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さあ、まずは状況を整理しよう。


 俺は、勇者止める宣言をしに行く為に国に向かってる訳だが、ついさっに同行者ができた。


 俺が苦手にしてる妖精女王のフィシリアさん。弥槻さんの師匠のシギさん。話してみると面白い骸骨のメチルさん。それと何故か魔王様まで居るぞ。


 あれれぇ~? おかしいな、これはどういう事なのかな?


 国、滅んじゃわない? 大丈夫?

 個人だけど国の最高戦力って、俺だぜ?

 俺よりも圧倒的に強い方々が一緒って、寝返って国を滅ぼしにしましたって言っても通じるぜ?


 

「フハハハハッ! 気にすることはないぞ、若き勇者よ! 我らが考えなしに動く訳が無かろう!」


「其奴の言うとおりである。そもそもだ。エルフは兎も角、骸骨に妖精に魔王である。人間の群に混ざれると思うか?」



 あぁ~……うん、違うんだ。そうじゃないんだ。


 俺が言いたいのはさ、何しに行くのかって事なんだ。

 こんな過剰戦力、どうしろってんだ!?



「いや、まぁ…うん。はい」



 いや、この人達に強く出れる訳無いだろうが。

 世界の補正とかで魔王様は何とか出来るらしいけど、それ以外に捻られるって。

 


「心配そうね。大丈夫よ、作戦は考えてきてるから」


「そういうこった。オレみたいな骸骨が居れば、なんの問題もない……ほらな?」


「おお! リッチーとは伊達でないのだな、見事!」



 スゲェ! 幻術?

 ちょっと触ってみたけど、感触まで再現してるぞ!


 けどな、これはこれで問題だと思うんだ。うん。


 シギさんはエルフだけあって、普通に美形だろ。姿が変わったメチルさんは、金髪碧眼でどこぞの王子様風なイケメンだし。魔王様は長い銀髪を後ろで束ねた、ミステリアスな美男子。フィシリアさんは、元々可愛い系だったのをそのまま人間に当てはめた感じ。


 なにこれモデルの集団かよ。


 俺だって、それなりに良い見た目してるぜ?

 けどなぁ、こんなか居たら余裕で霞むわ。


 何て言うか、物語の中から出てきましたって感じ?

 こりゃ、男女関係無く見惚れるレベルだわな。


 ん? 決まってんだろ、弥槻さんもそっち側だ!


 俺のメンタルを甘く見ないで欲しい。


 場違い? 空気読め?

 関係ねぇなぁ、俺は俺の為に動く!

 俺の幸せのためなら、大抵の事は何とかしてやるぜ!


 まあそんな事は置いといてだ、うん。

 まあいいや、どうせどうにも出来ないし。



「リュウゴくん。オレ達は別に、君に迷惑を掛けるつもりはない。シギの奴は知らんが、少なくともオレ達は君を応援してるんだよ」


「応援ですか? 俺何かしてましたっけ?」


「してるじゃない。ドリアードちゃん……今はヤヅキちゃんだっけ? あの子と結婚するんでしょ」



 あぁ成る程ね。

 でもそれ、魔王様まで関係あるの?



「待て待て待て待て、待つのだ! 骸骨! あのアホ弟子の結婚を誰よりも祝福するのは、この我だぞ! アホ弟子は我の娘だ。散々からかって来たが、それでも娘であることは変わらん」


「待てシギ。娘とか聞いてないんだけど? えっなに? 誰の子!?」


「別に我の血を分けた訳ではないぞ。昔、我が庭に混沌(・・)をぶちまけた事があるのだが、そしたらその翌日にアホ弟子が産まれたのだ。我は殺戮者ではないし、正直育てたら良い女になりそうだったから拾って弟子にしたのだ」


「うわっ、育てて良い女にするとか……アンタ頭可笑しいんじゃないの? キッモ……」


「貴様は考えが人間に近いからな、分からんでもない。だがま、魔物魔族では大して珍しい事ではあるまい。親と目合(まぐわ)う種族もおる。余は魔王として、それを否定は出来ぬ」


「それみろ! 我の勝ちだ!」


「エルフである貴様がそれをするのは、余個人として、些か疑問を感じるがな」


「ぐっ……やるではないか、賢政王…」


「ったく、何でオレはこんな奴を弟子に仕立てたんだろうなぁ」


「まあ良い! 我はアホ弟子を祝いたいのだ! そしてアホ弟子が困惑するのを眺め、盛大に高笑いをしたいのだ!」



 浮世離れした美形が、和気藹々と話してるのをみると、余計に魅力的に見えるのは何故か。

 こいつら、国の中でもこうだと、一瞬で人に囲まれるだろうな。


 俺はそんな事より、会話の内容のが気になるんだけど。

 最初の方の『混沌をぶちまけた』ってワードが、凄い引っ掛かるんだけど。


 弥槻さんは、その混沌とか言うのから産まれてるの?

 なにそれ?



「で、魔王様達は何で俺に着いてきてるんですか?」


「それはな、暇だったのだ」


「は?」


「はっはっは、余も息抜きがしたいのだよ。なにぶん、魔王になってから働きづめである。そろそろ、余が居らずとも(まつりごと)が出来るであろう。そのように教育してきたつもりだ」


「は、はぁ…」


「そこで貴様よ。余は貴様を憎からず思っておる、その貴様が国に帰ると言うではないか。前々から考えておったのだ、人間の国を観光してみたいとな。貴様、リュウゴと言ったな。余の命を狙った罪、観光案内で帳消しにしてやろう」


「んぁ~、了解です」



 魔王様ってさ、意外と良い性格してるよな。

 俺もそれ嫌いじゃない。


 観光ねぇ~、俺もあんま知らないんだよなぁ。


 だって召喚されて、武器渡されて訓練して、金とか渡されて放り出されたんだもん。

 システィが俺にくっ付けられたし、彼女に悪いと思って色々やって来たけど、それだけだしな。


 別にあの国が憎いとか嫌いとかは無いけど、どうでも良いんだよなぁ。


 ……ん?


 問題ねぇな、これ。


 一応旅してた時に国の名所とかの噂は聞いてるし、それを回ろう。


 まぁ王様ん所に、適当に手紙でも書いていれときゃ良いだろ。

 正直、あの人嫌いなんだよね。

 密偵とか偵察とか監視とかウザいし。全部撒いたけどな。



「おっ、そろそろか。おーい、国が見えたぞ、これからは歩いて行くからな」


「何故だ? 別にこのまま入っても問題なかろう」


「いやあるから。普通の人間ってな、飛べないんだよ。飛べたとしても、基本的に地面に立って歩く生き物なんだ。空から入ればパニック間違いなし。兵士達に囲まれるぞ」


「余に疚しい事など無い。裁けるものなら裁いてみるがいい!」



 あぁ~あ。行っちまったよ。


 流石の俺でも、あれで国が滅ぶと罪悪感を感じそうだ。

 取り敢えず俺が目立てば、何とかはなるだろ。



「聖剣解放・二幕、聖鎧展開、聖神の祝福。これで俺が勇者だって分かるだろ。駄目なら……そん時はもう逃げよう。うん、そうしよう。思い入れも特にないし……だったらわざわざ来る必要無かったんじゃね ? うわぁ~ヤル気無くすわぁ~」



 速ぇなおい、ちょっと待ってくれ。

 俺が追い付けねぇって。


 はぁ……、もう引き返して帰ろっかなぁ?















「む? アホ弟子から救援要請だと? 珍しい事もあるものであるな……まあ無視でいいな、面倒だ。

 ではッ! ハーハッハッハッ!  我 、 入 国 ! 」


 





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