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6-1




 あれから、私の生活は大きく変わりました。


 分かりやすい変化と言えば、仕事がほぼ無くなりました。あの花精霊が私の分をやっています。花精霊は、意外と使い勝手が良いのです。言えば何でもやってくれますし、言わなくても次をやっています。

 たまに私に襲い掛かって来ますが、気にしたらいけません。返り討ちにしても悦び、そのまま襲われても悦ぶ。これでは、どうしようもありませんからね。諦めて返り討ちにするか、逃げてます。

 

 龍悟さんも、日中は仕事をしています。

 現在は、魔王様の領内で現れた害獣の駆除しています。


 私がたまに行う仕事は、彼が1人では出来ないと判断したものや、魔王様からの指名依頼だけです。


 そうです。

 私は、あの変人の巣窟から脱却しました。

 

 今の私と龍悟さんは、魔王様の直属の部下です。一応は職員の名簿には載っていますが、基本的に私はお休みです。

 これでも、それなりに優秀でしたので、手放したくはないのだとか。


 それで、私が今何をしているのかですが、特に何もしていません。

 酒蔵を一軒家に改築増築して、龍悟さんが拘っていた暖炉の前でユラユラと椅子に揺られています。


 この椅子は最近のお気に入りです。

 ハンギングチェアと言うらしいですよ、ゆったりとした揺れや回転が心地いいのです。


 あ、今は冬期です。

 まだ雪が降るほどではありませんが、ストーブやモコモコが手放せません。

 服が嫌いな私ですが、この時期はモコモコです。


 キコツさんが持ってきたモコモコは、モコモコでモフモフでフワフワで暖かいのです。

 よく分からない素材で作られたモコモコは、モコモコです。


 モコモコとユラユラで、私の眠気はピークに達しています。


 達していますが、眠れません。



「はぁはぁ……お姉さまぁ…いいですわぁ、もっと……もっと…ンンッ! あっ…ああんっ、最っ高ですわぁ~!」



 これです。

 私の背後で、ずっとこれなんです。


 定期的に私に襲い掛かってくる花精霊です。今日明日明後日は、この調子でしょう。

 これに、少しでも悪意があれば遠慮なく消滅させられるのですが、花精霊は純粋に私を慕ってくれていますし、私の仕事を任せたりしてます。自分のやりたいことの為に思い通りに振る舞う姿は、私自身にも当てはまるので何も言えません。


 花精霊の行動を否定するのは、私の行動を否定する事と同じです。


 私以外に迷惑を掛けて、勝手に自滅してくれる事を願っていますが、そのような気配は全くありません。どころか非常に評判が良いらしく、最近はシスティさんと良く一緒にいるらしいです。


 それと、寝ていないのはもうひとつ理由があるのです。

 結婚式の準備をするらしく、ドレスの採寸をします。途中までは花精霊がやっていたのですが、いい加減鬱陶しくなってきたので吊るして締め上げています。これはこれで煩いですが、そこはもう諦めています。


 そろそろ職人さんと共にシスティさんが来るはずです。

 その人達に、あとは任せましょう。


 早く、このモコモコに身を沈めて眠りたいものです。



「はぁん! いいですわぁ~!」



 仲が良いと聞いていますし、システィさんにはアレを引き取って欲しいのですが……返ってきそうですよね。


 アレがただの花精霊であれば、問題無く放置できるのです。ただの花精霊ではないので、こうして構わなければいけないのです。


 決めました。

 近いうちに、妖狐のお姉さんに会いに行きましょう。対人関係なら、きっとアドバイスが貰える筈です。国崩しと呼ばれていたらしいですし、人の扱いには長けていると信じています。



「あっ、お姉さまお姉さま。システィさんが来てますわよ」



 そのようですね。

 迎えに行ってきます。


 この頃、来客が多いですね。

 全員、龍悟さんの関係者です。皆さんまともな人ですし、変に迷惑を掛けたりしません。羨ましいですね、私の関係者なんて、お酒を(たか)りに来るだけですから。



「お邪魔します。では皆さん、彼女がそうです。お願いします」



 この家は木造です。木材は私が出して用意しました。つまりは、離れた場所の扉を開けて、システィさん達を案内する事は簡単な事です。


 元々普通の木材を使っていたのですが、花精霊が家に干渉しようとするので、木材を一度同一化させてから作り変えました。これだけで丸1日掛かったのは意外でした。やはり、動物の殻が邪魔ですね。速いうちに対処法を確立させましょう。


 あ、終りました?



