[エルク]円卓会議
エルクは、ユグドラシル占拠後、反体制派の過激派を処分した。
親族の内の一部が強固に反対、といったケースもあり、実行犯を排除すると、保護を求める人もちらほら出始めた。
最終的には、2割程の一般民、6割程の貴族、聖騎士の8割程を処分する事になった。
聖騎士の割合が高いのは、戒めが強力であった事と、意思が固い事。
そして、聖神に対する疑いを抱いていた者は、予めこちらに亡命し、こちらの戦力に数えられていた為だ。
続いて、攻められている拠点への幹部の派遣。
攻めて来ていた軍を鎮圧した。
逃亡は、再起を図る可能性があったので、許さず抹殺。
降伏する場合は、受け入れた。
そして、ユグドラシル付近の衛星都市の鎮圧。
こちらは、そこまで抵抗はなかった。
元々ユグドラシルは、衛星都市に対して隷属を強要する態度をとっており、一部の貴族を除いては不満が大きかったのだ。
ユグドラシルの占拠、及び各都市への攻撃の鎮圧が終わり、防衛勢力を残してエルク達幹部はソロモンに引きあげた。
ここは円卓の間、次の作戦と、今回の作戦に関する議論をする為だ。
「今回の作戦、何か意見があるなら、言って欲しい」
エルクが、みんなに問いかける。
「一般国民を助ける為の作業・・・重要ではあるのですが、正直きついですね。アレクシアさんのおかげである程度効果が出ましたが、私やジャンヌだけでは恐らくこの数字は出せませんでした。特に、今後は更に洗脳が進んでいると思われるので、この労力は更に増え、かつ、得られる成果は飛躍的に下がると思われます」
ノエルが、言いにくそうに言う。
「時間もかかってしまったしな・・・引き続き工作はしつつ、噂を流す方向とし、とにかく柱の制圧を優先、告知して従わない者は諦める・・・しかないか」
苦そうに、エルクが言う。
「機動力が優れたノエルは、危ない拠点を助けに行く役に回った方が安全だと思う。攻略は、僕とセリア、そしてエルクでいいんじゃないかな」
ジャンヌが提案。
確かに、とエルクが頷く。
占領後、折をみて治療して貰うのがいいだろう。
今回も、治療しても劇的に変わった訳ではなかった。
エルクが、アレクシアに問う。
「アレクシア、こちらの防衛戦力を増強したい。今回敵が使った戦法は、参考にならないだろうか?無人のゴーレムや、無人の魔獣だ。兵士は使い捨てにする訳にはいかない。魔獣やゴーレムに心云々は、また別の話とはなるが、この際、一般の兵士と比較する訳にはいかない。こう言った物を利用するのはどう思う?」
「確かに有用でしょうが、今回の様に、支配を奪われた場合に致命的な事になる可能性があります。都市に放って暴走させて戦力を削ぐ・・・といった用途では有用ですが、こちらはその戦法は採りません。無人の物は、難しいと思います」
「なるほど。では、目覚ましい活躍をしたアルケーのゴーレムはどうだ?あれを是非各都市に配備したい」
「はい、それに関しては私も同意です。早速各都市に展開、訓練も行いましょう」
「うむ」
エルクは一呼吸置くと、
「次の目標は、バロンだ。早速情報操作や情報収集を初めて欲しい。内部体制を整えた3ヶ月後くらいに宣戦布告、その2週間後の侵攻を予定したい」
「分かりました」
同意の声が唱和する。
「それと、今後の話になるが・・・今後、ニルスやワルテールのような、優秀な統治者に、都市を任せたい。出来れば、ニルスにはレイアーではなく、柱を持つ都市の守護を頼みたい・・・例えばこのユグドラシルのような。全てをファーイーストとするのではなく、連合とし、ある程度の自由裁量は任せて行きたい。幹部で全てを掌握するのは、労力的に無理がある。勿論、御神の出された神令は、遵守させるが」
エルクは少し目をつむり、また目を開け、
「今は、我々がいる。そして、今我々は正しい。だが、10年後、50年後、100年後、1000年後、必ずそうとは言えない。御神の下統一出来たとしても、その後魔族と人族、または人族同士、魔族同士で争うのなら、意味がない。ある程度の対立は許容すべきだが・・・そうなった時の為、ある程度お互いに対等に抑止できるよう、複数の対等な勢力を作る必要があると思う。丁度、聖神と御神をお作りになり、お互いに監視させようとしたように」
《それはその通りであるな。我も、道理を遵守するを見守る存在。ある程度は監視するが・・・逸脱した存在を誅する程度。後は基本的には、巫女を通じて言葉により働きかけるのが主。基本的には、民が自治をしてもらわねば困る》
「今は危急の為、仕方がないとは思うが、徐々に独立していって貰わないと困るんだ。理想的な話をすれば、都市攻略だって、本当は一般兵士や高級士官のみで完了するのが望ましいのだ。聖者、という謎の存在がある以上、これは難しいが」
「そうですね・・・差し当っては連合化の件、私とノエルで検討を進めておきます」
アレクシアが受ける。
「ともあれ、とりあえずの7柱まで後2柱。お疲れ様、みんなゆっくり羽を伸ばして欲しい」
「はい」
幹部の声が唱和した。




