第百十五話 能天気なのは悪いことではないでしょう?
悪党の末路に然程の興味はないが、一応ヤケを起こして庶民の皆様に迷惑が掛からないだろうかと心配はしていた。
だが後日報告によるとマーべライトは親戚を頼ってなんとか食い繋ごうとしたらしいが魔王を恐れて受け入れてもらえず、働くという言葉を知らない男が仕事などできるはずもなく、以前持っていた、今はない伯爵家の権力を振り翳し、関わりのあった平民の経営する商会にタカろうとしたらしい。当然既にない権力など通用するはずもなく店先でブチ切れ、暴力事件を起こして投獄、今は島送り待ち。カイザックは僅かに残った手持ちの金でシルベスタを出国、再起しようとしたものの護衛もなく、身を守る術のない金持ち風情を漂わせた男が治安の悪い町で無事でいられるわけもなく、追い剥ぎにあって河川敷で死体となったらしい。
因果応報。
犯した罪はやがて形を変え、いつか自分に返ってくるものだ。
そしてカイザック商会が潰れたものの彼の経営していた高利貸しの債権は結局デキャルト領主のベルデンとウチが共同で精査することになった。
所謂残務整理というやつだ。
金庫にあった債権を持ち帰り、サイラス達にお願いして書類を調べて残っている。
借金は引き続き回収を、既に返済が終わっているものはその本人に連絡する必要が出てくる。
こういった書類の管理期限は五年。
まだ返済し続けていれば別だがそれ以前のものはわからない。結構な量でウチの商会の数字に強いメンバーが何人か今は手伝っている。
電卓なんてものは無いしね。
そうなるとそれに当たるものというと前世のソロバンくらいしか思いつかない。
とはいえ、私も正式に習っていたわけでもない。
うろ覚え程度に覚えているのは足し算引き算くらい。それでもないよりマシかとテスラにお願いして設計図を引いてもらい作ってみることにした。
ああいうものも作ってしまえば頭の良い人が色々考えてくれるだろう。
所詮他人任せ、危機管理以外では『だいたいね』が私の基本である。
私みたいな凡人に必要以上の期待をされたところで応えられるわけもないからだ。
結局のところ、平民は読み書き計算も出来ない人もそれなりにいるわけで利子というものがどれほど付くものか計算出来ていない人もいる。
結果、そこに付け込まれ利息と称して支払いを続けさせられている人もいるわけで、勿論本当に借金を返し終わっていない人もいる。整理が済んだ時点で国に連絡し、その指示を仰ぐことになっていたのだが、既に返済が終わっているものは今の法律では救済措置はないらしい。
まあそれも致し方なし、既に終わっているならば他人事。諦めてもらうしかないだろう。カイザックの毟り取った金を私に返金を求められても困るのだ。余所の商会がやっていたことまで責任取るほど私は善人ではない。
とりあえずザッと計算してもらったところで半分くらいは既に返済終了していたらしく、残りの返済義務のある金額は金貨一万枚が少し切れるくらい。思ったより少なかったのはデキャルト伯の借りていた金額がその大半を占めていたのが理由のようで、大口が一気に返済したためにこのような金額になっていたそうだ。
考えてみれば一般家庭の両親共働き世帯の収入は金貨八枚程度。稼ぎ頭の父親が金貨五枚前後で後はそれ以外の人達のパートやアルバイト、内職収入だ。普通に考えればそこまでの金額が足りなくなることは殆どないし、稼ぎの少ない家に金貸しが回収不可能な金額を貸すわけもない。後は地元の商店や食堂などの借金がおおよそ三分の二くらい占めていた。
これを纏めて国に報告。
