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生まれ変わったら天才少年? 〜いいえ、中身は普通のオバサンなんで過度な期待は困ります  作者: 藤村 紫貴
第三章

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閑話 ガイリュート・ラ・マリンジェイドの誤算 (3)


 そうしてライオネルやシュゼット達に休みを取らせて、また『ハリセン』などという妙なもんを作ってその間にポチを調教。やっと取れた休暇に世話係のケイ付きでポチを連れ、向かった先の温泉付き別荘で御主人様は再びトラブルに巻き込まれた。

 アレキサンドライト鉱山でまた洞窟が見つかったというのだ。

 しかも今度は人の手が入ったと思われるような。


 そういうもんは稀に大当たりもあるが大抵に於いてロクなモンじゃねえ。

 非戦闘員である頭を使うのが仕事の専門職の変人達とウチの専属警備達を連れて早速調査に向かった。

 案の定、妙な仕掛けが山盛りだったが頭脳労働に特化した面々がいたおかげでたいした問題もなく、洞窟を抜けた先に現れたのは洞窟の天井が抜けた場所にあった崩れた神殿跡。


 それを見た時、嫌な予感はしていた。

 

 気に留めるほど不穏な空気も妙な気配も感じない。

 だから気のせいかとも思った。

 俺は第六感というヤツを頼るところもあるが、コレは経験則みたいなもんで確証があるわけじゃねえ。だから当然だがハズレることもある。

 予想と予測なんてモンは根拠がない。

 立証が難しいからだ。

 要するに『なんとなく』ってのが正しい。

 御主人様は悪運が強い。大抵ロクでもねえ面倒事を引き当てるんで神経質になりすぎたかとも考えた。

 だが、その直後に起こった先住民の子供と出会い、遠くから響く悲鳴、駆けつけた先で出会ったグリズリー退治やその解体作業、集落での揉め事その他が起こり、嫌な予感はこれだったのだろうと思いもした。実際、ウチの連中が面白半分で廃神殿で『御宝探索』なるものをしても怪しいものは見つからなかった。

 そしていつもの如く、御主人様はブツブツと文句を垂れ流しつつその集落で虐げられていたらしい子供五人を連れ帰り、マルビス達に出迎えられたところで思いがけない事実が判明した。


 御主人様とマルビスはマルチリンガル、多数の言語を操る。

 サキアスもこの二人ほどではないが語学に堪能だ。

 だから先住民と御主人様が会話してても然程気にしていなかった。

 その異常さを指摘したのはマルビスだった。

 『ヴィンラント語』。

 それは書物では知り得ない、消滅の危機に瀕した言葉。

 山奥の小さな部落で使われている相当に珍しい言語。

 何故それを御主人様が話せるのか?

 隠し事なんてモンは大なり小なり誰にでもあるものだ。ギャーギャー騒ぐほどのもんじゃねえ。無理に言う必要もない。それで不都合が出ないなら隠しておきたきゃ隠しておけばいいだけの話。


 だが多分、これは世間一般的な常識を逸脱したもの。

 おそらくバレると騒ぎになるレベルだ。

 普通に考えて知りもしない言葉を通訳無しで意思疎通、会話をしている時点でオカシイ。これがウチの主要メンバーだけなら問題ない。だが部外者(フリード様)や専属警備、ヘンリーもいた。どこでどう情報が漏れて歪んで伝わるかわからない。

