第3話 「魔素循環システムの草案」
世界創造神から言われた「魔素循環システムの構築」に関わる主な古代神と神獣・魔獣、そして妖精や精霊の役割などを考えました。疲れました。本当に疲れました。学校のテスト勉強ですら、こんなにがんばったことないくらい、本当に頑張りました。
1週間まるまる学校を休んで、両親や兄・姉たちに色々と聞いて、「生命の種一覧本」と「地上の鉱石と魔石辞典」を、何度も何度も読み直しながら配置する生命種を考えました。
世界創造神の話だと、どうやら適宜調整はできるみたいだから、骨子さえちゃんとしていればいいのかな、と思ったんだけど。調整はできると言っても、古代神レベルの変更は出来ないだろうから、神獣と上位魔獣に関しては、ものすごく慎重に考えました。はい。
あ、そうそう、既に創造神として忙しくしている長姉のエムラカディア姉さまが、世界樹を配置する場所はちゃんと考えた方が良いよ、とものすごく真剣な顔でアドバイスくれた。なんかあったのかな?いつか理由を聞いてみよう。
ルウィージェスはメイドから受け取った紙に草案をまとめ始めた。
世界創造神の話を思い出す。
魔素循環システム構築のために新しく創る生命種は、多くの魔素を消費し、かつ、古く濃縮した魔素さえも使える強く大きな生命種と、古く濃縮した魔素をも吸収し使える中等度の生命種と、新しい魔素を大量に産生する生命種だ。この新しい魔素を大量に産生する生命種は、濃縮化した魔素環境下でも生きられる生命力の強い生命種にする必要がある。
ルウィージェスは、自分に与えられている権能と権限を改めて見直す。
属性:魔導王・妖精王・精霊王
職権:魔道生命創造、全魔法の権能、全妖精術・全精霊術の権能、大地と地下鉱物の権限、大気と緑の権限、時間と空間の権限、錬金の権限
大地、地下鉱物、大気、緑への関与の権限が認められている。明らかに魔素循環システム構築を目的とした権限だ。権能でないのは、それらを管理・監視する「神」ではなく、あくまでもシステム構築の際に必要だからなのだろう。錬金の権限は、地上で魔道具などの製作が必要となることを前提としているのだろう。
ルウィージェスは知らないが、時間と空間の権限は、時間と空間の神でルウィージェスの母のミナーヴァが与えたものだ。この権限があると、転移などの移動距離が飛躍的に延びる事や保管機能を持つアイテムの作成が楽になる事と、それらを施行する際の魔力使用量が大幅に軽減されるため、ルウィージェスが地上で活動する際の助けになると思い、世界創造神から許可を貰い与えた権限だ。
『ふむ。大地と地下鉱物も循環システムに入れて良い、という事か。必ずしも生命体ではなくても良いのか。』
ルウィージェスはメイドに神界図書館の貸出申請書を持ってくるようお願いし、地上の鉱物や魔石に関する本の貸し出しの依頼と使用目的を書いて申請した。
ルウィージェスの家族には上級神と創造神がいるため、神界図書館の貸出申請書を複数枚常備している。この貸出申請書は神術で送ることができる。
そして数分後、1冊の分厚い本がルウィージェスの前に現れた。タイトルは「地上の鉱石と魔石辞典」。ずばりそのものだった。
「先ずは、巨大生命種から始めよう。」
ルウィージェスは魔素循環システム構築の草案作りを再開した。
濃縮した魔素も使用できる大きく強い生命種は「魔素適応も魔力転換能も高い」神獣・大型魔獣といった大きく強い生命種とする。これ一択だ。
古い魔素を吸収できる生命種は、やはり樹木草花やコケやシダ植物などの常緑性の植物が適切だろう。
大地に吸収された古い魔素や魔力を圧縮で閉じ込めて魔素石・魔石や鉱物を創造するのも良いだろう。
魔素石や魔石は大きく育つ樹木や草花のエネルギーになる。魔素石があれば、砂漠地帯など魔素が抜けやすい場所でも樹木が育つことができる。
『なぜぼくが「大地と地下鉱物の権限」を持っているのか謎だったけど、これを見越してだったのかな?』
この権限があるため地下鉱脈へ関与ができる。それに、世界創造神が言っていた、砂漠化による魔素の希薄化による精霊種の定着問題の解決の一助になるだろう。
しかも、時間と空間の権限もある。魔素や魔力の魔素石化や魔石化の機能に、圧縮と時間短縮システムそのものを組み込むことが出来る。