結果、回収業務を引き継ぐ代わりにウチが三分の一、国が三分の一、残りをデキャルト領が三分の二、マーべライト領が領地復興資金に配分され、マーべライト領地管理は遠縁の優秀な若手が跡を継ぐことになり、この春に領主に着任予定だそうだ。
ウチの取り分がヤケに多いような気がするのだが、むしろこれは少ない方だとマルビスが言う。借金などというものは回収に人件費がかかるし、返ってくる保証がないからこんなものだと。
だが一々返済される度に計算するのも面倒だ。
そこで全ての債権をウチが買い取り、国とマーべライト領に払う金額を一気に納め、デキャルト領の分は私への借金返済に当て、債務者達と返済計画を相談。一般庶民の方々の大半にはウチの仕事を割り振ることで労働で返して頂くことにした。返済可能な店舗経営者達には引き続きウチの店舗の窓口に返済を、返済が厳しいという店は営業権と店を買い取り雇われオーナーとして働いて頂き、運営、経営指導に関わり、回収していくことになった。
こうしてありがたくもまた新たに労働力を確保したわけだが私は何をしているかといえば今はサキアス叔父さんのところでフリード様にお時間を頂きヘンリーと一緒に聖属性についてのお勉強会だ。
なんでそんなことをしているのかといえば、私がフリード様に尋ねた質問がキッカケだ。
怪我人を治せるのなら植物にも聖属性魔法が使えるのではないのかと。
前世で読んだ異世界もののライトノベルなどにもよくあったではないか。
草木に魔力を注ぐことで枯れた木を元に戻したり、種を発芽して成長を促したりと色々と便利な使い道が。そこで聞いてみたのだが、そもそも聖属性持ちが少ないために植物にまで研究費が回されなかったということらしい。
『植物に使うくらいなら怪我人を治せや』ということか。
そりゃまた至極ごもっともな御意見で。
植物はまた育てれば良いが人は死んだら生き返らない。
少しずつ民間医療も発達はしているらしいのだが、まだまだ聖属性魔法と薬草から作られるポーションがメイン。薬草といっても種類があるはずで、ポーションが作られる薬草以外にも怪我だけでなく、病気に効く植物があるはずなのだ。
所謂漢方というヤツだ。
前世にあったものはここの世界にあるものも多い。
そこで商業ギルドに問い合わせてテスラに現在調べてもらっている。
結局のところ、聖属性持ちの私に怪我人が押しかけて来ないのも、少々の怪我なら自然治癒で、多少であれば民間療法で、大怪我だと私のところに運び込まれるまでに出血多量で亡くなってしまうことが殆ど。ポーションか町の神殿にいる聖職者の聖属性持ち達に頼る他ないのが現状なのも仕方がない。私が居合わせた現場でたまたま怪我をするという事態など滅多にないだろうし、戦場でもなければそんな事態にはほぼ出会さない。そして魔法やポーションに頼りすぎると人間の持っている自己回復力が落ちる傾向があるといわれている。だからフリード様は戦場でない限りはなるべく完全回復手前で止めて後はその人の回復機能に任せているそうだ。
つまり身体の回復機能にも怠けることを教えてはならないってことだ。
それに魔法を使うということは体内魔力量を減らすということ。
各国の間でも神殿は戦争時でも攻撃してはならないと取り決めされているらしい。要するに前世でいうところの赤十字みたいなものなのだろう。だから基本的に神殿の外にいる者に対してはその身の保証が出来ない場合、その人が自ら申し出ない限りそれを求めてはならないという暗黙の了解があるそうだ。魔力消費をした後に襲われたら自衛できなくてその人が攫われたり死んだ場合にはどう責任取るんだってことね。
他にもその他諸々の理由あって、結果私のところに来ていないと。
