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第七十三話 決して悪気はないのです。


 一仕事(?)を終えて別邸となっている騎士団内の屋敷まで戻ってくるとそこには連隊長がいた。

 今日は学院ホールでのフィアの警備かと思っていたのだが、通常通りの仕事をしていたらしく、ホールの警備をしていた近衛経由で情報を受けたらしく数人の近衛と共に一階のリビングで待っていた。

 

「申し訳ありません」

 開口一番頭を下げて謝られ、私は首を傾げる。

 連隊長達に謝罪されるような案件はなかったはずだがどういうことだ?

「何かあったのですか?」

「貴方が刺客に襲われたとお聞きしました」

 ああ、アレね。

「別にアレは連隊長の責任じゃないでしょう?」

「いえ、貴方に危害が及ばぬよう配慮せよと陛下から指示を受けておりました。例の件でこちらの意見を通し、任せてもらったのだからしっかりと対処せよと申しつけられていたのにも関わらずこのような失態、面目次第もありません」

 やはりそういう指示は出ていたのね。

 道理でここのところ団長も連隊長も仕事から帰ってくるのが早かったわけだ。

「気にしてませんよ、たいして被害もありませんでしたから。

 ああいうトラブルには慣れてますし、謝罪して頂くほどではありません」

「しかしっ」

「では貸しということにしておいて下さい。そのうちツケはまとめて返済していただきます」

 ここで押し問答をしたところで意味はない。

 私がそう言うと連隊長が苦笑する。

「どれだけの借りを私は貴方に返さねばならないのかと考えると恐ろしいのですが」

「ふっかけるつもりはありませんから安心して下さい」

 それに敢えて口には出さないけれど、こういうことは半分くらいは私にも責任あると思うのだ。

 手を出して来そうなのは何もあの領主代行に限った話ではない。

 今回の件にしても犯人が断定されているわけでもない。

 特に罪を犯した覚えはないが、手を出してきた上位の貴族に喧嘩は買いまくり、商業ギルドに依頼を出して地方各地から日雇い労働者をかき集めるために募集をかけて寮に囲い込み、大量に働き手を確保したからおそらく困っている貴族、領地もあるだろう。しかしながらそれは国で特に禁止されていることでもなくて、あくまでも領地間の自由競争、彼等の意思。ウチは地方各地に点在する流通支店の定期便で彼等を運んだだけなのだ。

 やって来る彼等の殆どは旅費を用意出来ない。

 それに地方の領主達は路上生活する彼等を快く思っていなかったところが多く、一応は貴族邸にも了承を取りに行ったのだが反対されることはなかったと聞いている。

 だが彼等がいなくなれば今まで安い賃金で働いてくれていた労働力がなくなるわけで人材、働き手の確保に苦労しているところもそれなりにあると聞く。それは逆恨みで文句を言われる筋合いはないし、治安も実際よくなっているらしい。

 筋もちゃんと通して許可を得てる。

 考え無しに頷き、喜んで引き渡した方が悪いとは思うのだけれど。

 なんにせよ恨みを買う覚えは多数ある。

 いくら了承を得たとしても深く考えることなく許可したことが自らの首を絞めてしまうというのはよくあることだ。だからこそ他人の意見には耳を貸すべきなのだと思うのだが大抵の場合において貴族というものは他人から命令されることを嫌い、自分より下と見ている者の意見を聞き入れない。

 私は少し考えてからまずはイシュカに聞いてみた。

 

「領主代行、ウォルトバーグの件でイシュカはガイから何か聞いてる?」

 おおよそのことは聞いているけど基本的に私はあまり現場のことには口を出さない。事情をよく知りもしないで口を出しても指揮系統が乱れれば現場は混乱すると思うからだ。

 勿論、意見や助けを求められれば協力も援助もする。

 みんな私が耳に入れておくべきこと、知っておくべきことは連絡してくれるし、商会自体が巨大組織化しているので全部把握するのも難しい。自分にそこまでの能力がないならば信頼して任せるのが最良と思っている。

