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[アレクシア][時系列不順]ファーイースト防衛戦

「リアちゃん、済まない。敵の手勢が来たようだ。何時も通る山なら監視を置いていたのだが。それとは逆の山、しかも、山道ではない場所を通ってきたようだ。敵は十数名だが、恐らくかなりの使い手だろう」


アレクシアが悔しそうに言う。


「敵も色々考えますね・・・迎撃しましょう」


「リアちゃんはここで拠点防衛を御願いしたい。私とジャンヌで迎え撃とう」


「任せて!」


アレクシアの提案に、ジャンヌが賛同する。


「分かりました。私が王城を守ります」


アレクシアとジャンヌが出て行く。


「影よ」


リアの言霊(ことば)に反応し、闇が薄く、城を覆う。侵入者を調べる結界であり、かつ、力が弱い物ならその命を奪う事もできる。


アレクシア達が迎撃に出る。ファーイーストは守りに適した地。攻めるためには、必ず通る必要がある平原がある。


攻めて来たのは十数名、内2人が明らかに強い。他の兵士も、かなりの練度のようだ。


目的は、恐らく足止め。ミーミル攻略を邪魔されない為だろう。セリア砦やレイアーも攻撃を受けているらしい。そこまでは予想されたのだが・・・


「妙だね。聖女3人、それのみが人間側の最高戦力だったはず。他拠点でも力の強い者がいたと聞いている。数で攻めたり、新兵器は予想していたけど、あの力が強い奴は何だろう?」


「異質な力を感じるよね」


ジャンヌも警戒して言う。


「君達は何者だ。これより先は、我がファーイーストの領土。領域の侵犯は認めない」


「俺達は正義の味方、って奴だ。その先にある柱、貰い受ける」


敵の大将らしき者が言う。


「倒すしかなさそうだね」


ジャンヌが言う。


「油断できないな、全力で行こうか」


アレクシアはそう言うと、ジャンヌに手をかざし。


「我アレクシアが請う、ジャンヌよ、その力を示せ」


勇者は、全ての力を操り、全ての武器を操る。そして復活する。だが、それが勇者の全てではない。勇者が聖女を束ねる理由・・・それは、聖女の願いを受け、一時的に更なる力を得ることができるのだ。アレクシアの場合は、魔法適正の大幅な引き上げ。解放されたその力は何と、エルクをも超える。


「よーし行くよ!」


ジャンヌが駆ける。


「駆ける、蒼天の道」


ジャンヌの魔法が発動。空を飛び、敵に近づく。


「撃ち抜け」


敵軍のフードの者が放った言霊(ことば)により、無数の不可視の何かが生まれ、ジャンヌを襲う。


「万物防ぐ盾よ」


ジャンヌの魔法が発動。不可視の何かを弾く。


「・・・斧か。斧の聖女・・・?どう言うことだ」


ジャンヌが訝しむ。


「撃て!」


アレクシアの号令の元、3列に並んだ魔道士部隊が魔法を間断なく放つ。攻撃を集中させ、一点に高密度の魔法爆撃を創り出す。


まだ両軍の差は大きい、矢は届かない。敵軍の魔道士部隊が長距離魔法の高速詠唱を始める。


「盾よ」


もう一人のフードの男が放った言霊(ことば)。結界で防いでいた魔道士の障壁より前に、不可視の障壁が生じる。壊れかけていた障壁とは事なり、小揺るぎもせず魔法を防ぐ。


弓兵部隊が、近づいてきたジャンヌを射貫く。


「風よ吹け」


ジャンヌの魔法が行使、矢を散らし、更に敵陣に突風が迫るが、盾に阻まれ散る。


「無駄だ、我が軍の守りは鉄壁。そこで見ているがいい」


敵は行軍を止めない。盾で防ぎつつ、そのまま都市に攻め込むつもりだろう。


「来たれ、鉄壁」


アレクシアの魔法が発動。鉄の杭が地面から隆起、進路を塞ぐ。


「灰燼と化せ」


敵の魔道部隊の魔法が発動。鉄の杭が塵となって散る。


「うー・・・聖剣解放なら一瞬なのにいいい」


聖剣解放。剣の聖女と勇者の悪夢のコラボ。時空を両断する概念をまき散らす。ちょっと前に試して、海が割れ、時空が歪み、修復に数日かかった。エルクから凄く怒られた。


ジャンヌが敵陣に達し、聖剣を使って斬りかかる。剣を持った兵士が数名ジャンヌに向かう。ジャンヌが聖剣で切ろうとすると、聖剣はフードの者の盾に阻まれ、兵士の剣がジャンヌを斬りつける。