「ありがとうございました。それでは作成をお願い致します。ええ勿論。期待していますね」



 忙しい職人さん達ですね。

 もう出ていってしまいました。


 

「もうっ! お店に来て下さいって言っておいたじゃないですか! どうしてお家で寛いでいるんですか!?」



 寒いから、そっちが家に来てって花精霊に言いましたよ?

 それに眠たいですし、終わったみたいなので寝ても良いですか?



「えっ、聞いてませんよ? 花精霊(フラウ)さん、どういう事ですか!?」 


「えっ、言ってませんよ? 伝言をもらった時から、お姉さまの側から離れていませんもの」


「貴女……そういうときの為にって、花を置いていったではありませんか……」


「それは謝罪しますわ。ですがお姉さまを前に、他の事など考えられませんわっ!」



 この光景、何だか見覚えがあります。

 私が師匠に振り回されているのって、こんな感じなのですね。分かります、これはいけません。


 このままでは、私の様なモノが増えてしまいます。

 少なくとも、不必要な苦労は負わせるものではありません。まぁ、私が言っても説得力なんてありませんが。


 

「いえ、そんな、弥槻さんが謝ることなんてありませんよ。ええ、それは確かに苦労はしますが……」


「あぁ~今お姉さまは、わたくしの事を強く…強く想っているのですね!」



 本当に、ご迷惑をお掛けしています。

 大丈夫ですか? アレのせいで要らぬ苦痛を抱え込んではいませんか。辛いのならば、縁を切る事をオススメします。システィさんは、私と違いそれが可能な立場です。なんならアレを消滅させることも可能です。


 

「そこまでではありませんよ。確かに大変ですが、自分の意思での付き合いですから。弥槻さんが気負うことはありません。気になるのでしたら、ご一緒にお茶でもしませんか? もちろん、都合の合う時にたまにで構いませんので」



 まぶしいです。

 この人、とてもまぶしいです。


 何とかと言う教会で医者と薬師を兼任し、支援系の術を使う神官。態度よく仕事をこなして、暇が出来れば困っている人を助けて回るらしいです。

 なるほど、すでに魔王様の領内で多くの信頼と支持を持っているだけはありますね。


 元々は人間の相手が前提の知識ですが、上手く魔人や魔族の方達に応用させ、それ用の知識も学んでいるそうです。


 曰く、システィさんの行動に、下心はないそうです。そのような事に敏感なククルさんが言うので、間違いないと思います。


 仮にあったとしても、見抜けなければ本心と変わりません。騙される方も悪いのです。ここではその考えで問題ありません。

 強い者が魔王になる。それが当たり前な地域ですからね、何か一芸でも秀でていなければ、そのまま淘汰される社会なのです。


 そこでシスティさんです。確かに、戦闘では役に立ちそうもありませんが、支援と言う武器に、民衆の数を揃えています。この社会では、その強さがそのまま立場に反映されますので、気づけば魔王軍の将軍達と良い勝負です。


 それと、全く関係ありませんが、私はシスティさんを好ましく思っています。


 マッサージって、すごく気持ち良いんですよね。


 この前バルコニーから落ちた時は、ビックリするくらい痛かったです。師匠に消滅させられかけた時くらい痛かったです。そしてしばらく、身体の節々が痛かったです。その時のマッサージから病み付きです。



「ふふっ、気持ち良いですか? 良いですよ、眠ってしまっても。リラックスして下さいね」


「むぅー! んんーっ、むんぅっんー!」



 そうでした。

 花精霊が居たんでした。


 気を抜くと拘束から脱け出すんです。既に2回ほど捕まえ直しています。次の行動が簡単に読めるので、そこまでの脅威ではありませんけど。

 


「そこを! そこを代わって下さい! お姉さまの柔肌がそこにぃ! わたくしに是非!」



 花精霊は私が産み出しただけあって、普通に能力が高いです。やらせれば大抵は出来ますし、教えればすぐに覚えます。マッサージも出来る筈なのですが、無駄に長いですし余計な場所を触るので嫌です。


