表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
わたしはチャムケア! -光の少女戦士伝説的なやつ希望-  作者: 虎竜王NV
第二章:のこちゃんの怪人生、黎明編
17/21

02 のこちゃん、投入される


(つい)に、のこちゃんの恐れていた戦場への出向(しゅっこう)が決まり、ティハラザンバーとしての傭兵(ようへい)活動が始まろうとしていた。


恐らく、この頑丈(がんじょう)で高性能なティハラザンバーならば、大凡(おおよそ)状況下(じょうきょうか)(もう)(ぶん)のない戦力たり()るのだろう。


しかし、何度確かめようと、中身はのこちゃんなのだ。


硬度(こうど)でダイヤモンドを凌駕(りょうが)する外殻(がいかく)としてイメージできるティハラザンバーに(くら)べれば、現代に生きる凡庸(ぼんよう)な中二女子に過ぎないそのメンタル強度などは、お(はし)でつままれた(きぬ)ごし冷ややっこくらいである。


いくら(もと)伝説の白銀(しろがね)(よろい)聖女(せいじょ)がサポートしてくれたとしても、いざ(きび)しい場面に遭遇(そうぐう)してしまえば、主にのこちゃん部分だけ鎧袖一触(がいしゅういっしょく)されてしまうに(ちが)いない。


育成組(いくせいぐみ)指導者(しどうしゃ)である老矛(ろうぼう)(めい)じられた課題は、()()が、現実の脅威(きょうい)として眼前(がんぜん)に突きつけられた形であった。


もちろん、のこちゃんとしても、悪の組織に加担(かたん)する事無く、無難(ぶなん)色々(いろいろ)とやり過ごしたいのは山々(やまやま)である。


それでも、(つばさ)の怪物に対峙(たいじ)した時と同様に、しっかりとお膳立(おぜんだ)てをされてしまっては、魔刃殿(まじんでん)へ身を寄せるしかない以上、その提示(ていじ)された道を(あゆ)んで見せて(おのれ)の立場を(かた)めるしかないのだ。


少なくとも、のこちゃんがこの身体(ティハラザンバー)()れていない現状(げんじょう)では、それが唯一(ゆいいつ)自衛(じえい)(さく)とも言える。


特別(みそっかす)(あつか)いしてもらえないのであれば、これからも何かある都度(つど)(おのれ)脆弱性(ぜいじゃくせい)考慮(こうりょ)して行き先は自身で見極(みきわ)めねばならない。



ただ、そんな条件に対して、猛禽(もうきん)獣人(じゅうじん)の男性から提示(ていじ)されたものは、どれも(きび)しそうである。


それでも、とりあえず依頼(いらい)案件(あんけん)の中からのこちゃんが選択(せんたく)したのは、せめて誰かを救う要素(ようそ)があるという事が決め手となり…


孤立(こりつ)籠城(ろうじょう)中の寡兵(かへい)集団救出(きゅうしゅつ)とその敵対勢(てきたいぜい)壊滅(かいめつ)作戦】


…であった。


「うう、でもいやだなぁ」


『ふむ、悪くない選択(せんたく)であろうよ。

行動に指針(ししん)があるのは、何をするにせよ漠然(ばくぜん)と事に当たるよりも、(おのれ)見失(みうしな)わぬために思った以上に必要(ひつよう)不可欠(ふかけつ)なのだ…のこ』


トレーナーは評価(ひょうか)してくれたものの、苦肉(くにく)(さく)である事に変わりがない。


ジャガーの獣人(じゅうじん)ベニアは、実習(じっしゅう)に出る事が楽しいらしく、嬉々(きき)として手続きを進めている。


その様子をながめながら、暗澹(あんたん)たる思いで、のこちゃんは無意識にティハラザンバーのお腹辺りへ手を当ててしまう。


ちなみに、ティハラザンバーに胃があるのかどうかは、空腹(くうふく)を感じないためよく分からない。


「そう言えば、お腹も、痛くならないからなぁ………」


「何か言った?

この受付のオッサンが、合流(ごうりゅう)場所まで連れて行ってくれるらしいよ!」


手続きを終えたベニアが、顔をこちらへ向ける。


「ワシの名は、ワシオウだ。

猫系ってヤツは、気まぐれで不躾(ぶしつけ)なのしかいないのか、まったく」


「あっ、すいませんっ」


初対面(しょたいめん)であろう、ベニアからいきなりオッサン()ばわりされて不機嫌(ふきげん)になった猛禽(もうきん)獣人(じゅうじん)のワシオウに、のこちゃんは思わず(あやま)ってしまった。


