[セリア][時系列不順]セリア砦防衛戦
「東からはアルケーの軍勢、西からは余勢を駆ったソロモンの軍勢が攻めて来そうです」
伝令が情報を伝える。
「ソロモンの軍勢は、到着までまだ時間があるな。それにしても、ミーミルの精鋭と戦っても無傷とは。恐らくこれは足止め。ミーミル攻略の邪魔をさせない為のな」
エルクが苦々しく言う。
「アルケーの軍勢は、聖騎士の部隊のようです・・・ただ・・・」
「ただ?」
「持っている剣が、光り輝いてて、異常な魔力を感じます」
「ふむ・・・」
聖女の特殊能力の厄介な点として、自分が扱う言霊を、一般の兵士の武器に付与するという能力がある。兵士の力を跳ね上げることができるのだ・・・だが、
「ミーミルに聖女が3人向かった、という話があるから・・・つまり・・・」
「そうですね」
セリアが頷く。
「アルケーには剣の聖女がいる可能性が高い。この戦い・・・非常に困難な物になるぞ」
「左様ですね」
セリアがうんうん、と頷く。
「ご主人様、同じ剣を扱う物として、ここは私に任せて頂けないでしょうか?勝利を献上する事を約束致します」
「いや、俺も戦うが・・・」
「西に警戒を御願いします。嫌な予感が致します」
「・・・分かった、無理はしないように」
セリアは、戦場へと向かった。
「セリアの姉御!敵軍の剣、凄まじい切れ味です。お恥ずかしながら苦戦しています」
ファーイースト軍の兵士が言う。
「セリア砦の兵士では対処が難しいので、下がらせています」
「こちらも、対抗するぞ!」
セリアは意識を集中すると、
「剣を手に取れ」
言霊を放つ。その言霊は形を取り、兵士達の手に漆黒の剣が生まれた。
「これで戦えます!」
セリア砦の兵士も参戦、戦況を巻き返した。
セリアは悪寒を感じ、岩陰の人影に剣を放つ。
「迎撃せよ」
岩陰の人影の放った言霊が力を為し、セリアの放った剣を撃ち落とす。
「貴様、何者だ!」
「僕?剣の聖者、お見知りおきを」
ぺこり、と剣の聖者が礼をする。
「剣の・・・聖者・・・だと?聖者とは何だ?」
「君に教えるつもりはないし、必要もないかな。もう君はここで死ぬのだから」
剣の聖者が手を振ると、無数の剣が生じる。
「射貫け」
その剣が飛び、複数の兵士の命が奪われる。
「貴様!」
「ははは、怖い怖い」
また剣の聖者の周りに無数の剣が産まれる。
兵士達も回避行動をとるが間に合わない。
「無効化せよ」
セリアの言霊に従い、無数の剣が現れる。剣の聖者の剣とぶつかり、消失する。
「へえ、無効化か・・・でもこれなら・・・?」
数百もの剣が現れ、浮かぶ。
「無効化せよ」
セリアの言霊に従い、数百の剣が現れ、全て無効化する。
「面白い面白い!」
剣の聖者が更に剣を呼び出し。
「射貫け」
セリアは1本だけ剣を呼び出す。
剣の聖者が、剣を放とう・・・とするが、既にファーイーストの兵士もセリア砦の兵士も撤退している。仕方が無い、幕切れか。そう思いながら、セリアに向けて撃つ。
セリアが放った剣が剣の聖者に向かう。
「無効化せよ」
セリアが放った剣が、剣の聖者が放った剣を全てかき消す。
「撃ち落とせ」
剣の聖者が放った剣が、セリアが放った剣を・・・セリアが放った剣は、何事もなかったかのように剣の聖者に迫る。
とっさに躱す剣の聖者。
「ひひひ、やるねええ」
そういって手をあげようとして・・・こぷ、口から血を噴く。
信じられない、という顔で絶命した剣の聖者。
「刺殺剣。貫いて殺す、という概念を体現する剣。躱すことも、撃ち落とす事もできんよ・・・盾には負けるがな」
セリアは剣の聖者の死骸に対して吐き捨てると、済まなそうに倒れた自陣の兵士を見、そして残党狩りに参加する為歩き出した。