確かに私がお人好しだったなら怪我人沢山送り込んで魔力を空にして襲うという手段もある。私の基本は魔術戦闘、魔力が空っけつになったところを襲われたら少々格闘技の心得があるタダの小僧。かなり高確率で暗殺されそうだ。
私が今まで魔力が空になっても無事でいられたのは側に守ってくれる人が、イシュカやガイ、ライオネル達がいたからだ。
貴重な術者を植物にまで回せないという理由もわからなくはない。
ってなわけで、フリード様も知らない聖属性魔法の植物への活用術について同じ聖属性持ちでそういったことに詳しそうなサキアス叔父さんに尋ねに来たというわけなのだが。
「ないこともないぞ? 年々聖属性持ちが生まれてくる確率が減ってきているんですっかり研究自体は廃れてしまっているが」
「減ってるの?」
それは知らなかった。
「ああ。原因は不明だがな」
叔父さんに問い返すとそんな言葉が返ってきた。
それで思い出したのは以前読んだ父様の本棚にあった書物。
例の子供の頃無意識に取捨選択されて消えていくというあの説だ。
必要と認識していないから消えるとすれば逆説的に言うなら必要であると幼い頃に思えば使えるようになるということだ。持っている属性に地域差があるのがそのせいだとするならば聖属性が産まれやすい地域もあるのではないかと思うのだが。
とりあえず聞いてみるとしよう。
「聖属性持ちが出やすい地域とか傾向ってあるのかな?」
「血筋ではないかとも言われているぞ。親が聖属性持ちだと二、三割の確率で子供が持っている可能性がある。後はそうだな、山や森に囲まれた田舎町出身が多いんで自然が関係しているのではないかという説もある。ハルトも私も自然の多いグラスフィート生まれだろ?」
親がということは神殿で産まれた子供ってことか。
つまり聖属性が身近にある環境ってことだ。
そして自然の多い環境ということはそれだけ王都から離れているわけだから危険も多いし、地方の神殿には配属される聖属性持ちも少ない。そうなれば子供の死亡率も当然高くて魔獣被害も多いから必要と思う子供がいるってことなのかな?
だからこそ属性として残る。
自然が関係してるって説はあながち外れてもいない。
話を聞いていたフリード様が会話に入ってくる。
「私も王都が近いとはいえ田舎町出身だ」
「逆に王都では聖属性持ちが生まれにくいな。
聖属性は扱いも難しいし貴重だ。発見されると保護されることが多い」
叔父さんが補足するようにそれを教えてくれる。
やっぱり。
街は便利過ぎて命の危険も少ない。
だからこそ必要性が低いために属性として残らないってわけだ。
考え込んでいる私にフリード様の声が聞こえてくる。
「そもそも絶対数が少ないんでそれを教えられる人間も少ないしな。それ故殆どが神殿で育てられる。ハルトやサキアスみたいな例はかなり珍しい。神殿に入る前から使えるというのはな」
一般的ではないから呪文を知らない。
だから教えられないから神殿に入れられると?
「つまり叔父さんや私は教わる必要がなかったから神殿に入る必要がなかったってことですか?」
「それもあるな。私は神殿に一度入っている。田舎では貴重なので聖属性持ちが出ると金貨百枚がその町や村の運営資金に寄付され、家族にも同額支給される。それ故、神殿に預けられることが殆どだ。
私はたまたま武術の方に才があったんで聖騎士隊に所属し、そこから功績を上げて近衛連隊長となった珍しい例だ」
要するに聖属性が子供に出ればある意味一攫千金、町や村も潤うから神殿に入れないと肩身も狭くなるわけか。
だけど神殿育ちから連隊長ってすごい出世じゃない?