やはり、日本人ムーブは無意識(むいしき)なだけに、如何(いかん)ともし(がた)いらしい。


ワシオウは、受付カウンターから出てくると、ティハラザンバーたちを(うなが)した。


「…まぁ良い、この案件(あんけん)受託(じゅたく)した連中の所には連れて行ってやるさ。

ワシの仕事だからな」


そうかと、のこちゃんは思う。


これは、あくまでも育成組(いくせいぐみ)カリキュラムの一環(いっかん)であり、正式に仕事を受託(じゅたく)した者たちについて行くおまけ参加なのだ。


いざとなれば、直接(ちょくせつ)戦闘に参加しないで()む方法があるかも知れない。


とは言え、それには、致命的(ちめいてき)難点(なんてん)があるのだが。


「ティハラザンバーって、金ピカで目立つんだよなぁ………」


きっと、手を()こうとしたりサボろうとすると、誰かしらに見咎(みとが)められ(やす)仕様(しよう)なのである。


『そればかりは、もうどうにもならないな…のこ』


ですよねぇと、のこちゃんは、案内のワシオウに追従(ついじゅう)してとぼとぼ歩き始めた。


その横にはベニアが続き、後からドラゴン獣人(じゅうじん)のアインとガラがついてくる。



のこちゃんたちに合流してきたアインとガラは、自己紹介(じこしょうかい)(あわ)せて、当面(とうめん)(あいだ)行動を共にする(むね)()げてきた。


老矛(ろうぼう)からは、ちゃんと許可(きょか)を取りつけてあるらしい。


のこちゃんへ積極的(せっきょくてき)に話しかけてきたのは、アインである。


アインは、青と白銀(しろがね)のツートーンの(うろこ)特徴的(とくちょうてき)で、ティハラザンバーより少し背が高い。


間近(まぢか)で見てみると、若い女性であってもドラゴン獣人(じゅうじん)らしく、ガッシリとした身体の作りが(うかが)える。


遠目(とおめ)で見た時には、シャープな体つきと相俟(あいま)って、そんな感じもしなかったのだが。


頭部の両側(りょうがわ)より後方へ二本ずつ青い角が()びていて、それがアインの存在感をより大きく印象(いんしょう)づけている。


ティハラザンバーの持つ感覚(かんかく)なのか、こちらを見つめるその濃い水色の(ひとみ)には、知的な光があると同時に見る者を射貫(いぬ)く様な強い攻撃性もおびている気がした。


のこちゃんとしては、警戒(けいかい)してしまうのも無理からぬ話で、もしかするとよそよそしい態度(たいど)でアインに接してしまったかも知れない。


ただ、それはそれとして、アインの長い直毛(ストレート)の青みがかった黒髪(くろかみ)が、『OK!チャムケア4!』に登場したシリーズで最初の青いチャムケアであるケアセオリツのイメージに合っているとくれば、知性を売りにしているのに大概(たいがい)の事を腕力(わんりょく)で解決する(いきお)いまかせのキャラだったから、アインにもそんな二面性があるのかも?と、いつもの調子で考えていた。


もちろん、ほんの少ししか話していないので、まだ、本当の所は分からない。


ガラの方は、反対にほぼ口を開かないとあって、そもそもこちらへ係わる気があるのかどうかさえも分からなかった。


頭部の左右に大きな角が一本ずつ立ち、ショッキングピンクの(うろこ)は、部分的に(うす)桃色(ももいろ)へグラデーションしている。


どこかの王侯貴族(おうこうきぞく)の様に、金色の長いクセっ毛を華美(かび)(まと)めた派手(はで)さと、堂々(どうどう)とした(たたず)まい。


それがドラゴン獣人(じゅうじん)らしさなのか、アインと同じく若い女性との事なのだが、自尊心(プライド)が高いので自分から話さないのかなと予想はできた。


それでも(いや)な感じがしないのは、ガラの持つ色の取り合わせが『バシバシ!チャムケア』の主人公チャムケアである、ケアソウルのそれに近いからだろう。


ケアソウルと言えば、通っている中学校の生徒会長であり、学業の優秀さやスポーツの万能さに加えて、気が優しくて(ふところ)も深いため人望(じんぼう)(あつ)いという、完璧超人(かんぺきちょうじん)などとファンから(ひょう)されるほどの女傑(じょけつ)である。


それでいて、どこか抜けていたり歌が下手(へた)だったりと、(にく)めない(えが)かれ方をされた人気キャラなのだ。


のこちゃんは、決めゼリフである「このケアソウルが、あなたの根性バシバシ高めてあげる!」を心の中でガラに言わせてみたりして、勝手に好感度(こうかんど)を上げているに過ぎない。


自分を客観的(きゃっかんてき)に見られるならば、かなり失礼な事をしていると分かる上に、ガラ本人には何も関係性がない事に気がつくはずである。


しかし、最初に育成組(いくせいぐみ)の集まりで見た"王道(おうどう)(もも)と青"という感想のインパクトが(まさ)ってしまい、いざ本人たちが目の前に来たとなると余計(よけい)妄想(もうそう)(はかど)ってしまうのも、のこちゃんでは仕方がない。