 と言うか、私は花精霊に近付きたくありません。生理的に抵抗を感じています。可能ならば、私の知覚範囲から出ていって欲しいですし、何処かで消滅して欲しいです。


 花精霊のマッサージは、邪念が多すぎます。せめてそれを隠して下さい。


 薬を盛られた時は流石に焦りました。身体の調整が済んでおらず、薬が効いてしまったんですよね。


 目が覚めたら、花精霊の創った異空間に幽閉されていました。まあ、すぐにその空間を私の物に塗り替えて脱出しましたけど。師匠の時の様に、別世界に飛ばされなければ、この程度大した問題にはなりません。


 私の基準では、消滅させるにはまだ大人しすぎるのです。



「はい、おしまいです」



 ふぅ……気持ち良かったです。


 またお願いしますね。

 では何時ものをどうぞ。



「あの…毎回思うのですが、本当に頂いてもよろしいのですか? これは確かに欲しいですし、いくらあっても問題はないのですが……」



 私が渡すのは、私の樹液です。


 最近、魔法薬の効果を増幅させる事が発覚しました。魔法薬も扱うシスティさんには、価値のある物でしょう。

 あと、そのままでもそれなりの薬効があるので、薬が苦手な人でも飲めるそうです。


 私の樹液は、中々の甘さがありますから。糖がなければ、お酒にはなりません。無くても何とかしますが、今は関係ありません。



「~~ッ! ーーーー~~ッ!」


「花精霊さんは、連れて帰りますね。良かったら、今度は家に来ませんか? 歓迎しますよ」



 それは良いですね。

 実は少し気になっていたのです。ククルさんとシスティさんって、体格差が大きいですからね。多少であれば、ククルさんは合わせられると思うのですが、限度はあります。


 それと、あの赤子が気になります。

 相談を受け続けるのは面倒でしたが、無いなら無いで少々不安になります。

 私が持っているのは知識だけですから、間違った物を与えている可能性もあしますし、死なれていたらそれはそれで気分が悪いです。


 なので、近々見に行きましょう。



「ではまた会いましょう。さようなら。……花精霊さんも、行きますよ」


「イヤですわ! わたくしはお姉さまのお側に」


「行きますよ?」


「……分かりました。名残惜しく後ろ髪を引かれつつ別れを惜しんで、わたくしは失礼しますわ」



 システィさんと花精霊を見送って、暖炉の前に戻って来ました。再びモコモコです。このフワフワは、本当に素晴らしいです。私に毛皮があるならば、間違いなくモコモコにします。違ってもモコモコにします。


 夕方まで、一眠りします。


 龍悟さんは数日帰って来ないので、妖狐さんに会いに行きましょう。

 あの人の居場所は把握していますので、今夜出発して明日の昼には出会えるでしょう。一応、手紙でも送っておきますか。










 








 では出発しましょうか。

 今までは分体を経由して移動していましたが、それはその方が燃費が良かったからです。分体に移動するのは、私の能力の延長でしたから。

 今回もそれで良いのですが、この身体に慣れる為にも別の手段を取りましょう。


 徒歩、飛行、転移、この3つで行く予定です。


 ひとまずは、近くまで転移しましょう。

 そしたら飛び上がって移動し、妖狐さんのテリトリーに入ってからは歩きで向かいます。


 妖狐さんって、普段から周辺に魔力と呪力の力場を展開していて、他人の発動を妨害しているんですよね。やろうと思えば、別のエネルギーを使ったり妨害を無効化したりできますが、わざわざ敵対行動を取る必要はありません。


 それにあの人なら、近付いただけで私の存在に気付くと思います。


 妖狐さん、今の魔王様くらいまでなら、正面から叩き潰せる様な実力者ですから。フィシリアさんやククルさんと、良い勝負だと思います。


 なので、そろそろ降りて歩くことにします。


 ここ、火山なんですよね。

 雪山でないのが唯一の救いですが、私にとっては嫌な場所です。


 ……火山や雪山、砂漠のように、樹木の少ない地域で活動出来る木精霊を、木精霊と呼んでも良いものなのでしょうか? 私、本当に木精霊で良いのでしょうか。木精霊なのは、間違いない筈なのですが……


 だから、特異種なのでしょうね。

 そもそも、原木を持たない木精霊なんて、私しか居ないと思います。辛うじて同族と呼べるのは、あの花精霊でしょうか。認められません。


 これらは、気にしたところで何も変わりませんし、私にとっては大した問題にはなりません。


 返答に困ったら、すべて師匠の責任だと言えば良いのです。私を産み出したのは、師匠なのですから。


 それにしても暑いですね。活火山の火口付近ですし、仕方ないですけど。

 このモコモコ、脱いで来れば良かったと後悔しています。


 

