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生まれ変わったら天才少年? 〜いいえ、中身は普通のオバサンなんで過度な期待は困ります  作者: 藤村 紫貴
第三章

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第八十六話 それは男の浪漫です。


 茫然自失、放心状態のマイエンツとレッドベルグはもう逆らおうとはしなかった。

 全てガックリと項垂れた彼等のもとに押し寄せるアンデッド達の数を数え終えたところで天窓を覆っていた暗幕を剥ぐと陽の光に浄化され、サラサラと白い灰となって崩れた。

 これで少しは怨みも晴れ、天に昇って逝くことが出来ただろうか?


 観客席の貴族達がマイエンツの憐れな姿を見て何を思ったのかは解らない。

 同情か、憐憫か。

 それともフィアに対する畏怖、畏敬か。

 退席して帰路に着く彼等は一様に無口だった。

 

 私はアンデッド達に群がられ、ベタベタと触られていたマイエンツ達五人に一応浄化と回復の魔法を掛けるとデイラック達に連行されていく後ろ姿を見送り、宿で一泊するとハルウェルト商会と取引のある隣領の領主邸でルナ達獣馬を引き取り、翌日帰路に着いた。船舶はフィア達地方監査局のメンバー、護送するマイエンツ達と回収、保護された奴隷達で満員だったからだ。

 船なら一日で到着する距離を一泊二日で王都を経由し、寄り道しつつ私達は戻ることになった。連隊長にフィアの報告書を陛下に渡してもらい、連隊長達の報告書を受け取ってフィア達に渡すためだ。

 落ち合う場所はいつもの別邸。

 ここは大勢宿泊できるわけではないので最初は王都にある支店か宿を手配しようとしたのだけれど、専属達は床の上でもこちらの方が良いというので全員分の食材などは支店のメンバーに届けてもらった。

 どうせ宴会となれば翌朝は大体床の上で大の字、まともにベッドの上で眠っている者の方が少ないことを思えば、確かに宿を取る必要性も感じなかったので、まあいいかと全員で別邸に上がり込み、浮いた宿代は酒代になった。

 実際、獣馬は普通の宿屋では置いておくのもいろんな意味で問題がある。

 その点で騎士団内ではその心配もないわけで、テイクアウトで届けてもらった食事と簡単手軽なおかずを何品かみんなに手伝ってもらいつつ仕上げると、陽も落ちきらないうちから早速宴会が始まった。

 私はイシュカとレインと一緒に軽く食事を済ませ、仕事を終えて帰ってきた連隊長達を出迎える。今回は自分には関係ないとばかりに両肩に酒を二ダース抱えて宴会に交じるべく階段を上がっていった団長の背中を見送って一階のテーブルについた。


「ご苦労様でした、ハルト。今回もなかなか大変だったようですね」

 しっかりと封蝋された報告書を連隊長から受け取るとこちらもフィアから預かってきたそれを渡す。

 大雑把なところの連絡は既に早馬かなんかで伝わっているということか。

「それでも苦労した甲斐はありましたよ。

 これで調査隊での私への嫌疑は晴れるでしょうし」

 たかが道案内と通訳の監視だと思って引き受けたのに、結局ロクでもないことに巻き込まれて。

 だが考えてみるとアレはある意味ラッキーだったのかもしれないと今では思う。私達抜きであの場所に出掛けて、あの怪物のいた場所を壊して開けて、道案内を引き受けてくれたライオネルやリステル達、連隊長をはじめとする近衛のみんながアレの回復のための養分にされた可能性もあったし、みんなが逃げおおせたとしてもあの先には魔獣の渓谷がある。そりゃあ連隊長達なら倒せていたかもしれないだろうと言われたら返す言葉もないけれど犠牲者だってもっと多くなってたかもしれない。

 何よりこっちが気がつかないままで、あんなのに渓谷に向かわれて魔力補給され完全復活、ウチの領地がターゲットとして狙われたらどうなっていたことやら。

 つまり強欲なヤツが絡んで来た時点でアレとの対決は避けられなかったというわけだ。仮に、そうでなくても完全にアレが無力化するまでに何事もなく済んだ保証はない。地震や崖崩れの自然災害や経年劣化で崩れる可能性もあった。

