[エルク]帰還
ノエルは、前の3人と違い、そこまで大きな力は得なかったようだ。とは言え、かなりの力を得たのは確かだ。元々魔法に明るかったらしく、相当な魔法の使い手となった。
エルクは眷属となったノエルを連れ、レイアー王国軍に事情を説明する。レイアー王国軍は驚きはしたものの、ファーイーストからの支援を歓迎し、使者を受け入れた。使者として、ノエルや、他のエルクの眷属が行くこともあれば、村に常駐する兵士を送ったりもした。最終的には、数十名の魔族を送り込む予定で、とりあえず村まで来るように指示を出す。・・・本国は大丈夫だろうか。大丈夫、との返事が来たので、それを信じる。
技術提供は順調で、特にアレクシアが飛び回っている。出来れば今の内にユグドラシルが攻めて来てくれれば、迎撃できるのだが、とエルクは考えた。メテオの一撃でも城に撃ち込んでおこうかとちょっと悩んだが辞めておく。
レイアーが魔族に投降、魔族の国の属国となった旨、レイアーに侵攻した国は魔族を敵に回す旨、告知する。国力としてはかなり向上したが、周辺の別の国にまで目を付けられたのは間違いない。これが吉と出るか凶と出るかは分からないが、あのままでは確実に蹂躙されていた。選択肢はなかったと言える。
ファーイーストからの兵士が村に到着した。エルクは、レイアーの国王であるノエルの弟、ニルスに兵士を紹介する。ニルスは、魔族の兵士を歓迎、歓待した。
エルク達は都合一月程かけ、レイアーの強化を行った。これで国を出て二月余、眷属も4人得たし、そろそろ戻った方が良さそうだ。目的であったエルク自身の魔力量も、眷属4人から供与される魔力により、かなりのものとなっていた。元々の、体術、魔法操作技術と合わせ、上級魔族の仲間入りは果たしたはずだ。
「そろそろファーイーストに戻ろうと思う」
「ご主人様の国、私達の国ですね。楽しみです」
「色々美味しい物あるかな?」
「ついに魔界に・・・楽しみ・・・凄く楽しみ・・・」
「はい、何処でも付いて参ります」
4人の眷属も賛成の言葉を返す。
帰りも、山岳の道を通る。最近往来が多い為だろう。木々が折れ、道となっている。魔物も大人しいようだ。少しは出たが、5人にとって障害にはならない。来た時よりも遥かに早い時間で、ファーイーストの王城に辿り着いた。
エルク達を、リアとジャンヌが出迎える。リアも楽しみにしてたからな。きっと喜んでくれるはず。エルクがそう思っていたのだが・・・一行を見たリアとジャンヌが変な顔をする。
「・・・お兄様・・・貴方何を・・・?」
「エルク・・・君は何て事を・・・」
「え・・・?どういう意味だ?」
きょとんとするエルク。
「貴方が妹君のリアさん、貴方がご友人のジャンヌさん、だね。初めまして、エルク様の眷属、アレクシアです」
「同じく、眷属のセリアです。宜しく御願いします」
「パラスだよ!宜しく!」
「えと・・・眷属のノエルです、よろしく御願いします」
4人の眷属が挨拶する。
リアはこめかみを押さえ、目を閉じ、少し頭を振った後、何時もの微笑を浮かべ、
「・・・宜しく御願いします。お義理姉様方。私は妹です。さん付けは辞め、呼び捨てで御願いします」
優雅に一礼する。
「宜しくね!」
ジャンヌも、何時ものように、明るく挨拶をした。