私は目を輝かせてフリード様を見上げる。
「やっぱりフリード様は凄いんですね」
それだけ努力したってことだ。
嬉々として話に喰いついた私にフリード様が苦笑する。
「君に言われてもね。神殿で学ぶ前に使えることの方が稀なのだよ」
「そうなの?」
それって謙遜だよね、多分。
私が尋ねるとヘンリーが教えてくれる。
「そんなことはない。聖騎士までならなくはないが連隊長というのは稀だ。
だが同時に候補が多数上がれば有利なのは事実だ。
戦場の前戦で治癒、回復できるとなれば強みになるからな」
でも何百っている騎士の中で候補に上がるだけでも凄いと思うけど。
だけど確かにヘンリーの言うこともわからなくはない。
それが顔に出ていたのか叔父さんが私を見て笑う。
「私達みたいに神殿に入る前に使える者も珍しいことは確かだ。
金貨百枚は大金だ、平民や資産に余裕のない下位貴族の中で産まれると使えたとしてもほぼ神殿行きになる。聖属性を持っていたところで使えなければ宝の持ち腐れであることを考えるなら普通は神殿に行くべきだろうな。
神殿で育てられた方が安全だ。
聖属性持ちの子供は他国でも貴重だ、高値で売れる。
財政的に厳しいのであれば神殿に入れた方が身を守る意味でも賢明だ」
人身売買ね、成程。
ああいうものは全部止めるのは難しい。
禁止したところで需要がある限りは無くなりはしない。
どんな法律にも抜け道はあるし、名を変えて蔓延るだけだ。
例えば強制労働、保護、身受け、養子縁組、まだまだ他にもある。
本人の意思と承諾がなければどれも大差ない。
後付けの言い訳などいくらでもできる。
「叔父さんはどうやって覚えたの?」
「私は小さい頃に弟が怪我をしてな。神殿に治療してもらうために一緒に出掛けた時に見て覚えた」
流石私と違って本物の天才。
子供の頃から普通ではなかったのか。
「もっとも聖属性持ちは神殿に行くのが常だと聞いて、それが嫌で学院に上がるまで隠していたが。学業の成績も良かったので私はそのまま学院に残された。聖属性魔法の研究のためにな」
神殿行きを免れた結果が学院でのモルモットか。
「なかなか大変だったんだね、叔父さんも」
「いや? 面白かったぞ。好きな研究に没頭出来て」
・・・・・。
叔父さんに聞いた私が馬鹿でした。
半モルモット状態も自分の探究心を満足させる研究対象か。
人のことを言えないがたいした図太さだ。
「ハルト、お前は?」
「私は書物だよ。随分古かったけど父様の書棚にあったから、それで覚えた」
叔父さんに聞き返されて答える。
「そういえばハルトは歩きも覚束ないうちから義兄さんの書斎で書物を読んでいたんだったな」
それだけ聞くと私も天才児に聞こえてくるから本当に詐欺だ。
私が異世界転生して唯一のチート能力。
言語読解能力。
自分の趣味に走って書斎に入り浸っていた結果がこの状態であることを考えれば私も叔父さんと似たようなものか。
「・・・うん、まあそうかもね」
なんとも微妙な気分になって私はそう曖昧に答える。
色々と突っ込まれても答えられないことも多い。
「で、植物に使えるのか、ということだったな?」
良かった、話がもとに戻った。
叔父さんにとっては私の過去などその程度の興味ということだ。
「確かハルトの書斎の書棚にあったはずだぞ?
以前、陛下に賜ったヤツだ。覚えてないか?」
それは勿論覚えていますけどね。
読みたいのは山々なんですよ?
だけど私は叔父さんと違って外に出ていることも多いんだよ。
何百なんて本はすぐに読めやしない。
「まだ全部目を通してないんだよ。なかなか暇が無くて」
「成程な。では場所をそちらに移すか」
そうして私達はゾロゾロと集団で移動しはじめた。
サキアス叔父さんとヘンリーを連れたこの御一行は歩くとそれなりに道が空いた。
相変わらず恐れられているのか。
私とは別の意味で。
スタスタと歩き、三階の私の書斎までやってくると叔父さんがゆっくりと本棚を眺める。
「確かこの辺りにあったはずだが・・・ああ、あった。これだ」
よく覚えてるなあ。
私が覚えているのは自分のお気に入りだけだ。
叔父さんの言い方からすると然程興味もなかったみたいなのに背表紙だけでわかるとは。
さすがはエセ天才児の私と違ってまごうことなき天才。
しかもパラパラとめくってほらこれだと言わんばかりにそのページをすぐに開く。
私はその本を受け取って横にいたフリード様と眺める。
随分と古い本だ。
呪文とその魔法陣、その効果と考察が描かれている。
ランク的に聖属性中級と位置付けられているみたいだけど、陣の精密さからすると上級よりみたいな気がしないでもない。だが、開発が途中で止められたというのなら効率化される前のものということも考えられる。例えるなら昔大きかった家電製品が開発が進むたびにコンパクトになるみたいな感じだ。呪文も重複してそうな文言もあるし実に微妙なところだ。
「叔父さんは使える?」
「いやまだ試してない。私はそんなに魔力量が多くないしな。
どうせならついでだ、例のデキャルト領の試験土壌で試してみるか」
興味はあったけど魔力量が不安だから諦めたってことね。
それで私が興味を持ったからやらせてみようと。
こういうことでいいのかな?
