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第二十八話 魔術師来襲。◯◯と天才は紙一重? 


 とりもあえず全ての試験は終了し、迎えにきてくれたライオネルの馬車に乗り込んで途中食材と日用品の買い出しをしつつ騎士団内の住まいに戻る。今日はレインも一緒だ。

 試験結果は明日一日置いて明後日正門前の広場に張り出される。

 そうなれば寮住まいとなれば休日以外は自由に行き来できなくなる。

 父様と閣下達は陛下に挨拶してからこっちに来て一、二泊してから領地に戻るそうだ。

 

 ロイの夕食の準備を手伝おうとテスラとレインと四人でキッチンに立つと玄関から聞きなれない複数の声がしてきた。

 ウチにお客様か? 

 それとも団長達への客人か?

 父様と閣下は遅くなると言っていたし、となればそれ以外の誰かの声。

 団長と連隊長の声の他にもニ、三人いると思う。

 暫くしてイシュカの声が聞こえてきた。会話の内容までは聞き取れないが対応してくれているのだろう。マルビス達なら遠慮することなくこっちに向かってくるはずだし、私がみんなの声を忘れるわけもない。来客予定はなかったはずだがフィアやミゲルの声とも違う。

 様子を伺っているとイシュカの足音が近づいてきた。


「ハルト様、すみません」

 ヒョコッと入口から顔を覗かせてイシュカの表情は微妙だ。 

「どうかしたの? イシュカ」

「それが団長達が二人ほど客人をお連れになりまして」

 つまり団長達に用事ではなく、私達への客人ということになるのだろう。

「厄介なお客様なの?」

 尋ねたがどうにも言いにくそうなイシュカ。

 つまりは面倒な客なのだろう。それも多分拒絶して追い返しにくいような。

 困ったというよりどうしたものかと悩んでいる風だ。

「わかった、今行く。ロイ、テスラ、悪いけどもう二人分食事を追加してくれる? レインはそのままロイの手伝いお願いできる?」

「いいよ。皮剥きと皿洗いくらいなら覚えたから」

 この時間の来客ということは高確率で夕食目当てだろう。

 そうでなくても何も出さずに追い出すわけにもいかないし。

 ロイは少し考えて食材と睨めっこする。

「ではもう二品ほど増やしましょう。テスラ、ライオネルにお願いしてお酒をニ十本ほど調達してきてもらって下さい。上にある分だけでは足りないかもしれません。ついでにできれば商会の事務所で数日中で構いませんので適当な物を何ケースか手配してもらうようお願いしてきて欲しいと。この先来客が多くなる可能性もありますから。多めに用意しておいた方が間違いないでしょう」

「了解」

 テスラがすぐにライオネルに伝言するために出て行くのを見届けて私はキッチンを離れて玄関先まで出て行く。

 するとそこには見慣れてはいないが見たことのある顔がそこにあった。

 本日の私の試験官様達だ。

 成程、イシュカが口篭った理由もなんとなく察した。

 一人は団長達も持て余す変人・・・ではなく、王室魔術士補佐官、もう一人はかつて教えを乞うた講師。なんでこの国の重鎮たる人達がこんなところにやってくる?

 試験はもう終わったはずだろう?

 とはいえど流石に無愛想に対応するわけにもいくまい。


「こんばんは。本日は大変お世話になりました」

 正直なところヘンリー様はいつか来るだろうとは思っていた。

 フリード様も近い内に会おうって言ってたし。

 でもいくらなんでもその当日とは早過ぎやしないか?

