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生まれ変わったら天才少年? 〜いいえ、中身は普通のオバサンなんで過度な期待は困ります  作者: 藤村 紫貴
第三章

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第八十一話 結局は甘やかされるのに弱いのです。


 ひとまず、この染みついた悪臭をなんとかしたい。


 私の出した提案の仕掛けにフィアの提案を受け入れ更なる検討、改善をライオネルとランス達にお願いして、とりあえずコロッセオの外にいたどこかに入浴施設はないかと尋ねると、ならばこの街で一番の宿屋に行くか娼館で借りるのが良いと言われ、まずは宿屋に突撃してみた。

 押し掛けた悪臭漂わせる迷惑客に嫌な顔をされ、御礼は弾むからと頼んでみたが既に満室で無理だと断られた。ここの領主の屋敷で今夜舞踏会があるので貴族の予約客でいっぱいということらしい。

 その領主は現在捕縛されていて、その招待客は舞踏会には参加出来ないとは伝えなかった。日帰りの無理な遠方から来ているとなれば彼等にも宿は必要だろう。自分達の都合でそれを押し退けるのも違うし、フィアが彼等を明日の見物客にするつもりだったのを思い出して諦めた。

 一昨日から滞在していた隣領の宿はまだ明後日まで押さえてある。夜はそこに戻って泊まるつもりはあるけれど、そこまで往復するのは距離もあるし、検問所を通るとなれば更に上乗せ、ロスする時間が大きい。明日のことも考えると下準備は終わらせておきたい。

 フィアはこの後マイエンツ邸の監査状況を確認するついでにヤツの屋敷で風呂を借りてくるつもりらしいけれど、それに便乗するのは不味かろう。一国の王子ならば許されても屋敷の主を追い落とそうとしている私達が好き勝手に使うのは流石に違う、そこまで厚顔ではない、つもりである。

 娼館に頼んでみて駄目なら宿に帰るまで我慢しようと思ったが、快くとまでは行かないけれどなんとか風呂をお借りできることになった。


 お金さえ払って貰えば今の時間帯ならば店も営業準備に入るので娼婦達の入った後の残り湯で良ければ構わないという店主の御好意に甘え、風呂の使用料と清掃代、その間に服の洗濯をお願いする手間賃を上乗せして営業のお邪魔にならないように裏口から入らせて頂き、ありがたくお借りすることにした。

 悪臭漂わせる迷惑客の御来店に開店直前の綺麗に着飾ったお姉様方が遠目にこっちを見ている。臭いはともかくイシュカとレインのイケメン二人はさぞかし目を引くことだろう。熱い視線が間違いなくこちらに向けられているのを感じる中、裏庭を素通り、風呂場に案内されて脱衣所で服を脱ぐと入ってきた小間使いの女性にそれを手渡した。

 頬を染めてこちらをウットリと眺めた後に謝罪して慌てて風呂場を出ていく。

 若く瑞々しい盛り上がった立派な筋肉の体躯のレインと出来上がった大人の色気を放つ細身の身体にしっかりとついた筋肉を持つイシュカ。スタイルも良く、見事な肉体美の上にある端正な二人の顔に見惚れるのはわからないでもない。

 だけど気分は色んな意味で少し複雑だ。

 『私のなんだからあんまり見ないでよ』とも言えない。

 やっぱ多少臭いのくらい我慢すべきだったかな?

 この二人が鑑賞に耐える顔面とスタイルなのは認めるよ?

 私も悪くはないと思うけど、この二人と比べると線が細いし男らしい体つきとは言い難い。筋肉が付きにくい体質なのか、そもそもこの二人と比べるのが悪いのか。しかしながらイシュカやレインの体躯に自分の顔を乗っけた様を想像して、違和感ありまくりのビジュアルにガックリと肩を落とす。


 ダメだ。

 女顔のチビ(ではないと思うけど)にこの筋肉は激しく似合わない。

 別にお嬢様方の視線を集めて舐めるように眺め回されたいわけではないけれど、なんとなく面白くないし、ムカムカする。

 これは嫉妬だと自覚しているけど、どっちに?

 女性にモテる二人に?

 それとも二人に視線を向けてるお嬢様方に?