私の言い出したことだ。
無駄に多い魔力量があることだし構わないけど。
「でもこれって聖属性って位置付けられてるけど使われている呪文は水と土属性っぽい記述もあるよね?」
植物が育つために必要なものであることを考えればおかしな話ではない。
「そうなのだよ、そこが面白いところなのだ。
だが特に珍しくもないだろう?
上級になればなるほどそういう傾向がある。発動しても同程度の魔力量であるはずなのに使用者によって威力に違いが出たり、遣い手を選ぶ魔法も多い」
要するに団長が同じ上級魔法でも上級発火系攻撃魔法と最上級爆発系攻撃魔法が使えるのに最上級火炎系攻撃魔法が使えなかったのは団長の持っている属性が火、光、土だからみたいなことでしょ。つまり、
「その人の持っている属性の関係してるんじゃないかってことでしょ」
「そうだ、私の考えていることがよくわかったな」
わかるも何も、別に普通のことだと思うんだけど。
だから聞いたことはないけれど、おそらく火と風属性を持っているライオネルは団長と逆。上級発火系攻撃魔法と最上級爆発系攻撃魔法は使えないけど、おそらく最上級火炎系攻撃魔法は使える。
私がその三つ全部が使えるのはおそらく全属性持ちだからだ。
叔父さんと私の会話を聞いていたヘンリーが興味なさそうに宣う。
「それは昔から研究者の間ではよく言われている話だろ。
自然界にある力を借りれば発動しないわけではないが威力が極端に落ちたりすることも多い。その可能性は以前から指摘されている。そんな話、今更だ」
叔父さんはヘンリーの言葉に頷く。
「ただでさえ聖属性持ちの者は少ない。
更にその三つの属性を持っている者となれば滅多にいない。
結局植物関係の魔術の研究が進まなかったのもそれに必要な三つの属性を持っている者でなければ発動が難しいからこそ廃れたのではないかと私は考えるのだよ」
つまり叔父さんが言いたいのは人間優先にされたということではなく、それを言い訳に放置され、廃れたと言いたいのか。
そしてそれに納得したようにフリード様も頷く。
「一般的に一人が持っている属性は平均して二つ程度。
一つか二つというのが普通だ。三つ持っている者の割合も少ないし、それ以上となれば更に珍しい。その上で聖属性持ちでならなければとなると確かにな。
使える者の絶対数が少なければ研究も遅々として進まない、当然だな」
「だが考えてみればここには幸運にもその珍しい存在が現在二人もいる」
叔父さんが拳を握り締め、嬉々としてそう叫んだ。
いっ、嫌な予感がっ・・・
私は背筋に悪寒を走らせた。
「成程、確かにそれは面白い。
過去に置き去りにされた魔法技術の再開発か。実に興味深い」
ヘンリーの目が叔父さんの言葉に爛々と輝き出す。
そしてその魔法陣についてああでもない、こうでもないと考察し始めた。
これはひょっとして、いや、ひょっとしなくても私はまた墓穴を掘ったのではなかろうか?
それもとびっきり特大級の。
「とりあえずハルトッ、この魔法を使って見てくれっ」
・・・・・。
やはりそうくるのか。
まあいいや。
とりあえず二人ともヤル気を出してくれてるみたいだし。
私も興味があるのは間違いない。
これが使えるようになったなら干魃被害もなんのその、自然破壊が進んでいて砂漠化している大地にも魔法で緑が復活する可能性もある。
この際、早々に割り切ったほうがいい。
優秀な魔法学知識を持つ二人の天才が折角揃っているのだ。
楽しんだほうがお得だろう。
そう考えてしまう私は所詮能天気な人間なのだと思った。




