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[エルク]ソロモンの懲罰部隊

「ミーミルによる我が国への侵攻有り。国を挙げて抵抗した結果、何とか撃退に成功。奇跡的に我が軍に死者はなし。ファーイーストの事は心配せず、自身の用事を優先しろ、か。そっか・・・ミーミルの奴ら、この時期を狙って攻めてきたのか・・・」


エルクは、自国からの連絡を受け取り、手紙を読んでいる。不安ではあるが、ここは妹と友人を信じよう、そう考えた。


「ご主人様、どうされました?」


セリアがエルクの腕にしなっと絡み付き、聞いてくる。


「うむ。自国が襲われたようだ。魔都ミーミルと、敵対関係にはないのだが・・・一方的に侵略を仕掛けられていてな。魔の御神の令に反する行為だから、褒められた行為ではないのだが・・・無事自国が撃退してくれたようだ。死者も出なかったらしい・・・勿論、怪我人は出ただろうし、次も撃退出来るとは限らないのだが」


「エルク様~ファーイーストから防衛部隊が到着しました!」


パラスが部屋に入ってくる。ちなみに、エルクは空き家を整備して与えられている。ここに入れるのは、エルク本人と、パラスとセリアだけだ。


「着いたか。行こう」


エルクが外に到着すると、10名の兵士がいた。吸血鬼が2名、ウェアウルフが6名、ワーキャットが2名。ファーイーストでも、難民の受け入れは行っている。吸血鬼は繁殖能力が低い為、あまり数がいないのだ。その為、下級兵士には吸血鬼以外が多い。指揮能力や魔法能力の高さから、上級士官には吸血鬼が多い。種族間格差、と言うよりは、適正や嗜好による所が大きい。下級兵士に多い種族は、直接体を動かすのが好きなのだ。


「ふむ、思ったより多く派遣してくれたな。話は聞いているな?この村の民は、我が国の同胞だ。そのつもりで護衛にあたれ」


「はっ、承知しております」


兵士が敬礼で答える。


「よろしく御願いします」


セリアがぺこり、と礼をすると、


「セリア様、どうかお止め下さい。セリア様はエルク様の眷属、立場は王妃となります。ただ命令下さればそれでよいのです」


兵士が畏まって制する。


「私も王妃?」


パラスがぴょんっとジャンプして言う。


「勿論です。パラス様。何なりと申しつけ下さい」


エルクが、村の者にも、兵士の紹介をする。さっそく村人が、兵士を宿舎に案内する。流石に10も空き家はなく、仮設の家、家に仕切り、等で数を増やしている。そもそも、大部屋にまとめてでも問題ないのだが、律儀な話だ。


手が空いてて暇なのだろう、兵士は早速、資材調達、建設、食材調達等を手伝っている。移動を終えた直後で疲れているだろうに、真面目だと思う。


「エルク様、報告致します。隣国・・・というか元自国なのですが、ソロモンから懲罰部隊が派遣されてきたようです」


ソロモン、この村が元所属していた国で、この村から金品食料を搾り取っていた国の一方である。追加の税収を納める使者を切り捨てた関係で、懲罰部隊を送り込んできたのだろう。エルクは遠視で見てみたが、あの程度なら守護部隊のみでも対応できると判断した。が、せっかく今は自分達がいるのだ。完全に撃退するのも悪くない。


懲罰部隊の主は、貴族のぼんぼんだろうか?そこまで強くないようだ。数名、それなりの力の持ち主が見える。恐らく、上級冒険者並の強さだろう。内2名、女性も混じっている。かなりの美人でもあるが、特に食指は動かない。


「ご主人様、女性兵士も混じっているようですが、どうされますか?」


「罪のない村人を虐殺しようとして来た連中だ、処分しよう。特に魅力も感じられないしな。これからこの村を離れる事を考えると、逃がさず、力を削いでおいた方がいい」


セリアの問いに、答える。


「分かりました」


降伏勧告は行わない。


「地の檻よ」


エルクは魔法を構成すると、発動。


ガシャイイイイイ


地面が隆起し、無数の突起が、懲罰部隊の背後に出現する。退路を断ったのだ。


「お前達は、此処で朽ち果てよ」


エルクが拡声の魔法で通達する。


「ふざけるな、賎民の分際と、汚らしい魔族め!」


敵部隊が光の矢の魔法を発動、こちらに向かって放つ。


「盾よ」


パラスの言霊(コトバ)により不可視の盾が出現、光の矢はたやすく防がれる。


「次だ、撃て!」


命令を飛ばす貴族のぼんぼん・・・の首が飛ぶ。


パラスが後ろに回り込み、斧で斬り飛ばしたのだ。


「な・・一体何処から?!」


驚きの声を上げる懲罰部隊。遅い、声を上げる前に、それ以外の行動が必要であった筈だ。パラスが振るう斧が、首を次々飛ばす。何の事はない。パラスが闇の力を受け入れて身につけた能力の1つ、時空転移である。飛距離を伸ばせば伸ばすだけお腹が減るらしく、また後でたっぷり食事をとるのだろう。


闇の力を受け入れ、眷属になった場合、何か特殊能力を得る事がある。パラスなら時空転移と盾、セリアは闇の剣を操るようだ。


「射貫け」


セリアの言霊(ことば)に従い出現した闇の剣が、次々と懲罰部隊を射貫く。


結局エルクは退路を断っただけで、残りは二人で一瞬にして倒してしまった。


エルクは考える。1人残して逃走させる、といった小細工は不要だろう。そもそも、自国に戻るとは限らない。戻ってこなかった、と言う事実だけで、手を出してはいけないという抑止力にはなるはずだ。無論それで大兵力を向けてくるようなら、村全体の撤退も考えなければならない。


「お疲れ様。戻ろう」


すっと抱きついてくるセリアの頭を撫でる。パラスの方を向き、


「お腹が減っただろう、少し早いが、村に戻って昼食の準備を頼もう」


パラスもにっこり微笑み、


「うん!」


そう頷く。

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