距離を取るジャンヌ。


「く・・・正々堂々と戦え!」


「正義は我らに有り!死して悔い改めよ!」


隊長らしき男が、剣でジャンヌに斬りかかる。


ジャンヌの腕が飛び、地面に落ちる。そして・・・


隊長らしき男が地面に倒れ伏す。ジャンヌが聖剣で貫いたのだ。


「・・・何をした?!」


流石に予想外だったのか、フードの者が叫ぶ。


復活の奇跡。回数を使い切ってしまうと、一定期間復活出来ないが・・・逆に溜まっていると、即時復活のような事ができる。蘇生を1回もしたことがないので、かなり溜まっているのだ。特に魔王の傍にいるとかなりの速度で溜まる。腕が切られた事実を無かったことにするくらい、容易い。


「揺れろ!」


ゴッ


地面が揺れ、敵がバランスを崩す。


「ぶちまけろ!」


もう一人のフードの者が、不可視の斧を無数に創り出し、ジャンヌへと飛ばす。


「万物防ぐ盾よ!」


ジャンヌが盾で斧を弾く。ついで、他の兵士の攻撃も防ぐ。


「駆ける、蒼天の道」


ジャンヌが再び空を飛び、宙に逃げる。


「逃がすか・・・墜ちよ!」


フードの者の不可視の斧がジャンヌを襲う。ジャンヌが張った盾に弾かれる。


パンパン


アレクシアが打ち鳴らした拍手が、あたりに響き渡る。


「さあさあお立ち会い、上手く行ったら御喝采、お代は見てのお帰りですよー」


アレクシアの横に、いつの間にか召喚陣が出来ている。魔道士隊はいつの間にか避難している。


「させるな!」


直感で気付き、フードの者が叫ぶが・・・彼我の距離は離れすぎている。


「ここは隔離世、夢の世界。さあさあ、お楽しみの時間です」


魔方陣が広がる。アレクシア、ジャンヌ、そして敵軍、それが完全に魔方陣の中に収まった。


ジャンヌは空中方向に更に距離を取る。邪魔をしない為だ。


「もっと近くでご覧下さい」


アレクシアの言葉と同時に、敵軍とアレクシアの距離が一瞬で縮まる。


「間抜けめ」


フードの男が即座に反応。不可視の巨大斧を構え、アレクシアに迫る。


ドッ


空中から出現した剣が、フードの男を滅多刺しにし、そのままフードの男が動かなくなる。


「駄目ですよ、手出し厳禁、です」


もう一人のフードの男がようやく我を取り戻す。盾を出すのが一瞬遅れたが、次からは・・・


「貴様!」


剣をもった兵士がアレクシアに斬りかかる。アレクシアにその剣が刺さり・・・アレクシアが歪み、広がり・・・兵士を包み込む。


「無限暴食スライム、ゼリーちゃんですよー可愛いでしょー」


横に現れたアレクシアが、紹介するように手の先を向け、言う。


いつの間にか、アレクシアの横に、何か、いる。


「人食い虎のゼリーちゃんです。おおっと名前が被っちゃってますねえ」


人食い虎とスライムが兵士に襲いかかる。盾で防ごうとするが、虎は盾を掴んで飛び越え、スライムは横に回り込む。


足を取られ、バランスを崩し倒れ込むフードの男。後ろを見ると、蔦の化け物が立っている。


「蔦の魔物ですねー」


最早説明を放棄したアレクシアの言葉が聞こえる。誰か・・・奴を・・・止めろ。


槍を持った兵士が、なんとかアレクシアに接近してくる。


アレクシアはにっこり微笑むと、その姿が消え、代わりに箱が現れる。その箱は兵士が入ったら閉じ・・・


ザクザクザク


周囲から剣が突き刺さり、


ギイイイ


箱が開いたときには、中に兵士の死体が入っていた。


「失敗しちゃいましたー」


舌をぺろり、と出すアレクシア。


--


何事もなかったかのように、平原に立つアレクシアとジャンヌ。


「足止め有り難う、ジャンヌ。でも、何でわざわざ中に入ったんだい?」


「んー、この前剣試して怒られたからさー。中で色々試せるなら試してみようと思ってちょっと入ってみた」


「なるほどねえ」


隔離世を創り出し、閉じ込める禁呪。優れた点は、派手な事をしても元の地形に影響を及ぼさない。敵の能力制限もできるし、自分達を強化する事もできる。また、力を強めれば、その世界その物が敵を倒してくれる。後に残るのは死体のみだ。勿論、仲間は自由に出れる。詠唱が馬鹿みたいに長いのが、実用性をかなり低くしている・・・それでも数分で詠唱完成させることができるのは、アレクシアだからだ。


隔離世から死体が次々吐き出されてくる。基本的には自分の恐怖と戦ったりしていると思うのだが、内容はどうでもいい。


隔離世が展開する前に戦った箇所は、しっかり現実に残っているので、アレクシアは後始末を始めた。

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