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第四十三話 タラシと言われる原因、判明しました?


 学院内についてのことは講師として、しかも一ヶ月足らずしか学院に出入りしていない私より、やはりフィアやミゲルの方が事情に詳しいようだ。

 

 特にミゲルはフィアと違ってまだまだ授業が免除されるほどの成績ではないために学院にいる時間は長い。一番身を乗り出して意見を出しているのを見て、以前、マルビスがミゲルは意外に開発部向きではないかと言っていたのを思い出した。

 さすがマルビス、人に会う機会が一番多いだけあってよく見てる。

 二年前まで唯我独尊、我儘放題育てられていたミゲルの行動力は凄い。

 人のこと言えた義理ではないが思い立ったらすぐ行動だ。

 今でこそ周りを見ることを覚えて来たけれどマルビスが発想力が独特だと言っていた意味がよくわかる。

 これは普通に育っていたら身につかないものだろう。

 国王の座に就いていたら思いつくまま周囲を振り回していただろうことは想像に難くないが独創的な発想力はなかなかのものだ。開発というより企画寄りの考え方に近い気がしないでもないけれど前世の知識に頼っている凡人の私とはまるで違う考え方で、才能という点に於いて私より余程向いていそうだ。

 たくさん増えた下級貴族と平民の友人達の会話などもよく聞いている。

 それは多分、学院に再び通い始めた頃、一生懸命に話し掛けるキッカケを作りたくて聞き耳を立てていた時に身に付けたものなのだろう。それを見ていると本当に成長したなあと思う。

 前に座るマルビスも『すごいですね』、『素晴らしいです』、『面白い提案です』と上手くミゲルを煽てつつ意見を聞き出している。調子に乗せられているとはいえ、次から次へと出てくるアイディアは尽きることもない。

 その様子を陛下が微笑んで見守っている。

 はずんでいる話を邪魔しないようにそっとロイとお茶とお菓子を置いていくと区切りがついたところで目の前にある菓子に気がつき、顔を輝かせてそれに齧り付く。


「どう? 何かいい意見は聞けた?」

 マルビスの横に腰掛けて私は尋ねる。

「ええ、とても参考になります。

 実際に通って見えるミゲル様の意見はとても貴重で検討の余地があります。

 勿論、予算的な面もありますので全て活用できるわけではありません。

 ですがお陰で私達が考えていた以上のことも出来そうです」

 それは良かった。

 やるからには成功させないとね。

 子供達のためにも、商会のためにも。

「ウチに来た時に買い物に出かける時なんかにも友達と一緒に行動しているせいか、平民の金銭感覚もだいぶわかってきてるし、頼もしい戦力になりそうだね、マルビス」

「ええ、ありがたいことです。二年後が楽しみになってきました」

 その言葉にミゲルが得意げな顔になる。

 たくさん増えたミゲルの友達。

 初めて会った不遜で憎たらしいほど生意気な子供の姿は殆ど消えている。

 だけどこうと決めたら一直線、自分の欲望を満たすために突っ走るところは変わっていない。ただミゲルの欲望のカタチは変わっているけれど。ただ威張り散らして他者を睥睨するものではなく、仲間や友人達と楽しむための方向に変わっている。御山の大将なのは変わっていないけど、他者を引っ張る力を持っているあたりはやはり血筋なのだろうか。