 要するにそこに地雷や不発弾が埋まっていたようなものなのだ。

 そう考えるとゾッとする。

 災難ではあったけど、早急に対処出来たと考えればそんなに悪いことではなかったのかもとも思う。

 まあその後の言い掛かりには辟易したけれど。 

 私の吐いた溜め息に連隊長が乾いた笑いを漏らす。

「もともと濡れ衣でしたからね。ただ・・・」

 連隊長らしからぬ言葉尻を濁す言い方に私は眉を顰めて尋ねる。

「何かあったのですか? 何か今回件で問題でも?」

「いや、君達のところ以外は多少のイザコザはあっても特に大きな問題は出ていないよ。下調べは十分君達のところがしてくれていたからね。レイオット侯爵とステラート辺境伯の方も上手く片付いたそうだ。後日陛下からの呼び出しで殿下と君達にお褒めの言葉を賜るだろう」

 フィアも一緒に、か。

 王族というのはなかなかに難儀だ。

 自分の息子であっても部下の一人として同等に扱う。王位を継ぐ資格有りと周りを認めさせる必要があるわけで。まあ親馬鹿を発揮して貴族や国の上層部を買収という名の説得をしたり、自分達の都合の良い傀儡の馬鹿王子がその座に就くことも過去にはあったそうだが、その時には随分と国も荒れたらしい。

 それでも歴史は繰り返す。

 権力欲に取り憑かれた貴族はいつの時代でもいるものだ。要するにミゲルが王位継承権を持っていた頃の派閥争いというヤツで、陛下もその勢力を押さえつけるのに苦労して、苦悩もしていたらしい。

 今は大きな問題が起きない限りは次代の王はフィアでほぼ決まり。

 ただ一時期病床に伏していたこともあったんで、反対派の上層部に納得させるにはそれなりの功績が必要なんじゃないかとミゲルが言っていた。だからこそ陛下は今回の件を連隊長達近衛にではなく、フィアに振ったのではないかと。


「別に陛下のために協力したわけではありませんし、必要ないんですけどね」

 私は私の嫌疑を晴らすためと不条理に陥れようとする悪党からの自衛、そして親友の手助けをしたかっただけ。

 陛下のために動いたわけではない。

「そうはいかないさ。陛下の要請で君達は動いたわけだし」

 結局いつもの王族の面子というヤツか。

「では問題はなんなのですか?」

 私の疑問に連隊長が曖昧に笑う。

 つまり言えないということか。

 別に国家権力とは極力関わりたくないのでそれならそれで構わないのだが。

「何か事情があるようですね。

 判りました。深くは聞きません。それで私の同行者の指定はあるんですか?」

 ただこれだけは確認しておかなければ。

 こういう場合、陛下は水面下で何か企んでる可能性があるわけで、気乗りはしないが、どうあがいてもあの掌の上で踊らされる運命が見えているんだよね。

 癪ではあるが陛下と私では役者が違う。

 あちらの方が一枚も二枚も上手。しかも陛下は自分の持ってる最強のカード、国内最高権力者、国王陛下であるということを最大限に利用してくる。私が勝てるはずもない。 

 これで陛下が一方的に押し付けてくるだけなら抗議ものだが、あの人はこちらにもちゃんと配慮してくるからいつも断れなくなるわけで、だからこそ余計にタチが悪いと言えなくもないのだが。 

 今回は大規模なだけあって協力者も多い。

 ウチの領地単体で協力したならばいつものようにイシュカと、メインで動いたウチのメンバー一人か二人、ライオネルやマルビスあたりを連れて行くのが常なのだ。フィアへの協力要請が来た閣下と辺境伯は当然として今回は私達だけでないことを鑑みると私の陣営だけゾロゾロと連れて行くわけにもいかないだろう。

