第1話「魔導王・妖精王・精霊王の任務」
小学校を卒業した次の日の朝、ぼくの部屋から見える外の景色が激変していた。
キッチンでくつろいでいた両親の説明によると、ぼくの本当の名はルウィージェスで、人間ではなく神族で、訳あって惑星カティアスという銀河系も異なる惑星に「戻ってきた」という。
そして、ルウィージェス(ぼく)の魂年齢は2万年を超えており、今いる惑星カティアスの創造に深く関わっているのだが、惑星創造の時にある事件が起こり、その事件にぼくが巻き込まれてしまったという。
るい(ぼく)がルウィージェスとして記憶がないのは、惑星カティアス創造の際に起こった事件が原因であり、その解決にはぼくの神族としての役割がカギとなっているという。
両親の説明は2万年以上前の、惑星カティアス創造にぼくが関わる事になった理由から始まった。
約2万年前の話。
蘭るい、もとい、ルウィージェスがまだ体を失う前の事。
2000歳年上の兄、カティアテリビスと一緒にルウィージェスは世界創造神の神域にいた。
世界創造神は地球のある銀河を含め、この太陽を中心とした複数の銀河系を創造した絶対神で、家系図で言えば、ルウィージェスの祖父に当たる。
この世界創造神の神域は絶対神域のため、たとえ家族であっても世界創造神の許可が下りない限りは立ち入ることが出来ない場所だ。
もちろんドレスコードもある。中世ヨーロッパのチューニックやブリオーのような形に、上半身をインドのサリーのように、長い布を重ねたり巻き付けたりして、ボリュームを出すのが一般的で、女性の場合はインドのヘレンガのようにレースでボリュームがあるような形が多い。ブリオーは足首までの長さがある。
この日の二人は青系と緑系に統一していた。
ルウィージェスはあざやかな青紫系のメディウムブルーのシェーンズ(インナー)で袖口と襟元は金と銀の糸で細かい刺繡が入っており、その上に深い青紫系のミッドナイトブルーのブリオーを羽織っている。細帯はシェーンズの袖口と襟元と同じ金銀糸で刺繍が入っており、素材はすべてミスリル加工された特殊な絹が使われているため、とても軽く柔らかく、風になびく。頭にはフェロニエールのように頭に巻き付けるような装飾品があり、ルウィージェスのものは後頭部の方から黒蝶真珠、白蝶真珠、ゴールデンパールでつくられており、額のトップには大きなオレンジカラーのメロパール。見事な波状の火焔模様が見られる。ルウィージェスの髪の色は青紫系のアリスブルーにところどころ軽い緑系のアクアマリンのメッシュが入っている。
兄のカティアテリビスは、基本服装はルウィージェスと同じだが、色はダークグリーンのシェーンズにシーグリーンのブオリー風に長い布を複数枚重ねて厚みを出している。髪の色はやや灰色の青紫系のラベンダーにゴールドのメッシュが入っており、頭の装飾品は金とプラチナを基本としたフロントレット。トップはグリーンダイアモンドだ。
二人ともマントは羽織っていない。
創造神の属性を持つ神々は、2000歳を過ぎると自分で惑星を創造することが出来るようになる。そして今日、兄カティアテリビスは念願の惑星創造の許可証を世界創造神から受け取るために神域に来ていた。
ルウィージェスはこの時まだ15歳。なぜか世界創造神からカティアテリビスと一緒に来るように言われていた。
二人は世界創造神の神域の前にそびえ立つ大きな白い扉の前に立っていた。
「いいかルウィージェス、お前は世界創造神様が特別に作った魂の持ち主だから、私たちとは立場が違う。けど、粗相のないように気をつけろよ。」
神族にとって2000年という単位は「数えるほどの年数」でしかない。そのため、カティアテリビスとルウィージェスは「とても年が近い」兄弟であり、万単位で年が離れる他の兄姉よりずっと仲が良かった。
「わかってるよ、」
ルウィージェスは頬を膨らませちょっと不貞腐れたように答えた。
「絶対に世界創造神様を怒らせるようなこと、するなよ!」
「兄さま、しつこい!」
その時、扉が開いて中から5人の従者が出てきた。全員白を基調にした燕尾服みたいなものの上に銀色のローブを羽織っていた。そのうち1人だけ金色で織られた細いショールをさらにその上からかけている。
そのリーダーらしき人が一歩前に出た。
「カティアテリビス様、ルウィージェス様、お待ちしておりました。こちらへどうぞ。」
扉の向こうには長い通路があった。通路の両側に赤く染まったコキアみたいな植物が植えられ、その先は雲海だった。
長い通路の先にはまた大きな扉があった。その扉の前で4人の従者は止まり、リーダーらしき人のみが二人を連れて扉の奥へと進んだ。