 孤高の存在である国王となるより友達と楽しく暮らすことを選んだミゲル。

 たまに昔の悪い癖が出る時もあるけれど、それに気付き、謝ることを覚えた。


「私は私にも出来ることがあるのだというのが嬉しい。

 二年前には得られなかったたくさんのものが今の私にはある。

 それは王位継承権にこだわっていた頃には得られなかったものだ。

 私は私のやり方で国や兄上の力になることが出来る」

 それは今のミゲルの誇りなのだろう。

 見ていて微笑ましいものだ。

「ハルト、私は今度の収穫祭にはグラスフィートには行かぬ。

 収穫祭明けには学院の文化祭もある。

 学院のハルウェルト商会の新しい施設の運営の手伝いがしたい。駄目か?」

 早速ヤル気になっているミゲルの気合に水を差すつもりはない。

 むしろ私より余程ミゲル向きの仕事だろう。

 私は大きく頷いた。

「私はマルビスが良ければそれで良いよ? 運営責任者は私じゃないからね。

 但し、ちゃんと周りの意見を聞いてゴリ押ししないこと。これが約束できるならね」

「勿論だ。友達にも手伝ってもらっても良いだろう?」

 ぱああっとミゲルの顔つきが嬉しそうに明るくなる。

「どう? マルビス、それでいい?」

「構いませんよ。担当者に話をしておきます。

 現在の学院生の意見を聞けるのも貴重ですし。

 ウチの領地にアルバイトに来て頂ける学院生の送迎は必要になるでしょうけど、ハルト様直属の護衛を十人ほどお貸し頂ければ充分かと。ウチの紋章をはためかせて行けば野盗もそう襲って来ませんし」

 それは全然構わないのだが。


「・・・相変わらず恐れられてるんだ、ウチの馬車」

「ええ。非常に助かっています。

 貴方のお陰でウチに喧嘩を売ろうという愚か者はおりませんから」

 まあ襲われないにこしたことはないし、良いと言えば良いんだけど。

 マルビスの言葉に聞いていた連隊長が感心したように漏らす。

「凄いですね。普通なら裕福な領地の馬車は狙われるのが常ですよ」

「ハルトを敵に回そうなんて怖いもの知らずの馬鹿がいないだけだろう。

 野盗で馬鹿は生き残れない。

 お前ら以前何回か襲って来たヤツら全て一網打尽で全員とっ捕まえて憲兵に差し出しただろう?」

 団長に問われたことに心当たりは、勿論ありますよ。

 ここ一年くらいは全くそんな話も聞かないけど。

「当然です。一人逃すとゴ◯ブリのように増殖して仲間を連れて襲って来ますから」

「しかもワザと一人逃げ帰らせて後をつけ、そのゴキ◯リの巣穴まで綺麗に掃除しただろう?」

 はい、当然それも身に覚えがありますとも。

「それが何か? ああいう輩は一掃しないと逆恨みされてウチの大事な従業員達に手を出されても困りますので」

 あり得る危険な未来は予め排除しておいてなんの不都合が?

 懸賞金の懸かったお尋ね者にかける情けはありません。

「作戦は全て先読みされて打つ手なく、追い詰められるのが相当恐ろしかったらしい。シャバに戻っても二度とグラスフィート領には近づきたくない、魔神より恐ろしいと言っていたそうだ。

 お前、いったい何をやったんだ?」

 とうとう大魔王から魔神に進化したか。

 今更呼び名の一つや二つ増えたところでどうということもない。

 最早人間辞めてます状態なのは承知済み。

 悪人に恐れられるのは悪いことではない。

「別に。彼等が今までやって来たことがどれだけ酷いことであるか知って頂いただけですが? 勿論一人たりとも殺してなんかいませんよ」

「それは知っている。全員怯えていたが」

 彼等には襲われる恐怖というものを味わって頂いたのだ。

 そこそこの大きさの簡易的な檻の中に閉じ込めて森の中で一晩過ごして頂いた。

 一応人数分の木刀は差し入れしておいて檻の周りには魔獣の大好きな血の臭いをバラ撒いた上で。小さな魔獣なら檻の柵を潜り抜けられるけど退治できる。

 だが、大きな魔獣が現れたら?