そう言えばケアセオリツも生徒会長だったなと、思わぬ合致(がっち)(みょう)に、のこちゃんはひとりで合点(がてん)がいっていた。


とは言え、ドラゴン獣人(じゅうじん)のクラスター、尖角兵団(せんかくへいだん)(ひき)いる巨大な直立ドラゴンことベルクを思いだして、アインとガラも本質的(ほんしつてき)猛者(もさ)だろうという確信はある。


ベニアと同様、ティハラザンバーの課題に便乗(びんじょう)して、少しでも実習(じっしゅう)に出たいのかも知れない。


「…アインとガラって、お(そろ)いの服を着るくらい仲が良いのかな?」


「あれは、尖角兵団(せんかくへいだん)兵団服(へいだんふく)だよ。

入団(にゅうだん)した時期で色が(ちが)うから、白は、一番新しい団員(だんいん)って事だねー…」


のこちゃんが小声で()けば、後のふたりを気にしている様子でありつつも、ベニアは説明してくれた。


ワシオウの案内に(したが)って歩いている間、元よりティハラザンバーと同行(どうこう)する予定だったベニアは、急なふたりの参加に思う所があるらしくそれまで寡黙(かもく)であった。



のこちゃんたちが連れてこられたのは、同じ斡旋(あっせん)事務所(じむしょ)の建物の中で、(くだん)の作戦を受託(じゅたく)した者たちが集められている待機(たいき)部屋(べや)だった。


要は、よく見かける高い天井(てんじょう)と大きな(かべ)だけの殺風景(さっぷうけい)訓練(くんれん)スペースなのだが、こういった用途(ようと)にも使用される多目的な空間だったらしい。


「ああ、この建物にもやっぱりこの部屋あるんだ………」


(かべ)には、(くだん)の金属製でフラットな鏡面(きょうめん)部分があった。


場所によって、()()があったり無かったりするのも、何かしら意味があるのかも知れない。


「思っていたより大人数(おおにんずう)だよ、ティハラザンバー!」


ここに集まっているのは、(すで)に現場に出て戦っている者たちばかりである。


その雰囲気(ふんいき)に飲まれまいとしているのだろうか、一転(いってん)して高揚(こうよう)したベニアの言葉を受け、のこちゃんは、なるべくティハラザンバーの視覚(しかく)注力(ちゅうりょく)しない様に軽く部屋の中を見渡(みわた)す。


作戦に参加する者たちは、個人個人で受託(じゅたく)していると見えて、育成組(いくせいぐみ)よりも多種多様(たしゅたよう)獣人(じゅうじん)が数多く集結(けっしゅう)している。


大きな(ぞう)の様な者もいれば、巨体の水牛(バッファロー)らしい者にトナカイっぽい者、猿系に(うさぎ)系や体が小さめのねずみ系やイタチ系、もうお馴染(なじ)みの(おおかみ)系や猫系の姿も見えた。


「すごいねぇ………」


総勢(そうぜい)、ざっと百人くらいはいるだろうか。


それぞれ、武装(ぶそう)や防具の有無(うむ)に、体格(たいかく)の大小と格好(かっこう)もまちまちで、一切(いっさい)統一感(とういつかん)がない面々(めんめん)である。


ティハラザンバーより二回りほど小さなワシオウは、素の人間の男性で言えば、巨漢(きょかん)(たぐい)にあたる大きさだろうとトレーナーが教えてくれた。


それより大きなティハラザンバーになってしまった自分って…と一瞬思ったのこちゃんではあるものの、(さら)に大きな連中が魔刃殿(ここ)にはうようよいるので、それ以上考えるのをやめた。


どちらにせよ、トレーナーの提案(ていあん)にすがって、命を助けてもらった時に人間はやめてしまったのだ。


家族や友だちは当然としても、チャムケアに出会って(さら)に楽しくなったこの人生を、どんな形にせよ(あきら)められなかった。


今後、どうなるのかは、まるで見当がつかないものの………


それより、この雑然(ざつぜん)とした大所帯(おおじょたい)ならばティハラザンバーが金ピカでもフェードアウト可能では?


