最小限に抑えられると考えました。」

「ふむ、つまり、」今度は父ラティファルスがいったん言葉を切り、言葉を選びながら聞いた。

「ルウィージェスは、減らすことでバランスをとるために、(あらかじ)め大きな生物をここまできちっと考えた、と。」

「はい。」ルウィージェスは父の目を真っすぐ見て答えた。

 

 父ラティファルスは左肘をテーブルに置き、左手で顎を支えながら、テーブルの上に置いた草案用紙をもう一度じっくりと見た。

「まさか、そこまで考えた上でのこれだったとは。」

「ルウィージェスの指摘通り、大きな生命体の追加にはとても危険が伴います。過去の経験からも、そう結果が出ています。でもそれを、(おさな)いルウィージェスに世界創造神がはっきり言うとは思えないのだけど、」

母ミナーヴァが聞いた。

「はい、そういう説明はありませんでした。」

そう答えたのは兄カティアテリビスだ。

「これなら、もうちょっとだ詳細を聞いて、調整が必要な個所(かしょ)だけ直せば、もう世界創造神にお見せできるな。」

「ええ、問題ないと思います。」

父と母のやり取りを聞いたルウィージェスは、一気に肩の力を抜いて大きく息を吐いた。

「やったぁ~」

小さな独り言だったが、三人にはしっかりと聞こえてしまった。

「まだ終わっていないぞ」

コツンと兄カティアテリビスに小突かれた。


 翌日、世界創造神に準備ができた旨の連絡をしたのは父ラティファルスだった。全員、カティアテリビスとルウィージェスの二人が世界創造神の神域に(おもむ)くのだと思っていたのだが、なんと、世界創造神自らラティファルスの館へ足を運ぶと言ってきた。しかも、昼食を共にするとも。

 それを聞いて慌てたのはラティファルスの館に勤める料理人とメイドたちだった。


 ラティファルスは世界創造神の次男ではあるが、世界創造神が自身の神域から出ることは非常に稀な事で、ましてや、次男の館で食事を共にするというのは、前代未聞である。

 慌てたのは、館の使用人だけではなかった。ラティファルスの長男ソフィアテリビス、長女エムラカディア、次女ジュノカディア、三女アフロディア、次男カティアテリビスも同じく、服装などの身支度を専任のメイドたちと慌てて整え始めた。


 その中でルウィージェスのみがのんびりと構えていた。兄・姉たちと同様に、専任のメイドに身支度を手伝ってはもらっていたが、慌てるそぶりが全くなかった。

 「ルウィージェス様、世界創造神様がお越しになるというのに、落ち着いていらっしゃいますね。」

専属メイドのカリンが聞いた。


 カリンはルウィージェスが生まれた直後に専属メイドとして採用された、地球人で言うところの30歳くらいに見える、落ち着いた女性だ。神族属性(ぞくせい)従属神(じゅうぞくしん)であり、役割を持たない神族である。下級神の一つ下の属性だ。

 直接上級神の下に着くことが出来る従属神はほんの一握りであり、優秀でなければその任に着くことはできない。

 カリンは天界にある神族学校でも優秀な成績で10年間の専門科まで修め、強い神術を使うことが出来る、『将来下級神に昇格できる可能性を持つ』従属神。従属神の中のエリートだ。

 因みに、下級神以上の神族は神界にある学校に通う。神界には下級神未満の神族は入ることが出来ないのだ。

 ルウィージェスは上級神の中でも、世界創造神が直接その魂を創った特別な存在である。その専属メイドになれた事は、カリンにとって、とても名誉なことであり、喜びであった。

 しかも、ルウィージェスは上級神であり、世界創造神の孫という神族階級も最上級のうちの一人であるにも関わらず、カリンに対し、まるで姉に対するような態度で接してくれる。

 ルウィージェスとの日々はカリンにとって、とても楽しく、その任務に誇りを持っていた。

 「だってさ、」

 カリンの質問に対し、ルウィージェスは答えた。

 「ぼく、まだ15歳だよ。まだ、神族としての役割を務めているわけではないし、それ以前に、学校に通って「神とは」という勉強をしている最中だよ?世界創造神だって、「今後どういう神になる?」とか、そういった程度の質問しかできないし、それに対する答えだって「がんばります」としか言えないし。ぼくに関しては、カティアテリビス兄さまの新しい惑星についての件でお越しになることは分かっているし。兄さまや姉さまたちは、今までの成果などの報告があるから、それなりに準備とかがあるだろうけど、ぼく、草案以外に準備する事って、ないからね~。」