 いつ折れるかもわからない鉄格子。

 実はすごく頑丈で滅多なことはないのだけれど、その檻の素材に似せたヤワな棒を彼等の前でイシュカに剣で叩き折ってもらったので、勘違いしたであろう彼等はさぞや恐怖だったことだろう。一応ケイと他何名かには万が一の場合には現れた魔獣を退治してもらうようにお願いして隠れていてもらっていたのだけれど。

 無論、ケイ達に危険が及ぶようなら見捨てて逃げろと言い置いて。

 野盗退治のクエストは生死を問わないのが一般的。

 私にとってどちらが大事かなんて聞かれるまでもなかったから。

 とはいえ冒険者ギルドから苦情が来る程度には近隣の森の魔獣討伐をしていたのでそんなに大事に至ることもないはずで。あんまり魔獣が寄って来なかったら適当に茂みを揺らして怖がらせるようにはお願いしておいたけど。


「私は彼等の語った人殺し以外の悪事を一部体験して頂いただけですよ。

 他人に自分がしたことを自分が他人にされることもあるのだという事実を知って頂いただけです」

「盗賊の抱えていた財産は届出の必要はあるが、明らかに持ち主が判明している以外のものは基本的に捕縛、もしくは掃討した者に所有権がある。もとからそれはヤツらが他者から奪ったものだ。文句を言う筋合いではないが、ヤツらはそんなものはもうどうでもいいと言っていたぞ?」

 盗賊達が抱えていた財産を全て没収したことを言っているのか。

 確かにそれもしっかり頂きましたけど、人の血で濡れたそれが欲しかったわけではない。そんなもの懐に入れたら疫病神に憑かれそうだから持ち主が現れると困りそうな骨董、宝石その他をギルドに預け、それを除いた金貨だけを事情を話して神殿に寄付してしまった。

 私が神殿に寄付したのは後にも先にもその時だけだ。

 生臭坊主に金貨に憑いた怨念その他が浄化できるかどうかは定かではない。

 だが積み上げた金貨の山に非常に感謝され、洗礼を受けさせてくれると申し出されたが当然お断りさせて頂いた。以降の寄付依頼は丁重にお断りさせて頂いてますが。


「如何に自分達が酷いことをしてきたか自覚して反省しただけでしょう。

 私は私とその関係者の安全を確保しただけです。

 組織が大きくなってくるとそういう者達の格好の的になりますからね。

 勿論正々堂々挑んでくる者ならばちゃんとそれなりに対応しますよ。

 私が許さないのは卑劣な手段でケンカを売ってくる輩だけ、卑怯な手を使う者に反論の余地はありません。私は鬼ではありませんからね」 

「だから言われてるのは鬼ではなく魔神だ。お前は悪人には容赦なしだからな」

「当然です。自分が助けを請われた時、平然と踏みつけておいて自分は容赦されたいなど理屈が合わない。悪人の口だけの約束なんて信じるに値しませんから。

 反省したところで彼等に殺められた人達は生き返らない。

 命があるだけ幸せだと思ってもらわねば同じことを繰り返すでしょう?

 シャバに戻ってから仕返しされても困りますし、二度とそんな気を起こさないようにしておきませんと」

 その場限りの謝罪などに価値はない。

 ああいう輩は謝罪を受け入れて背中を向けた途端に襲いかかってくるのが定番。

 喉もと過ぎればなんとやら、懲りてもらわねば意味はない。

 口と態度だけで信じられるほど私は純粋培養されてない。

「まあな。盗賊はほぼ例外なく死罪か流刑地送り。減刑されるのは人質や契約などで拘束、命令されていた者だけだ。それでも一定の罰は与えられる。自分が助かりたいからと他者を傷つけていい理由にはならないからな」

 勿論そういう人達には同情の余地はある。

 私もロイ達を人質に取られたら同じことをするかもしれない。

 例え自分が罪人として裁かれることになったとしても。

 まあみんながそんなヤツらにアッサリ捕まって従うとは思えないけれど。 

 自分が罪人に堕ちてでも救いたかったというのならそれはその人の選択の自由だが罪が消えるわけではない。


「そうですね。その通りです。

 ですから以前申し上げたかもしれませんが、もし私が道を誤った場合には是非団長か連隊長に首を取りに来て頂きたいと思ってますよ?