 それを御主人様もわかっていたのだろう。

 覚悟を決めたらしく語りだしたのは現実を知らなければホラかまさに夢物語そのものだった。


 生まれながらにして言語読解能力が備わっていたこと。

 オマケに前世の、しかもこことは違う異世界の記憶があるという。

 これを話したのが御主人様でなけりゃあ嘘だろと、俺は多分吐いて捨てていた。

 世の中には常識では測れねえものは幾つもある。

 不可思議なものも実在する。

 それがまさか自分の身近であるとは思わなかっただけで。

 聞けば納得できることが無数にあった。

 今までの首を傾げるような物事にも説明がついた。

 豊富な知識、この世界にはありえない常識や考え方、子供のくせに『こまっしゃくれ』を通り越し、その辺の大人より大人びていた理由。


 当然だ。

 中身は大人だったのだから。

 聞けば前世は随分と文明の進んだ世界だったようだ。

 随分と面白そうな話もありそうで、暇が出来たらゆっくり聞いてみたいと思うほどには興味がわいた。

 だが一番俺を納得させたのは言語読解能力でも前世の記憶でもない。

 御主人様が前世は『女』だったってことだ。

 俺は御主人様に会うまで男にも子供にもそういう(・・・・)感情を抱いたことはない。

 別に嫌悪感は抱いちゃいない。

 男社会に生きてりゃあ特に珍しいことでもない。操立てする相手がいない男の理性なんてものは結構いい加減なものだ。俺は男を相手にするほど女に困っちゃいなかったから好き好んで男に言い寄ろうとしなかったし、女がそこにいるのにわざわざ男を相手にしようなんて考えもしなかった。


 なのに御主人様に惹かれた理由は?

 御主人様の敷地にはイイ女も、俺好みのスレンダーで脚線美の女も大勢いた。

 それなのに俺の食指は動かなかった。

 気が強くて気前がよくて、サッパリとした性格は間違いなく俺好み。

 だが男の、しかも子供だぞ?

 『血迷うんじゃねえぞ、俺っ』と、何度も思った。

 それでも止められなかった。

 どんな苦難な状況に立たされても挫けず真っ直ぐ前を見る眼差し。

 権力に屈することなく自分を貫き通そうとする意志の強さ。

 強大な敵を前にして足が震えても、決して『勝ち』を諦めず、勝利を掴み取ろうとする足掻く後ろ姿に見惚れ、魅せられた。

 万能じゃない。

 完全でもない。

 だが傲慢にも思える圧倒的な力を持ちながら驕らず、飾らず、ありのままの自分を曝け出すことに躊躇いを持たない。プライドも低く、俺らにも命令しようなんて気はサラサラなくて、目的を達成するためなら頭を下げることも財産を使い果たすことも厭わない。

 俺らとは持っている格と器というものが違うのだと思い知らされた。

 これは惚れた相手が悪い。

 魅力のある男や女に人が群がるなんてのは珍しくもない。

 だがそれでもまだ育ってからならわかる。

 子供に何故恋をし(惚れ)た?

 ずっと疑問だったその答えが今、ここにある。


 男の子供の中に大人の女の心。

 要するに最強にイケてる男の身体に、最高にイカした俺好みの女の魂が入ってたってことだろう?

 そりゃあ惚れずにいられるわけがねえ。

 ズル過ぎるってもんだろ。

 道理で大量に男も女も、俺すらタラシ込まれるわけだ。

 

 細かい理屈や事情なんてどうでもいい。

 そこらへんはマルビス達が上手くやるだろう。

 だが問題はやはり発生した。

 出先で連れてきた五人の子供が失われつつある美しい伝統工芸品の担い手だったのは予想外ではあったがさもありなんだ。御主人様の揉め事厄介事にはもれなくオマケがついてくることが多いからだ。

 漆器という珍しい食器らしいのだが御主人様がカツ丼の盛られた皿を見ながらにまにまと締まりのない顔で笑っているのを見て取るに、欲しいと思っていた物に間違いなさそうだ。おそらく御主人様が言っていた前世とやらでカツ丼がその漆器とかいう器に似た皿に盛られていたってとこだろう。すっかりリステル達のために工房を作る気満々で、しかも足りない材料を揃えるために騎士団支部にお願いにまで出向き、それに必要な漆の木とやらを栽培する段取りまでつけている。

 それ自体は構わねえ。


 問題だったのはその珍しい工芸品の担い手に目の色を変えた馬鹿貴族共だ。

 

 ただでさえ御主人様はシルベスタ最大の商会オーナーという肩書きがある資産家でやり手の商人だ。ガンガン稼ぎまくり、国内のそこら中で幅を利かせている御主人様達を面白く思っていない連中がいる。 

