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第四十三話 全ては単なる偶然です。

 

 朝市を思い切り満喫して散財した後はガイとの約束通り美味しいお酒を商店街で手に入れ、一度ホテルに戻ることにした。

 結局嵩張るような物はそんなにないけれど美味しいと評判の店が朝市と反対の場所にあったからだ。

 ここでも最上階は貸切なので部屋に戻ったついでに手に入れた金貨五十一枚もした空の魔石は窓のないクローゼットにしまうついでに充填しておいた。小さい物でもフル充填時には鈍く光るので結界を張り、ついでに闇魔法で覆った上で実行したのだが一瞬強烈な光を放ったので光が外に漏れないか心配したのだがどうやら大丈夫だったようだ。


 なるほど、身体の中を巡っていた魔力が半分くらい一気に持っていかれる感覚というのはなかなか気持ち悪い。

 別に病気でも怪我でもないのですぐに動けるようになるのだがやはりこれは大きな魔石を試すのは翌日予定がない日の方が良さそうだ。

 買い物した品を確認するために入ったはずの私がすぐに出て来ないので心配になったのか扉をノックされ、ひょこっとクローゼットから顔だけ出してロイに充填したばかりの魔石をみせるとギョッとした顔で見られた。

「大丈夫なんですかっ? 貴方はまたこんな無茶をして」

 声を潜めて慌てて私を引っ張り出したロイに私は大丈夫だと笑ってみせた。

「一応、万全の準備はしておきたいからね。ウチまでワイバーン魔石を取りに行く暇はないし。大丈夫、ロイは私の魔力量知ってるでしょう?」

「万が一ということもあります」

 心配性だなあ、ありがたいことだけど。

「でも必要かもしれないと思っていたのに用意するのを怠って何かあれば後悔するもの。多少の無茶は承知。それに今のうちなら夜には充分回復出来るでしょう?」

 フルにまでは厳しいかもしれないけど九割近くまでは戻るはずだ。

「全く貴方という人は。調子が悪くなったら言って下さい」

「半分程度に下がったくらいじゃ特に問題ないよ。今までだって殆ど空にして何度か倒れたことあるし加減は分かってるから」

 呆れたように溜め息を吐かれて私は安心させるつもりでついぽろりと言葉をこぼす。

 するとロイは思い当たったのか目を大きく見開いた。

「もしかして小さな頃よくお倒れになっていたのは・・・」

「そう、魔力が空になるまで魔法を使っていたから。知らなかったでしょ」

 魔法を使える楽しさに夢中になっていたあの頃は一人でよく毎日を過ごしていた。好奇心旺盛で向こう見ずの私の悪い癖にみんなが慌てていたことに気づいていたけどやめられなかった。

「父様の本棚にあった書物の中の論文に空になるまで使うと魔力量が増えるって記述があって、色々試してたんだよね。一人でいること多かったし、止める人が側にいなかったからね。

 ちょっと調子に乗って増やし過ぎちゃったわけだけど」

 思えば人生設計が大幅に狂い出したのはこの魔力量のせいだ。

 つまりある意味、後先考えなかった私の自業自得というわけだ。

「すみません」

「なんでロイが謝るの?」

 罪悪感に満ちた顔の理由は定かでないが何か後ろめたいことでもあるのだろうか。

 尋ねた問いに押し黙ったままのロイに私は首を傾げる。

「魔力量が多いってことは悪いことじゃないでしょう? それに今考えるとこれで良かったのかもしれないって思うところもあるし。何に対してロイが罪悪感を抱いているのかわからないけど私は後悔してないから謝罪の必要ないよ。だって過去の私があるから今の私にみんなを守れるだけの力があるんだもの」

 私が人前ではじめて力を奮ったのは、そういえばロイを助けるためだった。

 前世では何か事件が起これば会場に来場されたお客様の安否は最優先事項、避難誘導は当たり前だったからつい飛び出してしまったのだ。今の私は中身がどうであれ、まだ六歳の子供、守られる立場であることをすっかり忘れていたわけだが結局はそれで被害も出さずに事が片付いたわけだし、あの時ロイを助けるために飛び出していなければ、今こうしてロイが横にいてくれることもなかった。

