[エルク]ベヒモス陥落
エルクは、ベヒモスに対し、宣戦布告を行った。
内容は、何時もの内容とは少しだけ異なっていた。
抵抗する意思あらば後方の国へ逃げよ、それが異なる点だ。
理由は、ベヒモスは最早戦力と呼べる物を有しておらず、抵抗の意味がないからである。
そのくらいなら、後方に逃げ、戦力を統合して抵抗した方が良い。
そして、エルク達にしても、無駄に戦わなくて良いので都合が良い。
現状の勢力図では、ベヒモスからの攻撃がなければ、バロンとユグドラシルが攻められる可能性がある地・・・ではあるが。
そもそも、レイアーの活躍を見て、攻める気になるかどうか疑問がある。
レイアーは、地理的には重要ではあるが、柱の都市ではない。
マナ供給量的にも、戦力の配置的にも不利な都市・・・柱の都市は、当然ながら、戦力を集中させてあるのだ。
レイアーすら落とせないのなら、絶望的と言っていい。
尚、首都バロンに攻め入ろうものなら、多数のゴーレム兵に加え、聖獣達のゴーレムが加わる。
もう幹部を配置する必要すらなさそうだ。
宣戦布告から7日後、その日の内にエルク達はベヒモスを占拠した。
結局他都市への攻撃はなかった。
王族は全て逃げ出し、重要な幹部も全て逃げていた。
抵抗はほとんどなく、薄氷を踏み潰すように占拠は完了した。
・・・全く抵抗がなかった訳ではなかったが。
これで柱は7つ。
聖神の勢力に並んだ事になる。
最初1つまで追い込まれてからここまで・・・長かった。
今回までの敵は、頻繁に攻めて来ていたため、かなり消耗していた。
だが、これからの敵は情報もあまりなく、戦力的にも無傷だ。
かなりの困難が予想される。
ベヒモスの都市再計画も順調に進む。
住民も、初期に少し抵抗する者が出たが、後は魔の勢力への加入を喜ぶ者が大半だ。
ベヒモスは鉱山が多い国。
ゴーレム材料を多く産出するので、魔の勢力の戦力を更に増強出来る。
そして・・・
バロン、魔柱の間に、エルク達幹部が集う。
魔神に呼ばれたのだ。
魔柱の間から、魔の神域に移動。
そして、魔神と対面する。
「我が眷属達よ、ご苦労であった。私の力もかなり回復した。礼を言う」
魔神の言葉に、
「勿体なきお言葉です」
膝を着いたエルクが、述べる。
「そして・・・其方達を呼んだのは、礼を言う為でもあるが・・・もう一点、報告がある」
「拝聴致します」
リアが言う。
「聖神がどこから聖者を連れてきているか、突き止めることに成功した。その場所は・・・」
魔神は此処で一旦言葉を切り・・・
「セリア、パラス、アレクシア・・・其方等の故郷、地球のある世界より、力を借用している事が分かった」
「・・・地球からですか!」
アレクシアが驚きの声を上げる。
「うむ・・・この世界のリソースを使っているなら、追跡出来たのだが・・・地球より一時的に借り受け、倒された瞬間に地球に返しているようだ・・・リソースの強奪、決して許される行為ではない。100%のリソースを返せるわけではないので、少しずつ地球のリソースがこちらの世界に移動する形となる」
「それは・・・地球の神も気付いているのですか・・・?」
アレクシアが尋ねる。
「分からんが・・・恐らく気付いていないのではないかと考えている。他世界のリソースを奪うのも許されない事だが、他世界に対し肩入れして影響を与える行為も許されない行為だ」
魔神が首を振る。
「そこでアレクシアよ。其方に頼みがある。地球のある世界の神域に赴き、向こうの神に聞いて来て欲しい」
「分かりました」
アレクシアが頷く。
ボウッ
魔神がゲートを開く。
「行って参ります」
アレクシアはゲートをくぐった。




