第百七話 まだまだ未熟者なのです。
翌朝、御婦人達を新たに加えて屋敷に戻ることにした。まずは安全確保のために女性達を移動させてしまった方が良いだろうという話になったからだ。
ああいう色欲ボケした貴族や権力欲に取り憑かれた高利貸しは総じて自分の思い通りにならないと卑怯な手や暴力で自分の思い通りにコトを解決しようと思うヤツも多い。
魔獣避けたる私が一緒なら町の街道沿いよりも行きと同じく山間を抜けるのが早かろうと森に向かって進路を取る。
詰めれば馬車の中に乗れないでもなかったが女性の方々に窮屈な思いをさせるのは如何なものかと考えて私はノトスに跨った。
私が馬車に乗らなければその分の荷物も積める。
彼女達に向こうでの仕事の種類についての説明もマルビスとロイが説明してくれてるみたいだし、長い道程、時間があるならその方が手間も省けて会話も弾んで良いだろう。
でも少しだけ気になったのはアンディの妹君の様子。
どうやらロイを気に入ったみたいだ。
そういえばロイ達が私の婚約者だとは紹介していなかったっけ。
婚約破棄されたって言ってたから彼女はフリー。
言っておくべきだっただろうか?
でも今更それを主張するのも必死に牽制してるみたいで情けない気がして私はイシュカと馬車の前を先導しつつ気になって、つい後ろを見てしまう。
きゃっきゃっと聞こえる女性の楽しそうな甲高い声が耳に響くのだ。
幾度と振り返る私にイシュカがクスリと笑う。
「気になりますか?」
そう問われて私は顔を顰める。
そりゃあ気にならないって言えば嘘だ。
だってロイは優しくて、外見も中身もイイ男。
あれでモテない方がおかしい。
父様の屋敷にいた頃はロイ自身も領地経営が傾いていた父様の秘書兼執事業で忙しくてそれどころじゃない上に、そういった視線に慣れていたらしいロイはシカトというより気に留めることもなく普通に仕事していたのを覚えている。恋愛沙汰に持ち込もうとしていた女の子達をメイド長のリザもキッチリ管理っていうか監視してたみたいだったのは覚えてる。年齢差と性別のこともあって、あの頃はまさか婚約者にまでなれるなんて思ってもみなかったけど。
アンディの妹君は色ボケジジイ二人が気に入っているだけあってすごく可愛い感じの庇護欲をそそる美人だ。
歳だって私よりも六つ上の今年成人の十五歳、ロイと並ぶとお似合いだなんて思ってしまった。
私みたいな色気のない子供より綺麗な女の人の方がそりゃあいいよね?
押し黙って俯いた私にイシュカが再び口を開く。
「大丈夫ですよ。何も心配なされる必要はありません。
貴方以上に魅力的な御方は世界中のどこを探しても絶対におられませんから」
・・・・・。
だからそれは欲目贔屓目全開の側近バカたるイシュカの意見でしょ?
イマイチその辺りだけは信用できないんだよね。
でもまあいいか。
そう言ってくれるのが嬉しいことに変わりはないんだから。
「ありがとう、イシュカ」
「私は事実を言っただけです。御礼を言われるまでもありません」
だからそれが欲目だというのだ。
そこそこ見られる顔だとは思うけど、やっぱりみんなに比べるとどうしても見劣りしているような気がしてならない。
男は中見だと主張しようとしたところでロイ達は中身も抜群だ。
しかしながら彼女達はそれなりの血筋の貴族、教育もしっかりされている。
平民の従業員達とは別の仕事も頼めそうだし、得意分野がハッキリし過ぎてる隔離病棟の寮からも教師ができそうな人を探して学院に通えなかった平民の子供達の学校でも作ろうかな?
魔力量が低くても優秀な子供はいるはずなのだ。ついでに職業訓練校みたいなのを設立して、卒業生にウチの商会に就職斡旋するのはどうだろう?
