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7-1





 何でこう、何度も着替えないといけないのでしょうか?


 私は採寸が1回だったので、ドレスも1着だと思っていたんですよ。

 でも少し考えると、採寸を1回しておけば、同じサイズのドレスは何着も作れますよね。何も考えていなかったツケを、今払っている気分です。


 良く覚えていないのですが、結婚式というのは昔何処かの勇者が伝えたのを、何とかという宗教風にアレンジしているそうです。

 そして更に、魔族魔人にも受け入れられ易いように所々変えているみたいです。

 多分、もう殆ど原型を留めていないと思うのですが、知ったことではありませんし、原型を知らないのでどうしようもありません。



「汝等、互いを愛する事を誓うのならば、行動をもって証明せよ」



 そう言えば、結婚式の打ち合わせをしていたときに悩んでいたのが、神についてです。宗教的なものなのであって当然だったのですが、此方の住人達の多くは無神教や独自宗教です。そもそも、魔王様が信仰対象ですからね。神に平気で唾を吐ける人達です。


 なので、神に誓う等のフレーズが使えませんし、魔王様に誓うのも何か違います。よって決定したのは、己の信念に従って、行動をもって証明、と言った自分自身に誓うものです。


 強さが正義、みたいな地域ですからね。自分の生き方にプライドを持つことが当たり前なので、この誓いが一番受けが良いと決定しました。


 さて、妖狐さんに教わった方法を実行する時です。


 事前の打ち合わせでも、このタイミングで接吻をしろと言われています。


 

「っぷは……弥槻さん積きょくて━━っ、えっちょ…んんっ! んぐ、はぁ…はぁ……予定と違っ━━」


「あらまぁ!」



 どうです。中々の舌捌きではないですか?

 妖狐さんに、ひたすら指を舐められて覚えました。


 と言うか、妖狐さんの記憶を見せられながら覚えたので、かなり上手く出来ていると思います。

 あんなに時間をかけるなら、私にしてくれれば良かったと思うんですよね。そしたら一度で覚えきる自信があるのですが、何故か断られました。


 あと、私の唾液は美味しいはずです。龍悟さんの好みに合わせた味にしていますから。

 一緒に暮らしているのです。相手の好みくらい分かりますよ。


 ここまで来てしまっていますし、きちんと向き合うようにしているつもりです。


 それに、私は彼の事を好いています。


 名前で繋がって以来、彼の感情が僅かにですが流れて来るのです。そこには、私に対する好意が多く入っています。

 行動も私に合わせてくれますし、これで嫌いになれと言う方が無理です。


 この先、ここまで私に尽くそうとしてくれる人は、そうそう現れないでしょう。


 なので、皆さんにも宣言しておきましょう。



「この人は、私のです。誰にもあげませんよ」



「…ヤバい……嫁が、弥槻さんが男前過ぎてヤバい……」


「ふふっ、お二人の想いが確かめられました。ではここからは、披露宴です! 皆さん、パーティーですよ! …あれ?」



 あれ? だいぶ静まっていますね。

 どうしたのですか?

 結構な割合で視線を反らされているのですが……


 龍悟さん、何故こっちを向かないのですか?

 


「こほん…披露宴の前に、お色直しです。準備が出来次第アナウンスしますので、それまでお寛ぎください」



 とここで、システィさんに促されて退場です。


 また着替えるのですか……













「弥槻さん。流石にアレはないです」



 アレとは何でしょうか、失敗した覚えが無いのですが。


 

「貴女の事ですから、何かするとは聞いていました。初めての試みに通例も何もありませんが、打ち合わせの段階で伝えていた筈です。皆さんが大人でしたので、特に大きな問題にはならなかっただけです」



 なら良くないですか?