そう、のこちゃんが(あわ)い希望を見出(みいだ)した次の瞬間、どよめきと共に参加者全員が部屋の入り口に現れたティハラザンバーを刮目(かつもく)していた。


所々から、おいあいつは…とか、あれが(うわさ)の…とか、何でこんな所に…とか、聞いていた以上に金ピカだな…などの(ささや)きが待機(たいき)部屋(べや)を満たしてゆく。


絵に描いた様な、"悪目立(わるめだ)ち"の効果てきめんである。


「………だめだこりゃ」


『こうなれば、腹をくくるしかない様だな…のこ』


トレーナーの言う通り、開き直る以外の道は、のこちゃんに残されていないのだろう。


「あっ、受付のオッサンが中で呼んでるよ、行こう!」


愕然(がくぜん)とした(てい)で、諦観(ていかん)海原(うなばら)に精神をひととき(ただよ)わせていたのこちゃんは、ベニアに(うなが)されて部屋の中へ足を()み入れた。


見れば、ワシオウが手招(てまね)きしている様だ。


そちらを目指(めざ)して進むティハラザンバーとベニアに続き、アインとガラも待機(たいき)部屋(べや)へ入った。


すると、再び参加者たちのどよめきが広がる。


この尖角兵団(せんかくへいだん)の新人たちは、(みな)に知られた存在だったらしい。


(おおむ)(めずら)しいもの見たさのどよめきだったティハラザンバーのそれと(ちが)い、アインとガラに対しては、ちょっとした畏怖(いふ)の様な感情が()ざっていた。


「………………」


「………………」


しかし、ふたりは、そんな(まわ)りの反応を()(かい)さない様子である。


前を向いたままで、ティハラザンバーとベニアの少し後を、泰然自若(たいぜんじじゃく)と歩いている。


育成組(いくせいぐみ)には新人しかいないとしても、そんな実力者なら何故わざわざぽっと出の自分と行動を共にするのだろうと、のこちゃんは(いぶか)しむ。


のこちゃんとしては、たった今サボりづらいと実証(じっしょう)されてしまったティハラザンバーが、よりサボれなくするために監視(かんし)の目が増えた様な気分だった。



ワシオウの横には、この作戦受託(じゅたく)者グループを()仕切(しき)っているリーダーと(おぼ)しき、大柄(おおがら)な男性の獣人(じゅうじん)が立っていた。


とは言え、ワシオウより上背(うわぜい)があるものの、ティハラザンバーには(およ)んでいない。


ずんぐりとした体型で、大きな頭に手足が太く(みじか)めなのも特徴的(とくちょうてき)である。


「ん?…」


あれって(くま)獣人(じゅうじん)だろうかと、少し興味(きょうみ)がそそられて、のこちゃんはついしげしげと(なが)めてしまった。


獣人(じゅうじん)だらけのこの()(およ)んで何を今さらという感じなのだが、(くま)が世界に通じる愛されキャラクターのモチーフとあって、少し別腹(べつばら)の気持ちなのだろう。


のこちゃんにも、チャムケアに出会う以前の幼女時代に多少の(たしな)みはあったのだ。


その格好(かっこう)は、オーバーオールの様な胸まで(かく)すズボンをはいて、前の空いた(よろい)の胸当てをチョッキにしている。


黒に近い茶色い毛並みの胸部(きょうぶ)には、アクセントの三日月(みかづき)模様(もよう)が笑っているのだから、キャラ(ぜん)としたいかにもな姿だ。


言葉が通じるとなれば、なおさらそれっぽくなってしまう。


もちろん、()いて言えば『ふしぎまじっくチャムケア!』に(くま)キャラはいるけど、どちらかと言えばテディーベアだしなぁと一瞬の検討(けんとう)()てからなのだが。