 そしてできるなら予告してから来てほしかった。

「団長、これはどういった状況かお伺いしても?」

 私がにっこりと笑って尋ねると団長は気まずそうに明々後日の方を向いた。

「私に御用がないのでしたら夕食の準備がありますので失礼してもよろしいでしょうか?」

 そう言ってキッチンに戻ろうとすると連隊長が慌てる。

 反応から見ても私に用があるのは間違いない。

 多分、原因は連隊長とフリード様が両脇を抱えて抑えているヘンリー様(そのひと)が原因なのだろうけど。

「ハルト、君が夕食を作っているのかい?」

 嬉々としてキョロキョロと視線を彷徨わせていたヘンリー様が尋ねてくる。

「今は私の秘書兼執事がやってくれていますけど私も出来る限り手伝っていますよ? 彼には他にも仕事がたくさんありますから。私の補佐とイシュカ、後もう一人護衛がいますけど男五人で分担しています」

「そういえば確か商会のオーナーだったね」

「はい。名ばかりではありますけど」

 苦笑いしながらもフリード様はしっかりとヘンリー様を抑えてくれている。

 なんとなく状況が読めてきた。

「立ち話もなんですから移動しましょう。とりあえずここには応接室はないのでリビングで構いませんか?」

「すまないね、いきなり押しかけてしまって」

 謝罪するフリード様に対して我関せず状態のヘンリー様。

 状況から察するにおそらく謝罪すべきはヘンリー様だと思うのだけれど。

「お気になさらず。ですができれば次回からは前もって御連絡頂けるとありがたいです。一応それなりに忙しい身の上なので。お見えになって頂いても仕事でお相手出来ないこともあれば不在の場合もあるかと思います」

 一応ヘンリー様には釘を刺しておくべきかと遠回しに言ったのだが聞いてないし。こういうところはサキアス叔父さんにそっくりだ。夢中になると他が一切見えなくなる。もっとも最近はキールの教育の成果が出ているのか以前より少しマシになってきてるけど。

 私の言葉に靴のまま玄関から上がろうとした二人にストップをかける。

「ああ、すみません。ここは土足禁止なので玄関で靴を脱いでこれに履き替えて頂けますか?」

 スリッパを出しながらそう言うとフリード様が私の足下を見る。

「君は履いていないようだが?」

「私は真冬以外はほぼ裸足で生活しているので。ただ馴染みのない方にはこういう室内履きをお出ししています。こちらを履いても裸足でもお好きな方でよろしいですよ?」

 横で団長と連隊長がブーツを脱ぎ、裸足でペタペタと歩き出したのを見てお二人もそれにならい、靴を脱ぐと床に上がった。結局スリッパは使用されることなく、玄関よりほど近いリビングに移動する。

「商会のオーナーというわりには随分と質素な生活をしているんだね」

「この方が落ち着くんです。父にはもう少し見栄えを調えろとも言われてますけど必要のない物を置いても邪魔になるだけですから。一応領地の屋敷のプライベートエリア以外はそれなりに体裁は整えています。商会の支店は来客用の応接室もありますので、ここで客人をお迎えすることは考えていなかったものですから」

 驚いた様子のフリード様にそう答えるとテスラが戻って来たのが見えて呼び止める。

「テスラ、上からニ、三本適当にお酒持ってきてくれる? イシュカはキッチンからグラスを人数分。私には何かフルーツジュースがあればそれを。なければ水でいいから」

「かしこまりました」

 返事をしてそのままテスラが階段を上がり、イシュカはキッチンに向かう。

「気を遣わせてすまないね」

「いえ、私の入れた美味しくないお茶では失礼でしょうからその方がよろしいかと。メイドなどの使用人はおりませんのですみませんが手酌でお願いします」

 フリード様の言葉に私は軽く首を振って答える。

 リビングにある椅子を進め、腰掛けるとイシュカが戻ってきてツマミのチーズとベーコン、グラスを前に置くとテスラがお酒を置いてキッチンに消える。ロイの手伝いに行ってくれたようだ。

 バツが悪くてソッポを向いていた団長がテーブルに並んだお酒を見た途端目を剥いて、いそいそと手を伸ばし手酌でグラスに注ぎ、御機嫌で鼻歌混じりに呑み始める。どうやら余程好きな銘柄だったようだ。それを見て苦笑するとイシュカが瓶を持ち、他のメンバーに勧め、注いでいく。