 ソイツらがそれを聞きつけて横槍を入れてきたのだ。

 無論、既に対策済み。

 しっかりサイラスに確認とって正式に自分の領民に加えている。

 何やら裏で画策しているらしいという情報もリディから流れてきた。アンディ達諜報部も密かに情報を集めている。難癖つけてくるようなああいう連中は大抵裏でなんか汚ねえことをやっているのが常だ。

 調べてみりゃあ出るわ出るわ、子飼いの貴族まで巻き込んでとんでもねえことしてやがる。

 悪知恵がそれだけ回るなら、御主人様のように真っ当なことをやってでも充分稼げただろうに欲張り過ぎて余計な贅沢という名の脂肪を溜め込んで肥え太るから足下を掬われるんだ。

 その欲の皮の突っ張った親の息子も同様だ。

 ああいうロクでもないのを見て育っただけあって高飛車で考え無しの業突く張り。俺はヤツらの裏での悪行を暴くために駆けずり回っていたわけだが、御主人様の誕生日祝いも終わって今日から調査団御一行様が出発だってのにリディからソイツの悪事の全体像が見えて来たんで手伝えと連絡を寄越しやがった。

 問題のヤツらの子息共は勿論だが、もともと俺の嫌いな権力馬鹿共がその研究員に多かったんで俺は同行するつもりはなかった。だが万が一に備えてランス達と一緒に国境上で待機するつもりでいたんだ。

 何せ御主人様は生粋のトラブルメーカー。

 出先でいったいどんな問題が起こるかなんてわかったもんじゃない。

 だが今回はイシュカとライオネル、ケイの他にもウチのヤツらがいる。その上連隊長とフリード様付きなんだ、滅多なことはあるまいと俺はリディのもとに向かったんだ。

 

 それなのに、まさかとんでもねえ化け物がお出ましになるとは。

 相変わらずトコトン引きが悪いってなもんだ。

 それでもしっかり討伐するあたりが俺の御主人様の凄えところだが。

 だが問題はヤツらが送り込んだ馬鹿息子が犠牲になったことだ。間違いなく難癖つけて事実を曲解し、嘘八百を並べ立て、御主人様に責任を押し付けようとしてくるだろう。

 案の定、自分の子息の勝手で起きた問題を尻拭いしてもらっておいての厚顔無恥な捏造と買収に走りやがった。


 しかも審問会に呼び出しだあ?


 巫山戯るのも大概にしやがれってんだ。

 だがこれでアイツらが裏でやってる悪事に見て見ぬフリは完全に出来なくなった。徹底的に調べて証拠を掴んで嵌めてやる。

 息子を亡くした父親のお涙頂戴の悲劇の主人公ぶりには笑った。

 馬鹿も休み休み言え。

 テメエは自分の息子すら出世のための替えの効く金儲けの道具としてしか見ていないだろうが。そんなのとっくに調査済みだ。

 ヤツには六人の息子と八人の娘がいる。娘は全員他国の王族の妾に差し出して裏で縁を繋ぎ、長男は遊び人の金食い虫で反抗的、ソリが合ってねえ。自分の思い通りになるって理由で従順で気弱な三男を据える算段をしている。生意気な次男は捨て駒、あわよくば調査隊で死ねば責任追及で御主人様か、御主人様贔屓の連隊長やフリード様の弱味を握ってやろうって魂胆だろう? 今回の件の成果を出せば長男ではなく次男のお前に家督を譲ることも考えていると仄めかし、功績を上げるために無茶させるように仕向けた。

 要するに仕出かしたのはアイツの次男だが、功を焦らせたのはマイエンツのヤツが煽ったせいだ。

 親子揃ってロクでもねえったらありゃしねえ。 

 どうせ違法奴隷所持の極悪人の犯罪者だ。

 御主人様の反撃にあってくたばっちまえばいい。

 そのためには下手を打つわけにはいかねえ。

 アンディ達諜報部とリディ、俺とケイで徹底的に調べ上げた。


 そうして皇太子殿下の旗の下、地方監査局達と連携して一気に動き出す。

 御主人様が派手にヤツらの気を引いて苛立たせ、その隙にウチのヤツらを前日までに気付かれることなく配備、客船一隻を利用して地方監査局とその護衛達を各地に短時間で配置する手筈を付けるってわけだ。しかも下調べ済みのウチの諜報員達に手引きさせてマイエンツ達だけでなく、全十六ヶ所に包囲網を張って同日に逃さず押さえに行こうって寸法だ。

