表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
36/71

[エルク]不確実な契約

エルクが視察に回っていると、訓練場で、セリアとジャンヌが打ち合っていた。二人とも木剣。腕は互角のようだ。


周囲には兵士が見学している。みんな、学ぼうと真剣に見ているようだ。


切り結び、離れ。再び切り結び。


エルクもかなりの腕だが、あの2人には敵わない。時々稽古を付けて貰っている。


「有り難うございます。やはりジャンヌさんは強いですね」


「セリアこそ、強いよ!」


ジャンヌの真骨頂は、聖剣や、聖女による力の解放。エルクの真骨頂は、無数の特殊剣を使った攻撃。だが二人とも、純粋な剣の腕だけでも、相当な強さだ。


「二人とも流石だね。頼もしいよ」


エルクが二人に声をかける。セリアがすっとエルクによると、抱きつき、


「見ていらしたのですね、ご主人様。お恥ずかしいです。でも有り難うございます」


エルクは、セリアに軽くキスすると、頭を撫でてやる。


「お昼がまだでしたら、一緒に食べませんか?ジャンヌも、一緒にどうですか?」


「んー、僕はやめておくよー。食べたい物があるんだー」


ジャンヌは立ち去ってしまった。


「あら・・・では、ご主人様、どうでしょう?」


「そうだな、一緒に食べようか」


ジャンヌと、ふらんす料理の店に行く。少し値段は高いが、お洒落な料理が多い。


「ご主人様、ジャンヌの事なのですが・・・」


セリアが少し真面目な声音で言う。


「ん?ジャンヌ?」


エルクは、想定していなかった話題に戸惑いつつ、聞き返す。


「はい。ジャンヌの事なのですが・・・どう思っておられますか?」


「ジャンヌは・・・昔からの大切な親友だ」


「しかし、ジャンヌは・・・ご主人様を好いているように見えますが」


確かに、ジャンヌはエルクに好意があると思う。エルクも、ジャンヌの事は憎からず思っている。


「確かにその通りだ。俺とジャンヌは、お互いに好いていると思う」


エルクが答えると、セリアが言う。


「ジャンヌとは結婚なさらないのですか?」


エルクは、首を振ると、残念そうに答える。


「残念ながら・・・ジャンヌは特異体質でな。眷属に出来ないのだ。そうか、今思えば、ただの特異体質だと思っていたが、あらゆる呪いを受け付けない、勇者の性質による物なのだろうな」


エルクは、続ける。


「眷属に出来ない物は、婚姻者とならない。それで結婚はしていないのだ」


セリアはエルクの目をじっと見て、


「眷属でなくても結婚できるのではないでしょうか?他の魔族は眷属にしなくても同族間で結婚していますし、人間もそうですよ?」


エルクはセリアの言葉にびっくりしたが、少し考えて・・・


「確かに、他種族はそうしているようだな・・・驚きだ。婚姻とは、裏切りが許されない。眷属にして縛ることで、その契約を確実にしなければ不安だと思うのだが・・・それはお互いの為だと思っていた」


セリアは首を振ると、


「夫婦とは、お互いに信頼を得ようと努力し、維持する物。眷属化による契約は不要です。勿論苦しい事もありますが、それはお互いの努力で乗り越える物です」


「・・・そんな不確実な・・・」


「実際、ご主人様は私達に気を遣って下さっているでしょう?契約がなくても、私達はご主人様の事が大好きです。ご主人様が私達に愛情を注いで下さっているのと同じで」


「ふむ・・・」


「眷属でなくても、婚姻を認める、そういった事を提案致します。実際、国法でも、眷属化していなくても婚姻は認めていますよね」


「そこは多種族に合わせたからな・・・だが・・・そうだな」


セリアが付け加える。その目を少し赤くして。


「・・・それに。ご主人様の不興を買うような行為があった場合や、ご主人様への興味が薄れるような場合には、私がその命散らします。不死だろうがそんな事関係ありません」


エルクはセリアの頭を撫でてやると、セリアは気持ちよさそうに目を細めた。


--


エルクはジャンヌを呼び出し、告げる。


「ジャンヌ・・・」


「ん、何??」


ジャンヌがきょとん、としてエルクを見る。


「その・・・実は・・・お前は俺の眷属にはなれなかった。だが、俺はお前が好きだ。よければ、お前も俺と結婚しないか?」


「・・・」


ジャンヌはそのままエルクをじっと見る。そのまま顔を赤くし、


「え、えええええええええ?!」


エルクに抱きつくと、


「も、勿論嬉しい・・・けど・・・良いの?僕は眷属になれないよ??子供も埋めないよ??」


「構わない。俺の嫁になって欲しい」


「うん・・・うん!」


こうして、エルクの嫁が一人増えた。元々扱いとしては王妃相当だったのだが、これで正式に認められた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