[エルク]図書館
「図書館が出来たのか?」
エルクがアレクシアに問う。エルクは、最近日課となっている、昼下がりのティータイム。この紅茶、という物は非常に良い。スコーン、と言う物も美味い。
「はい、ようやく念願の図書館が完成しました。是非ご覧になって頂きたい」
「うむ、是非見たい」
エルクが立ち上がったのに合わせ、ノエルが食器を片付ける。ノエルは、二人っきりの時は甘えてくるが、普段は少し離れて立っている。後、セリアに貰ったとか言う、黒ベースに白い生地をあしらった服が非常に似合っていて、可愛い。確か、メイ・・・なんとか服と言うらしい。
エルクはアレクシアに連れられ、図書館に着いた。メモリークリスタルが大事なのだろう。防御用の結界が刻まれた建物だ。
エルクが入り口の扉の前に足を乗せると、光が広がり、扉が開く。何の魔法か分からないが、周囲を時節光が走り、非常に格好良い。
周囲に並んでいるのは・・・紙?紙を束ね、分厚い紙で閉じてある。
「ご主人様、これが図書館。そしてこれが、本、でございます」
「本・・・だと・・・?」
片方は閉じられておらず、ぱらぱらめくれるようになっている。メモ等を書いたりするあの紙だ。それをこの様な形でまとまって扱うとは・・・これだけの文字を書くのは大変・・・いや、書いたのではなさそうだ。恐らく、静電気か何かを文字の形にし、そこに粉を吹き付け、固着させたのだろう。
何というかこれは・・・
「何だかこれは落ち着くな、こうしていると」
片手に本の閉じられてない方をのせ、こう開く感じにすると・・・妙に落ち着くというか・・・その状態では文字が見えるので、癖になりそうだ。
「どうですか、本の感想は」
「これは素晴らしい。勿論、知識を得られるのは素晴らしいのだが、この形状は非常に良い」
エルクが絶賛する。
「気に入って頂けて嬉しいです」
アレクシアもにっこり笑う。
「メモリークリスタルの形式ではなく、それをこうやって本に転写しました。これで、いつまでも、魔力なしに見る事が可能です」
メモリークリスタル自体も、アレクシアの発案で改良されている。昔は、様々な図形や文字を色々記録していたのだが・・・アレクシアが柔軟な発想をし、決められた面に対し、ある面には有、ある面には無、の、2種類の情報を記録・・・の形で記録していった結果、劇的に扱う難易度と魔力量が低下、広く使えるようになった。記録可能量も飛躍的に伸びた。でもそれでも、この紙とインクという奴には敵わない。魔法を一切使わず、永続的に記録できるのだから。
媒体も非常に安価だ。複製も容易だ。という事は。
「そういう事は、知識の一般開放を狙っている、のかな?」
「はい、その通りです。ここ程厳重にはしませんが、同じ建物を複数作ります。物によっては個人所有してもいい。そうして知識は広まっていくのです」
「ふむ。それはいい事だな。レイアーや、セリアの村にも送ってやった方がいいな」
「セリアの村も順調に発展し、人口は1000人を超えたようです」
上空から見てちょっとびっくりしたしな、エルクは思う。
その後、ティータイムのエルクは、左手に本を持つスタイルがよく見られるようになった。