要するに青田買いってヤツだ。
まずはウチの従業員向けに、既にお願いしているフリード様の奥様と御母上にも相談して、敷地内に作れば学費代わりに空いた時間でアルバイトをしてもらって。魔法の適性が低くても頭のいい子供がいるはずなのだ。魔法に頼り過ぎない生活ができるように改善していけば、そういった技術を持つ者の付加価値も上がるのではなかろうか。
些か今のこの世界は魔法に頼り過ぎるきらいがある。
魔法、魔力がなくたって豊かな生活は出来るはずなのだ。
それは前世の世界が証明している。
便利な魔法があるから発達していない技術もあると思うのだ。
そんな案に考えを巡らせているとアンディと一緒に最後尾に付いていたはずのガイがイシュカの隣に並ぶ。
何かあったのかと問う前にガイがイシュカに問い掛けた。
「イシュカ、気づいてるか?」
表情を変えることなくガイがボソリと漏らすとイシュカがそれに頷いた。
「ええ。検問所を抜けた辺りから不審な影が付いて来ていましたよね?」
嘘っ⁉︎
ボンヤリしてて気付かなかった。
いくら馬車の中が気になったからってそれに気を取られて気が付かなかってのはダメでしょう?
そりゃあまだまだ殺気や気配を読むのは下手でイシュカやガイ達には到底及びはしないけど、それでも少しは上達したかと思ってたのに。
ズドンッと地中深くにめり込みそうなほど気落ちした私にガイが笑う。
「無理ねえって。今回のヤツらは隠すのがそれなりに上手い。
まだ馴れてねえ御主人様には無理だ」
これは慰めてくれてるのかな。
やはり私はまだまだ修行が足りないらしい。
シュンッと落ち込んだ私をぽんっと軽くガイが叩く。
前を向いたまま視線だけを斜め後ろに流した後、ゆっくりと射るような視線をガイは少し遠くの前方に向ける。
つまり前方と後方にいるってことね。
後ろにいるのが付いて来たヤツらで前にいるヤツらが待ち伏せなのかな?
馬の蹄の音が聞こえて来なかったということは背後の方は走って付いて来たってことだろう。そうなると間違いなく速力強化の風属性持ちはいるってことだよね?
動揺を態度と顔に出さないように気をつけつつガイの声に耳を傾ける。
「数はそこまで多くないな。十九、いや、二十二か。全部ではないが雑魚とは少し違う。多分、いつもの野盗じゃねえだろ」
ってことはつまり、
「例の好色ジジイの差金かな?」
借金の肩代わりをして女性二人を玩具にするつもりだったという貴族、もしくは伯爵家を乗っ取るつもりでいたあの高利貸し。
私が尋ねるとガイが少しだけ考えて口を開く。
「捕まえてみないとわからねえが、確率八割ってとこだな」
「それはほぼ確定みたいなものですね」
イシュカは呆れたようにため息を吐く。
手に入る予定でいたソレのアテが外れて奪い取りに来たってことかな?
駄々っ子じゃあるまいしイイ歳した大人がやることですか?
バカらしい。
自分の物は自分の物、他人の物も自分の物とでも思っているのかな?
アンタはジャ◯アンか?
世の中なんてままならないことの方が多いんですよ?
知らないんですか?
イラッとして私はムクれる。
これは完全に八つ当たりだってわかっていますよ、勿論。
私の虫の居所が悪い時に仕掛けてこないで下さいよ。
手に入れたいと思うなら女性は心を込めて口説くものであって強引に金で買い取ろうとしたり不埒な輩を使って攫うものではありません。
だから貴方はモテないんですよ?
金の力をフルに活かして買い漁るのが精一杯なのでしょう?
イイ男なら女性が自ら寄って行くものですよ?