 その資金調達もソイツらの違反金から搾り取る。

 相変わらず抜かりはねえ。

 全く惚れ惚れするってもんだ。


 俺の担当は勿論、御主人様のいる一番の大部隊。

 マイエンツ達の捕縛、腕が鳴るってもんだぜ。

 監査当日、御主人様の到着を待って飛び込めば、ヤツらは呑気な顔で優雅に食事をしていやがった。平民を虫ケラのように使い捨て、惨たらしく扱って始末して良心の呵責どころか塵一つ分の罪悪感もねえ。

 コレで御主人様と同じ侯爵ってんだから笑っちまう。

 テメエと御主人様じゃ格ってモンが天と地ほどの差がある。

 とっとと観念して地獄に堕ちろ。

 ウチの御主人様より地獄の閻魔様の方がまだ優しいかもしれないぜ?

 良かったじゃねえか。

 これで御主人様に怯えなくて済むんだ。

 集められた奴隷をズラリと並べられれば言い逃れも出来やしねえよな?

 ソイツらを前に懺悔して素直に罪を認めて白状するようなタマじゃねえけど流石にこれだけの証拠を前にみっともねえ言い訳はしねえだろ。

 しかも第一王子と監査官付きだ。誤魔化しも利かねえし、自慢の権力も王子の前じゃ屁の役にも立たねえ。

 と、そう思っていた。

 

 油断した。

 いや、俺は本物の悪党ってヤツの特性を見誤っていた。

 俺とケイがコロッセオの外周をぐるりと潜んでいるヤツの手下の取りこぼしがねえかチェックをしていた。

 奴隷というのは主に絶対服従、それが厄介だ。

 マイエンツが腕の立つヤツを潜ませて、俺らの隙を狙って反撃し、闘争手段を確保でもしようとしてたら面倒だ。非戦闘員も今回は多い、全部を守り切るのは難問だ。だからこその見回りだったんだが、横目でチラリと御主人様の捕物帳の様子を伺っていた。

 嫌な予感はあったんで、ケイには地下の闘技場で檻で飼っていた魔獣はウチのヤツらと一緒に全部始末しろと言っておいた。アレらに途中乱入されたら対処が一瞬でも遅れれば大惨事になりかねない。鉄格子の中であるなら御主人様特製の聖水を浴びせて弱らせた上で首を切り落とせばそう苦もなく倒せるはずだ。ここには御主人様が出張って退治しなけりゃならねえような上位ランクの魔獣はいねえ。

 そんな万全のつもりの驕りと油断が招いた事態。

 マイエンツの性格を考えれば防げたはずだった。

 チラリとヤツの観念した情けねえツラを拝んでやろうかと視線を流した瞬間、

 それは起こった。


 そこにいたはずの御主人様達の姿が一瞬にして視界から消えた。

 違うっ、落ちたんだ。

 ポッカリと、そこにあるはずの無い穴の中に。

 何事が起こったかと視線を走らせればマイエンツが王子の警備に通路壁寄りで押さえ込まれていた。闘技場の土の上に飛び降りたのはケイの方が早かったが距離的には俺の方が近い。速攻で駆け寄り、辿り着いたのはほぼ同時。

 地面に空いた穴の前でランスとシーファが仁王立ち。ライオネルのヤツが王子を追いかけて穴に飛び込もうとしている王子の護衛達を止めていた。


 何があった、と、聞くまでもなかった。


 状況が全てを物語っていた。

 こんなところ(コロッセオ)入場口(こんなところ)に作られた落とし穴がマトモなものであるはずがねえ。

 王子のお付きのヤツらが縊り殺しそうな勢いでマイエンツを締め上げていた。

 腹が立った。

 無論、マイエンツに。

 そして何より嫌な予感がしていたにも関わらず、迂闊にも御主人様の側を離れた自分に。

 蹴り殺してやりたい。

 だがそれは駄目だ。コイツの命には山程の奴隷が縛り付けられている。

 隣にいたケイからは傍目にも明らかなほどの殺気が体から立ち昇っていた。

 ケイは御主人様を心酔している。

 自分達が救えなかったベラスミの民を救い、自分の命を生かす条件として奴隷にこそ堕ちたものの俺らと変わらぬ扱いで大切な仲間として扱われ、心を砕き、今も尚自分が本当にやりたかった、救いたかった民のために働く機会を与えられて。

