第7話
幼馴染み2人のお見舞いから数日後、ルーファスとステラがまた邸に来て約束通り遊ぶ事になった。
「いい天気!やっとベッドから抜け出せた!」
久しぶりに外に出れた事を喜び大きく背伸びをした。
長いベッド生活に飽き飽きしており今にも走り出しそうな気分を抑えて後ろを振り返る。
そんな様子を見ていたルーファスが笑いながら
「嬉しそうだね。今日はなにして遊ぼうか」
セシリアに聞くと少し悩み、そうだ と言いながら邸の方を指して
「今日は護衛騎士達が裏の訓練場で訓練してるんだけど見てみたい!」
ご令嬢としてはあまりにも粗野な提案に幼馴染み2人とお付の侍女もビックリしていた。セシリア専属侍女のハンナは またこのお嬢様は と内心思っていた。
「セシリアさん、なんで訓練を見たいんですの?」
ステラが聞くとセシリアはニコニコしてこう答えた
「いつも私達を守ってくれている人達ですもの。どういう風に鍛えてるのか気になってしまって」
護衛騎士達はそれが仕事だからと蔑ろにするのではなく、感謝の意も込めて見てみたいと続けた。
ハンナはふぅとひと息つくと 見るだけですからね と言うとセシリアは顔をぱぁと明るくしてお礼をいい、ルーファスとステラの手を取って訓練場に向かった。
訓練場に着くと30人くらいの騎士達が対人訓練を行っていた。活気のある雰囲気にセシリアはワクワクしていた。
訓練を指揮していた騎士がセシリア一行に気が付くと近付いて来た。
「お嬢様方、こんな場所へどうかされましたか?」
近付いて来たのはこの騎士達を纏める隊長のオルターだった。
見学に来た旨を伝えるとオルターは了承をした。
騎士の訓練風景を見てると夢で見た女性騎士を思い出していると やってみる?手伝うよ と声が聞こえはっと我に返るが明らかに周りに居る人達とは違う声だった。
周りを見ると1本の木剣が目について近付き手に取る。
その瞬間、夢に見た女性騎士の姿を鮮明にイメージ出来る。
そのまま木剣を2,3回振る。その姿にハンナははぁと大きい溜息をついてしまった。
「ねぇオルター、端にいる見習い騎士の中で誰が1番強い?」
オルターは少し考えると1人を指さした。
「あのひと周り背の高いやつですな。体躯も筋力も他の見習い騎士よりありますので。」
そう答えるとセシリアは不思議そうな顔で 剣術ではなくて? と聞くとオルターは笑いながら答える
「剣術も大事ですが、体が基本なのでまずは体力や筋力などの部分も大事なんですよ」
そうなんだ と答えると先程、指を差された見習い騎士を見る。
「オルター、あの見習いと打ち合いをしたいのですが」
セシリアの一言にハンナやルーファスとステラはともかくオルターもビックリした。
「お嬢様!さすがにそれは ーーーヒュン
ハンナが制止しようとしたらセシリアが持ってる木剣をハンナに突き付けた 見てなさい と言うセシリアの眼は淡い紫の瞳は少し変わっていた。ハンナは驚きそれ以上言えなかった。
オルターは少し考えて、見習い騎士ではなく一般の騎士との打ち合いはどうかと提案した。
見習い騎士より分別はあるし、怪我などさせないだろうという思惑もあった。
「いいですよ。どの方が相手になって下さるのかしら?」
笑みを浮かべながら前に出る。周りの騎士達も訓練の手を止めてその様子をみようと集まって来た。
「では、セシリアお嬢様のお相手はこのバースが致します。」
そう言うと1人の青年が木剣を持って目の前に立つ。
バースはこの騎士団の副隊長であった。
ハンナを除いてセシリア達はオルター以外の騎士達は良く知らない。よってセシリアはただの一般騎士だと思っていた。
「よろしくお願い致します。勝敗はどうなれば決まるの?」
「勝敗は剣が手から離れた場合と有効打が認められた時点で終了となります。」
オルターが勝敗条件を説明し、両者共に理解をした顔をしたのでオルターが少し下がり 始め! と大きく宣言をした。
その掛け声と同時にバースが大きく踏み込み袈裟斬りを繰り出す。
その様子をみてセシリアは体躯の重要性を認識した。
繰り出された攻撃を見てまだ自分の攻撃が届かないのに相手は攻撃してくる。
咄嗟に剣でガードしようとした瞬間 違うよ。こうやるのよ またあの声だ。と認識するよりも身体が反応し、受ける動きから受け流す動きに変わる。そのまま相手の勢いを殺さず、木剣同士を滑らせるように振り抜きと同時に大きく踏み込んだ。
「え?」
とバースが小さくこぼすと次の瞬間には、攻撃を受け流したセシリアの木剣がバースの首元に当てられた。
そこまで! オルターが終了の合図を出す。
何が起きたか分からない。それは周りの騎士達どころかセシリア本人も分かっていなかった。