 何も問題が無い訳ですよね、こうして言われる理由が分かりません。



「今回の式は、間違いなく貴女達を祝福するためのものです。ですがそれと同時に、魔族や魔人の方達にもこの儀式を受け入れてもらうためのパフォーマンスでもあるのです。 いらっしゃるお客様が、自分もやりたいと思えるものにするためにしなければなりません。本来であれば当人達が負担する労力や金銭の殆どを、私達が代わりに払っているのは、その契約をしているからです」



 なるほど。

 理解しました。


 ですが、その心配は無いと思います。

 私にも当てはまることですが、魔族魔人にとって、口付けに

そこまでの意味を込めてはいませんから。


 私がしたのは、人間の価値観に合わせたものです。

 この場に来ている人達は、それぞれの価値観がありますが、人間と同じような考えをしているのは極少数です。


 恐らく多くの人達にとって、この人達の愛を誓う証明の方法がこれなのだろう。程度にしか思っていないハズです。



「そうでしたか。そうであれば問題は無さそうですね。申し訳ありません。……では、次の衣装に着替えましょう。大丈夫ですよ、花精霊(フラウ)さんの要望で余分に作ってありますから。着替えが1回や2回増えても余裕です」



 今更何とも思いませんよ。

 こう何度も着替えを繰り返す事なんて、もう2度と無いと思います。だいたい、服が好きでは無いのですから。


 妖狐さんに貰ったコートも、モフモフなのは外側で内側は大したことが無かったです。着ますけどね、せっかく貰った物ですし、他のに比べれば圧倒的に肌触りが良いですから。

 そう考えると、モコモコは良いですね。内も外もモコモコですし、暖かく柔らかい。難点は、今の時期に着ると少し暑い事ですね。



「出来ましたよ。会場に戻りましょうか」



 













「なぁ弥槻さん。あの人達って……」


「いえ、あそこの師匠達は知らない人です」



 そのあとも色々ありまして、お酒を飲んで出来上がった人達が騒いでいます。


 既に式も宴も終わって、二次会も終わった所です。


 

「貴様等ー! 我のアホ弟子を祝え! そして我も祝うのだぁ!」


「ぬかせバカ野郎! オレの孫弟子だ! お前の弟子じゃねぇー!」


「木精霊ちゃんはボクが貰う筈だったんだー」




 師匠、メチルさん、妖狐さんの3人が問題です。

 無駄に実力があるせいで、誰にも止められません。


 師匠は分裂したり転移したり森を生やしたりして騒いでます。

 メチルさんは骨をバラバラにして組み換えたり、大量の魔法を待機させつつ極大魔法を連発しています。

 妖狐さんは、熱を奪う狐火を灯しながら、システィさんとノエルさんを口説いています。


 この中では特に、妖狐さんの被害が大きいです。

 師匠が出した森は直ぐに消されましたし、メチルさんの魔法はすべて空に撃ち上がっています。


 パッと見ただけでは、ただ綺麗なだけの小さな狐火です。気付かずに近付いて、凍死しかけている人もちらほら見掛けます。


 流石にこれは、そろそろ止めるべきでしょう。



「ん?」


「む」


「あ?」


「おや」



 私ではありませんよ?

 出来なくはないですけど、浮遊大陸を作ったことも作る予定もありませんから。

 私や師匠達は誰が来たのか分かるので落ち着いていますが、それ以外の人達の慌てっぷりは凄いですね。何人か心臓止まってるじゃないですか。可哀想に、もう少しゆとりを持って生きるべきですね。



「━━……ぃ…ぉ~い、おぉ~い! 木精の嬢やーい!」



 仙人のお爺ちゃんです。

 住んでいる場所が非常に遠いので、来ないのかと思っていました。

 まぁ来るにしても、土地ごとやって来るのは予想外です。



「やあやあ皆々、久しいのう」


「お久しぶりです。仙人白郷殿。その節は大変お世話に……」


「よいよい骨っ子。子供を助けるのは、年寄りの義務じゃろうて。古い事を気にすると禿げるぞ……と言いたいが、主は既に骨であったのぅ。ところで狐っ子は…」


「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」


「おいアホ弟子! 狐が泡を吹いておるぞ! 愉快だな!」



 流石お爺ちゃんです。

 顔を見せただけで場を制圧しました。


 取り敢えず、妖狐さんはノエルさん達の家に寝かせることにします。心拍数と発汗が、平常に比べて危ないレベルですね。死にはしなさそうなので、彼らに任せましょう。きっと飲み過ぎたのです。