と笑いながら言った。

 その答えにカリンは思わず声を出して笑ってしまった。

「確かに、その通りですね!」

「でしょう?」

ルウィージェスも笑って答える。


 世界創造神がお見えになった、との連絡が入った。

 ラティファルスにとってルウィージェスは6人目の子供であるが、2兄3姉は中級神である。よって席順は、上級神で館の主である父ラティファルス、中級神だが主の妻である母ミナーヴァ、そして末っ子だが上級神であるルウィージェスとなる。その後ろに長男以下が続く。

 普段の席順は父、母の次に生まれた順番に座っている。しかし、今回は世界創造神がいる席となるため、礼節を重んじた順番となる。


 「父上、ようこそいらっしゃいました。」

 ラティファルスが挨拶をした。世界創造神の同席と言っても、身内だけの会食である。礼節は重んじるが、身内のみでの昼食会であるため、ラティファルスは世界創造神を「父」と呼んだ。それに対し世界創造神は笑みを浮かべて答えた。

 「なかなか、このような機会を得ることは難しい(ゆえ)、急で申し訳なかったが、ちょっと我が儘を言わせてもらったよ。」

 おそらくルウィージェスがいるからだろう。世界創造神は非常にきさくな挨拶をした。

 ラティファルスが執事にサインを送った。

 メイドたちが食前酒を注いでいく。ルウィージェスはまだ幼体なのでジュースだ。

 

 神族の成長は遅く、200歳頃で身体的には成人と認められるようになる。この頃になればお酒を飲むことはできるようにはなるが、社交の場など、多数が集まる場所での飲酒は、2000歳過ぎるまで禁止されている。

 神族にとって社交の場は非常に大切で、その場でアルコールに飲まれた挙句の「若気の至り」は通用しないのだ。そのため、身体的のみならず、精神的にも十分な経験値を積んだ「成人」となる2000歳頃まで、社交の場での飲酒は禁じられている。

 カティアテルビスは2000歳をちょっと超えたばかりなので、実は、こういう席での食前酒は初めてだった。ちょっと、いや、かなりわくわくしていた。カティアテルビスにとってこのような場での飲酒は、名実ともに大人の仲間入りの象徴だった。


 問題なく昼食会が終わり、食後のデザートと紅茶も終わりが近づいてきた。

 2兄と3姉は、明らかに緊張し始めていた。ルウィージェスは、残り少なくなったデザートを堪能(たんのう)していた。世界創造神は、あまりの対比的な状況に微笑む。

 

 世界創造神は、初めに2兄3姉の方に質問をした。早く緊張から解き放してあげようという世界創造神の気遣いだ。

 ルウィージェスにとって、普段聞くことのない兄、姉たちの仕事の話は非常に興味深いものだった。それに、世界創造神がカティアテルビスとルウィージェスに、兄・姉たちに遠慮なく質問するようにと勧めてくれたのもあり、まだ学生であるルウィージェスにとって、社会科の授業を受けている感じだった。


 そしてようやくルウィージェスの草案報告の番となった。

 詳細を話す前に、ラティファルスから簡単にルウィージェスの意図の説明がされた。

 世界創造神は、たった15歳の幼いルウィージェスが、そこまで考えて作成した草案であることに驚嘆(きょうたん)した。

「なんとあの説明だけで、私が大きな魔道生物の創造を重要視している事の理由にまで思い至ったと!」

これは驚愕(きょうがく)に値する、と思わず世界創造神はルウィージェスをまじまじと見つめた。

 世界創造神の視線に気づいたルウィージェスは「へへ」と思わず照れ笑い。


 草案立案者であるルウィージェスから直接説明を受けた世界創造神は、自身からの質問に対するルウィージェスのその堂々とした受け答えにも幾度なく驚嘆(きょうたん)し、ほとんど変更箇所なく納得し、草案を了承した。

 「ルウィージェス、この草案は見事でした。本当に驚きました。とても、がんばりましたね。」

口調もその表情も、すっかり好々爺(こうこうや)だ。


第4話は、天界と神界にある学校についてと、ルウィージェス専属のカリンの紹介の回です。世界創造神がルウィージェスに甘い理由にもちょっと触れています。

天界は従属神以下の神族が住まう世界です。神獣も、登場はまだまだ先になりますが、亜神や半神も、役割を果たした後に天界に移り住むことができます。

神界は下級神以上の役割を持つ神族が住まう世界です。

従属神と下級神は、それぞれ下級神と中級神に昇格できる可能性があります。ただし、生半可ではできません。本人の物凄い努力が必要です。残念ながら、中級神から上級神への昇格はありません。


次の第5話は、ルウィージェスが本格的に魔法の勉強を始める準備を始める回です。惑星創造とはどういうものか、という説明もあります。また、ルウィージェスの地上降臨に向けての準備の一環として、武系7柱が登場します。


第一章第5話は、8月15日(金)20:00公開予定です。


また、お会いできるのを楽しみにしております。


つき 千颯ちはや 拝

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