-1- モテない男連合、解散
レータス・グレイは許すことができなかった。友人としての信頼を裏切った目の前のこの小男のことが、今はたまらなく憎かった。
モテない男連合からの卒業。これで三人目だ。
これで全四人中三人が脱退したので、これでモテない男連合は解散である。
どうしても祝福の言葉を掛けてやる気になれず、かといって真正面から絶交を言い渡す度胸もなく、なんと言えばいいかわからなかったので、間にものが挟めそうなくらいに眉間のシワを深めながらじっと目の前の男を睨んでいた。
薄ら笑いで上機嫌に酒をあおる男。先程から聞いてもいないのろけ話を長々と一方的に喋っている。
睨み続けるばかりで間延びしてきたので、(特に意味はないが)意味深な感じで目を瞑り、たっぷり一分間経ってから、おもむろに瞼を開くと目の前に一片の紙を持った腕が突きだされていた。腕はそのまま顔面に近付いてきて、額のシワに紙片をむにゅりと挿し込んだ。
男が手を離すと、見事に紙は落ちなかった!
男は赤ら顔でゲラゲラ笑った!
グレイはもっと顔を赤くして席を立った!
紙が眉間に刺さったまま一緒に持ち上がった!
隣のテーブルの男女がこらえきれずに吹き出した!
グレイは笑い声のする方をキッと睨んだ!
そこに店員が通りがかり、グレイの眉間の紙を引き抜くとこう言った。
「ソーセージ3、エール4、オニオン豆スープ1、塩茹でレンズ豆1、お会計は270マニです。別々ですか?」
「別々で!エール1杯とソーセージ1皿!」
「60マニです。どうも。」
「おいおいそこは奢れよ!祝ってくれよお!」
「知るか!二度と面見せんじゃねえ!帰る!」
建付けの悪い木の扉を乱暴に押し開けて、足早に酒場を後にした。この晩グレイは家に帰るまでにぬかるみで転び、野犬に追いかけられた。