『そら、また目が威嚇(いかく)しているぞ…のこ』


(くま)獣人(じゅうじん)が少し後ずさりした様に見えたものの、のこちゃんはすかさず、こんにちはよろしくお願いしますとご挨拶(あいさつ)をした。


結局は、最初に相手へ(あた)える心象(しんしょう)肝心(かんじん)なのだ。


特に色眼鏡(いろめがね)で見られている場合は、真摯(しんし)に相手へ向き合う事で()けられるトラブルも少なくない。


その辺りは、小学校時代に(はだ)(まな)んできたのこちゃんである。


加えて、これから向かう(さき)でもサボりがばれた時には、多少のプラス効果(こうか)があるはずとも()んでもいた。


「あ、ああ…よろしく、ティハラザンバーだな?…」


(くま)獣人(じゅうじん)は、なかなか(しぶ)い声だった。


「ワシはここまでだ。

後は、こいつの指示(しじ)(したが)え」


それだけ言うと、ワシオウは部屋を出て行く。


気を取り直したのであろう、(くま)獣人(じゅうじん)は、ワシオウに渡されたと(おぼ)しき書類にざっと目を通した後で、ティハラザンバーに顔を向けた。


「オレは、この即席(そくせき)部隊の責任者(せきにんしゃ)でプレセントというんだが…やはり、聞いていた感じとだいぶ(ちが)うな」


「ははは…」


もはや、どんな素行(そこう)(うわさ)されているのか、(つと)めて気にしない様にしているのこちゃんである。


気の()けた笑いで流しておくしかない。


プレセントは、育成組(いくせいぐみ)から参加する他のメンバーへと視線(しせん)(うつ)してゆく。


「ベニアカーラ・ベニア」


ベニアは、受付でワシオウに(せっ)した時と同様、()()なく名乗(なの)った。


「アインブラウです」


「…ガラですわ」


アインとガラの名乗(なの)りも、()()なさではベニアと同じくらいである。


もしかすると、あれくらいのテンションが普通なのかも知れない。


のこちゃんは、あまり魔刃殿(ここ)で浮かないためにも自分もそうするべきだろうかと思った所で、ひとつの()()かりを(おぼ)えた。


「(ですわ…って言ったな!?)」


のこちゃんがガラに想定(そうてい)していたのは、その桃色(ももいろ)中心の色合いからケアソウルであった。


しかし、ケアソウルは、完璧超人(かんぺきちょうじん)な設定でも(まわ)りに(へだ)たりを作らない様な、年齢(とし)相応(そうおう)(くだ)けた口調(くちょう)なのだ。


「(ガラは、お嬢様(じょうさま)系だったのか…)」


そうなると、話は変わってくる。


『バシバシ!チャムケア』でお嬢様(じょうさま)チャムケアと言えば、ケアソウルの幼馴染(おさななじ)みでもあるケアラジアルだ。


しかし、ケアラジアルは黄色系であり、桃色(ももいろ)が主体であるガラのイメージと(ちが)ってしまう。


「(でも、(もも)のお嬢様(じょうさま)系って、いないよねぇ…)」


強いて言うならば、『Joy!フロイラインチャムケア』のケアエカルラートが、(あか)系のですわ調でお姫様だから近いと言えば近い。


当初(とうしょ)、ケアエカルラートは敵に洗脳(せんのう)され、宿敵(ライバル)クレプスキュールとして主人公であるケアアンティアの前に立ち(ふさ)がった。


しかし、ケアアンティアたちチャムケアの活躍(かつやく)洗脳(せんのう)から解放(かいほう)され、自身もチャムケアになったという所謂(いわゆる)"光落(ひかりお)ち"の人気キャラだ。


初見(しょけん)の時は、それまで敵にさんざん利用されてしまった無念(むねん)さを背負(せお)って戦うケアエカルラートの姿勢(しせい)に、凄味(すごみ)すら感じたものである。


などと、のこちゃんが他人(ひと)からすれば超どうでも良い思考(しこう)(めぐ)らせていた所で、トレーナーに呼びかけられ(われ)に返った。


『良いのか?

プレセントとやらが、(さき)ほどから何か話しかけてきている様だが…のこ』


あろう事か、作戦について説明しようとしていたプレセントを、ティハラザンバーは(めん)と向かってガン無視していたらしい。


「はあっ、ああっすいませんっ、ちょっと考え事をしていました!」


(あわ)てたのこちゃんは、相変わらずの無意識(むいしき)日本人ムーブでティハラザンバーをぺこぺこさせて、プレセントに(あやま)った。


「ああ…いや、本当にイメージとは(ちが)うんだな。

何と言うか、新人らしいと言えば、そうなのかも知れんが………」


むしろ、困惑(こんわく)気味(ぎみ)のプレセントである。


そんなティハラザンバーには、ベニアこそもう()れはじめているものの、アインとガラも心なしか目を丸くしている。


「この作戦を受託(じゅたく)した参加者たち全員に(くば)っているんだが、行動中は、必ずこれを身に着けていてくれ」


そう言って、プレセントは、細い(くさり)()められたペンダントらしき物を育成組(いくせいぐみ)の四人にそれぞれ(わた)してきた。


ペンダント部分は、鈍色(にびいろ)(うす)小判型(こばんがた)で、中央に青いランプが点灯(てんとう)している。


「これは?」


のこちゃんがプレセントに()くと、何やらチョッキ(よろい)の内側からB5ノートくらいの装置(そうち)を取り出し、作戦へ参加している者をこちらに()らせるアイテムなのだと回答を()た。