 良いですね、あれ。

 金斗雲でしたか、乗り心地が良さそうで柔らかそうです。仙術の1つなので、私でも作れそうなのですが……仙術って、とにかく時間が掛かるんですよ。


 拳程度の金斗雲を作るのに、10年は掛かります。お爺ちゃんが乗っているものは、1000年や2000年では届かない程のものです。家くらいの大きさがありますから。

 今頭上にある土地なんて、何千年も掛けて用意しなければいけません。それそこ、1万年を越えていても不思議てはありません。


 あっ、実際に驚いて死んだ人が何人かいるっぽいですね。誰かの気配が無くなっています。知らない人なので、どうでもいいですけど。


 さて、時間が時間ですので、お爺ちゃんを家に連れていきましょう。あまりお店の前を占拠するのは良くありません。龍悟さんが今、店主に謝りに行っています。


 後で師匠とメチルさんには、龍悟さんに謝ってもらいましょう。

 


「ほうほう、では木精の嬢の家にお呼ばれとするかの。儂からの土産と祝いの品は、そっちで渡すとするかい」



 お土産は、昔貰った桃を希望します。

 

 それにしても、良くここまで来ましたね。

 かなりの距離があったのではないでしょうか。



「それはちと真面目な話になるぞ。後にせんか」



 お爺ちゃんが言うならそうしましょう。

 早速、家に向かいましょう。












 


「初対面のも居るし、まずは儂の自己紹介からしようかの」



 それが良いと思います。

 初対面の人って、龍悟さんとシスティさんにククルさんだけですけど。あ、私以外ですか。


 家に来たのは、お爺ちゃんとシスティさん、ククルさんの3人です。他の人達は帰りました。


 この人達だと、静かに落ち着いてお酒が飲めるので、時々集まっています。問題があるなら、稀に花精霊がくっついてくる事ですね。まああれはあれで空気が読めるので、本気で嫌なときは騒いだりしないのですけど。

 ともあれ、魔王様の計らいで花精霊は来ていません。実に平和です。


 それで私達は5人で、テーブルを囲んでいます。


 既にお酒が入っていますが、皆さん強いらしいです。以外なのはシスティさんです。ニコニコと笑みを浮かべながら延々と飲んでいましたが、全く変化が表れません。

 


「うむうむ成長しとるなぁ。昔の嬢は、酒なのか腐った水なのか、はたまた泥なのかすら分からん物を量産しとっての。それはそれは飲めたものではない液体であった。それが今ではこんなにも……立派になったもんじゃ」



 お酒の出来具合で判断されると、少し腑に落ちません。あのときは、師匠の作業を見よう見まねでやっていましたからね。出来なくて当然だったのです。

 

 別に初めから出来た訳ではありませんよ?


 私があのエルフを師匠と呼んでいるのは、アレが私にあらゆる事を教えたからです。望んで師事はしていませんが、師匠が居なければ私はここに居ません。きっと森の中で、何も考えず、何も感じることなく、ただただ生きているだけでしょう。



「へぇ意外。ヤヅキさんって、昔から出来てたイメージがあるんだよね。あと、そんなにシギさんが嫌い?」


「分かります。昔からやれば何でも出来てたって印象がありますよね」


「あぁ~俺も最近までそう思ってたな。表情が変わらないから、苦戦してるように見えないんだよ」


「では儂が、昔の嬢の話を聞かせてやろうかの」



 ん? 構いませんよ。

 隠す事でもありませんし、過ぎたことですので。


 師匠は嫌いです。いつか私が殺します。

 


