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[エルク]息抜き

「ご主人様、最近働き詰めですし、息抜きに少しお出かけしませんか?」


セリアがしなっと腕を絡めてくる。


「セリアか、構わないよ」


読んでいた書類を置くと、ゆっくり立ち上がる。ノエルは普段は横で書類整理をしているのだが、今日はレイアーの様子を見に行っていた。


城下町に出る。みんな、活気に溢れている。建築の為の音が、耐える事がない。魔族と人間が協力して作業にあたっている。魔道なら吸血鬼や妖魔、強い力ならワーウルフやワーキャット、その他の細かい作業は数が多い人間がこなしている。


お洒落なかふぇ、という物に入る。セリアの手料理以外を食べるのは久しぶりだが、美味い。簡単なぱすた、という物を食べ、食後にけーき、という物と珈琲を飲む。


「美味いな・・・このけーき、という物は。実に珈琲が進む」


「はい、本当に懐かしい味です」


エルクは、ふと、気になっていた事を聞く。


「そう言えば・・・俺の妻が聖女だった、と言う話は本当に驚いたが・・・普通聖女とは、魔族の敵で、間違っても吸血鬼にその首は差し出さないと思うのだが、何か理由があったのか?」


エルクは、補足して言う。


「勿論、お前達は愛しているし、俺のもとに来てくれたのは非常に嬉しい。それに・・・人間、一部の特権階級ではなく、大多数の人にとって、幸せな結果となっていると思う」


「そうですね・・・まず、私達3人・・・私、パラス、アレクシアは・・・といっても、別に示し合わせていた訳ではないのですが・・・もしご主人様の眷属となっていなかったら、聖戦が始まった時点で聖神に自由を奪われていた可能性が高いのです」


「・・・聖神に?自由を?」


「はい。私達3人は、この世界に元いた魂ではありません。異世界、日本、という国で普通に暮らしていたのですが・・・聖神に殺され、拉致されたような形でこの世界に連れてこられたのです。その際、元の世界の知識を使わない、聖戦が始まったら支配される、等の制約を受けました。その支配から逃れる方法が・・・魔界に閉じこもり外に出ない、か、もしくはそもそも魔族の支配を受け、聖神の庇護下から離れるか、の2択でした。それで私は、後者を選んだのです・・・」


「・・・ふむ・・・そんな事情が」


セリアはすっと目をそらし。


「・・・そもそも、ご主人様が凄く魅力的に見えたので・・・勿論お顔も素敵ですが、真っ直ぐな所や、魂の美しさが・・・その・・・一目惚れしまして」


顔を赤くし、小声で言う。可愛いな、と思うエルク。エルクはセリアに軽くキスをすると、


「有り難う」


抱きしめてやる。


「魂の拉致・・・聖神はそんな事までしてたのか・・・」


ふと、エルクが気付く。


「・・・さっき懐かしいとか、セリアやアレクシアが謎の知識いっぱい持ってるのってひょっとして」


「ご主人様、大好きです!」


セリアがきゅーっと抱きついてきた。そんな事では誤魔化されな・・・いや、誤魔化されてやるか。セリアを抱き返す。

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