 多分後者だろうなと思いつつも、貧相ではないはずだが見劣りする自分の身体に溜め息を吐いて、髪と身体を洗って仄かに香る甘い匂いのする湯船に浸かっていた。


「どうしたのですか?」

 私の不機嫌を感じ取ったのか湯船に浸かっている私にイシュカが尋ねてくる。

 鼻の下を延ばしているというわけでもない。

 二人を咎めるのは間違いだって解っているから言えない。

 私はキマリが悪くてボソボソと答える。

「別にどうもしないよ。二人はモテるだろうなって。

 綺麗なお姉様方がチラチラ視線送ってたよ」

 男臭いというか、男っぽい、滲み出る『男の色気』というヤツだ。

 私には激しくこれらが欠けている。

 よく称される、男前と私を形容する言葉は性格とか気性であって姿形ではないということは知っている。

 顔に似合わずとか、顔に騙されると痛い目を見るとか、その外見で詐欺だとか、そんなことを幾度となく言われた。そういう意味ではこの外見は、一般的見解からすると相手の油断を誘う、適度に間抜けな顔なのだろうと解釈して、利用価値が高いならまあ良いかと割り切ることにしていたけれど。

 こうしてあからさまに差を見せつけられるとチョットだけヘコむ。

 性格って姿形に出るって言うけど、私は出ていないのか?

 色気は無理だとしても、こう、なんというか、外見に。

 いやまだ十二歳、姿形に反映されてくるのは未来(さき)なのか。

 そんな葛藤をしている私の台詞に二人は気にした様子もない。

「そうですか? 特に気がつきませんでしたけど」

「僕も別に。いたっけ? そんな人」

 高級娼館の並ぶ美しいお姉様方が二人には目に入っていなかったらしい。

 あれだけ熱視線浴びてて殺意が無いなら全てシカトか。

 これはなんとも如何ともし難い気がしないでもない。

「常日頃から慣れてるから気にしたことないって?」

 一々気に留めていたらキリがないのは間違いないだろうけれど。

「それは貴方でしょう? 麗しきその(かんばせ)と細くしなやかなその肢体は明らかに目に毒ですよ? 私はいつも見惚れています」

 それはイシュカの私情入りまくりだよね。

 私以外目に入っていなかったとでも言いたいかな。

 それはそれで恥ずかしいような、嬉しいような。

 だが私が見られているのは所謂有名税ってヤツだ。しっかり首もとまで浸かると尚更鼻腔に甘い果実のような匂いが充満する。

 なんの匂いだろうと思いつつ、その薫りに浸る。

 結構この香り好きかも?

 これなら悪臭も消えるだろう。

 なんか匂いに酔いそうなほどにクラクラする。

「貴方ほど綺麗な方を私は知りません」

「僕もそう思う。さっきの女の人達より絶対ハルトの方が綺麗だよっ」

 イシュカに負けじとレインも言い募る。

 相変わらず絶賛欲目贔屓目発動中の二人に少しだけ気分が浮上する。

 まあいいか。

 別にお姉様方にモテたいわけでもない。

 私は私の好きな人達にモテればそれでいい。

 ホカホカと温まる身体にふにゃりと顔が緩む。

 今日も色々と災難もあったけど、好きな人達と過ごせる毎日は幸せだと思うのだ。のんびり暮らしたいと思うには思うけど、そこにイシュカ達がいなければ意味がない。

 だとするなら私はすごく恵まれていると思うのだ。

 自由気儘とは程遠いけれど。

 今日は散々だった。

 朝早くから陛下に頼まれた今回のお仕事のためにせっせと働き、傲慢貴族(ゴ◯ブリ)に絡まれ、腐臭の充満するアンデッドと虫の坩堝に落とされた。

 だが二人には悪いけど、一人で落とされなくて良かったとつくづく思う。

 あんなところに独りでなんて発狂ものだ。

 焦って慌てて対処が遅れたら危なかったかも。


「・・・ありがとう。イシュカ、レイン」

 とりあえず感謝は伝えるべきかと考えてそう言うとレインは首を傾げ、イシュカは不思議そうな顔をした。

「何が?」

「御礼を賜る理由がわかりませんが?」

 二人ともわかってないのか。

 多分ありがたいことに二人の中ではそれが当然と思ってるってことなのだろう。毎度毎度厄介事に巻き込んでしまって申し訳ないと思っているのだけれど、トラブルメーカー体質の直し方というのは知らない。

 以前それをダルメシアに尋ねたら諦めろって言われたっけ。

 やはりこの喧嘩上等のこの性格がいけないのか?