まあここでそれを力説したところでソイツらの耳に届くわけでもなし。
周辺の気配に神経を集中してみれば、成程、言われればガイのように何人かまではわからないけど数人くらいの気配を隠すのが下手な輩の察知は私でもできる。でもガイの言うように私が索敵できたのは数人程度。つまりそれなりの手練ってことね。
全く面倒な。
私は眉を顰めて尋ねる。
「ガイ達なら勝てる?」
「楽勝、と言いたいところだが守りながらだとチョットばかり厳しいかもな。間を抜けられるとマズイ」
要するに後ろを気にする必要がなければ余裕で勝てるってことか。
「バラけられると厄介ですからね」
非戦闘員であるロイとマルビス、御婦人達に危害が及ぶのは絶対駄目。
チンピラ程度ならロイもマルビスも対応出来るけど、ガイ達が警戒するほどとなると相手にするのは厳しそうだ。
私は少しだけ俯いて考える。
「強化魔法を掛けてくれ。御主人様は前に出ず、護りと援護を頼む。
一応後ろのヤツらには既に伝えてある。このまま御主人様はさりげなく後ろに下がって他のヤツらにも強化魔法を頼む」
それくらいならお安い御用ですけどね。
「ロイ達には?」
「アイツらにも一応は伝えてある。女にはまだ言ってないみたいだけどな」
ガイがチラリと見た馬車の中からは明るい女性の声が聞こえてくる。
まあいきなり静かになって気付いているのを向こうに勘付かれてもマズイし、こちら側の対処の仕方が決まるまでは言わない方が無難か。
怖がって悲鳴を上げられでもしたら一発アウト。
作戦を立てる暇も準備もなく襲われる可能性がある。
折角襲撃される前に察知出来たこちらのアドバンテージがなくなる。
ここが山間であることを考えるなら馬車を引く馬に傷をつけられるのもマズイ。
いくら私が魔獣避けとしての御役目を果たしていたとしても人間も魔獣も集団になれば気が大きくなる。好物の血の臭いが大量に流れ、充満して漂えば興奮状態になって襲い掛かられないとも限らない。
となれば、必然的に極力流血沙汰は避けたいわけで。
向こうもそれを考えないことはないだろう。
そうなると、向こうの考えそうな手段は・・・
「じゃあ、さ。とりあえずこの辺で昼休憩にしない?」
私のこの場に不似合いな呑気な言葉にガイが目を見開く。
馬もこちら側の人間も守りつつ、極力血が流れない方向で、まあ、襲ってきた輩がどうなろうと知ったことではないけれど。
こんな場面で襲撃をかましてくる輩がマトモな仕事に就いてるわけもない。
最悪縛って置き去り、魔獣達を引きつけるエサになって頂けばいい。
私達はその間に馬車を全速力で走らせてこの場から立ち去るってことで。
悪人にかける情けは生憎私は持ち合わせていませんし、こういうことをしているってことは躊躇いなく命乞いをする多くの人を手に掛けてきた人達ってことでしょう?
私は聖人君子ではないですから。
仲間に犠牲出すのと悪党を見捨てるの、どちらを選ぶか聞かれたなら迷うことなど一切無い。
この世界はお人好しが安穏と生きていけるところではない。
特に私みたいに権力者階級に敵が多い場合には尚更だ。
他人を殺害する意志があるってことは当然反撃されて自分が死ぬ覚悟も当然あるんですよね?
殺すか殺されるかの二択を迫られて悪党に首を差し出す真似などしませんよ?
