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ラブコメ初期作品

大好きな幼馴染に別れを告げる

作者: 青空のら
掲載日:2022/09/06

 彼は一言で言うと気取り屋だった。努力する姿を見せるのは格好悪い。対戦相手に悪態をついて自分を鼓舞する。諸刃の剣で他人にも自分にも尖っていた。そんな彼の後ろからそっと支えるのが私の役割だと思っていた。これからもこの先もずっと。


*********


 その映像を見た瞬間に息が止まった。

ひたすらに突っ込んで行っては躱される。ひらりひらりと見事に踊るマタドール相手に果敢に挑む闘牛。まさにその通りだった。

 足が止まる事もなく最終ラウンドまでひたすらダッシュ、そしてかわされる事をものともせずに全力で振り切るパンチ。

 最終ラウンドまで華麗に捌き切れるマタドールなんて数える程しか思い浮かばない。もちろんその一人は今まさに対戦している相手だ。

 生半可なパンチでは止まらない。避けきれずにパンチを受け続けるとブロックした上からでもダメージが蓄積するのが手に取るようにわかる。

 最後には足が止まってそのツノで滅多刺しにされる。破滅への道標だ。


***


「なんだよ、これ? ふざけるな!!」


 ランニング量を3倍に増やしたメニュー表に激怒の色を表す。


「ふざけてなんていないわよ。きわめて正気。これでも足りないと思うけど何事もバランスが大事だから」

「だから、ふざけるなって言ってるんだよ!」


 それはそうだろう。今までの練習時間では足りなくなるので、早朝と深夜以外に部活中にも走らないといけなくなる。当然、真面目にランニングしている姿なんて他人に見せたくない彼にとっては受け入れ難い事だ。


「春人なんて目じゃねえよ。今年こそ、けちょんけちょんにしてやる、リベンジだ!!」

「そうかしら?下手するとその前に負けて対戦出来ないんじゃないの?」


 春人は第一シード、彼は第二シード、順当に行けば決勝戦まで当たる事はない。すなわち春人にリベンジするには、それまでに負けない事が前提である。


「春人以外の雑魚に負ける訳がないだろ?」

「冬彦なんてどうかしら? パンチ力ありそうだけど?」

「冬彦? ああ、春人と同じ学校の新人か? 練習見る限り春人に一発もパンチを当てられない雑魚じゃねえか!」


 悪態をつくのでもいい、相手をきちんと分析した上でなら。それが慢心から相手を見下して出る言葉ならもはや誹謗中傷でしかない。


「そう? 果たして今のあなたで勝てるかしら?」

「何だと!!」

「マネージャーとして可能な限り勝てるプランを考えて応援するけど、実践するかどうかはあなた次第よ」

「余計なお世話だ!!」


 そう吐き捨てると部室を飛び出して行った。

 ランニングに行ったのは分かってる。素直に口に出せないのいつもの事だ。


***


「へへ、闘牛野郎、俺もノーヒットで終わらせてやるよ。覚悟しときな!」

「初の公式戦なのでよろしくお願いします。今日は胸を借ります!」


 彼の挑発に動じる事なく冬彦はにこやかに答える。既に格が違っていた。キャンキャンと吠える犬の方が弱いのだ。

 やれる事はやって来たという自信の表れなのだろう。

カーン!

試合が始まる……結果は予想通りだった。


*********


「くそ! こんなはずは……」


 彼はよく善戦したと思う。中盤までは

華麗に冬彦の突進を捌き、パンチを避けていた。しかし徐々に捌き切れなかったパンチを防御しているうちに蓄積したダメージにより足が止まってしまった。最終ラウンドはめった打ちに近く、レフリーストップによる決着だった。


「仕方ないよ、現実なんだから。素直に受け入れて次に向かって頑張ろうよ?」


 彼はこんな事で立ち止まっていてはいけない。慢心さえなければどこまでも高みを登っていける人だ。


「初戦敗退なんて推薦に響くじゃねえか!」


 そんな事はちっぽけな事だ。


「そうかしら? 春人と冬彦が全国制覇したら直接対戦したあなたの評価も見直されるんじゃなくて?」


 少ないとしても監督として見る目のある人はいるだろう。彼の才能を見抜けない間抜けに彼を任せる訳にはいかない。


「くそ! やってられるか!!」


 飛び出していく彼を見送る? 追い掛ける?


***


「やっぱりここにいたのね」


 いつも練習している神社裏で彼を見つける。


「何だよ?」

「あなたに話があって。大会が終わったら返事を聞かせてくれって言われてた件けど」

「ああ、あの件は無「悪いけどあなたとは付き合えないわ!」」

「なっ!?」

「やっぱりあなたと私は幼馴染という関係だと思うのよ。だから、男と女とか、彼氏とか彼女っていうのはやっぱり違うと思うの。そう思わない?」

「俺は思わない!!」

「そう?私はそう思うの」


 あなたの増長や傲慢さを止められない存在なんて居てもいなくても同じ。共に高め合える存在こそあなたに必要なの。


「だからね、お別れを言いに来たの!」

「なにを……」

「やっぱり、あんな残念な姿見ちゃうとガッカリしちゃうじゃない? 他にもっとステキな人を見つけようと思うの、冬彦とか年下だけど素敵じゃない?」

「あんな奴!」

「あんな奴? でも実際にあなたに勝ったわよ。不戦敗だけど二位という成績は見事なものよ」

「ぐっ!」

「じゃあね! あっそうそう、幼馴染だから気安く話しかけても良いけど。色恋関係は勘弁してね。全国制覇でもしたら気持ち変わるかもしれないけれど……今のあなたじゃ無理だもの。バイバイ!」

「くそ! くそ! くそ!!」


 憎んでくれてもいい、それで強くなってくれるなら。このまま落ち込み続けるなら……そんな弱い人を好きになった覚えはない、私の幼馴染は最強なの。



 信じてる。



***



 10年後

 とある日本タイトル戦の会場


 挑戦者とその婚約者を見つめる一つの影があった。


「おめでとう。頑張ったね。さよなら……」



Fin.

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― 新着の感想 ―
[一言] 悲劇のヒロインを気取っているようですね。叱咤激励はいいが、女を使っちゃまずいような。幼馴染が思った方へ動けばいいが、拗らせそうな気がします。後で後悔しなければいいですね。
[一言] 普通に後で後悔する奴だね、これ。 仮に幼馴染が大成したとしても、他の人に持っていかれるパターン。 あるいは、芽が出なかったら他の奴に乗り換えるのか?って話でもあるし。 こういうのは強い女と…
[良い点] 青春ですね。強気な女性には憧れます。 ドラマチックで臨場感があり、文章としても読みやすかったです。 [一言] 拝読させて頂きありがとうございます。
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