「それともロイは子供らしくなくて生意気で、理屈っぽくて、手間と世話ばかりかけてる私は嫌い?」

「いいえ、そんなことあるはずがありませんっ」

 良かった、多少呆れられているかもしれないが大事にされていることくらいはさすがにわかる。

「嫌いだって言われたらどうしようかと思ったよ。

 みんなのところに戻ろう? あんまり遅いと心配かけちゃうし。

 ごめんね、いつも心配かけて。

 でもありがとう、それでもいつも私の意志を尊重してくれて。感謝してる」

 父様の次にしかなれないかもしれないけど、それでも大切にしてくれているのは嬉しい。

「食事が終わったら調子の悪いふりしてここに戻って来よう? 

 夜に動かなきゃならなくなるし体は休めなきゃね」

 ワンパターンな気がしないでもないが子供というものはちょっとしたことで調子を崩すことはよくあることだし問題ないだろう。

 みんなに作戦も説明しなければならないし、当初の予定とは少し変わったけど王都まで戻らなくてよくなった分だけ時間にゆとりもできた。直接手を出すつもりは無かったので乗り込む事になったのは想定外だがマルビスのことを考えればそれもいいかもしれない。家族の仇が知らないうちに討ち果たされてしまったらスッキリしないだろう。ワイバーンの時は戦場に連れて行かなかったけれど今回はついてきてもらうつもりだ。

 後は余計な予定や横槍が入らないことを祈るだけだが、今日も後半日、早々予定が狂うこともないだろう。

 

 

 美味しいと評判のレイオット領の郷土料理を食べさせてくれる店で食事を取った後、相変わらず尾行してくる密偵を誤魔化すために調子を崩したフリを装い、ランスに抱き上げてもらうことになった。ロイが最初、自分がすると言っていたがこれだけガタイのいい人間がたくさんいるのに細身のロイが抱いて移動するのはおかしいだろうということになったのだ。

 支払いを済ませて店を出る前にしっかり抱え上げてもらって調子が悪いふうを装い、ホテルまでの帰り道を急ぎ足で戻る。

 ぐったりと力を抜いてランスにもたれかかる。顔色が悪いわけではないが遠目からではそこまではわかるまい。時折、ロイとマルビスが心配そうに覗き込むフリをしながらホテルまで帰ってくるとそこには執事の装いに身を包んだ紳士が待っているのが見え、ロイが急いで自分の上着を脱ぐと私の顔を隠すようにかけた。