大人しく命以外の全てを差し出したとしても助かる保証なんて無いんですから。
それは正当防衛って言うんです。
私はすまし顔で口を開く。
「腹が減っては戦は出来ぬって言うじゃない?」
私の言葉に察したらしいイシュカが頷く。
「そういうことですか」
馬車を止めて食事をするということは別に珍しいことでもなく普通のこと。
そしてそれには漏れなくあるルーティンがあるわけで。
「だから、さ。結界張って隠蔽掛けるよ」
二人にだけ聞こえる声で私がそう言うとガイも気が付いたようだ。
「ああ、成程な。面白いんじゃねえ? それ」
「馬車を止めるからガイ達は見回りに出てくれる?」
私がそうお願いするとガイはニタリと笑った。
「了解。じゃあ一応イシュカとシーファは残れよ。流石に全部出払うのはマズイ」
「わかりました」
イシュカが頷くとガイは連絡を回してくると再び後ろに下がっていった。
ガイが定位置に戻ったところで、それを横目で確認したイシュカが道が大きくカーブ手前で馬車を停める。直線よりは繁る木々の陰で向こうからこちら側が確認しづらいからだ。
前方の襲撃犯らしき一団はすぐに動かない。
と、いうことはやはり待ち伏せするつもりだったってことなのだろう。
来ると判っていれば多少の不利も罠を張ることで覆せる。
装備や武器だって運んで準備しておけるだろう。
時間的に考えて、たいした準備が出来るとは思えないけど。
領地の兵を動かせば陛下に行動がバレる。
送り込めるとしたら子飼いか雇いの暗殺者か。
一昨日の高利貸しから例の貴族に話が回ったとしても、距離的に早くても夜半過ぎ。だが怠惰で横柄なああいう連中がそんな真夜中に、突然やって来た平民の高利貸し業者の戯言を自分の睡眠時間を削ってまで話を聞くとは思えない。仮に夜に聞いていたとしてもお金を準備して、依頼を出すのにだって時間がかかる。そこから私達の動きを探らせて悪巧みをし、子飼いの兵士や殺し屋なり、必要な暗殺者を雇用してこちらに向かわせるのに最低半日以上。同じ領地内というならまだしも更にそこから怪しまれずにここへ駆けつけてくるのに半日。
たかが二十人そこそこで魔獣の動きが活発になる夜の森に待機してそれと戦い、戦力を削る真似は普通に考えればしないだろう。
となれば必然的に襲撃者達が私達を襲う準備が出来るのは今日の明け方以降。
つまり朝早くから出発して来た私達に対して取れる策はしれている。
おそらく向こうの想定以上には早いはずだ。
だが油断は禁物。
準備して待ち構えているそこに、わざわざ出向いて差し上げる理由もない。
逆に襲いやすい状況に見せ掛けてこちら側のペースに持ち込む。
まずは女性を馬車から降ろさずに昼食の支度を始める。
こちらの手筈が整ったところで行動開始だ。
呑気に獲物が馬車を停め、ゆっくり食事の準備に取り掛かり、護衛兵の大半が見回りに警護対象者から離れたらどうするか?
それは考えるまでもない。
間違いなく千載一遇のチャンスと考えるはずだ。
まあ私なら逆に怪しすぎて見送るけどね。
警戒して襲って来ないというならそれでもいい。
それは多分何かしらの仕掛けがしてあるということなのでこっちは回れ右で来た道を逆戻り。まだ検問所から然程離れていない今なら山間を避けて多少遠回りになるけれど山脈を迂回すればいいわけで、向こうも予定が崩れて体制立て直すには多少時間がかかるはず。一頭獣馬を走らせて女性の方々には申し訳ないが商会支店まで全速力、女性の荷物を商会定期便で運んでもらうように手配して獣馬に二人乗りで一気に屋敷まで戻ってしまえばいい。
そうすればあちらは獣馬の脚には追いつけない。
さもなくば女性を一旦商会事務所か宿屋に隠し、私達が空の馬車を走らせて襲撃者達を引きつけ、対処した後で迎えに行くか別便で向かってもらえばいい。
この場を切り抜けられたなら策を練る時間も確保出来る。
向こうの体制さえ崩してしまえば安全性と勝率はグンと上がる。