 御主人様のためならケイはまさしく火の中さえも望んで飛び込んでいくだろう。

 奴隷だから、ではなく、自分がそうしたいから。

 無理に従わせるのではなく、人格を尊重された上で従う。

 命令されたから従うのと望んで従うのでは圧倒的に仕事の出来に差が出るのは当然だ。だからこそケイは出会った頃の六年前より遥かに密偵としての腕を上げている。

 だが奴隷紋を刻まれたコイツが今生きて立っているということは間違いなく御主人様も生きてるってことだ。

 拳を握りしめて沸騰しそうな頭の熱を俺は必死に下げる。

 大丈夫だ。

 イシュカもレインも一緒なんだ、無事でないハズがねえ。

 俺はツカツカと歩み寄ると王子の従者達からマイエンツを奪い取り、その胸ぐらを掴んだ。


「テメエは考えが甘いんだよ。

 金と権力にあかせて従えるだけじゃ真の臣下は作れねえ。

 俺の御主人様はこの程度の穴に落とされたくらい屁でもねえよ。

 絶対に生きている。

 当然御主人様が一緒な以上、王太子殿下も無事だ。

 何を企んだのかは想像がつくが無駄な足掻きをしてんじゃねえよ。

 最低にみっともなくてカッコ悪いぜ?

 俺の御主人様とは本当に天と地ほどの差だよな」


 そう言って俺は蹴りを一発入れてやる。

 蹴り殺してやりたいのは山々だが我慢だ、我慢。

「お前っ、私を誰だと思っているっ!

 こんなことをして赦されると思っているのかっ」

「知らねえなっ、知ったことじゃねえ」

 その捨て台詞に俺は一喝して吐き捨てるように付け足す。

「高額脱税と大量違法奴隷保持の極悪人、犯罪者だろ?

 今ある地位と権力がそのまま持てるわけねえだろ。

 降格は間違いないだろうが。

 だったら俺の御主人様は侯爵、テメエは格下だ。問題ねえよ。

 テメエがどこまで落ちるかなんて俺には興味はねえがな」

 第一王子の暗殺まで計って巻き込んでんだ。

 間違いなく良くて牢獄行き、強制労働か拷問の末の火炙りか。

 テメエの過去のツケはテメエで支払うのが道理だ。

「馬鹿だろ? 

 俺の御主人様がこの程度でくたばるわけねえだろ。

 せいぜい魔王様の報復覚悟して震えて待ってるんだな」

 そうしてもう一発蹴りを入れてやるとライオネルとランス達が御主人様の救助準備に走っているのを見て俺はケイを振り返る。

「行くぞ、ケイ。デカい穴ならどこかに回収口があるかもしれねえ。

 コイツの命運は御主人様を完全に敵に回した時点で詰んでんだ。

 放っておけ。

 無様な姿晒してのたうち回らせた方が清々するってもんだぜ?」

 俺の言葉にケイは頷く。

「そうですね。簡単に楽にしてやる道理はありません」

 そうだ、最底辺の扱いを受けて、プライドを木っ端微塵に砕いた後で、死んだ方がマシって目に合ってからどこかで野垂れ死んじまえばいい。

 俺らの御主人様は売られた喧嘩はもれなく買うタチだ。

 売られた喧嘩は買った以上のもので返すのが礼儀だと、反撃の手は一切緩めねえ。それが悪党であるならば尚更容赦しない。

 

 そうして俺達はランスが呼びに来るまで互いに心当たりの場所の捜索に乗り出した。


 

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