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[エルク]失われた余裕

セリア砦、会議卓。ファーイースト防衛にはリアとジャンヌ。レイアーには兵を手厚く配置。そして・・・セリア砦、ここには、エルクと眷属が集まっていた。


「さて、魔柱はあと1つ、魔族は王手をかけられた状態だ」


戦力が足りない。エルクは思う。未知の兵器、未知の魔法、未知の力・・・聖女や勇者だけではない。もう魔族側の勢力は1国。人間側の勢力はたくさん。拠点が増えても守れない。どうすれば・・・


「何か意見があれば言って欲しい」


アレクシアが切り出す。


「ご主人様、まず謝らせて欲しい。正直、我々、眷属4人も、リアも、ジャンヌも、敵を甘く見ていた」


「・・・それには気付いていた。何故かお前達は余裕があった。それは何故だ?」


「まずは正確な現状の把握をして欲しい。ファーイーストの勢力だが・・・聖女が4人、勇者が1人、魔王が1人、闇の巫女が1人、いる」


「・・・何?!」


「で、残りの能力者は、聖女が3人、のみ。なら、余裕を持って防衛できると考えていた。これが我々が油断した理由でした」


「・・・ど・・・どう言うことだ・・・?」


エルクは混乱しながらも・・・当てはめてみる・・・なるほど・・・そうすると辻褄があう部分も多い。ジャンヌが勇者、リアが闇の巫女、セリアが剣の聖女、パラスが盾の聖女、アレクシアが智の聖女・・・


「・・・だとすると、我が軍を襲った敵は何だ?俺が直接見たのは剣の奴だけだが・・・」


「そう、我々が計算していなかったのは、その連中です。本来は限られた者しか扱えない言霊(ことば)を扱っていました。そうなると・・・聖女に匹敵する力の持ち主と思われます。これは歴史上存在しません。後何人いる、と言った計算はできません。ここは悲観的に見て、無限にいる、と見るべきでしょう」


アレクシアが重々しく呟く。


「セリア砦を襲った男は、剣の聖者、と名乗っていました。勿論、事実かどうかは分かりませんが・・・とりあえず聖者、と呼称するのはどうでしょうか」


セリアが発言する。


「・・・そうだな、その謎の存在は、仮称、聖者と呼称しよう」


エルクも頷く。


「聖者、の存在は未知数です。恐らく、聖女並の力を持っていると思われます。リア、ジャンヌが単独で戦えば、互角の戦いを強いられるでしょう」


「・・・強いな」


「はい。私達4人、そしてご主人様は、同数で戦えば圧倒出来ます。本来の立場より強化されている為です。私達は聖女の力+闇の力。ご主人様は、聖女を眷属とした力+魔王の力。そもそも、もともと魔王は聖女数名と渡り合える力がありますし。それでも、相手が複数いればその優位は崩れます」


「・・・なるほど」


エルクは思う・・・思ったより遥かに自軍は強かった、が、敵の未知の力が不確定過ぎる。


「それで提案なのですが・・・固執、そして犠牲を恐れる事・・・これらを棄てる必要があると思います」


アレクシアが言いにくそうに、でも、真っ直ぐにエルクを見て言う。


「・・・そうか・・・そうだな・・・」


エルクは決断の必要を感じた。自分はファーイーストの王である事に固執していた。犠牲を出さないように拠点防衛に力を割きすぎた・・・


「みんな、済まない。特にセリアとノエルには申し訳ない・・・が・・・」


「私の村は元々、場所にはこだわらないと言っていましたよ」


「私はレイアーは好きですが、もっと大切な物が有ります。エルク様は、今や人間、虐げられた者、虐げる事を良しとしない者にとっても、大切な存在なのです」


この戦力で、柱を取り返す方法・・・それは・・・


「まず、レイアーとセリア砦の防衛力は、絶対防衛を基準としない。戦略的に重要な位置である事もあり、放棄はしないし、とられたら奪還も辞さないが」


エルクは一呼吸すると。


「まずはミーミルを落とす。この後、ミーミルに遷都する。大規模部隊はミーミルを通る必要があるので、この時点では、防衛拠点は増えない。勿論奇襲でファーイーストを取られる可能性はあるが、それは取り返せばいい。両脇の山には何か対策が必要かとは思う」


みんなが頷く。


「次に、ソロモン、その次にアルケーを落とす。そして、ソロモンに遷都する。この時点で、ソロモン、セリア砦、アルケーを確実に守れば、大規模な部隊は防げる。特に、ミーミルとファーイースト侵攻の要所であるセリア砦の役割は大きい。柱がないから遷都はしないが」


エルクは一息置くと。


「その次に、ユグドラシル、ベヒモス、バロンを落とす。バロンに遷都する。これで柱は7つ。防衛拠点は3つ。敵は抵抗する者は倒し、そうでない者は取り込もう・・・」


「皮肉な話ですが・・・国を成り立たせるのは国民です。現在、聖域の一般国民は、圧政に苦しんでいます。ご主人様の公正さは、密かに非常な人気がある。本来なら内乱を気にすべきですが、恐らくその心配はないでしょう。進軍は、解放軍のそれとして受け入れられるはずです」


「・・・そうだな。それは同時に、我々が公正な政治、その地域を尊重した運営をする必要があるという事だ」


「はい。最大の味方は、人間の王族による圧政、という事ですね」


「レイアーにも、今、大量の難民の方が来られています。ご主人様が国を解放されれば、また元の国に戻れる方もたくさんいるはずです」


ノエルも力強く言う。


「苦しい戦いになるし、大きな犠牲がでると思う・・・でも、みんな協力して欲しい」


エルクは、一同を見回し、頭を下げた。

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