とはいえ私自慢の専属護衛達がひと山幾らのそんな輩に遅れを取るはずもない。
雑魚は寄せ集めたところで所詮雑魚なのだ。
暫く様子見していた後を付いて来ていたヤツらは私達がすぐに動く気配がないのを確認すると前方で待ち構えているヤツらに報告に向かったようだ。
その隙にこちら側の馬車と馬をなるべく狭い範囲に固め、護衛達に強化魔法をかけ、ロイ達はその間に女性達に事情を説明。
結界の展開と隠蔽魔法の同時発動はさすがに厳しいのでガイの合図でイシュカと協力してイシュカに結界を張ってもらうと同時に私が隠蔽をかけることにする。
向こうの戦力がこちらに集結する寸前にそれを展開、ガイとライオネル達は敵勢力に気付かないフリで見回りと薪と食材調達に向かうと言い置いて馬車の近くから離れ、みんなの姿が見えなくなったところで一斉に多くの矢がこちらに向かって放たれた。
やはりこういう展開か。
女性が馬車の中なら向こうにとって好都合。
先に護衛が減ったタイミングで私達を弓矢で攻撃、倒せないまでも逃走手段である馬を殺せば足を封じられるし、上手くいけば戦力も削れる。残っているのがイシュカとシーファ、私と非戦闘員のロイとマルビス、女性達なら多対少の利があれば迷わず攻め込んでくるだろうと。
だが当然、これはイシュカの張った結界に矢が弾かれる。
向こうもそれなりの実力者が揃っていればイシュカの張った結界ならば壊せないこともないだろう。すぐに壊せると勘違いして頂くためにイシュカにはワザと薄めの結界を展開してもらっている。
時間を掛ければガイ達護衛が戻ってくる。
そうなれば彼らの分が悪い。
すぐに割れそうだと判断すれば全員で一気に破ろうとするだろう。
私達は驚き、慌ふためく・・・フリをする。
当然だがイシュカの結界の内側には強固な私の結界が二重に存在しているのだ。
そう簡単に壊れるはずもない。
ヒビが入り始めたイシュカの結界に調子づいた悪党御一行様はニヤリと勝ち誇った笑みを浮かべてこちらを見た。
私はダイコン役者なのでイシュカの影に隠れるフリ、ロイはシーファと女性達の馬車を前に真剣な表情で剣を構えて護るフリ、そして残るマルビスがヒイイッと悲鳴を上げ、腰を抜かして怯えて這いつくばり、尻餅を付いたままで後ずさるフリというアカデミー賞俳優バリの名演技。大袈裟過ぎるそれに乾いた笑みが漏れそうになり私は慌てて顔を伏せた。
マルビスにあんな才能もあったのか・・・
いや、商売とはある意味騙し合い。
如何に相手より有利を取って稼ぐのかが勝負。
だとすれば一流商人たるマルビスにこの程度の演技が出来ないはずもないか。
調子に乗った襲撃者達は急げとばかりに猛攻撃を仕掛け、背後への警戒が薄くなる。
そのタイミングを見計らい、忍び寄ったガイ達が一斉に飛び掛かった。
出払ったと思い込んで油断していた輩は一気に一網打尽。
あっという間に手際良く捕らえられる。
それを確認すると一気に緊張は解け、ロイとシーファは何食わぬ顔で無表情で剣を降ろし、私はイシュカの陰から出て、マルビスもケロリとした顔で立ち上がり、服についた土埃を払う。
・・・うん。
色々とツッコミたい気がしないでもないけれど、まあいいか。
みんなが無事なら後は瑣末なことなのだ。
無理する必要は全く無いが、取り調べのために何人かは出来れば生け捕りをお願いしたのだが見事に全部で二十二人無事確保。
ホッと息を吐き、結界を解除。
まずは襲撃犯護送のための馬車の確保からか。
ルイジスとランスの二人にまずは検問所近くの村まで至急で戻ってもらい、衛兵に連絡ってところかな。とはいえデキャルト領のギルドだと下手をすれば証拠隠滅とばかりに口封じされないとも限らない。
ここは一旦、ウチの領地に連れ帰り、騎士団に引き渡すべきかな。
そんなことを思案していると不意に後ろからガイの叫び声が届く。
「避けろっ」
ドスッと何かが刺さる音。
緊迫感溢れるその声に振り向いた瞬間、私の表情は凍りついた。