 

「あぁやっぱり、木精霊ちゃ……ん? 気配が少し変わってるけれど、合っているかい?」



 妖狐さん。

 合っていますよ。お久しぶりです。


 相変わらずの男装ですね。

 一体何人の姫を堕として来たのでしょうか。だからこそ、アドバイスをもらいに来たわけです。これなら対人関係も上手くやっているに違いありません。


 ひとまずの目標としては、相手に不快感を与えない程度のコミュニケーション能力の習得です。

 私だって分かってるんです。表情が乏しいだとか、言葉が足りないだとか、会話が続かないだとか、頻繁に色んな方から言われます。

 これだけ言われていれば、どれだけ鈍感でも気付きますし、森に居た時から薄々分かっていました。


 矯正の必要は無いと思っていたのですが、今の状況が続くのであれば、直さなければいけません。


 別に私は、師匠達の様な傍若無人で唯我独尊の自由人ではないつもりです。マイペースですが、他人に迷惑は掛けたくないですし、そもそも静かにのんびり暮らしたいのです。


 

「ん~、コミュニケーション能力か~。正直、木精霊ちゃんはそのままの方が良いと思うのだけれど。ボクを頼りに来たってことは、それではダメなんだよね?」



 ええ、そうなんです。

 このままでも良いとは思ったのですが、流石に龍悟さんの一生を共にするためには、私も変わらなければいけないと思いまして。



「なるほどね、それなら良い方法を教えてあげよう。これを守れば、木精霊ちゃんはきっと変われるよ。そうだね…これからは、挨拶をすると良い」



 挨拶ですか?

 それだけで良いのでしょうか。


 ……思い返してみると、私、挨拶してないですね。

 してないと言うか、声を出してないのですね。考えたこともなかったです。森に居た時は挨拶する相手が居なかったので、声を出す事がないんですよね。もう癖になっていました。




「木精霊ちゃんの性格では、会う人全員とまではいかないだろうね。だから、挨拶する相手を絞ってしまおうか。1つ目は、君が名前で呼ぶ相手だね。これは敬称とかも含むとしよう。プライベートでも会って話をする相手、と思ってほしい。2つ目は、10日の内に2回以上会話する相手。親しいと言う程でもない、顔見知りくらいに考えると良いさ。3つ目は、それ以外だ。どうでも良い他人だね。……木精霊ちゃんは、1つ目と2つ目の相手に挨拶をしようか」



 全員ではないのですね。

 少ない分には、楽で良いのですが。



「まぁそんな無理な事ではないし、無理をする必要もないさ。朝起きておはようと言い、ありがとうと礼を言う。それだけで十分なのだから。確かに君は無愛想だし、他者への理解が足りていない。けれど、それらさえも、君の個性だと言えるのだよ。君の魅力は君が君である限り続くものさ。誰が何と言おうと、そのままの君を愛している人が、必ず存在しているよ」



 流石、何人もの女性を口説いている人の言葉です。

 聞いていて安心できますね。


 それはそれとして。

 話の内容以上に気になるのが、妖狐さんの尻尾です。モコモコが今のマイブームな私は、モフモフな尻尾が気になります。

 赤みのある黄金色をした、柔らかな光沢を纏うそのモフモフそうな尻尾が気になります。


 

「ボクの尻尾が気になるかい? 毎日毎日一日五時間の手入れをしているからね。見ておくれ、この艶を! 美しいだろう、そうだろう。良いとも良いとも、他ならぬ木精霊ちゃんの為なら、躊躇う事などないさ。それにこの手触りを、自慢したくて堪らないのさ! さぁ、存分に堪能すると良い。ボクの自慢の最高の尻尾を!」



 ここまで言われたら、下がるわけにはいきません。

 全力でモフモフさせてもらいます。


 おぉ……おおぉ……!

 スベスベのツヤツヤでフワフワです!

 

 これは素晴らしいです。妖狐さんの体温で、ほどほどに暖かいのもポイントが高いです。指の隙間から抜けていく感触が癖になります。

 

 尻尾、9本ありますし、8本くらい貰えませんかね?