獣族の中には、魔素適応が低めでも魔力転換能がそれなりにある生命種もある。それらを含め、ある程度強い魔力を行使できる生命体の中に魔石という形で魔力蓄積能を与えれば、その生命体が死んだ後に放出される魔力の量を減らすことが出来る。漂う魔力は時間経過とともに魔素に戻るわけだから、無駄な放出魔力が減れば、それだけ古い魔素の蓄積を減らせる、というわけだ。
まぁ、その分溜め込んだ魔力を魔術に転換・行使できるようになるわけだから、ちょっと強めの魔獣になってしまうが、それは、その惑星に住む生命体にがんばってもらおう。
『兄さまや姉さまたちの話によれば、強い魔力が使える魔獣のお肉は美味しいらしいし。食糧事情にも貢献していると考えてもらおう、うん。』
自分が地上に行った時の楽しみにしよう、そう考えながら草案作成を続けた。
放置された魔石は、それを見つけた生命体が食しても良い。食された魔石に溜まる魔力は、食した生命体のエネルギーとなる。地に残っても、長い年月の間に魔素石化し、地中でゆっくりと融解していけば、これもまた、植物のエネルギーとなる。
魔素石が周りの鉱石成分と融解・結晶化してできた魔鉱石はドワーフが精製する際に、その精製を手伝う精霊が使う精霊術のエネルギー源とすればよい。
新しい魔素を産生する生命種も、やはり植物種が主になるだろう。あとは、精霊が古い魔素を使って精霊術を行使し、行使された精霊術から産生された魔素は、新しい魔素としよう。
基本的に妖精族は消費族とし、精霊族は産生族としよう。
あらかたの循環システムを考えたルウィージェスは、神獣と魔獣、妖精と精霊について考え始めた。
改めて世界創造神の話を思い出す。
大地を守護する古代神の神獣は強くなければならない、との話だった。しかも強い魔力と巨大な魔力を消費する能力を持つ魔道生物。その強さから古く濃縮した魔力も使える生命種。
世界創造神によれば、新惑星カティアスには主要4大陸が創られる。海水や雨風による浸食によって大小多数の島に分かれる予定らしいが、主要4大陸それぞれに1柱を置くようにとのことだった。
やはり主要4大陸には、それぞれの役割を与えるのが良いだろう。
北の大地:名を雪の大地とする。惑星の上下から海水の水位と温度の調節役を担う
雪の大地:北極側と南極側の大地:冬の役割:土の中で冬眠する種族の地:甲殻爬虫類族
南の大地:赤道周辺の大地:夏の役割:実りのための運びをする種族の地:翼の種族
東の大地:北極側からみて右側の大地:春の役割:目覚めを促す種族の地:気象の象徴種族
西の大地:北極側からみて左側の大地:秋の役割:実りの成熟と支配の種族の地:四つ足族
それぞれの役割を担う種族として、
雪の大地の守護神:古代竜 黒竜 種族の守護神:玄武 甲殻爬虫類・水棲種族
南の大地の守護神:古代竜 紅竜 種族の守護神:朱雀 翼の種族
東の大地の守護神:古代竜 水竜 種族の守護神:青龍 樹木草の種族
西の大地の守護神:古代竜 白竜 種族の守護神:白虎 獣の種族
基本的に大きな力を有する種族は「魔素消費」と「循環」の種族だ。
魔素循環に関与しない普通の生物の創生は創造神の役割だから、あくまでも守護神とそれぞれの眷属まで考えればよい。
神獣は、大地の守護神の古代竜4柱と、各種族の守護神、そして、各種の頂点としようか。
また神獣は、進化能を持つ魔獣が2000年の時を超えて神獣と進化することで亜神(神獣)となる、としよう。
各種の頂点として、
雪の大地:神獣とする各種の主
地の蛇族のトップ:ユルング族ワルタハンガ(陸蛇の女王)
海の蛇族トップ:レヴィアタン族エグレ(海蛇の女王)
蜘蛛族のトップ:アトラク=ナクア(蜘蛛の女王)
貝族のトップ:トリプロフズス(貝の王)
エビ族のトップ:ギガントロブスター(エビの王)
カニ族のトップ:カルキノス(カニの王)
南の大地:神獣とする各種の主
風の翼のトップ:フレースヴェルグ
水の翼のトップ:ボイトゥーテイ
火の翼のトップ:フェニックス
土の翼のトップ:アリカント
東・西の大地:神獣とする各種の主
風の神獣のトップ:ペガサス
水の神獣のトップ:ユニコーン
火の神獣のトップ:ラードーン
土の神獣のトップ:ズラトロク
光の神獣のトップ:カラドリウス
妖精族と精霊族:古い魔素の代謝を促し森を守る種族
妖精族:姿が見え、強い魔素親和性と大きな魔力を有し、強い魔術を使う種族。それぞれに仲の良い精霊族があり、調和を図っている。