 知り合いだろうか? とりあえずはロイに任せて調子の悪いフリだ。

 私は顔が見えないようにランスの胸に顔を寄せてロイの上着を被った。


「お久しぶりでございますね、ロイエント」

「はい、御無沙汰をしております。エリアド、それで、今日はどのような御用件で?」

「閣下からの文を預かって来ていまして、ハルスウェルト様がこちらに御宿泊されていると聞き及び、是非とも明日の昼食に御招待したいと」

 ・・・忘れてた。侯爵閣下とレインの存在を。

 密偵を巻く必要がなくなったのでまあいいやと思い、スッポリ抜け落ちてしまっていた。

 どうしよう、マズイ。

 しかしここでランスの腕から飛び降りてシャキッと挨拶するのはもっとマズイ。

「そちらは、もしかしてハルスウェルト様でいらっしゃいますか?」

 気づかれたっ、当然と言えば当然なのだがこの場合私はどうするべきか、対処に困っているとロイの声が聞こえた。

「はい。すみません、出先でちょっと調子を崩されてしまいまして。

 本当はこちらから午後にでも文を届け、明日御機嫌伺いにでも参上しようとハルスウェルト様と昨晩相談していたのですが。

 申し訳ないのですが先にハルスウェルト様を休ませて頂いてもよろしいでしょうか」

「勿論です。どうぞ、お先に部屋にお連れして下さい」

 助かった。侯爵閣下のお遣いだからとゴリ押しされたらどうしようかと思った。

「お話は部屋でお伺いします。お返事の文はそちらで。

 ランス、ハルスウェルト様を早く寝室へ。シーファは近くに薬屋がないか確認して薬湯を買って来て下さい」

「薬屋ならそこの前の道の二本目を左に曲がった三軒目に御座います」

「ありがとうございます」

 助かった、なんとか無事に寝室に篭もれそうだ。

 ランスは失礼致しますと一言断ると足早に階段を上がって行く。

 上手くロイが誤魔化してくれて、お帰り頂くのが一番だけど。


 さて、どうしたものか。

 明日の昼食というのなら始めの予定と変わらないし、夜に出掛けておいて閣下の誘いを断るのも如何なものかと思うのだ。ここは無難に今夜のことを後々知られたとしても、そのために大事をとって休んでいたと通すのが無難だろう。

 ランスに寝室に運ばれた後、様子を伺いがてらどう返事をするか聞いてくるとやって来たロイと相談して約束はできないが明日、調子が戻れば伺うと、明朝、改めてこちらから連絡するということにしておいた。

 毛布を被ったまま寝室で待っていて暫くすると扉をノックする音とロイの声が聞こえた。


「もう出て来ても大丈夫ですよ、こちらの部屋のカーテンも閉めましたから」

 私はモゾモゾとベッドの上から這い出すと応接室へと続く扉を開いた。

「ありがとう、助かったよ」

 ほっと息を吐くと、ちょうどシーファも帰って来た。

 一応これで今夜の襲撃メンバーは揃った。

 総勢十一人とやや少なめだが攻め入る場所は細い抜け道だ。

 イシュカとガイもいるし、問題はないだろう。

 最悪道を塞いでしまえばなんとかなる。

 そのために昼前に魔石の充填をしておいたのだ。

 結界張って通せんぼしてしまえばいいのだから。



 応接セットの上にガイが屋敷と庭の間取り図を広げる。

 色々と細かく追加情報も書き込まれていた。

 屋敷は表向きは三階建。屋敷の中は取り立てて変わったところもない。

 調べられても隠し扉の一つも出てこない。

 この屋敷の闇は全てその地下にあるのだ。

 それがへネイギスの用意周到で用心深さをよく現している。

 地下への入り口は全部で三つ。宴の招待客の利用する入り口は二つ、へネイギスの屋敷の中ではなく、ヤツの近くの家屋の中にある。しかもここはへネイギスの所有にはなっておらず、不動産屋を買収して利用しているのでヤツの資産と見なされていないため調査が入ることもない。選ばれた客達は家屋の中にある扉の鍵を渡されている。普段は鍵でも開けられない様に内側から閂がかけられているが宴のある夜だけこの扉が解放される。つまりヤツの屋敷の中に入る様子を目撃されないようになっているのだ。残る一つはヤツの屋敷の庭にある噴水の中央の石像の下、これはへネイギス本人しか使用していない。つまり招待客はこの出入り口の存在を知らないということだ。

 地下はかなり広く作られているらしく、そこには大広間や招待客が休むための寝室付きの部屋もいくつか用意されている。休むと言っても眠るためのものではない、早い話が連れ込み部屋だ。そして大広間の下には地方から攫ってきた子供達が牢に繋がれている。拷問部屋もこの階だ。更にその拷問部屋の近くにある鉄格子の扉のついた床の扉の下、地下三階にあたるここで魔獣が飼われているのだ。魔獣は夜行性のものが多い。餌さえ与えておけばそう暴れることもない。この狂宴で命を落とした子供達がここに落とされ、生き残れば他国に奴隷として売り渡されるということになるわけだ。

