[エルク]バロン攻略戦
4時間。
それが、ユグドラシルからバロンの移動にかかった時間である。
アレクシアの竜巻精霊の力も有るが、何よりエルクの魔力が飛躍的に増大した影響だ。
そのまま城に宣言、抵抗の意志ない者は逃げろと告げ、柱の間を目指す。
早く着き過ぎたせいで、城の防衛勢力がまだ配置についていない。
混乱が混乱を呼び、降伏する者が続出した。
魔獣部隊も飛び越えてしまったし、防衛魔獣もまだ獣舎の中だ。
アレクシアは街で混乱を煽っている。
少し煽っただけで、面白いくらい騒ぎになるようだ。
聖柱の間。
そこを守る聖獣、バロン。
黄金色の獅子だ。
原初の刻より、聖柱を守る存在・・・
「討て」
セリアの言霊により顕れる、12本の刺殺剣。
一瞬後、全てバロンに刺さり、バロンはその命を失った。
セリアが聖柱へと歩みよる。
扉の外で様子を見ていた兵が、あ然とするが・・・気を取り直し、止めようと部屋に・・・入ろうとして、エルクが飛ばした氷の槍に貫かれ命を落とす。
「邪魔をするな」
エルクが低い、しかしはっきりした声音で言う。
セリアが聖柱に手をつき、
「反転せよ、反転せよ、反転せよ、反転せよ・・・・」
セリアが言霊を送り、間も無く・・・聖柱は魔柱となった。
バロンはほぼ無傷で占領。
遅れながら破壊活動しようとしたものや、城を包囲しようとしたものは、アレクシアの手で命を落とした。
魔獣は、別に聖神に仕えている訳ではないので、殺す必要もない。
各都市への侵攻はなかった。
拍子抜けしたエルクだが・・・実は、ちゃんと各都市に向かう進行部隊はいたのである。
エルクがバロンを占拠するのが予想より早く、侵攻前に陥落の報が来て、混乱、撤退したのだ。
通常9日の距離を4時間である。
予測の甘さを責めるのは酷だろう。
バロンには、魔力が湧き出る霊峰や、魔獣の研究所、聖獣の里等もある。
聖獣の里だけは、抵抗するなら排除の必要がある。
兵士達が到着するのは数日後。
それまでは、エルク達は柱を護って待機する必要がある。
何にせよ、侵攻は上手くいった。
それは確かだろう。