 このモフモフに包まれて、モコモコを抱いて眠りたい。



「流石に尻尾は譲れないな。けれど、ボクの毛で作ったコートならあげても良いよ。さすがに尻尾ほどではないけれど、素晴らしい肌触りのはずさ」



 ではそれをいただきましょう。

 きっとそれも、モフモフだとおもいます。


 楽しみです。



「その代わり。ボクの頼みも聞いてはくれないかい?」



 頼みですか、内容によります。

 私に出切ることで、そこまで手間の掛からない事でしたらお手伝いしますよ。


 内容によっては、モフモフのコートは諦めます。



「はははっ、そこまでの事ではないさ。君の造ったお酒を、ボクにも少し分けてほしいんだ。……この前、ククル君と話していた時に聞いてね、木精霊ちゃんの造ったお酒はとても美味しいのだと。是非ともボクも飲んでみたいと思ったのだよ」



 そんな事ですか。

 そう言えば、妖狐さんにお酒を渡した事は無かったですね。


 良いですよ、お好きな物を持っていって下さい。



「おや、外法かい? 巧いものじゃないか」



 ありがとうございます。

 用意出来ましたよ。

 これは私作のお酒セットです。


 好みが分からなかったので、一通りを少量ずつ揃えています。リクエストがあれば、次はそれを持ってきますよ。



「ん? 次? ボクは今だけのつもりだったのだけど。勿論貰えるのなら喜んで貰うよ」



 今回だけですか?

 最近も似たような事がありましたけど、1回で満足出来るのですか?


 師匠達は定期的に要求してきますし、それ以外でも集りに来ますよ。なので、定期的に欲しいのかと。



「ん~、お酒は好きだけど、ボクはそこまで飲まないからね。これだけあれば、しばらくは困らないかな。もし欲しくなったら、ボクの方から訪ねるさ」



 なるほど、了解です。


 あっ、それと、私からのお知らせがあります。


 私、結婚するみたいです。

 近い内に式をあげるらしいので、良かったら来て下さい。


 私の知り合いが誰も来ないと、師匠やノエルさんに何か言われそうなので。

 それに、私が呼べそうな人って、妖狐さんと仙人のお爺ちゃんしか居ないので。



「あ、うん。木精霊ちゃんって確かあのエルフ……大丈夫。ボクは行くよ。大切な友人なのだし、君の相手も見ておかないと。そうだよ! 相手は誰なんだい、君を選んだ鋼のメンタルの男は。……いや、止めておくよ。式を楽しみ待つとしよう」



 私って、そんなにキツいのでしょうか。

 面と向かって言われると、傷付くのですが……


 どうでも良い相手からは、なんて言われようと気にならないのですが、ある程度親しい相手に言われると、普通に傷付きます。

 


「日頃の行いだからね。諦めた方が良いと思うよ。まぁそれは置いといて、ボクが色々アドバイスをしてあげよう。ボクは基本的に女の子メインだけど、男の子の喜ばせ方も心得ているからね。時間はあるかい? 確りと学んでいくと良いよ」



 お願いします。

 今回お邪魔したのは、アドバイスを貰いに来たのでした。何だか方向性が違う気がしますが、そう間違ってはいないと思います。大した事ではないでしょう。


 明日か明後日までに帰れば大丈夫でしょうし、のんびりしていきましょう。この辺りに温泉があるらしいので、後で探してみたいですね。私、温泉がすきなんですよね。特にぬるめのお湯がいいですね、そのまま眠れる所が好きです。

 水の音って、聴いていると眠くなりますよね。焚き火の音や風鈴の音、好きな音はたくさんあります。



「実はボクさ、木精霊ちゃんのこと狙ってたんだよね。名前を呼ばないのは、ささやかな抵抗さ。まっ、人のモノに手を出すのはボクの美学に反するし、木精霊ちゃんが幸せならボクも幸せだしね。結婚するのは驚きだけれど、ボクは大いに祝福するよ!」



 早速お酒を開けたのですが、酔うの早くないですか?

 それ、甘く飲みやすいんですけど、度数は高いんですよね。先に言っておけば良かったかもしれません。

 これはもう、手遅れです。


 妖狐さんが昔、二日酔いが辛いって溢していました。介抱はしてあげましょう。私も飲みたくなってきたので、ご一緒してもよろしいですか?







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