 私の前には柑橘系のジュースが置かれた。

 パッと見は水みたいだけど口をつけると仄かにレモンっぽい味がするそれはとてもスッキリとした味わいで美味しかった。

 一息吐いたところで話を切り出す。 

「それで早速ですが御用件を伺っても?」

 連隊長と団長の間に座っている二人に向けて問いかける。

「いや、まあ私も興味があったんでつい付いて来てしまったのだが」

「用があるのは私だ、ハルトッ」

 フリード様の声を遮ってヘンリー様が身を乗り出す。

 服の裾にグラスを引っ掛けて倒したのもお構いなしだ。

 横に座っていた連隊長が慌ててグラスを戻し、持っていたハンカチでテーブルの上を拭く。

「今日君が見せてくれた魔法の応用原理を知りたくて探していたのだが君はもう帰った後だったのだよ。そこで慌てて問い合わせたところ君は寮住まいではないと聞いて、どこに住んでいるのかと尋ねたら此方だと知ってね」

 そして偶然団長と連隊長がここに帰ろうとしているところに出会し、二人が今日の夕食の話をしているところにタイミング悪くやってきたということらしい。

 他では聞いたことのない名前のウチの食事のラインナップに興味津々、ロイ手作りのサンドイッチをすっかり気に入ったヘンリー様が一緒に付いてくると言い出し、なんとか引き剥がして逃げてこようとしたらしいが鬼気迫る様子に置いて行っても押しかけてくるだろうと考えた。だが私が昼間押し付けるなと言っていたのでどうしたものかと悩んでいたところにフリード様が通り掛かり、ヘンリー様の子守りに駆り出した、と、こういうわけらしい。

 つまりフリード様はある意味被害者なわけだ。 

「明々後日から学院が始まるかと思いますが?」

「そんな先まで待てるわけないじゃないか。それに聞いたこともない料理の数々、興味持って当然だろう?」

 イヤイヤイヤ、緊急事態ならともかく、たかが三日かそこらだろう。

 百歩譲ってその主張を認めるとしてもアポ無し突撃、しかもついでに食事をタカリにくるのは如何なものか。最速でも明日だろう。こっちも試験で疲れてるんだから少しは遠慮とか、配慮とか。

 そんなものを期待するのはおかしいだろうか。

 私は深い溜め息を吐く。

「こちらの都合はお考えにならなかったんですか?」

「そういえば考えなかったな」

 ケロリとそう言い切る辺りが叔父さんと近いものを感じる。

 この手の人種には悪気も悪意もないのだ。

 ただ自分の欲求に忠実なだけで。

 だが幸いにもこの人もしっかりとわかりやすく事情を説明すれば配慮はしなくても理解してくれることはお昼の一件でわかっている。

 私は『良いですか?』と言い置いてから話し出す。

「いきなりお見えになられても人数分足りませんってことになる場合だってあるんですよ? 食材が足りないことも、既に食事が済んでる場合もあるんです。貴方は育ち盛りの私の食事を取り上げるおつもりだったのですか? それとも団長か連隊長の夕食分をお召し上がりになるおつもりで?」

 少し考えればわかるでしょうとは言わなかった。

 何故ならこの手合いの人種は目の前のことしか見えなくなるだけだからだ。サキアス叔父さんもそうだが地頭はいいので理由を言えば理解してくれることも多い。ただ理解してくれたからと言って自分の主張、意見、行動を曲げたり、こちらの指示に従ってくれるかは別問題ではあるけれど。