「━━っとまあ、嬢は昔から嬢だったの。昔は今ほど喋らんかったし、相当感じ悪い奴だろうて。ただ嬢は喋らんだけで、中身はなかなか愉快な奴じゃろ? 慣れれば孫の様に可愛らしいものよ」


「分かる。それにヤヅキさんは頼りになるよね。あんまり喋らないけど」


「結構自由人ですよね。この前なんて、約束をほったらかして寝てましたし」


「ああそれ、珍しく弥槻さんが慌ててたぞ。俺にどうしたら良いかって相談してきたし。凄い可愛かった」



 あれは、モコモコと暖炉とソファが悪いです。

 あんなに気持ち良く眠れる環境こそが、諸悪の根源だと考えます。

 私は、ちゃんと起きようとしたんです。でもモコモコが私を離してくれないですし、暖炉が動いてはいけないと言っていた気がしますし、ソファはまあ良いんじゃないかと私を受け止めてくれたのです。


 あの誘惑には勝てませんでした。


 

「相変わらず眠るのが好きなのか。嬢は昔から、隙在らば眠りに就こうとするでの。まったく、儂の話を聞いとるのか聞いとらんのか分からんでいかん」



 だって興味ない話でしたし。

 聞いたところで、何の役にも立たない事ですよ。じゃあ寝てても良いじゃないですか。


 ……ところで、桃が食べたいです。


 持っているのは知っていますよ、出してください。



「普通のと、普通じゃないのと、もっと普通じゃないのがあるぞ? どれがいい?」



 昔食べた物が良いです。

 でも全部欲しいです。


 

「ふむ。儂の育てた普通の桃と、仙人が作る仙桃と、神仙の作る神仙桃。祝いに持ってきたが、もう少し会話を……」



 私は、桃が食べたいんです。


 そんな不思議そうな顔は、お爺ちゃんの桃を食べてからしてください。本当に美味しいのです。

 今までで食べた物の中でも、群を抜いた美味しさなのです。


 毎日食べたい味ではないですが、定期的に食べたくなります。ですか、あの味はお爺ちゃんの桃でなければいけないのです。私が用意しても、買ってきても、到底届かないのです。



「しゃあないの、台所を借りるぞ」



 どうぞ。

 私は楽しみに待っていますので。



「弥槻さんって、そんな桃が好きなの?」



 いいえ?

 特別桃が好きなわけではないですよ。私が好きなのは、お爺ちゃんが育てた桃です。


 来ましたよ。食べれば分かります。



「おっと。先に言っとくと、そこの白い嬢ちゃんはこっちの皿のを食べてはならんぞ。人間の身には毒にしかならん」


「待って白郷さん。俺も人間なんだけど」


「……は? すまん、もう一度頼む」


「俺も人間です」


「嘘じゃろ?」


「本当です」


「嬢! 木精の嬢! 婿は人間か!?」



 そうですよ。

 確かに人間の枠からは逸脱していますが、間違いなく人間です。


 お爺ちゃんなら、気配の質で分かるのではないですか。



「だって、嬢の婿だろう? 普通の人間には、流石に荷が重かろうて。儂を欺ける程の人外種とばかり思ってたおったわ……人間…そうか人間か。主、龍悟と言ったな。儂に頼れ、何でも良い。儂に出来ることならどんなことでも構わん。どうか、どうか嬢の事を支えてやってくれ」


「お、おう。その時になったら頼みます」


「それでよい。嬢は、目を離せば何をしでかすか分からんからの。そう言うところは、嬢の師匠と良く似ておる」



 それは止めてください。

 私と師匠が似ているだなんて、縁起でもありません。絶対に嫌です。何が望みですか? 今すぐ訂正してください。見てください、立たないはずの鳥肌が立っていますよ。あんなのと一緒にしないで下さい。



「おうおう相変わらずじゃのう。そんなに嫌か。まっ、儂も奴が嫌いだもんで、儂とお揃いじゃよ」



 えっ、お爺ちゃんもアレが嫌いなんですか?