 しかしながらやられっぱなしは性に合わない。

 悪いところは直す努力をすると言いつつ、お前は直す気ないだろうとツッコミを入れられると面目無いと言うしかないけれど。

 ならばせめて感謝の心は忘れてはならないと思うのだ。


「今日、二人が一緒にいてくれて心強かったから。

 ありがとう、嬉しかった」


 呼べばすぐに応えてくれる声。

 それがどんなに大切なものか私はよく知っている。

 味方が側にいて、独りで戦わなくてもいいっていうのはすごく貴重なことだ。

 何度か似たような目に遭ってるのにいまだに苦手って情けない。

「みっともないとこ、見せてごめんね、レイン」

「そんなことないよっ」

 全力でレインにそう否定されて目を丸くする。

 レインはいつも最高にカッコイイって私のことを言ってくれていた。

 それが低ランクのアンデッド、たかが蝿や蛆虫、ゴ◯ブリ程度の虫の集団が怖いなんて、情けないことこの上ない。

 だけどレインは幸せそうに笑って言うのだ。

「頼られてるみたいで僕、嬉しかったんだ。すごく」

 ・・・・・。

 そういうのは反則でしょ?

 迂闊にもトキメいてしまいましたよ。

 私はほんのりと頬を染める。 

「でも、顔、顰めてたでしょう?」

「あれはっ」

 すると今度はレインがちょっとだけ赤くなって、ふいっと目を逸らした。

「あれは、こういう時は今までイシュカに抱きついてたんだって、それを考えたら、なんか悔しくて。どうして僕はその時ハルトの側にいなかったんだろうって。

 そう、考えたら、なんかムカムカしてきちゃって」

 キマリ悪そうに溢れたのはそんな言葉。

 それって要するにイシュカに嫉妬したって、こと?

 なんかこっちの方が恥ずかしくなって押し黙ると更にブクブクと顔の半分くらい湯に潜る。


「ああいうところが御可愛らしいんですよね」

「ズルイよっ、これからは僕の役目っ」

「それは了承致しかねます。私の楽しみを取らないで下さい」


 イシュカのクスクス笑いと共にそんなセリフがこぼれ落ち、レインがムキになって言い返す。そんな二人のやりとりに私は居心地が悪くなる。

 その気持ちはすごく嬉しいよ? 

 嬉しいんだけど、ちょっと、いや、かなり恥ずかしい。

 こんな私を可愛いなんて、やはり二人の目が曇ってるか趣味が悪いに違いない。

 

 視界に入る二人の姿を見ながらそんなことを考えているとなんか頭がボーッとしてきた。

 のぼせてきたかな?

 いつももっと長湯でも平気なのに。


 遠のく意識に二人の声が遠くに聞こえて私はそのままブラックアウトした。



 目を覚ますとレインの腕の中に抱えられ、揺られていた。

 窓から見える景色にそれがコロッセオ近くの馬車の中だと知る。

「・・・あれっ? なんでここに?」

 馬車に乗った記憶はない。

 なのに気がつけばレインに膝抱っこ、なんでだろう?

 記憶を必死に手繰り寄せているとイシュカに聞かれた。

「覚えていませんか?」

 目が覚める前の記憶?

 確か娼館でお風呂を借りて、湯船に浸かりつつ二人に愚痴ともヤキモチとも言えないような言い掛かりをつけていた恥ずかしい記憶ならばあるけれど。

「娼館でお風呂を借りて浸かっていたのは覚えてるよ」

「吃驚したよ。湯船に浸かっていたらブクブクとお湯に沈んでいくんだもん。声を掛けても返事が無かったから慌ててイシュカが抱き上げて脱衣所でタオル敷いて寝かせたんだけど、タオルを掛けて様子見てたら寝息を立て始めたから疲れてのぼせたんだろうって」

 つまりは素っ裸(マッパ)のまま、更に恥の上乗せして寝コケていたと。

 こういうことでよろしいのでしょうか?