 ヘンリー様は大きく頷くと団長に向き直る。

「確かに言われてみればその通りだ。バリウス団長、君の分を私に譲ってくれっ」

 やっぱりね。

 良くも悪くも自分の欲求に忠実なのだ。

 だからこそ知りたい、理解したい、解き明かしたいと情熱が赴くままに熱心に研究して凡人では及びもつかない様々な発明や発見をしたりする。

 ◯◯と天才は紙一重とはよく言ったものだと思う。

 こういう人達は往々にして周囲の人間を振り回すものだ。

 天は二物を与えずという言葉があるが、私はそうとは限らないと思う。

 二物、三物を持っている人間は間違いなく存在する。

 存在するが決して万能ではない。

 何かが大きく欠けていたりするものだ。目の前のこの人のように。

 詰め寄られて団長が後ろに体を反らせる。

「なんで俺がっ、今日は俺の好物の煮込みハンバーグなんだぞっ」

「アインツ連隊長、では君の分を」

「魚貝類のパエリアは私のお気に入りなんだが」

 だよね。

 二人が今日の夕食を楽しみにしていたのは知っている。

 だからこそ浮かれて外で話をしていたのだろうし、それが予定外のものを呼び込む結果になってしまったわけだけれども。

 私はあーだこーだと言い争いをしている三人の前でバンッと一回大きく机を掌で叩く。

 あまり行儀の良いことではないが見るに耐えない。

 そりゃあロイの御飯は間違いなく美味しいけど、イイ年した大人が三人で食い意地張って争っている姿よりはマシだろう。


「今回は用意し始めたばかりでしたので急遽二人分追加で用意してもらうようロイに頼みました。但し、申し訳ありませんが予定より大きさは小さくなるとは思います。ですがその分、品数を増やしてくれるそうです。けれど今日のようにいつも用意できるわけではありません。私の執事は料理人ではありませんので、できれば以後このようなことは御遠慮願います。良いですね?」

 にっこりと笑って見せたけれどおそらく口許は引き攣り、目は笑っていないに違いない。こういう時の私は怒らせない方が良いと知っている団長と連隊長は肩を縮こませて小さくなる。

 だが空気を読まない、いや、読もうとしない御仁が一人いる。

「前もって連絡すれば良いのかい?」

 確かに言い方からすればそういう意味に取れなくはないけれど。

 ヘンリー様(このひと)には遠回しに言っても通じない。

 仕方がないのでキッパリと拒絶する。

「駄目です。彼は私の秘書でもあるんです。商会の仕事が滞っては困ります。人数が増えればその分手間も増えるんですから。私の大事な片腕の仕事を増やさないで下さい」

 ロイは料理人でもコックでもない。

 私の大事なロイをコキ使わないで頂きたい。 

「バリウス団長やアインツ連隊長は良いのにかい?」

「二人は夜間の護衛も兼ねてくれているんでその御礼です。

 それに二人にもお時間がある時はお手伝い頂いてますよ」

 主に串削りとか、ね。前世と違って店に行けば売っているわけではないので二人には暇を見て御協力頂いている。串は何かの折に役に立つのでいくらあっても困らない。剣やナイフ(はもの)の扱いが得意な二人は結構器用に手早くそれを削ってくれるのだ。以前から食事が出来上がる前に帰って来た時は窓際に座ってせっせと作業してくれている。

 当然だ。

 タダメシ食いは許しませんとも。

 ロイが忙しく働いてる時にのんびり晩酌なんて許しません。

 遊んでいる人は(私を除いて)ここにはいないんです。

 ロイは私の執事であって団長達の使用人ではありません。

 嫌なら騎士団の食堂でどうぞと言ってあるのだ。


「先に言っておきますがここでは給仕はつきませんからね。みんな一緒に同じ食卓で食事を摂っていますのでその辺はどうぞ御理解を」


 有無は言わせなかった。

 成り行きを見守っていたフリード様はその様子を見て目を点にし、その後、さもおかしくて堪らないとばかりに腹を抱えて笑い出した。

 私は何かおかしなことをやっただろうか?

 なかなか笑いの収まらないフリード様をよそにヘンリー様はとりあえず今日の食事は確保できたことを喜び、当初の目的であった初級魔法の応用について私を質問攻めにし始めた。そしてそれは食事が出来上がり、運ばれてくるまで続き、物珍しい料理の数々に目を輝かせ、がっつくとその後も居座って、結局二人は騎士団の寮に泊まり、私の忠告もなんのその、翌朝の朝食までしっかり摂ってそのまま昼食まで居座ろうとするヘンリー様を追い出し、保護者的立場のフリード様も彼を引き摺って一緒に帰っていき、昨日、日付が変わってからやってきたらしい父様達は昼頃、昼食前に起きてきた。