その装置(そうち)が対応して、リーダー側に自分の位置と生存(せいぞん)認識(にんしき)されていれば、ランプが青く光るらしい。


「兵隊さんの認識票(ドッグタグ)ってやつかな?」


確か、戦死した個人が誰であるのか(わか)る様に、身に付けると聞いた事がある。


でも、これだと生きて何処(どこ)にいるかどうかしか分からないなと、のこちゃんは(つぶや)く。


『ふむ、戦死はもちろんだが、これには、逃亡(とうぼう)対処(たいしょ)する意味もあるのだろうな…のこ』


のこちゃんにしか聞こえないトレーナーの言葉なのだが、それに呼応(こおう)する様にプレセントが続ける。


「それを紛失(ふんしつ)してしまうと魔刃殿(ここ)帰還(きかん)できなくなるので、十分(じゅうぶん)気をつけてくれ」


よく分からないものの、それは大変と、のこちゃんはすぐに認識票(にんしきひょう)を押し入れの中へにしまった。


しかし、その途端(とたん)に、プレセントの装置(そうち)から警報(けいほう)()らされた。


「あれ?」


プレセントが(あわ)てて装置(そうち)を確認する。


『ふむ、ランプが赤くなっているな。

特殊(とくしゅ)結界(けっかい)の中だと、あちら側への認識(にんしき)遮断(しゃだん)されるのではないか?…のこ』


「あ、そうなんだ!?」


のこちゃんも(あわ)てて認識票(にんしきひょう)手元(てもと)(もど)してみれば、すぐに警報(けいほう)は止まった。


ティハラザンバーの目の前で、プレセントが首を(かし)げている。


故障(こしょう)はしていないらしいが、変だな………」


一応(いちおう)チェックしてみるかと言いながらプレセントが立ち去るまで、のこちゃんは、認識票(にんしきひょう)(くさり)をこれ見よがしにチャラチャラさせてアリバイ作りをしていた。


「うーん、だったら落とさない様にしないとね………………ああ、首は、ちょっと無理だなぁ」


ティハラザンバーの首周(くびまわ)りには、明らかに(くさり)の長さが()りていない。


「アタシらのサイズだと、腕か(ふところ)くらいしか入れる所ないよねー」


ベニアも、首にかけるのは(あきら)めたらしい。


見れば、アインとガラは、白い兵団服(へいだんふく)の内ポケットに認識票(にんしきひょう)をしまった様だった。


ベニアのおばさんであるパニアからもらった(かわ)の服だと上下ともポケットが無いし、どうしたものかとのこちゃんが身体(ティハラザンバー)をあちこちまさぐっている横で、ベニアは服の上から装着(そうちゃく)している胸当ての内側に収納(しゅうのう)場所を見出(みいだ)した様だ。


ティハラザンバーの白銀(しろがね)(よろい)部分は、(れっき)とした身体の一部であり、装着(そうちゃく)している訳ではない。


つまり、装甲(そうこう)と身体の間に隙間(すきま)は存在しないのだが、アームカバーの(ひじ)に少しだけ覆い(ガード)()()っている。


のこちゃんは、その内側の腕へアイテムの(くさり)を巻くと、上着(うわぎ)袖口(そでぐち)(かぶ)せた。


少し(まく)れば、青いランプがチラリと見えるので、これで問題はなさそうだ。


「…こんなもんかな」


これなら、うっかり何かに()()ける事も無いだろう。



「おーベニアじゃん、魔刃殿(まじんでん)に入ったの知ってたけど、初めて見た気がするわ~」


そんな事をしていると、猫系の女性がのこちゃんの(となり)にいたベニアに声をかけてきた。


パニアとベニアよりも少し小柄(こがら)なものの、純白(じゅんぱく)の体毛に(うす)い青の豹柄(ひょうがら)が浮かぶ、綺麗(きれい)(ひょう)獣人(じゅうじん)らしい。


らしいと言うのも、一瞬、のこちゃんが白熊(しろくま)獣人(じゅうじん)かと思ったくらいに白かったからである。


プレセントの時といい、まだ(くま)キャラが好きなのかも知れないと、のこちゃんは人知れず新しい自分を発見していた。


白い(ひょう)獣人(じゅうじん)は、草色(くさいろ)(たけ)の長い外套(がいとう)から飛び出した顔に、豹柄(ひょうがら)よりも濃い二つの青い(ひとみ)爛々(らんらん)としていてる。