 そしてイシュカに抱き上げられ、着替えさせてもらって、オマケに膝の上をお借りしてスヤスヤと、なんの危機感もなく。

 私はどこまで恥ずかしい姿を晒していたのか。

 慌ててレインの膝の上から降りると『ごめんなさい』と言って縮こまった。

「僕は嬉しかったから全然構わないけど? 

 まだ眠いなら僕の膝の上で寝てて良いよ?」

 いや流石にそれは如何なものか。

 甘い香りにほんわかと、酔うように夢の中に落ちたのか。

 自分の腕をくんっと嗅いだけどあの匂いは殆どしない。湯に温められて立ち昇ったからこそのむせ返るような香りだったのだろう。

 するとイシュカが言い難そうに口を開いた。

「娼館の女主人が言うには初めて嗅いだのなら薫りにアテられたかもしれないと。そのっ・・・」

「要は女性が男性を誘惑するための香りってことね」

 納得した。

 あそこは娼館、甘い香りを纏うのは彼女達の仕事の一環だ。

 私は普段あんまり女性と関わる仕事はしていない。ただでさえ屋敷は男まみれ、プライベート空間は言わずもがな、押しかけてくるのはほぼムサ苦しい(麗しい男の人もいるけれど)男性陣ばかり。それを思えばこの世界の女性に対する、特にこういった香を纏うような女の人と接する機会が極端に少ない。

 つまり慣れていないということだ。

 舞踏会はシュゼット任せ、たまに出席しても踊るのはほぼイシュカかレイン、次点でミレーヌ様。最近母様と顔を合わせることも少ない。つまり貴族女性との関わり合いが極端に低いのだ。まだ娼館に通う年でもないし、通う予定もない。

 娼館で風呂を借りたのだ、そういうこともあり得るだろう。

 どうりで甘くていい匂いだなあって思ったわけだ。

「私も一応男だったってことだね」

「一応じゃないよっ、ハルトは僕が目標とする最高にカッコイイ男だもんっ」

 レインの言葉にイシュカが苦笑する。

 イシュカは中身が女だと知っているからこそ明言を避けての苦笑だろう。考えてみると前世では男らしい女らしくない男と言われ続けていたわけで、現在は男らしい言われてる男で見た目は女顔で中身が(一応)もと女。

 複雑怪奇であることは間違いない。

 まあ男も女も人間ってことで。

 おそらく穴に落とされて苦手な状況に置かれたが故に流石の私の太い神経も過重負荷に悲鳴を上げていたということか。

「調子が悪いならこのまま宿屋に送り届けますが?

 準備であれば明日早朝からでも充分間に合いますから」

 イシュカにそう勧められたけど、少し心配もあるわけで。

「大丈夫。とりあえず形だけでも整えておきたいし。

 ライオネル、ランスにシーファもいるから平気だと思うけど一応責任者だもの。私が考えたのは観客無し想定でのものだから、かなり修正しないといけないと思うんだよね」

 陽の下に晒せば灰になるのがアンデッド。

 観覧席を設けた上でそこから様子が見えるようにしなければならない。

「ですが貴方がいらっしゃると貴方を頼る癖が付きます。

 お任せ頂けるなら極力口出しせずに私が監督致しますが」

 ふむっ、イシュカの言うことにも一理ある。

 一応大雑把な道筋は既に説明済。いざとなれば日中なのだ、陽の下に晒せば魔素憑き蛇以外は一掃するのも可能だし、イシュカが見てくれるなら心配もなかろう。

「じゃあお願いしようかな。イシュカを降ろしたら先に宿で休ませてもらうよ」

「では私の代わりの護衛はガイとケイに頼みましょう」

 そこまで過保護にしなくても。

「レインもいるし、大丈夫だよ?」

 私の言葉にレインも頷く。

 馬車で戻るなら御者として最低一人の護衛が付く。

 乗馬用の馬は今回宿屋に繋いだまま。獣馬は近くの港に停泊している客船の上、目立つから今回は一頭も連れて来ていない。明日には商業班が提携先の隣領の領主邸に届けてくれる手筈になっているけれど。

 だけどイシュカはそれに首を振る。

「レイン様が駄目だという訳ではなく、攻守で役割分担するなら最低二人はお側につけるべきです。貴方は気配察知が得意ではありません。

 ここは貴方の屋敷ではなく、他領なのですから」

 ・・・要は私のザル探知能力が悪いってことか。

 そこまで酷くはない、と言いかけて過去のあれやこれやを思い出して押し黙る。

 自分を頼りにされていないと感じたレインが尋ねる。

「それは僕が弱いから、じゃなくて?」

「違います。レイン様にはハルト様を護って頂かなければなりません。手練れが襲い掛かって来た時、貴方がハルト様を守っている間、敵の攻撃は誰が防ぐのですか?」

 いや、私も一応それなりには戦えますが?