 閣下達との兼ね合いもある。

 そうなると私一人で拝謁すべきかと考えたわけなのだが、返ってきたのは意外と言えば意外なメンバー。

「いつものようにイシュカと、後はレインを」

 連隊長の指定に疑問を感じた。

「僕?」

 レインもそれは同じようで首を傾げる。

 そういえば今回のレインの参加は陛下の意向だったっけ。

 勿論、レインも今回活躍してくれたんだけど、ついでにレインの後ろにある閣下の御威光もついでに利用させて頂いたわけだし。

 続く連隊長の言葉に納得する。

「小さな祝勝会みたいな舞踏会が催される予定だからね」

 ああそれで婚約者第一席で今回の件で出陣したレインと護衛で二席のイシュカってことか。おそらく新しい領主の任命と顔見せも兼ねているんだろう。

「日程は既に決まってるのですか?」

「多分二ヶ月後くらいにはなるだろう。

 捕縛者が今回は多かったからね。調書を取ってその裏付け調査にもそれなりの時間が掛かるだろう。決まり次第正式な日程は連絡するよ。今回捕縛された領主達の代行は既に派遣済、監査終了次第、その経営者としての腕を見極めた上で何人かは新しい領主としてそのまま着任することになるだろう」

 流石、といおうか。随分と進行が早い。

 前もって対策していただけあってそのあたりは抜かりはないってことか。今回の件は王都にいる国の上層部の間でも限られた人間だけ、内密に進めていたこともあって打診はまだしていなかったってことかな? 

 まあいい。どちらにしても私に発言権はないし、口を出すつもりもない。

「そうですか」

「それだけかい?」

 私がそっけなく答えると連隊長はそう聞き返してきた。

 何を私に期待しているのか知らないけど、私は国の重要案件にそこまで関わる気はない。

「所詮私には他人事ですし、ウチに絡んでこない限りは関係ないですよ。

 それよりもこれでやっとやりたかったことに着手出来ます。出来れば暫くは巻き込まないで頂きたいですね」

 ずっとのびのびになっている計画を本格始動したいのだ。

 出来ればこの冬あたりから。

「今度は何をやるつもりだい?」

 なんだろう?

 その何を企んでいるんだ的な妙に含みのある言い方は。

 別に悪いことをしようとは思っていませんよ?

「報告は来ていないのですか?」

 ウチにいる陛下の手下(?)から情報は常に回っているはずなのだけれど。

「全てはね。全部聞いていたらキリがないだろう? 君達が手掛けている事業は多岐に渡る。私が聞いているのは私に関係がありそうなことだよ。陛下や宰相ならば小さなものでない限り進行していることであればほぼ把握していらっしゃるだろうが君のところは極秘情報も多いだろう?」

 確かに極秘情報は多いですけど、それは商品企画や開発事業などに関するもので悪巧みではないのだけれど。

 人聞きの悪いことを、言わないで頂けませんかね?

「別に秘密にしているわけではないですけど。

 学校と図書館ですよ。貴族ではなく、平民のための、ですけどね」

 そのために必要な人材も揃ってきているし、現在スカウトかけている人もいる。

「領民の子供達の教育機関を作るんです。

 強制ではありませんが、まずは一年。簡単な読み書き、計算が出来るようになるくらいの敎育を。そこから学ぶ気のあるもの、将来性のあるものを更に磨き、各専門分野に特化した専門学校を。

 ウチは他と違って領民は殆どウチの商会の仕事と関わりを持っていますからね。それらが出来るようになれば将来的にウチに就職してくれとしたらとても助かるんですよ」

 子供の方が物覚えが早い。

 家庭での仕事に駆り出すことができるようになると人手が足りないからという理由で親も学校に通わせたがらないこともあるだろう。

 となればまずはその戦力としてカウントされにくい年齢の子供から。冬には外での仕事も少なくなって家での仕事が減ってくる。そうなれば親の手伝いとして駆り出される子供も少なくなるから子供を学校に通わせやすくなるんじゃないかと思うのだ。

 そして子供に才能があるとわかれば親も続けて学校に通わせようという選択肢も考えるはず。将来の家庭の稼ぎ頭になる可能性があると思えば働き手を奪われるという感覚が低くなって、子供に学校に行かせてみようと思う親も多くなるのではと考えた。