エルフ:世界樹をはじめとする古い魔素を吸収しエネルギーとし、新しい魔素を産生する植物を守る種族。特に強い魔素適応と魔力転換能を持ち、800年~2000年程度まで生きる長寿種をハイエルフとする。
エルフの王:オーペロン
木の精霊ドリュアスと木の精ドライアドと仲が良い
森の精霊エントと仲が良い
水の精霊ウンディーネと水の精ルサールカと仲が良い
風の精霊シルフと風の精スプライト(草の精霊でもある)と仲が良い
空気の精霊エアリアルと空気の精アリエルと仲が良い
草原の妖精や森の精霊などはエルフの眷属だったり被加護種だったりする
ドワーフ:魔素石や鉱石・魔鉱石を加工する際に、それらに閉じ込められた魔素を加工エネルギーとして使用することで魔素を循環させる。長寿種。
ドワーフの王:ドゥーリン
妖精ノッカーを眷属に持つ。
小人の精霊コボルトと仲が良い
妖精コブライナと仲が良い
土の精霊ノームと土の精ピグミーと仲が良い
火の精霊サラマンダーと火の精ペリと仲が良い
人間とドワーフのハーフはウリム族
アイレン:音楽の妖精。エルフ同様、世界樹をはじめとする古い魔素を吸収しエネルギーとし、新しい魔素を産生する植物を守る種族。特に強い魔素適応と魔力転換能を持ち、アイレンが奏でる音自体が古い魔素を分解し、新しい魔素を生み出す。長寿種。
風の精霊族と仲が良い
水の精霊族と仲が良い
小人の妖精ピクシー族と仲が良い
妖精サテュロスと仲が良い
妖精エルフ族と仲が良い
妖精リャナンシーと仲が良い
そして、魔道生物で2000年の時を生きたら神獣に進化できる生命種
フェンリル:氷雪の魔狼:氷の上位精霊フェンリルは眷属
フェニックス:再生・復活の象徴:火の上位精霊フェニックスは眷属
クラーケン:海の管理者:水の上位精霊クラーケンは眷属
ユルング(陸蛇の女王):虹の蛇、雨雲と関係の深い豊饒の神としての象徴:水の精霊の方のメリュジーヌは眷属で、竜の妖精メリュジーヌとは仲が良い
レヴィアタン(海蛇の女王):魔獣の時はリヴァイアサン、神獣になってレヴィアタンとなる:海の管理者:クラーケンとはなるべく異なる領域を管理するようお互いに注意している。
その他、東西南北の大地の神獣で、光の神獣のトップ:カラドリウス(回復の神鳥)以外の各大地の神獣たちの王や女王以外は2000歳未満では魔獣。カラドリウス(回復の神鳥)は神鳥のみ。
4本足のドラゴン種は一部を除いて、ほぼ神獣に進化できる。1000年以上でエルダー種となり、2000年以上で神獣となり、古代竜種を名乗れる。ただし、古代竜という名称を名乗れるのは、現役が引退しその座を引き継いだ個体のみとする。
「ふぅ~」ルウィージェスは大きく息を吐いた。世界創造神には数日後に、と言ったが、既に7日が経っている。もちろん、時間がかかっている旨の連絡は入れてある。
『生命の種一覧本』には億単位もの生命種が掲載されていた。それぞれの能力も豊かで特徴があるため、ある程度絞って検索したとはいえ、どの生命種をトップに持ってくるか、本当に悩んだ。
基本的には空、大地、海などの水場の3か所だ。しかし、大地には東西南北が存在するし、四大元素にはそれぞれの役割がある。それらを加味したうえでの魔素循環システムとなると、関わる生命種は多岐に渡る。
途中で両親や兄姉などに質問しながらまとめてみたが、神界の学校(存在する!現役の学生だ!)の勉強でも、ここまで集中して頑張ったことはなかった。両親が学校での学びよりも創造神の手伝いを優先してくれたのは助かった。神としての学びも並行して行っていたら、頭が沸騰してストレスで暴れていただろう。
第3話は、この物語の世界観の骨子の説明です。大陸の守護古代神、種の古代神、神獣と魔獣と、色々と出てくる予定ではありますが、すべてが出てくる予定はありません。
ちょこっと話の流れで名前だけが出てくることはあるかもしれませんが、その都度、説明セリフなりを入れる予定です。
次の第4話は、ルウィージェスの草案発表の回となります。ここでルウィージェスの専属メイドが登場します。このメイドは今後、ルウィージェスと共に地上に行き、様々なトラブルも一緒に経験し、新惑星カティアスの発展に大きく貢献する事になります。このメイドの紹介の回でもあります。
7月18日(金)20:00公開予定です。
また、お会いできるのを楽しみにしております。
月 千颯