 どう考えても私に不似合いな『ハルウェルト商会トップ』の肩書きは背負い切れているとは思えないので早く私に変わる相応しい人を見つけたいとは思っているが、私の周囲の者達に言わせると私以外の誰に務まるのだと言うのだ。

 そのあたりは全然全く納得できないのだが。

 今回の件についてもイシュカもガイも特に私に注意は促さなかった。

 つまりそこまでの危険はないと思っていたのか、予想を外したか。

 だが私の予定、行動その他に想定外はつきものだ。

 それはイシュカやガイの責任ではないし、いくら調査していたとしてもそういう悪巧みを全て把握するというのは難しいものだ。物語のような勧善懲悪、全てが理想通り上手くいきましたなどという御都合主義な話があるわけもない。

 イシュカは私の問いに難しい顔で答える。

「一応は。ただやはり兵力を集めるのは苦戦しているようですね。

 今回の件がそれと関わりがあるかどうかはまだハッキリしませんが、送り込まれた暗殺者の程度を見てもそれは明らかではないかと。

 ベラスミの八割の領民はハルト様に好意的ですからね。残り二割の中でも中立派と反勢力派に分かれていますし、気に食わないからといって即座に敵に回ろうとする者ばかりではありませんので相当に厳しいでしょう。傭兵や殺し屋を雇うのもお金が掛かります。腕が上がれば上がるほど雇うにも資金が掛かりますし、財政にゆとりがあるくらいならシルベスタに併合の申し出などハナからしないでしょう」

「去年買った山の代金は?」

 アレキサンドライト採掘のために買い足した山のお金があるはずだ。

「アレはベラスミ領の土地であって彼の財産ではありません。あの者はあくまでも管理を任されているという立場で謂わば役人、資金は街道整備に回されているはずです」

 つまり領主代行の懐には殆ど入っていないってことね。

 業者と癒着して裏金、キックバック等をもらってない限り。

「そうなるとやっぱりガイの言うように可能性として今回のような奇襲が一番高いかな」

「まともに当たって勝てるとは向こうも思っていないでしょう。

 証拠も消すのが上手いようでなかなか尻尾を掴みきれないらしく、リディをはじめとした特殊部隊がかなり投入されてるようですよ?」

 要するに古狸は古狸ってことね。

「ええ、かなりの数が現在派遣されています」 

 連隊長がイシュカの意見に頷いた。

 ってことは多分陛下的には早めにカタをつけてしまいたいってことなんだろうな。今は周辺諸国との外交も安定して落ち着いているって話だし、不穏分子はこの隙に燻り出しておきたいってことか。

 私としては大きな面倒事とは早く手を切りたいというのが本音だが。


「なんか、こう、性に合わないんだよね。ただ待ってるってのは」

 自由が奪われてるって感じがして。

 そりゃあ今でもフラリと単身でお出掛けできるほどの自由はないけれど、イシュカやガイ達が一緒にいてくれるのを邪魔だと思ったことはないので構わないといえば構わないのだが、それはあくまで私個人の話であってイシュカ達に負担をかけているのは間違いない。

 私が難しい顔で唸っているとイシュカが口を開く。

「ではこちらから仕掛けますか?」

「でも陛下に任せるって言っちゃったし。下手に動いたら近衛も困らない?」

 実際ウェルトランドの方にも警護を回してくれたりしてくれてる。

 配慮は充分してくれているし、いくら伯爵位持ちとはいえ他領のことに口を出す権利はない。証拠が掴めて、それを突き出せば勿論国が対処してくれるのだが私にその権限があるわけではない。直接的被害を受けて現行犯ならば話も変わって来るけれど現実的な問題として殆どの場合、上司は部下に罪を被せてトンズラというのが常。こういうのはどこの世界でも同じことだ。結局小狡い権力者がトカゲの尻尾を切り捨てるがごとく下の者を切り捨てて罪を逃れ、得をするようになっている。

 私が動いた結果が成功するという保証もない。

 今までのように隠され、揉み消されてしまったら終わりだ。

 どうしたものかと眉間に皺を寄せて考え込んでいると連隊長が口を開いた。

「いえ、協力して頂けるならこちらとしてもありがたいです。

 こちらの調査はほぼ終わっていますので、後は言い逃れの出来ない状況に追い込めれば一気に片付けられます」

 眉間に皺を寄せて考えていた私に連隊長がそう口にする。

 そうなの?