この場にいるという事は、こんなに綺麗(きれい)な姿でも、傭兵(ようへい)家業(かぎょう)の戦士なのだ。


「イルねえ、ひさしぶりー…って言うか、住んでる(とう)で他の猫系、ほとんど見かけないのどーなってんの?!」


ふたりは知り合いだった模様(もよう)で、イルねえと呼ばれた白い(ひょう)獣人(じゅうじん)も、ベニアのグチにそれな~と笑っている。


確かに、言われてみればベニアとパニアと食堂(しょくどう)で働いている者くらいしか(とう)の中では見かけないなと、のこちゃんも(うなず)く。


襲撃者(しゅうげきしゃ)との戦いに参加していたじっさんはともかく、キットカッチェも、ここへ来た日以来(いらい)見ていない。


あれから、ちゃんと元気になったのだろうか。


「ああ、ティハラザンバー、こちらイルねえ…イルヴィシアさん。

パニアおばさんの後輩なんだよー!」


ベニアは、(しろ)(ひょう)獣人(じゅうじん)を、のこちゃんへ紹介(しょうかい)した。


のこちゃんは、ティハラザンバーをしっかりイルヴィシアに正対(せいたい)させて、初めましてと頭を下げる。


「あんたがティハラザンバーだね~…(うわさ)も耳にしてるけど、パニア(あね)さんから話は聞いてっから、何かあったらうちに言いなよ~。

さっきベニアが言ってた通り、あんまいないけどな~」


などと言いながら、イルヴィシアはケラケラと笑い、でかいねあんた~とティハラザンバーを肉球(にくきゅう)の手でぺしぺし(たた)く。


「ははは…」


完全におばちゃんだなと思っても口には出さない、世渡(よわた)巧者(こうしゃ)なのこちゃんだった。



「まぁ、いきなり修羅場(しゅらば)のど真ん中へ参加させるって話じゃないんだから、(かた)(ちから)()いとけな~」


たまたま手の届くトコにいたらうちがメンド~見てやっからさ~と、イルヴィシアは、安請(やすう)()いの様な、そもそも手の届く所にいなさそうなテキトーな感じで軽口(かるくち)を続けていた。


そこには、のこちゃんとベニアを安心させようという気持ちが何となく見える。


ただ、その間、同じ育成組(いくせいぐみ)であるアインとガラに対して一瞥(いちべつ)もくれなかった事に、のこちゃんは少し気になったのだが。


『プレセントとやらが何か動き始めた様だぞ…のこ』


トレーナーに(うなが)され、のこちゃんは、(くま)獣人(じゅうじん)の姿を探す。


プレセントは、ここの金属製でフラットな鏡面(きょうめん)部分の近くで、(まわ)りの者と話しをしていた。


「あ、そろそろ移動の準備が始まるみたいだね~」


イルヴィシアもそんな気配(けはい)(さっ)してか、現地(げんち)で会えたらラッキ~だね~と言い残して、自分が担当(たんとう)するグループの所へ(もど)って行った。


「よく聞く"猫系らしい"って、ああいう自由さなのか…」


「イルねえは、いつもあんな感じだねー…」


間もなく、プレセントがこの場にいる者たちに傾聴(けいちょう)要求(ようきゅう)する声を上げる。


「これより全員、逐次(ちくじ)現場へ移動し、(すみ)やかに配置(はいち)()いてもらう!

状況(じょうきょう)開始のタイミングは、グループ分けの際に任命(にんめい)したリーダー役へ伝えてあるので、それに(したが)ってくれ!」


作戦の参加者一同(いちどう)も、了解(りょうかい)の声で(こた)える。


(くば)ったアイテムは、(いのち)ある限り絶対に無くすなよ!

現場への移動もそうだが、状況(じょうきょう)終了(しゅうりょう)()回収(かいしゅう)ができなくなるからな!」


そんなプレセントの念押(ねんお)しに、何を当たり前の事を言っているのだという、(かる)失笑(しっしょう)が参加者たちからこぼれた。


『今のは、こちらへ向けてであろうな…のこ』


「ああ、そうか」


プレセントは、育成組(いくせいぐみ)の新人であるこの四人に、責任者(せきにんしゃ)として(くぎ)()したのだ。


「…ん、どういう事?」


認識票(にんしきひょう)を無くすと帰ってこれなくなる様な話は聞いていたものの、身分証(みぶんしょう)くらいに思っていたのこちゃんには、そこまで大事(おおごと)なのかなと疑問が浮かぶ。


ベニアの顔を見ても、のこちゃんが何を疑問に思ったのか分からない様子で、キョトンとした表情をしていた。


「それは、見ていれば分かりますよ」


それまで寡黙(かもく)だったアインが急に話しかけてきたと思えば、プレセントがいる方へ、ティハラザンバーの注意を(うなが)す。


そちらへ視線をやれば、プレセントは、先ほどの装置(そうち)を取り出して何やら操作(そうさ)している。


そうしている内に、金属製の鏡面(きょうめん)部分が発光(はっこう)を始めた。


「あっ」


のこちゃんが思わず声をもらせば、間髪(かんはつ)()れずに鏡面(きょうめん)発光(はっこう)は強さを()してゆき、待機(たいき)部屋(べや)の中を煌々(こうこう)()らす。


その光に()まれる様に、グループで分けられた作戦の参加者たちが、次々(つぎつぎ)と集団で姿を消していった。


ちらっとこちらに手をふるイルヴィシアが見えたのだが、(まわ)りの者たちと一緒に、その姿はすぐ光と共に霧散(むさん)する。


移動と言っていたのは、この特殊(とくしゅ)な手段であり、恐らくあのアイテムが関係しているのだろう。


納得(なっとく)はしたものの、消えるのがちょっと怖いのこちゃんである。


『これは、まずいかも知れないぞ…のこ』


トレーナーが何か言ったのと同時に、プレセントがこちらへ向けて(さけ)ぶ。


育成組(いくせいぐみ)の四人は、オレたちと一緒(いっしょ)だ!」


二つの呼びかけに注意が分散(ぶんさん)してしまった次の瞬間、のこちゃんは、光が目の前の空間を大きく(ゆが)める様子を目撃した。


(ゆが)んだ光の空間は、ティハラザンバーを(つつ)み込む様に(おお)(かぶ)さる。


「ふぁーっ?!」


のこちゃんは、(さら)に、間抜(まぬ)けな声をもらしてしまった。



気がつけば、足下(そっか)には、魔刃殿(まじんでん)の中心に(そび)える(くだん)の青黒い巨大な半球(はんきゅう)があった。


半球(はんきゅう)の表面にびっしりと(きざ)まれている幾何学模様(きかがくもよう)(ちゅう)に青白い光を浮き上がらせ、特定パターンの明滅(めいめつ)をくり返している。