 まだまだ改良改善の余地はあるだろうけれど、何事もやってみなければわからない。問題が出れば随時改正、変更だ。


「また壮大な計画だね」

 溜め息混じりの感心したような連隊長声。

「そうですか?」

 私にはどのあたりが壮大かわからないのだけれど。

「今まででは考えられなかったことだ。勉学は生活にゆとりのある者、もしくは際立った才能を持つ者のためのものとされてきたからね」

 それがそもそもの間違いではないかと私は思うのだ。

 人間の才能なんてどこにあるのかなんて本人だってわかっていないこともあるだろう。今は凡人でも、それを見つけることができれば一気に開花することだってある。とはいえ、自分の好きなこと、興味のあることに必ず才能が見つかるとは限らないわけで、興味のない方面に秀でていることもあるだろうが、それもまず見つけなければ話にならない。

 そこから先は本人の選択だ。


「勉学は貴族や裕福な者のためにだけあるものじゃないですよ。

 ウチの領民にもと貴族はいても貴族は殆どいません。賑わっている一割ほどの領地を除けば山林の多い田舎です」

 人口も多いように見えてその何割かは観光客、ウチの土地は裕福な方々の別荘地にはなり得ても住むようなところではない。


「現在の私があるのは我が領民のお陰です。

 彼等が私の仕事を手伝ってくれるからこそ私の商会は大きく発展しました。ならばその儲けた利益を領民に還元し、次代を担う子供を育成する。

 それが領主たる私の務めでしょう。

 子供達は可能性を秘めた宝の山ですからね。

 もっとも、発案するだけでマルビスやシュゼット達に頼り切りなので偉そうなことは言えないし、領主失格なのかもしれませんけど」


 やりたいことが多すぎて私だけでは実現出来ないことばかりだ。

 だけど私には私に力を貸してくれる大勢の人がいる。

「ある才能は援助を惜しまず磨き、才能の芽を伸ばすために財を投入する、か」

 連隊長の呟きに私は大きく頷く。

「学院で講師をしていた頃、貴族の子供が平民の子供を見下して『そんなことも知らないのか』と言っているのを幾度となく見かけました」

 見ていて気分が悪かった。

 子供の頃から親に選民意識を植え付けられ、同じ年の子供同士で存在する明らかな差別。襟首掴んで説教してやろうかと何度思ってことか。

 だけどそれをしたところで一度叱られたくらいで子供の意識は変わらない。

 私は教師ではないし、臨時講師。

 そしてそんなふうに私に庇われた子供の未来が想像できた。

 自分が特別だと思っている子供のプライドを公衆面前で潰せば、その復讐と攻撃は私にではなく、手に届く位置のその子に向かう。イジメとはそういうものだ。

「それは子供に限ったことではないけどね」

 連隊長は肩を竦めてそう言った。

 そうですね、大人にもそういう人間はいる。

「私をはじめとする貴族の子供は恵まれた環境にいます。

 貴族は四年の学院での教育が無償で受けられ、知識を身につける機会を与えられる。そんな親を持つ子供は親からも知識を与えられて育つんです」

 でも平民は違う。

「知識とは頭の中に勝手に湧いてくるものではありません。

 勉学だけが重要な知識だとは思っていませんが親や周りの大人達の知らないことは学ぶ機会が殆ど与えられない。教えてくれる者が周りにいなければ知らないのも当然です。字が読めなければ本も読めない、情報は得られないんです。

 それは『そんなことも知らない』ではなく、『そんなことも教えてもらえる機会に恵まれなかった』から」

 基礎がなければ応用はできない。

 自分がなりたいものになるために必要な知識が何であるかも知ることができない。私が作りたいのは子供達がそれを知るための機会だ。

「考える力が身につけば興味のあることに対する知識欲が芽生えます。好きなことであれば人は努力を惜しまない。そうなれば知らなかったものを知り、より多くのものを学ぼうとする者が出てくるでしょう。

 頭も腕も使わなければ錆びれてしまいます。

 使うことによって磨かれ、幅が広がるのですよ。

 だからこれは未来への投資なんです」

 多分、これは私の自己満足の一部だ。

 私はそういう機会に恵まれいたほうではなかった。

 やりたいことはいっぱいあったはずなのに、諦めて、限られた中での幸せに満足して。だからこそやりたいこと、好きなことをやれる環境にいる今を好きなように生きている。仲間に反対されてまで実行しようとは思わないけれど、今のところ反対されたことは殆どない。むしろ実現するために足りないものや力を貸してくれている。

 本当にありがたい限りだ。


「君は変わらないね。出会った頃からずっと」

 連隊長は優しい顔でそう言った。

 表情からして悪い意味ではないとは思うけど、それは進歩がないということだろうか? 

