地球人じゃなかった!
初めまして。月 千颯です。
これは、仕事のストレスから現実逃避に書き始めた物語です。
簡単に説明すると、世界の矯正、修正、そして、世直しです。
主人公は神族で魔素・魔術の神で、訳あって地球で育ち、地球の化学・科学の知識を魔術の発展に活かしていきます。
世界の矯正が必要になった諸悪の根源を、地球で得た化学・科学の知識で大幅にレベルアップさせた魔術と神術で退治し、世界を独立させるまでを書く予定です。
メインテーマは、全能の神はいないし、神だって常に自身のレベルアップを図らないと管理する惑星の発展に繋がらない、という事です。
くどい内容もあるかもしれませんが、気長に付き合って頂ければ幸いです。
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神族で、魔術を扱う生命体の頂点の神『魔導王・妖精王・精霊王』のルウィージェスは、過去に2度、その体を失っている。3度目の体は、世界創造神らの考えから、魔法のない世界、地球で生まれ育つ事になった。神族である記憶を封印し、蘭るいという名で地球人として育ったルウィージェスだが、訳あって小学校卒業翌日、惑星カティアスで『魔導王・妖精王・精霊王』として突然関与する事になった。その為に、神族としての記憶の封印の解除はもちろん、魔術の神としての役割を果たさなければならないが、3度目の体は魔術操作を知らないため、まず、魔術操作を会得する事から始めなければならなかった。
学びと仕事を同時進行する羽目になった主人公が問題を解決しながら成長していく魔法ファンタジー物語です。
目覚まし時計の音で目を覚ます。童謡おもちゃのチャチャチャのメロディーだ。『なぜ、これにしたんだっけ?』と思いながらも、なぜか二度寝する気になれずゆっくりと目を開けた。カーテンから零れる太陽の光で今日の天気を知る。いつもより鳥の鳴き声が多く聞こえるような気がしたが、天気が良いからかな、と気に留めなかった。
ベッドから立ち上がってゆっくりと背伸びをする。机の上には6年間使ったランドセルと卒業証書と、「蘭るい」と書かれた名札がきちんと並べてある。昨日小学校を卒業したのだ。
そうだ。今日から、期間は短いが春休みなのだ。宿題が全くない休み。
既にメイドによって準備されていた服に着替えながら財布の中身を確認。せっかく中学生になるのだから服を新調しよう、と考えながらカーテンを開けた。
「・・・・・え?・・・・・はぁ??・・・・え、いや、はぁ??? はぁ~???」
慌ててカーテンを閉め、今、自分が見た光景を思います。
カーテンを開けた先に見えたのは、広大なガーデンだった。噴水が見えたような気がする。それこそ、どこかの植物園とか、洋画でみる貴族の館の広い庭とか、そういう感じのガーデン・・・に見えた。
確かに、るいの家は日本の家屋としては大きい。日本では珍しくメイドも複数いる。庭も広い。しかし、塀の奥には電信柱が均等に並んだ、住宅地としては広めの道があったし、近所の屋根だって見えていた。と、そこまで思い出したところで、気づいた。
「玄関の門、あった?」
カーテンの隙間からそっと外を覗いてみた。
「・・・・門、見えない」
もう一度ちゃんとカーテンを開けてみた。
イングリッシュガーデンのように、等間隔で区画が設けられ、明らかに人の手で手入れされている広大なガーデンが見えた。大きな噴水が一つ、小さな噴水が三つ見えた。門は見えない。道も見えない。電柱もない。近所の家が見えない。
「・・・・・父さま~、母さま~!!!!!!!!」
ほとんど悲鳴のような声で叫びながら階段を駆け下りた。両親はキッチンにいた。
「父さま、母さま!!!!!!!」
「はい。」母が静かに答えた。
「えーと、あのーーーーー」
「はい。」優雅に紅茶を飲みながら母が静かに答えた。
「まぁ、座れ。」父がコーヒーを飲みながらるいに着席を勧めた。
おとなしく椅子に座り、母が入れたミルクティーを飲み、呼吸を整えようとしたが、失敗した。
「父さま、母さま!外が、外が。。。。」
母はイチゴをるいに出した。
おとなしくイチゴを一口食べた。ミルクティーも飲んだ。
「ふぅ~」
るいは落ち着こうと努力した。しかし、どう説明したらよいのか、全く思考がまとまらない。
両親はるいが落ち着くのを静かに待っていた。
「父さま、母さま、えっと。。。。庭が大変なことになっています。」
「そうですね。」母は笑みを絶やさず、聞いてきた。
「落ち着きましたか?」
この言葉で逆にるいは落ち着きを取り戻した。
「父さまと母さまは、なぜそんなに落ち着いているの?」