 まさに悪魔の所業というに相応しい。

 これを知っていて一緒に楽しんでいる奴も同罪だ。

 だが今夜、ヤツらの命運も尽きるというわけだ。

 

 私達が侵入する入り口は街道から少し外れた、王都の塀の外の洞窟の入り口近くにある。

 ここでは昔、鉄が産出されていたのだが鉱脈が尽きたのか採掘量が減り、今では閉鎖されていて幾つか崩落事故も起きているので立ち入り禁止区域になっているため、滅多に人が近づくことはない。なかなか上手い場所を利用している。ヤツの屋敷は王都の塀の近く、距離も然程離れていないし、洞窟の中は調査が入ることもあるだろうがその脇にある茂みの中までは調べられることもないだろう。


「ガイ、私達が抜け道から侵入する以外の大きな変更はない?」

「ああ、多少人員の増減があったくらいで後は変わらない。

 俺達が担当するはずだった場所は他の団員が受け持つことになっている。関係者はほとんど外回りの巡回に出した。一部、どうしても動かせなかったヤツらはグラスフィート領主の護衛として追い出したしな。メインで動いている団員はここにいる者を除いて二十人程度、後は時間になったら非常事態のために待機している団員を団長が引き連れて出陣する。例のモノは回収係として雇っている冒険者のヤツらにギルドを通さず直接指定の場所に運ばせる手筈だ。招待客の入り口は宴が始まったと同時に封鎖した上で網を仕掛けておく。作戦開始は塀の上に待機している団員が旗を振るのが合図だ」

 よし、大きな変更は無い。上手くいけば関係者を一網打尽だ。

 ゲイルの孫娘を救出するついでに庶民を食いモノにするロクデナシ共を一掃してやる。

「それでハルト様、ここはどこの御屋敷なのですか?」

 ロイとイシュカ達は知っているが説明されずに団長に送り出された五人とマルビス、マルビスの護衛でついていたランスとシーファは当然だがここがどこなのかわかっていない。

 私はニヤリと笑うと宣言する。

「デルシネラ・ラ・へネイギス伯爵邸だよ」

 その名前にマルビスが反応して勢いよく立ちあがり、その勢いで椅子が後ろに倒れ、大きな音を立てた。

 へネイギスの名前に驚いたのはマルビスだけではない、ランス、シーファ、そして私達の応援として派遣された五人全員だ。

 不思議に思ったのかランスが私に聞いてきた。

「通常、貴族の御屋敷の捜査は近衛の管轄ですよね? 

 なのに動くのは緑の騎士団なんですか?」

「これは捕物じゃないもの。緑の騎士団が出向くのはへネイギス邸に迷い込んだ魔獣討伐。私達が行くのは『偶々見つけた用途不明の穴ぐらの探検』、そこが何処に繋がっているか知らないけどねえ? ね、ガイ?」

 話をふるとガイがそれに乗っかって続ける。

「そうそう、そこでついでに何か見つけたとしても単なる偶然だよなぁ? ハルト様?」

「ええ、そうですとも。そこで犯罪者を見つけて捕えたとしても全ては偶然、現行犯なら貴族であったとしても緑の騎士団にも捕縛権があります。問題ありません」

 イシュカがすました顔で付け加える。

 そう、へネイギスを追い詰めるならイビルス半島の魔獣討伐が全て収束していない今が最高のチャンスなのだ。実際にへネイギスの屋敷の地下三階に魔獣は存在しているわけだからキッカケさえ作ってしまえば問題ない。しかも場所は狂宴が開かれている場所の程近く、捕らえられた子供達も、拷問部屋に吊るされた遺体も、魔獣の飼われている地下室に転がる無数の人骨も、全ての罪は隠す間もなく晒される。