 イシュカ達にそれをやらせたくはないので。

 それにそれでもなお、私についてくると言い出しそうでもありますから」

 自分の間違った選択で大事な人達を巻き込みたくないし。

「責任重大だな」

 苦笑いする団長に私は微笑む。

「まあ大丈夫だとは思いますよ? 私の側にいる者達は私が間違えばそれを叱ってくれますから。本当にありがたいことだと思っています」

 そう言って私はロイやマルビス達を見渡した。

 みんなの優しい瞳が私に向けられているのがわかる。

 そんな中、ミゲルが不思議そうな顔で聞いてきた。

「ハルトは怒られるのが嬉しいのか? 変わってるな」

「ミゲル、違うよ。私は叱られるのは嬉しいけど怒られるのは嫌いだよ」

 大嫌いだ、怒られるのなんて。

 ぶつけられる不満、理屈に合わない怒りを押し付けられる理不尽。

 無理矢理押し付けられる理由なき責任。

「同じではないのか?」

「似て非なるものだよ。理不尽を押し付けられるのが『怒られる』。

 私のことを思って教えてくれるのが『叱られる』だよ。

 どうでも良い人間なら放って置けばいいのにわざわざ嫌われるかもしれないリスクを背負って叱ってくれるのはその人のためを思えばこそだよ」

 それは聞く耳を持つべき大事な忠告。

「そんなもの、どうやって区別をつける? わからないではないか」

 ミゲルの疑問もわからなくはない。

 その二つはそれだけなら区別は非常につきにくい。でもね、

「そんなの簡単だよ。『どうして?』ってわかるまで叱られた理由を聞けばいい。

 そうすればミゲルのためを思ってくれる人っていうのはミゲルが納得するまで説明しようとしてくれる。その時には時間がなくても問えば後でも必ずね。

 わかるまで何度でも教えてくれるはずだよ。

 『うるさい』、『黙れ』とか威圧してくるってことは説明する手間が惜しいか、八つ当たりしているかだ」

 前世での両親や職場の上司がこのタイプだった。

 自分の都合が悪くなると癇癪を起こして怒鳴り散らし、辻褄の合わないことを平気で私に押し付けた。

 しかも如何にも私が悪いというように自分の正当性を訴えて。

 何故犠牲を強いられる自分が悪者にならなければならないのだと何度思ったことだろう。私は自分の稼いだお金を毟り取ろうとする理由を、私の上司不始末の責任を押し付けられる理由をただ納得させて欲しかっただけなのに。

 病気で入院しただとか、明日食べるお米もないだとか、そんな理由なら払わないでもない。それを見捨てるほど人非人ではない。でも両親が欲しかったのは自分達が旅行や外食に行くための費用だ。何故自分の生活切り詰めてまで貴方たちの贅沢のためにお金を渡さなければならない?

 私もただ踏み躙られるのを待つだけなんてゴメンだったから、給料日の当日にクレジットカードで必要な生活費を先にキャッシュレス決済のポイントにチャージしておいたり、別の口座に移し替えておいたりした上で、ATMの前まで無心する親を連れて行き、銀行口座に現金が殆ど無いことを確認させて、先月工面したお金の支払いをカードで引き落とされたからだとか、不景気で給料が下がっているからだとか理由付けして納得させていたけれど。

 それでも僅かばかりの残った口座のお金を寄越せと言われたっけ。

 家賃や光熱費、食費まで持って行かれてはたまらない。

 反論、反抗すれば誰に育ててもらったと思ってると怒られた。

 確かにほんの小さな頃はそうだったけど、共働きで家にいない二人に変わって弟妹の世話をしていたのは私だし、掃除洗濯炊事も私。それを褒めてくれるでも無し、当然と受け止めて甘え上手の弟妹を可愛がっていたのは貴方たちではないか。仕事に疲れたからと八つ当たりされ、帰ってきた時に食事が出来てないと怒鳴られた。弟達に手伝わせようとした時には可哀想だろうと怒られて、では私は何故可哀想ではないのかと思った。