 いや、でもそれが一番難しいのでは?

 その他大勢を引きずり出せたとしても黒幕を捉えられないなら問題は残る。

 みんなを危険に晒しているような事態はさっさと片付けてしまいたいのは間違いない。しかしながら心配なことがないわけでもない。


「気になることは気になるんだよね」

 仕掛けること自体は悪くないと思うのだけれど、なんとなく引っ掛かる。

「何がですか?」

「私達が知っているっていうのは向こうに本当にバレてないのかな?」

 それだけの人数が送り込まれてて気が付いてないってことありえる?

 前に団長が言っていた。

 強者には強者がわかると。

 歩き方、存在感が違うのだと。

 事実、ガイはケイが密偵で入り込んでた時も歩き方と言葉の訛りで見破った。

 団長や連隊長を見てもわかる。強者はオーラが違うのだ。

 そりゃあガイやリディのように上手くそれを消してしまう人もいなくはないけれど、あの二人が全くなんの特徴もない一般人に見えるかと問われれば否だ。

 二人はそれを上手く気配を消すことで補っているわけだけれど。

 あんなふうにできる人ばかりじゃないだろう。

 周囲に体格の良い、厳つい人達が増えてくれば警戒しないだろうか?

「だって一年以上私達を騙し通してきた相手だよ?

 そんな簡単に尻尾を掴ませるかな?」

 表沙汰に出来ないようなことを企んでいるのなら尚更そういうことには敏感になるものではなかろうか。見えない影に怯えたり、いもしない敵の姿に警戒したりしないだろうか。

「つまりこちらの動きもある程度知られているか読まれているとお考えで?」

 マルビスに問われて私はポリポリと頭を掻く。

「考えっていうより予感、かな? 

 悪の親玉ってそんなに簡単に尻尾を掴ませるとは思えないんだよね。

 だからむしろ向こうの手札が揃う前に仕掛けやすい状況を用意してあげれば喜び勇んで喰いついてくるんじゃないかなあって」

 要するに私得意の罠仕掛け待ちなわけだけど。

 私の言葉にロイがクスリと微笑う。

「悪の親玉、ですか?」

 言い方がちょっとおかしかったかな?

 漫画やアニメかぶれみたいな言い方だったかも。

 いや、前世ではどっぷり浸かってかぶれてたことに相違はないけれど。

 とにかく、

「逆に喰いついてこなかったとしたらウチに間者が潜り込んでいるか、誰かが人質を盾に取られて情報を漏らしてる可能性も捨てきれないんだよね。どう思うイシュカ?」

 私のフリに今度はイシュカが唸る。

「ウチの主要メンバーはほぼ家族ごとハルト様の私有地内に移り住んでいますし、屋敷の敷地内に入り込めるとなるとかなり限られてきますよ?」

 そうなのだ。

 私の動きを知ろうとするならば、屋敷内は無理だとしてもそれなりに近い位置で見張る必要がある。けれどウチの幹部達は屋敷内、もしくは近い位置、少なくとも敷地内にほぼ住み込んでいるし、エルドやカラル、メイド達にはへネイギスのせいでそもそも家族がいない。