「私のため、ですか?」

 立ったままのマルビスがぼそりと呟いた。

「違うよ。まあ全てが違うってわけでもないんだけど。

 へネイギスは私に喧嘩を売った、それを私は買ったんだ。

 ごめんね、マルビス。私はマルビスにもらった従業員一覧にあった人達をガイにお願いして全員調査して貰ったんだ。

 私は目立ち過ぎたからね、他にも敵を作っている可能性を考えて彼らがソイツらに利用される危険性を疑った。私に近付くには彼らを使うのが手っ取り早いんじゃないかと思ってね。それで引っ掛かってきた貴族が二人いたんだ。一人はマルビスの前で吊るし上げて白状させたわけだけど実はあの場所には他にも三人の密偵がいた。

 用心深いへネイギスが私達三人に付けた密偵に『私達は貴方達に気づいていませんよ』って思わせるために、あえてその三人はそのままお帰り頂いた」

「私達、三人?」

「そう、見張られていたのは私とマルビス、そしてゲイル」

 マルビスを連れて行くと決めた以上、隠しておくことはできない。

 知っていてもらわなきゃいけない、私達の責任を。

「ゲイルの孫娘がへネイギスの屋敷に人質として捕えられている。

 私達が彼の孫娘を巻き込んでしまったんだ。だから救出する」

「無事なんですかっ」

 見捨てることも一瞬考えた。

 だけど無関係な人を巻き添えにしておいて知らぬフリはやっぱり出来なかった。それにどちらにしろ敵対する気満々のへネイギスは放置できない。

 マルビスの問いにガイが答える。

「今のところはな。まだゲイルには利用価値がある。ハルト様の事業計画の内容を知るためにもな。マルビスにも騎士団本部にいた時以外は密偵が付いていたみたいだぜ? 自分が陥れた商人の息子が何か企んでいないか警戒してたみたいだな。最初はアンタを手っ取り早く消そうとしていたようだがハルト様を隣に見つけて気が変わったようだ。ゲイルの孫娘が人質になったのはハルト様達が騎士団からホテルに移ったその日だ」

 ガイの言葉にマルビスが呆然となる。

「・・・私が、王都に来たから?」

「キッカケはな。だがああいう手合いは自分の欲望を満たすための手段を選ばない。ハルト様やお前に近付くためにいずれは利用されていただろう。

 つまり遅いか早いかの違いだ」

 ガイの言うことはもっともだ。だからこそ私は警戒したわけだし、これからも起こりうるそういう事態に対処するためにガイを新たに雇い入れた。

「私達には巻き込んでしまった責任がある。だから助けに行く。そのための準備はもう整えた」

 情報を仕入れ、団長に相談し、陛下の許可も取った。

「だから今回はマルビスも連れて行く。

 マルビスが行きたくないって言うなら無理強いはしないけど」

「行きますっ、行かせて下さい。絶対に足手纏いにはなりません。

 もしそうなったら置いて行って下さっても構いません」

 多分、そう言うだろうなとは思っていた。

 だが当然だが私はマルビスを途中で置いて行く気はない。

 最後まで見届けてもらうつもりでいる。

 そして、

「あともう一つ、マルビスに言わなきゃならないことがある」

 こちらの方が違う意味で重要かもしれない。

「へネイギスに加担しているのは実はゲイルだけじゃないんだ」

「誰なんですか? 誰かまだ人質でも捕られて・・・」

「違うよ。自ら、お金のためにへネイギスに売り込みに行った人がいるんだ」

 これは明らかな裏切り行為。

「その人をどうするかはマルビスが決めて。

 私はマルビスが許すというならジェイクと同じ扱いで受け入れてもいいと思っている。だけど、彼はマルビスの家族を陥れ、殺害したのがへネイギスだってわかってて加担している。脅されて仕方なしに従っているゲイルとは違う。ジェイクと同じ罪であっても重さが違う。

 すぐに決めなくてもいいから考えておいて。彼の処遇を」

 かつて一緒に働いていた雇い主、しかも自分達から職を奪った相手に取り入った。

 これは酷い裏切りだ。

「誰、ですか?」


「ゴーシェだよ」

 力ない声で尋ねたマルビスに、私はハッキリと告げた。



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