 世の中は全てが善人というわけではない。

 私はそれをよく知っている。

 そんな理不尽極まりない人間の犠牲になることはないのだ。

 ミゲルは継承権を放棄したとはいえ王族。

 自分を利用して甘い蜜を吸おうとしているロクデナシを見分ける術を身につけなくてはならない。


「嫌ってる人間に自分の大切な時間を割こうという人は少ない。

 ただ言うことを聞くんじゃなくて自分の頭で考えて、理解できないところは何度でも聞き返して、おかしいと思うところは言い返せばいい。説明もせずに謝るのなら自分の機嫌を取っているか面倒臭がっているだけ。ミゲルのことを本当に思ってくれている人なら、もしその人が間違えて『叱って』いたのなら、説明した上で怒って悪かったってキチンと謝ってくれると思うよ?」

 それでも失敗して騙されることもあるだろう。

 でもそれも勉強なのだ。

 人間は懲りることで疑うことを覚え、慎重になる。

 それは良いことばかりではない、覚えなくても済むならそれに越したことはない処世術というものだけれど。

 

「だからハルトは人の話をよく聞けって私を叱るのか?」

 ミゲルの言葉に私は苦笑する。

「今日は『怒られる』って言葉を使わなかったね、ミゲル」

「ハルトはいつも私に『何故か』をしっかり説明してくれるであろう?」

 ちゃんと私の言いたいことは伝わったようだ。

「ミゲルは私の大事な友達だからね。理不尽に怒ったりしないよ」

 私がそう言うとミゲルは嬉しそうに笑った。 


「其方のそういうところは本当にまるで母親のようだな」

 ポツリとミゲルと私のやりとりを見守っていた陛下が言った。

 母親って、つまり子供らしくないということか。

 彼氏すらいたことないですから子供を持った覚えはありませんけどね。

 所帯染みているとは言われたことはありますけど。

 多分可愛くないとはいえ弟や妹の世話を長年していたせいだろう。


「アインツが以前言っていた。

 其方が多くの騎士達に好かれるのは、ハルトのそういうところなのだろうと。

 聞いた時は子供相手に何を馬鹿なことをとも思ったが、確かにな。

 男が憧れるような武勇を立てながら勇ましいのではなく、其方をよく知る者達は温かいという。ほっと息が吐けるのだとな。

 働けば存分に労い、美味しく温かな食事を腹一杯食べさせ、優しい笑顔と言葉で感謝を述べ、癒してくれると。なのに時折寂しそうで、不安そうな顔をするから支えてやりたくなるのだと。

 本当に変わったヤツだ。誰よりも男らしいと称されながら、まるで逆の印象を与える。そのアンバランスさが其方の魅力の一つ、騎士、団員達を骨抜きにしている理由なのであろうな」

 それは男らしいのに女らしいとでも言いたいのか?

 意味がわからなくて私は首を傾げる。

「骨抜き、ですか?」

 陛下のその単語に疑問を抱く。

 確かに団員に信者だ親衛隊だと言われてる人が多いけど。

「其方は戦う男が欲しいと思う存在を兼ね備えているということだ。

 共に戦場で闘ってくれる頼もしい戦友(とも)と、疲れて帰ってきた時に癒しと安らぎを与えてくれる家族や支えたい、護りたいと思わせてくれる恋人の役割を其方は担っている。

 これでは陥ちるなと言う方が難しい」


 つまり私がタラシと言われる原因はそこなのか?

 いや、陛下の推測が必ずしも正解とは限らないけど。

 ただ自分の身に置き換えてみるとわからないでもない。

 一緒に闘ってくれて、支えてくれて、癒してくれる。

 そんな人が側にいてくれたら惹かれること間違いなしだ。

 だってそれは私にとってにロイであり、マルビスやイシュカであり、ガイやテスラ、キールや叔父さん、私を支えてくれるみんななのだ。

 

 それは欲張り、気が多すぎだろうって?

 だって仕方ないじゃない、みんな負けず劣らずのイイ男なんだから。

 今は私が誰かと恋に堕ちることなんて想像つかないけれど。

 今ある関係が変わるようなキッカケが起こるかどうかなんて。

 未来(さき)のことはわからないのだから。


 でも、だからこそ未来は面白いのだ。


 

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