 そうですよね、好きになる理由がありませんからね。あんなクズ、さっさとくたばれば良いのです。



「奴も儂のことを嫌っておるぞ。そうでなければ、あの愉快犯がここに居らん理由がないからの」



 言われてみれば、来ていませんね。

 それに、師匠がお爺ちゃんと話しているのも見たことがありませんし。お二人の間に何かあったのでしょうか?



「それはな、儂がまだ仙人になったばかりの頃━━」



 いえ、結構です。

 長くなりそうですし、特に興味もありません。知ったところでどうにもならないです。私が聞く理由が無いです。



「儂が仙人になったばかりの頃にの、1人の森人が訪れなんだ。奴は儂が丹精込めて育てた山を、混沌で侵食してきたのだ。儂は大慌てでそれに抵抗しておったのだが、結局山は混沌に飲まれてしまった。それからも、儂が山を育てる度にふらりと表れては混沌を撒き散らして行ったのじゃ。なんとか修行を積み、神仙に至ってからはそれを防ぐことが出来るし、過去に奪われた山も取り戻したのだが……奴をみると今での(はらわた)が煮え繰り返りそうじゃ。故に儂は奴が嫌いで、理由は知らぬが奴も儂が嫌いじゃろう」



 興味無いです。


 そんなことより、この桃は美味しいですね。

 さっき調べたら、とんでもない量の仙気が込められていました。仙気の耐性が無い人や許容量が足りない人なら、気力過多で毒ですね。

 こんなにも美味しいのに、食べられないなんて可哀想です。

 


「本当に…嬢はどうなっとるんだか……その神仙桃、神仙でも一握りしか食えん代物じゃぞ。流石、混沌の落し子と言うべきかの」


「それ、そんなにヤバいヤツ何ですか?」


「まあの。千年単位で仙気を染み込ませた土地で、更に仙気を注いだのが仙桃。それが変異し、自ら仙気を練り、それを溜め込むのが神仙桃。儂でも2つは食えん。常人であれば、仙気に耐えられずに自然と同化するぞ。試してみるか?」


「なにそれ、死ぬの違うんですか?」


「魂が輪廻に乗るか、自然に溶け込むかの違いじゃ。大差ない」



 何ですか?

 食べたいのですか?


 どうぞ。

 とても美味しいですよ、皆さんにも味わって欲しいのです。



「いやいや、弥槻さん。話聴いてた? 俺らが食ったら死ぬぞ。いくら美味くても、流石に劇物は食えねぇよ」


「そうだよ。ボクらでは食べられないよ」


「う~ん…なんだか食べられそうな気がするんですよね……1片頂けますか?」



 渡したいのは山々ですが、龍悟さんに腕を抑え込まれてますし、ククルさんが全力で首を振っているのでダメです。


 1つくらい良いと思うのですが、ダメですか?


 龍悟さん、ククルさん、お爺ちゃん。私は皆さんを信用も信頼もしています。その彼等が駄目だと言うのです。なのでダメです。食べたいなら3人を納得させてください。


 でも仙桃くらいなら、大丈夫なのではないですか。

 


「良くは無いが、食えん事もないかの」


「白郷さん。仙気を過剰摂取すると、どうなるのですか? すべてが消滅、という訳でではないですよね」


「そうじゃの。最終的にはそうなるが、段階があるぞ。初めは五感が鋭くなる。次に過敏になり、徐々にに自分と周囲の境界が曖昧になっていく。気付いた時にはもう消滅じゃ」


「適量であれば良い効果を発揮するのですか」


「良くも悪くもな。仙気の許容量はそれぞれ差がある。例えば龍悟が耐えれた量がお嬢ちゃんでは耐えられんかもしれんし、全く余裕があるかも知れん。普通、他人の仙気の許容量は計れぬ。何故か、嬢とあの森人は分かると言うし、気になるなら聞いてみれば良かろう」