ティハラザンバーとして上空から本拠地(ほんきょち)全体を(のぞ)んだ以来の位置取りなのだが、その時と(ちが)い、自身で滞空(たいくう)している感覚(かんかく)はない。


強いて言うならば、じっさんと決闘させられた時に見た、(おお)ティハラを()った白銀(しろがね)(よろい)聖女(せいじょ)伝説(でんせつ)のVR映像的な()()である。


「ど、どうなったの?」


ふと見れば、(まわ)りにはベニアにアインとガラの育成組(いくせいぐみ)メンバーもいて、少し離れた位置にも、プレセントと数人の作戦参加者が見えた。


「ここから、本格的に()びますよ」


アインの言葉に、トレーナーが反応した。


『これは、やはり(わた)りの術式か!?

ならば、ティハラザンバーには………』


「え?」


パチリとティハラザンバーの体毛に電光(でんこう)が走る。


のこちゃんがそれに気がついた時は、体毛を走る電光(でんこう)が恐ろしい速度でその数を()やし、(すで)に全身へと(ひろ)がっていた。


「何これ…」


一瞬、放電球(プラズマボール)の様に周囲(しゅうい)電光(でんこう)をばらまいてから、ティハラザンバーの黄金の体毛そのものが発光(はっこう)を始めた。


その光量(こうりょう)は、鏡面(きょうめん)のそれと同様、(またた)()に強くなってゆく。


「どうしたのティハラザンバー?!」


近くで異変(いへん)を見ていたベニアが(おどろ)きの声を上げる。


「あっ、こんな、えっ…」


何が起きているのかなど、のこちゃんの方こそ分からない。


そして、どうする事もできない。


やがて、黄金色(こがねいろ)の光が、のこちゃんの視界(しかい)いっぱいに広がっていった。



――――――――――――――――



のこちゃんが気がついた時、ティハラザンバーは、巨木(きょぼく)(かこ)まれた森林(しんりん)地帯(ちたい)の地面にちょこんと(すわ)っていた。


(ひざ)(かかえ)えない体育(たいいく)(ずわ)りとでも言おうか。


両腕(りょううで)は、だらりと地面に放り出している。


お尻の下は、地表に出た根っこの部分がこんがらがって、ぼこぼこしていた。


ティハラザンバーから見ても巨木(きょぼく)林立(りんりつ)している光景なのだから、ここは、かなりのスケールで成された深い森林(しんりん)(ちが)いない。


あれから、ヤカンが沸騰(ふっとう)する様な湯気(ゆげ)と共に体毛の光が(おさ)まってゆく途中経過(とちゅうけいか)を見た記憶があるので、気絶はしていないはずである。


だからといって、のこちゃんの気が動転(どうてん)していない訳がなかった。


「あぁ………………」


()()えずは、呆然(ぼうぜん)としているしかやる事がないので、そのまま空を見上げたりしていた。


木々(きぎ)の隙間から、明るい光がもれている。


まだ、()は高いらしい。


『大丈夫か?…のこ』


「…はあ、それなりにですが」


トレーナーの呼びかけには、呆然(ぼうぜん)範囲内(はんいない)であるものの、(こた)えるのこちゃんだった。


しかし、トラブルの衝撃(しょうげき)から、(いま)だ立ち直れていないのは明白(めいはく)である。



そんな()り、こんな場所にも係わらず、ティハラザンバーに話しかける者がいた。


「…なあ、なあ…」


その声は、足下(あしもと)から聞こえる。


「…なあ、なあ…」


のこちゃんが声のするの方へ視線(しせん)をやると、そこには、人間の子供らしい小さな者だった。


「…なあ、あんた、ぶしんさまだろ?」


()(たけ)は、ティハラザンバーの(ひざ)まであるかどうかくらいである。


「こんなとこにいんだから、ぶしんさまなんだろ?」


身に着けているのは、素朴(そぼく)野良着(のらぎ)と、その上から外套(がいとう)にしている、ぼろか何かだろう。


「たすけとくれよ、ぶしんさま!」


その、切実(せつじつ)さをおびた小さな者の声に、のこちゃんの意識(いしき)は、みるみるうちに明瞭(めいりょう)さを()(もど)していった。


続きます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