ようやく違和感に気づいた。そう、両親は全く驚いていない。慌ててもいない。るいが驚いている事に対しても。その答えは一つだ。両親は知っているのだ。
「るい、」黙ってコーヒーを飲んでいたそのカップを置いた。
「るい、ここはね、地球ではないんだよ。」
あまりに意外過ぎる父の言葉にるいの思考はまた止まる。
「・・・・・。それは、日本じゃない、とかというレベルではなく?」
「そう、地球から遠く離れた、地球とは異なる銀河系、メテス銀河系にある惑星カティアスというところだよ。」
るいの思考は完全に再起動を拒否した。
「えと・・・・。あの・・・・、」
母はるいのカップが空になっているのに気づき、新しいコップに水を入れた。
るいはその水を飲んだ。すごく喉が渇いているのか、一気に飲み干した。
「宇宙旅行ってできるようになってたの?」
と言ったところで、自分が自室で目を覚ましたことを思い出した。
「あ、違う。・・・・え?」
母が会話を続けた。
「もともと、この屋敷の敷地を地球につなげていただけだから、別に移動はしていないわよ。」
母の説明は動こうとがんばるるいの思考を再度止めるだけにしかならなかった。
父が言った。
「とりあえず、先に朝食にしようか。るいも起きてきたことだし。」
その言葉に、自分も空腹だったことに気づいた。
朝食後、ようやく落ち着いて話を聞ける状態になったるいは両親に聞いた。
「とりあえず、小学校を卒業したばかりのぼくにもわかるように説明をお願いいたします。」
父が続けた。
「まず、るい、君は地球人じゃないよ。」
「え?・・・え??・・・・それじゃ、ぼくは宇宙人だったの?!」
「ん~、半分当たり、半分外れ」と答えたのは母。
「君は、人間じゃないんだよ。」
るいは思考そのものを手放した。
「君は神族だよ。」
「しんぞく・・・・親族?誰の?」
「いや、親族ではなく、神の家族、神族。君の属性は『魔導王・妖精王・精霊王』で、天上界の上級神だよ。」
るいは無類の異世界ラノベ好きで、小遣いの大半をネットラノベ購入に費やしていた。だから、父の言った単語は知っていたし意味も知っていた。新しい単語は何一つない。
しかし、何一つ理解できなかった。
るいは父の顔をじっと見ていた。言葉も出ないし、リアクションも取れない。頭の中が真っ白ってこういう状態なのか、と思うほど、全くもって父の言葉が理解できなかった。
ようやく出てきた言葉はこれだった。
「父さまと母さまは、人間?ぼくは父さまと母さまの子?」
最後の方はちょっと涙声だ。
父はるいの隣に椅子を動かし、頭をなでながら言った。
「私たちは全員神族。私の本当の名前は『ラティスファルス』、この惑星カティアスが存在する銀河、『メテス銀河』の創造神。」
「私は、」母は続けた。
「本当の名前は『ミナーヴァ』、時間と空間の神であり、同時に豊穣・医学・錬金の神でもある。そしてね、」さらに母が続けた。
「るい、あなたの本当の名前はルウィージェス。さっきお父様が言った通り『魔導王、妖精王、精霊王』で、全魔法、全妖精術、全精霊術を司る神なの。」
父が続けた。「そして、日本にいた時に名乗っていた『蘭』という苗字は、私の兄で地球創造神が地球に住む際に作ったもので、兄の奥さん、私の義姉が好きだった花、蘭がもとになっているそうだ。なので、私たちも、蘭の英語リリーを地上に住むときに使っている。このカティアスでは『リリーカティアス』という苗字を使っているんだよ。」
るいの思考は復活した。異世界ラノベを読みまくった脳は「魔法・妖精術・精霊術」という単語に反応し、即座に再起動し、アドレナリンパワーで脳血流を回復させた。
「魔法!?今、魔法って言った?!」
思わずという感じで両親が噴出した。
「そこに反応するか、」と父。
「るいが大好きな本と同く、魔法が使えて冒険者がいて、魔法に依存し過ぎて、技術の発展が遅れた世界ですよ。」
破顔したるいの笑顔を見ながら母が答えた。
そして、るい、改め、ルウィージェスが地球で育った理由をメテス銀河創造神の父と、時間と空間の神の母によって説明された。
それは、ルウィージェスの魂年齢が2万年を超えていること、ルウィージェスは創造神ではないが、惑星カティアス創造に深く関わっており、るいがルウィージェスとして記憶がないのは、惑星カティアス創造の際に起こった事件が始まりだった、という壮大な話だった。
プロローグです。本筋は、この時代の物語となります。
ただ、なぜ神族で魔術の神が、魔術のない地球で育つことになったか、という説明が必要なために、次の章からは2万年前の話から始まります。
第1章は惑星カティアス創造の時の事件偏
第2章は王国建設の事件偏
第3章から本筋となります。
気長にお付き合いくださると嬉しいです。よろしくお願いいたします。