 だって、分かるのですから分かるのです。

 理由なんて知りませんよ。私からしたら、自分の事が何故分からないのか分かりません。


 龍悟さんはそれなりですね。多過ぎても、私と繋がっている限り大丈夫です。こっちに流れる様になっていますので。

 システィさんは、まずまずと言った所でしょうか。仙桃を一片くらいがちょうど良いでしょう。

 ククルさんは、全くありません。仙術の修得は諦める事をオススメします。望みは無さそうです。



「成る程、ではいただきます」


「じゃ、俺も」


「いいなぁ、ボクは駄目なの?」



 駄目ではありませんよ?

 食べたら消えるだけです。消滅する前に、自身の存在情報を書き換えれば大丈夫です。それか、味覚を共有した人形等に食べさせれば良いのです。多少は流れて来るでしょうが、上手くフィルターを掛ければなんとかなると思います。



「そんな事出来ないよ。だいたい、シギさんや弥槻ちゃんの使う術はデタラメ過ぎるんだよ。世界に自分の情報を転写とか書き換えとか何て、聞いたこと無いんだから」


「あの森人が生み出して、嬢が受け継いだ混沌。その力は本当に異端じゃからのぅ。世界の修正すら受け付けんとか、儂も理解出来ん」



 混沌って、慣れれば便利ですよ。

 分離させて、個別のエネルギーを使った方が効率は良いですけどね。この世界にないエネルギー概念を使えるのは、結構なアドバンテージだと思います。


 師匠に通用しないのが、残念で仕方がありません。


 最近気付いたのですが、能力的には師匠に追い付いていました。術の精度や、技の数等もほぼ同等みたいです。

 なのに未だに勝てないのは、経験の差らしいです。


 絶対に埋めて、師匠を殴ってやります。あわよくば、そのまま殺すのが目標です。



「さてと、儂はそろそろ戻るとするかの。山を浮かせたままなのは、些か問題じゃろう。場所は把握できたで、次は縮地かの。近い内にまた邪魔するぞ、今度は儂の友人も連れてこよう」



 居なくなるのは一瞬でしたね。

 多分縮地なのですが、アレって障害物を越えられないものだったと思うのですが。普通に家から居なくなりましたよ。

 お爺ちゃんのレベルになると、仙術の限界も変わるのでしょうか。


 仙術を本格的に修めるのも面白いかもしれませんね。その内挑戦してみましょう。



「ボク達も帰るよ。お酒、ご馳走さま」


「ご馳走さまでした。ふふふっ…初夜を邪魔をするわけにはいきませんからね」


「ククルさん。システィの奴結構酔ってるから。明日のフォローを頼むな」


「任せてよ。子守りだって覚えたんだから、このくらいへっちゃらだよ」



 あの赤子は、ノエルさん達に預けているそうですよ。

 妖狐さんも引き取っていますし、大変ですね。


 あ、お爺ちゃんが言っていた真面目な話って何だったのでしょうか。聞きそびれましたし、忘れていました。

 必要な事なら、直ぐに戻ってくるでしょう。


 ところで龍悟さん。

 初夜って何をすれば良いのですか?


 何度か聞かされていたのですが、誰も内容を教えてくれないのです。



「まさかの質問だな。内容は人それぞれだから、気にすんな。それより、もう少し飲もうぜ、俺は甘いヤツだけど」



 良いですよ。

 龍悟さんと、のんびり飲むのも悪くありません。


 




「乾杯しようか。今日は記念日になるしな」




 分かりました。


 それでは、乾杯です。

 


 





 此処までで、一応完結です。


 お付き合い頂きありがとうございました。


 よろしければ、7-2以降にも目を通してみませんか?

 話自体は適当に進みますので…

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