 だが私と主要メンバーの私有地外への出入りだけなら、それを知る手がないこともない。私とその側近達は従業員の間では知らぬ者はほぼないからだ。

 ただ一つだけ、確信めいた予感がある。 

「でもコトを起こすならベラスミの施設オープン前のような気がするんだよ」

 そう、向こうが仕掛けて来るであろう時期だ。

「何故ですか?」

「大々的にオープンして諸外国に認知されてからだとイメージも落ちるでしょ?」

 連隊長に問われて私は思ったままのことを口にした。

 するとその言葉を一番最初に理解したのはマルビスだった。

 成程と大きく頷いて私が言いたかった言葉の続きを口にする。

「開業前のゴタゴタなら然程珍しくもありませんからね。

 あの場所をそっくりそのまま押さえようとするならその方が営業の上でのダメージが少ないです。

 今ならあそこで働いている人達は殆どがもとベラスミ帝国民。経営者が代わったところで多少のゴタゴタがあっても統率を計るのはそう難しくはないでしょう。余所者が多く入り込んでくればそれもしにくくなりますし、開業してからコトを起こして観光客に被害を出せば尚更客足は落ちますからね」

「折角あの地を手に入れても、それじゃあウマミは半減でしょ」

 そう、向こうが慎重を期している理由もそこなのだと思うのだ。

 雇い主の変更。

 それは大企業主になればなるほど末端の従業員の生活には殆ど影響が出ない。解雇や商会が潰れるなどして仕事がなくなるというのなら話は変わって来るだろうが社長交代などというものは所詮他人事。新しい社長の経営が下手クソで経営が苦しくなれば不満が出てきても、すぐにどうこうなるものではない。

 私達の話を聞いていた連隊長が納得したように頷く。

「確かに、そうですね」

「でもそうなると後約一ヶ月ってことだし、時間的にはかなり厳しくなってきてると思うんだよね。だからこそこのタイミングで仕掛ければ喰らい付いて来るかなって」

 そう、思うには思うのだけれど。

「貴方がそう言うということは何か策でもあるということですか?」

「ないわけでもないけど、失敗する可能性もある。成功の保証はできないし、人手もいる」

 連隊長の問い掛けにそう返すと私は唸る。

 私は人間相手のこういう駆け引きは苦手だ。

 できればガイの意見も聞いてみたい。

 案がないわけではないけれど、修正した方が良いだろうと思うところもあるのだ。

 だが間違いなく人手がいる。

 相手を逃さないための包囲網を張るのは容易なことではない。


「その辺りは俺達が協力する。今回はお前も出るだろ? アインツ」

「ええ、勿論です。今回の失態は近衛の責任でもありますから」

 難しい顔をしていた私に団長と連隊長がそう申し出てくれた。

 それはありがたい。一気に取れる作戦の幅も出てくるというものだ。

「そういえば団長、今日捕まえた暗殺者はどうなったの?」

 出来れば情報はなるべくたくさん、少しでも多く集めておきたい。

 あれが間違いなく領主代行の手の者だとハッキリしてないわけだし。

 私の質問に今度は団長が顔を顰めた。

「お前が捕まえたヤツは今、尋問している。だが吐かせるのは難しいかもな」

「そう、やっぱり」

 そうなんじゃないかなって予感は団長の言葉で確信に変わる。

「やっぱりって、お前何か知ってるのかっ」

「知らないよ。でもアイツに回し蹴りを喰らわせた時、服の隙間から紋みたいなのが少しだけ見えた。だから団長が吐かせるのは難しいって言うってことは奴隷契約を結ばされてるのかなって思っただけ」

 驚いて身を乗り出してきた団長の近付きすぎた顔を掌で押し返しつつそう答えると団長は納得したのか連隊長の隣に腰を下ろして続けた。

「まあそういうことだ。どうもハルトの暗殺に失敗したら歯に仕込んでいた毒で自害するように命令されていたらしくてな。それもお前に浄化されちまったんで出来なくなったわけなんだが奴隷契約がある以上主人の命令は絶対だ。主が不利になるようなことも喋れんだろう」

 面倒だとでもいうように団長が頭を掻きむしる。

「じゃあさ、不利と思わなかったら? 自分の意思で動けるんだよね?」

「それはそうだが」

 となればやりようはある。

 その奴隷紋を刻まれた襲撃者に偽の情報を持ち帰らせて誘い出すとか。

 だがここで一つ疑問がある。

 奴隷紋を刻むにも解除するにも契約書がいるわけで。

 でもそうなると罪のない人達が権力者や悪党によってその契約を結ばされてしまった場合、どうなるのか?

