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[エルク]魔都バロン

魔都バロン。

魔界の首都にして、大陸最強の軍事力を誇り・・・四方に衛星都市、斜め四方に砦・・・そして、芸術作品のような街でもある。

昼には輝く巨大な建物群が美しい光を映し・・・夜には昼と見紛う美しい・・・だが優しい輝きが灯り、照らす。

地上に水路はないが、地下に水路があり、また魔力から水を生成する魔導具もある為、井戸から水を汲む必要は無い。


星空のサロン、高級レストランで、特に夜ともなると一般の人では近づけない。

特に力のある存在が好み、利用している。

料理の味もさることながら、演奏される音楽、そして舞う光の妖精達・・・至福の刻を味わえる。


エルクは、そこで幹部達とディナーを楽しんでいた。

エルク自身は常連と言う訳ではない。

一度は体験する事を勧められたので、来てみたのだ。


「ふむ・・・これはこれで興味深いな、このわぎゅう、のステーキは」


エルクが賞賛する。

もっとも、少し前に食べたぎゅうの方が、味が濃くて好みではあったが。


「美味しい、久しぶりに食べたよ、和牛の霜降り!」


パラスも嬉しそうに食べている。


「お注ぎしますわ」


エルクのグラスが空いたのを見て、セリアがワインを注ぐ。


「いいねえ、こういうゆったりした時間・・・勿論やらなきゃいけない事はいけないんだけど・・・こうやってゆっくり過ごす時間も絶対大切だと思うんだよー」


ジャンヌが目を細める。


「しばらくは休養が必要だ。俺達も、民も。もっとも、都市を建設したり、作物を作ったり・・・働かない訳ではないし。俺達も政治を行う必要がある。だが、1年くらいは平和な時期が必要だと思う」


無論、敵に時間も与えるし、敵の洗脳も進むが・・・それよりも内部を整える方が大事だ。

逃げてくる者が居れば歓迎するが。


「ゴーレムのおかげで、魔界の戦力は飛躍的に上がりました。我々の力がなくても、しっかり都市を防衛出来ます。おかげでこうやって羽を伸ばせます」


リアが言う。

魔柱の間に監禁されなくても良くなった。

普段は、中央神殿で祭事をしている。


「そうそう、この前沿岸都市シードラに言ったらさー、珍しい魚があってさー。あれ凄い美味しかったよ!この国にまで輸送するのは難しいから、行かないと食べられない珍味!」


パラスに至っては、政治面ではやる事がない為、兵士やゴーレムの訓練をするか・・・もしくは各地を回って色々観光している。

大型バs・・・もとい、円盤状の物を動かして駆動する、輸送特化のゴーレムが各都市を結んで走っているので、それを利用したりしている。

大型魔導飛空船も飛び交っており、それを利用することもある。

パラスの名誉の為に補足しておくと、アレクシアの螢を運んでいるので、遠隔地の情報を仕入れたりしている。

勿論、パラス自身がエルクの眷属(よめ)である事は周知の事実なので、要望や問題があればパラスに嘆願書が届けられたりする。

それをエルクに伝えるのもパラスの仕事だ。


演奏が再開される。

楽器類は、当初はアレクシアやセリアが考案した物が多く、演奏される曲も、アレクシアやセリアが考案した物が多かった。

しかし、各地で伝わっていた祭器と融合したり、唄と融合したり・・・新しく考案する人もいて・・・今では無数に種類が増えている。

演奏する事で生計を立てる人も増えてきたし、各都市を回る人気の芸術家もいる。


平和だ。


今はこの平和を享受し・・・やがてまた戦いに身を投じて・・・しかし、その先には永遠の平和を・・・

エルクは目を閉じ、音楽に聴き入りつつ、そんな事を考えていた。

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