「そうですか? それなりに変わったとは思うんですけど」

「相変わらず君は弱者の味方だ」

 そういう意味か。

 だが違う、それは誤解だ。

「弱者の味方なんかじゃないですよ。私は今も、昔も」

「でも平民の味方だろう?」

 どこが違うのだと言わんばかりの連隊長に私は断言する。

「平民は弱者ではありません。貴族の方々がそう思っていたいだけです」

 多くの権力者にとって平民は弱者でいてくれた方が都合がいい。

 連隊長たちみたいな、だからこそ守らなければと思う人もいないわけじゃない。

 だが力がないということは反抗する力も持たないということだ。

 庇護下に置いていると見せかけて搾取している貴族や領主はまだまだ多い。

 ソイツらを一々懲らしめて歩くほど私は暇でも善人でもないけれど。

「私は叩かれても踏まれても立ち上がる、そんな挫けない心と未来を変える強い意志を持った逞しい人達が好きで、そんな人達の味方です。

 強くて優秀な者は平民の中にもたくさんいますよ。

 私の周りにはたくさん。

 そして将来、作った学校の中からもたくさん。

 それは私を支えてくれる力になると信じていますので」

 だって私はそんなみんなに助けられて、支えられてここまで来た。

 今の私がその証明だ。

「つまり私のやることは見返りを期待した下心付きなんですよ。

 私は無償で愛を振り撒ける聖人君子ではありませんからね」

 百人の子供から一人の才能が見つかれば充分すぎるもとが取れる。

 これはつまりビジネスなのだ。

「なるほど。益々君達の領地はこの先発展しそうだ」

 そりゃあそうでしょう。だって、


「平民の数は貴族と違って圧倒的多数です。当然でしょう?

 そこには幾つもの価値ある原石が眠っていると私は期待しているんです。

 御宝探索、発見は『男の浪漫』でしょう?」


 私がそう言って様にならないウィンクをすると、連隊長はポカンと口を開け、次の瞬間、腹を抱えて大笑いし始めた。

「そんな考え方があるとは。本当に君は実に面白い」

 これって笑うところ?

 私は笑いを取るつもりは微塵も無かったのだけれど。

 今の話のどこに笑えるポイントが?

 私が首を傾げてイシュカを見上げると誇らしそうな顔でニコニコと私を見ていた。レインは私と同じく意味がわからないといった不思議そうな顔をしてたけど。


「きっと彼の方も、君のそんな浪漫に魅せられたんだろうね」

 

 彼の方って?

 いったい誰のことだ?

 『あの人』ではなく、『彼の方』と連隊長が言ったということは、それなりに地位がある御方ってことだと思うけど。

「どういう意味ですか?」

「その内わかるよ」

 はぐらかされた。

 大笑いは収まったものの連隊長のクスクス笑いは止まらない。

「今はまだ言えないということですか?」

「ああ。すまないがもう少し待っていてくれ」

 意味が判らない。

 だが微笑っているということは悪いことではないということだ。

「判らないけど、判りました」

 国が関わってくるととかく物事が大きくなりがちだ。

 何か事情でもあるのだろう。

 下手に首を突っ込めば、また藪蛇になりかねない。

 やりたいことが目白押しの私としては暫く極力関わりたくない。

 とはいえ私は国内最大規模のハルウェルト商会オーナー。

 陛下にとってただの貴族よりも使い勝手がいいのは考えるまでもないだろう。


 何をするにしても物資の手配というものは必要だ。

 そうなると私に振れば本隊への協力依頼と物質調達がいっぺんに済むわけで私にもれなくついてくるそれは非常に魅力的に違いない。

 

 やはりここは私が私のやりたいことをやるために、早めに後継者候補を探してサッサと領主とオーナーを引退。商会の一般従業員として動ける状況を作るのが吉だろう。

 そのためにはどうすれば良いかと私は頭を巡らせ始めた。


 裏で陛下とフィアが何を企んでいるのかを、

 考えもせずに。



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