2つ目の扉の向こうは、非常に天井が高い建物の中で、やはり白を基調としていて、城や教会で見るような長い廊下が続いており、両脇には太い柱が等間隔で並んでいた。
そして扉の前で止まった。やはり白い扉だった。しかし、今度の扉は他の二つと比べると少しこぢんまりとしていて、普通に片手で開けられそうな感じだ。
リーダーらしき人がドアをノックする。
「カティアテリビス様、ルウィージェス様をお連れいたしました。」
すると扉が内側から開き、執事と思われる男性が扉をさらに大きく開いた。
「よく来たね」
中から男性の声が聞こえた。
リーダーらしき人は中には入らず、扉は閉じられた。
「世界創造神様、カティアテリビスとルウィージェスでございます。お待たせいたしました。」
カティアテリビスが片膝をつき頭を下げ挨拶した。ルウィージェスも慌てて同じく挨拶をした。
「久しぶりだね、まぁ、座りなさい。」
二人は世界創造神と向かい合うように執事に勧められたソファに座った。
執事が紅茶をふるまう。
「カティアテリビス、新しい惑星の名前はもう決めたのかい?」
「はい、」
カティアテリビスは姿勢を正した。
「他の創造神に見習い、自分の名前の一部を惑星の名前にすることとしました。『カティアス』とします。」
『そうなんだ』、ルウィージェスは出された紅茶を飲みながら二人の会話を聞いていた。
世界創造神は、少し襟元が広めでVの字に切り目の入った膝下に届くブリオーを着ていた。襟元、袖口、足元からシェーンズが見えており、ルウィージェスが想像していたよりラフな恰好をしていた。色は、シェーンズはフローラルホワイト、ブリオーはゴールドとオレンジを基調に編み込まれ、襟元、袖口は金と赤色の糸で刺繍がなされており、頭部はルウィージェスと同じフェロニエール風で、使用されているのはピンクダイアモンドとオレンジダイアモンドで、トップには大きなレッドダイアモンド。髪は地球で見られる金髪に光の加減でちょっと緑っぽく見える濃い金髪だ。
世界創造神は、「新しい話はないんだがね、」と言いながら基本的な世界観をカティアテリビスに説明を始めた。
すなわち、新しい惑星には北極から南極に向かって長い大地を計4つ創る。4大陸は時間の経過とともに海に侵食され、多くの小さな島と複数の中等度の大陸と大きめな4大陸となる。魔法が使える世界である。
そして、
「ルウィージェス、」と急に世界創造神がルウィージェスへ話を振った。ルウィージェスは他人事のように話を聞いていたためかなり慌ててしまった。
「は、はい!」
手にしていたカップを慌ててテーブルの上に置いた。
「ルウィージェス、今回そなたには新しい惑星に行って『魔導士・妖精王・精霊王』として仕事をして欲しい」
と言った。
この言葉には二人とも驚く。
「あ、あの、」ルウィージェスが戸惑いながら世界創造神に聞いた。
「ぼく、まだ15歳ですが。。。?」
世界創造神は「そうだね、」と幼子を相手するように優しく話を続けた。
「我々神族は神術しか使えないのだが、そなたは神術以外に魔術が使える唯一の神なのは知っているね?」
「はい」ルウィージェスは答えた。
「その魔術なのだが、神術なら神域で鍛えることが出来るが、魔術は魔素があるところでのみ鍛えることが出来る。つまり、神界では魔術を学ぶことも鍛えることも成長させることもできないのだよ。」
初耳だった。てっきり体の成長とともに魔術も成長すると思っていたのだ。
「君の魔導王としての本当の役割は、魔素の新陳代謝。」
世界創造神は一度言葉を切った。
ルウィージェスの周りに複数の大きなクエスチョンマークが見えそうな反応に思わず吹き出しそうになった。
切り目の良い所で終わらせようとしたら、他のエピソードより短くなってしまいました。すみません。
2万年以上前の、惑星カティアス創造の経緯のエピソードスタートです。
服装や建物のイメージは、ギリシャ神話や中世を基本にしています。
昔から頭の中で物語を作ることでストレス発散しており、この世界観は私が小学生の頃からあったものです。当時は日本の神話が好きだったので、日本創造の物語の影響を大きく受け、日本の妖怪ものにはまり、その後はRPGゲームの誕生で魔法の世界にはまり、某ゲームの魔物合成に夢中になり、ある時図書館でギリシャ神話と出会い、様々な神話の存在を知り、どんどん自分の頭の中の物語の世界に混ぜていきました。
その結果、非常に複雑になってしまったので、現在、簡素化を図っております。
和洋様々な神話の要素が入り込んだ世界観になっていますが、あまり突っ込まずにさらりと流し読んでいただければ幸いです。
しばらくは2万年前の惑星カティアス創造事件のエピソードが続きます。
お付き合いくださいませ。