 こういう時、何故私はいつも戦力に加算されない?

 そりゃ探知はザルな上に剣の腕は三流を卒業したけれどまだ二流程度。自慢出来るほどではなく、ウェルムの剣の切れ味に頼り切りではありますけども。

 言われてレインが納得して頷く。


「そうだね。敵は一人とは限らない」

「そういうことです」


 私の敵は多いですからね、ごもっともで。

 だがコレは私の責任、自業自得ではなかろうか?

 売られた喧嘩はもれなく高価買取しまくって、理不尽な要求は徹底排除、NOを突きつけてきた結果がコレですよね。


 もう少し穏やかに対処すべきだったかな?

 いやいや、そんなことをすれば遠慮のカケラも配慮もない、一方的なエスカレートした要求を突き付けてくる相手にNOを言わずしてどうするっ! 

 何度血管ブチギレそうになったことか。

 下手に出ればつけ上がる、そんな輩相手にまともな商談などできるはずもない。

 ハイエナとコバンザメに私は興味は御座いません。

 身内だって度が過ぎればブチギレるんですよ?

 前世で私がそれに耐えていたのは、あくまでも身内が他所様に御迷惑をお掛けするのが本意ではなかったからだ。

 他人より遠い存在だと思っていても血の繋がりは切れない。親兄弟が周囲の人に迷惑を掛ければ回り回って親戚その他から苦情が押し寄せ、結局私に責任という名のツケが利子込みで回ってきていた。

 大多数は責任なんてものは取らなくて済むなら御遠慮したいのが本音だろう。

 だが自分が放棄した責任は誰かが代わりに背負うハメになるわけで、好きなことを好き放題やるだけやって、責任だけを余所(わたし)に押し付ける。そんないい加減な生き方をしていたら真っ当な人間ならお近づきになんてなりたくない。

 例に漏れず、前世の私の家族達は御近所、親戚一同に嫌われていた。今頃責任、面倒を押し付ける私がいなくなってどうなっていることか。順当にいけばおそらく私の貧乏クジは長男である弟に回っているんだろうなとは思うけど。

 同情はしない。

 周囲の人間関係はズタズタ、助けてくれる人も期待できないだろうけど、それは本来彼等が背負うべきものだっただけ話。

 私はその世界には既にいませんので頑張って下さいねということで。


 肉親だとて限度を超えれば殺意もわくんです。

 実行するかしないかは別ですけど。

 一方的で理不尽な要求は脅迫と同じです。

 それが血縁関係もない、守るべき仲間でもない、我が領民でもない方々であるならば尚更そんな要求(もの)、我慢して従う理由がないでしょう? 

 限度を超えた要求はタカリと言うんです。

 勿論正当な理由を御用意頂けるなら御意見もお伺い致します。


 そういうわけでお言葉に甘えてケイを御者にガイとレインと一緒に今朝出た宿に戻り、明日に備えて今日は早めに休むことにした。

 イシュカだって疲れているはずだが、それを言ったところで返ってくる返事多分、『貴方とは体力が違います』だろう。意地を張って無理して倒れたら余計に迷惑をかけることになるし、イシュカの部下を育てるべきという意見ももっともだ。

 

 そう割り切ってしまうと、自他共に認める図太い私もやはり疲れていたのだろう。

 うつらうつらと船を漕ぎ始め、しっかり道中熟成させて頂きました。

 それも気がつけばレインの膝の上で。

 一度ならず二度までも。

 

 いやね? 

 なんなら椅子か下に転がしておいてくれて全然構わないのですよ?

 固い床では眠れないとほざくほど、お上品な育ちはしていません。


 私の婚約者達(ガイを除く)が過保護過ぎて、このままダメダメになってしまったらどうしようかと苦悩しつつ、


 結局甘やかされるのが嬉しい私だった。

 

  

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