 そして私はといえば、ホッとしたところで昨日酷使した身体が筋肉痛を思い出し、軋む体にのたうち、精神的にも疲れ果て、その日の午後、夕方まで寝ていたことは言うまでもない。


 休んでいたこともあって夕方になると身体も随分マシな状態になり、寝ぼけ眼で二階から階段を降りて行くと父様がリビングでロイも入れてくれたお茶を飲んでいた。

 昨日は散々だった。

 試験は陛下にいいように踊らされ、ここに戻って来ても落ち着く間もなくヘンリー様の来襲を受けて振り回され、夜が更ける頃には疲労で寝落ち、イシュカにベッドまで運ばれたことは覚えていない。二年前と違って私もそれなりに成長したので重くなっているはずなのに、私の婚約者達は軽々私を抱き上げる。イシュカやガイはまだしもロイやマルビス、テスラまでもだ。すっかり激しめのスキンシップにも最近慣れてきて少々のことでは狼狽えることもなくなった。


 父様には二年前に比べてロイ達に甘えるのが上手くなったと言われた。

 確かにそうかもしれないと思う。

 だってロイ達は私が何をしても、どんな事態になったとしても絶対私を見捨てたりしないって信じてる。無闇に全て受け入れるのではなく、私が駄目なことをした時は忠告もしてくれるし、叱ってくれる。怒られている時私がニコニコと嬉しそうな顔をしている時があるのでたまに呆れられるけど。

 これは決して私がM(マゾ)だからというわけではない。

 自慢ではないが私はどちらかといえばS(サド)な方だ。

 怒ってくれるということは私をちゃんと見てくれているからだ。

 理不尽を押し付けるわけでもなく、八つ当たり的なものではない。

 私のことを心配して、私を思い、叱ってくれる。

 それが嬉しいのだ。

 父様も最近では行き過ぎた時には止めてくれる。離れて暮らしているというのに父様とは逆に以前より話す機会が増えているくらいで、たまには仕事以外で自分にも甘えていいぞと仰っていたが正直今更どういう顔をして甘えれば良いのかわからない。

 私は既に家から独立しているようなものなのだ。用がない限りは父様の屋敷に出掛けることもない。むしろ父様達がウチに来ることが多いくらいで兄様達も友達を連れて遊びに来ることもある。母様達は新商品を時々タカリに来るが勿論一人二つまでと制限かけるのは変わっていない。それを越えたら父様に請求書を回すからと言ってあるので今のところそれは守られている。ただでさえ相変わらず欠品続きで店頭に並べる商品すら品薄なのに親族に欲望の赴くまま大量に持って行かれては困るのだ。但し、何か仕事や接客の対応などをお願いした時は仕事が終わると御礼として好きな物を二つ選んでいいよと言っているので最近では私がそれを持ち込むのを心待ちにしているフシがある。要するに物で釣っているわけだが嬉しそうに商品を抱えて母様達はいつも帰って行くのでそれはそれでヨシとしている。


 離れて暮らし始めてからの方が家族との会話が増えるって皮肉なものだ。

 二年前までは貴族の三男坊として、きっとこの世界でも私は寂しく過ごして行くんだろうなと漠然と思ってた。

 だからこそたった一人でいいから欲しいと願った自分の恋人(みかた)

 焦がれるほどに恋しいと思う人との出会いはまだないけれど、今は以前ほど焦燥感は既にない。

 私には数え切れないほどたくさんの味方がいる。

 寂しいなんて感じるほどもないほどに愛してくれる人がいる。

 可愛くないであろう私を誰よりも可愛いと言ってくれる人達が。

 

 みんなが側にいてくれるなら恋人なんてどうでもいいと思えるほどに、

 私は今が幸せなのだ。 

 多少の面倒、厄介事に巻き込まれたとしても。

 

 だって私の仲間は最強だ。

 強さというのは一つじゃない。

 武力や財力、才能、力というものは様々だ。

 どんな困難だって怖くない、乗り切れるって思うほどには。


 たとえ多少、陛下に振り回されていたとしても。

 


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