『感想』と『事実』 〜 牛の首企画について今さらながら思う 〜
先に書いた『個人企画に参加することのメリット』というエッセイに、『おもしろそうな企画を探す便利な方法があったら教えてください』というお言葉をいただきました。
そんなものがないから個人企画は探しにくく、その手助けのひとつになればと思って先のエッセイを書いたとお答えしましたが、送信してからふと思い出したことがありました。
もう一昨年になりますが、『牛の首企画』というのがありました。
タイトルを『牛の首』で縛るホラーの企画で、ランキングに『牛の首』という名の作品がずらりと並ぶことになりました。『牛之頸』とか『Ushi no kubi』とかでも良いルールでしたが、とにかく『うしのくび』という作品がランキングにずらりと並んだのです。
それを「気持ち悪い」「不快だ」と仰る方がどうやら大勢いらっしゃったようです。
ただ、あれには物凄いプロモーション効果があったのは事実です。注目を集め、よくよく見れば「ああ、こういう個人企画をやってるのか」とわかるものでした。
個人企画はとにかく開催してもプロモーションが広く行き渡らず、ゆえに『仲間内の交流だろ』とか言われてしまいがちなものです。
あの『牛の首』は、そういう意味において、見事なプロモーション方法をとった企画だったと私は思います。
注目を集め、そういう企画をやっているのだということを、不特定多数に広く知らしめました。
それは『事実』です。
それを見て、「わあ、気持ち悪い」と思うのは自由です。私のように「面白い!」「面白そう!」と思うのも自由でしょう。
ただし、それらは『感想』です。
牛の首企画に、ふつうの個人企画ではあり得ないほどの宣伝能力があったのは『事実』なのです。
それでもまだ「内輪の交流目的キモい」とか仰る方が目につきました。
あの企画は『誰でも参加OK』で、しかも企画の存在を広く知らしめることに成功していたのに、そういう『事実をひん曲げた感想』を仰る方が大勢いらっしゃったように見えました。
「ランキングが牛の首企画参加作品で占拠されてしまうのがけしからん」みたいな意見もあったように思います。
特にそれは公式の『夏のホラー企画』と開催時期がある程度かぶったため、公式企画参加作品が埋もれるという苦情だったように記憶しています。
牛の首企画のほうが夏のホラー企画より面白かっただけなのでは? と思います。
ただ、個人企画のほうが、特にそれが参加者同士で読み合い、面白かったらポイントをつけてもいいルールなら、確かにそちらのほうがポイントがつきやすいかもとは思います。
それもたぶん、事実です。それが公式ルールに違反していないのも事実です。そのことに関してどう思うかになると、感想です。私は『牛の首企画のほうが面白く、プロモーション能力もあったんだ』と思いますが、もちろんこれは私の感想です。実際のところはわかりません。
なんでもかんでも『それってあなたの感想ですよね?』で簡単に話を片付けようとする人、結構いらっしゃるように思います。
個人企画主が『誰でも参加OK』にして、広く参加を募っているのは事実です。少なくとも私はそうです。仲間内の交流が目的なのではありません。新しい作者さんを知りたいのです。読ませてほしいのです。
そのために先のエッセイを書く等、精一杯企画のプロモーションをしております。全然知らないユーザーさんが参加を表明してくださったら\(^o^)/の顔文字つきで歓迎しております。
それに対して『仲間内の交流目的だ』というのは事実でしょうか?
事実だったとして、それならなぜ、『牛の首企画』があれほどのプロモーション能力を発揮してもそれを言い続けるのでしょうか?
ご自分の感想をさも『正しい事実』のように言わないでください。
それとも広く不特定多数に企画の存在が知れ渡り、誰でも参加OKとしているのを見ても、『自分はそういうの嫌いだから』と、そして『どうせお互いの感想は食い違うものだから話し合ってもしょうがない』とか仰るのでしょうか? いいえ、何べんも言いますが、こちらは『事実』を言ってるんです。
まずは事実を認識し、ご自分の好き・嫌いに基づいたその言説のみが『感想』だということに気づいてほしくて、そういう意味でも私は先のエッセイを書きました。
小説家になろうという場所は、いかにも日本人的というか、『出る杭は打たれる』風潮があるように私は思っています。
目立ったらダメ。みんな大人しく、プロモーションはタイトルとあらすじ、あとXぐらいでしかやっちゃダメ。
そうしておいて、その中から優れた作品がランキングに上がれるんだよ。
そんなわけないと思います。
まずは読まれなければ話になりません。埋もれた名作なんていくらでもあるはずです。それは作品が悪いからではなく、プロモーションをしていないからではないでしょうか?
私はそのプロモーションの場を提供したいだけです。
とりあえずなんでもかんでもご自分の好き・嫌いを守って、『それってあなたの感想ですよね?』で簡単に済ませるのはやめましょう。
きちんと、事実を見てください。