 主人の死はその奴隷の死とイコールだ。

 罪人に囚われ、使われていたから有罪で一緒に死ねと?

 いくらなんでもそれはない。何か救済措置があるはずなのだ。

「奴隷紋って他に解除する方法はないの?」

「奴隷紋に限ってはほぼありません。簡単に解除できるようでは交換殺人やその仲間の幇助などで罪人に逃げられても困りますから。出来ないこともありませんが契約書無しで解除するには契約を交わした二人の合計魔力量、つまり倍近い魔力量が必要になりますので実質不可能に近いです」

 一般貴族は千三百前後、有力貴族なら千五百程、実力派と呼ばれる騎士や魔術師なら二千超えた辺りでそれ以上となれば騎士団では班長、部隊長クラスと聞いている。そうなると確かにかなり条件的には厳しくなってくる。

 だが、私は特に焦るでもなく続きを促す。

「ふ〜ん、それで?」

「奴隷契約を上書きするんです。そうすれば最初の契約は破棄されますから後は解除も可能です。ですが契約にも解除にも国への申請と許可が必要になりますし、破れば罪にも問われます。あまり魔力量に差があると契約を弾かれることがありますので犯罪者の場合でも大抵貴族や騎士など比較的魔力量が高い者が契約していることが多いので、貴族の平均魔力量からすれば最低でも三千以上の魔力量が・・・」

 つまり普通の一般的な貴族との契約でも上書きするなら最低でも班長部隊長クラス、もしくは団長、連隊長並みの魔力量がいると、こういうわけだ。それほどの実力者となれば大抵国の要職についているか召し抱えられているので上書きしようにも簡単ではないということになる。なかなか上手く出来ている。

 だが、現在非公式ではあるものの国に召し抱えられていない、必要な魔力量を持った人間が一人いる。

 話しているうちに連隊長もそれに気が付いたようで言葉が途切れた。

「あちらの陣営の最高魔力量は? 知ってる?」

 私が問い掛けると連隊長が答えてくれた。

「記録によれば領主代行、ウォルトバーグの二千六百ですね。つまり私でも弾かれますが」

 そう、連隊長でも弾かれるがここにいるのだ。

 上書き出来るだけの魔力量を持った私が。

 それに団長も気が付いたようだ。

「ハルト、今回の件でまた陛下がお前に褒美を獲らせたいそうだ。

 お前、明後日には領地に戻るんだろう? 明日、早朝に城まで来れるか? 

 陛下の空いてる時間は多分そこくらいしかない。お忙しい方だからな」

 多分コレは私を城に連れていくための口実だろう。

 乗りかかった船だ、面倒事はさっさと片付けるに限る。

 私は二つ返事で頷いた。

「伺いましょう。ですが褒美はいりませんよ?」

「それは陛下に直接言え」

「承知しました」

 秘め事が多いということは面倒も多いということだ。

 私の保有魔力量を公にしていない以上、体裁を整えたってことだろう。

 それに連隊長が連れてる騎士達が向こうに買収されている可能性も皆無ではない。

「では私は今から先に陛下に連絡してきましょう」

 連隊長はそう言って立ち上がるとお供の騎士を連れて、リビングを出て行った。

 それを見届けてから私はロイとマルビスに視線を戻す。

「ってことで、明日イシュカと城に行ってくるよ。悪いけどロイ、マルビス、学院生への特別賞の差し入れ準備は頼んでもいいかな?」

「お引き受け致しましょう」

 作り方はロイが知っているし、今日はシルヴィスティアに泊まっているイベント部隊の料理人達に手伝って貰えばそう手間もかからないだろう。


「毎度毎度予定を狂わせて悪いね」

「いえ、もう慣れました」


 すみませんね、慣れるほど色々雑多な事件に付き合わせてしまいまして。

 決して悪気はないのですよ?

 向こうから問題が押しかけて来るんです。

 どこかからそれもお前の考え無しの行動のせいだろうとツッコミを入れられた気がしたが、そこはあえて気付かぬふり、シカトすることにしたのだった。



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