[エルク][時系列不順]神令
朝。大きめのベッドから起き上がる。セリアが、アレクシアが、ノエルが、エルクから体を離す。尚、パラスは早起きの為、毎朝一人で抜け出して活動を始めている。
挨拶を済ませると、セリアは食事の用意に、アレクシアは研究塔の様子を見に、ノエルはエルクの横にちょこんと控える。
朝の散歩をしていると、リアが駆けてくる。
「お兄様、大変です」
「どうした、リア?」
エルクがリアに尋ねる。リアが取り乱すのは珍しい。
「それが・・・魔柱に反応がありまして、御神から神令が下りました」
「何だと?!」
この国に神令が来た例はない。当然だ。普通は、ミーミルの王が全て受け取るからだ。
「どうやら、お兄様が魔王を継承するのが内定したので、この国に神令が来るようになったみたいです・・・」
「中心地はあちらだと思うのだが・・・それで、どんな内容か・・・いや、みんなで聞こうか。みんなを広間に集めてくれ。ついでに、妻とリア、ジャンヌ以外の者は近づかないようにしてくれ」
「承知しました」
広間に、幹部のみが集まる。リアが口を開く。
「それではお伝えします。聖神と魔の御神が会談を行う事になったそうです。慣例としてはミーミルが従者を出していたのですが、今回はお兄様が魔王に内定したので、この国から従者を出すようにとの事です」
「御神の従者・・・だと・・・?そんな事やった事ないぞ・・・?」
「ですね・・・何をすれば良いのか・・・」
エルクが呻くと、リアも困ったように言う。
アレクシアがすっと、エルクの腕に絡み付く。
「大丈夫だよ、ご主人様。私に任せて下さい」
「アレクシア、知っているのか?!」
「勿論です」
アレクシアがにっこり微笑む。
「まず、魔の御神は目が見えません。恐れ多いですが、お体に触れ、椅子に誘導します。会談の場は、『会合の間』。攻撃行為が許されない絶対ルールで支配されています。安全に会談を行う為ですね」
「・・・凄い、本当に凄い知識です・・・」
リアが驚いて言う。
「会談が始まったら、適切なタイミングで飲み物、を出します。会話をしていると咽が渇きますからね。そして、疲れが見えるか、または場がギスギスした場合、甘い物を出します」
「なるほど・・・」
エルクが感心して頷く。
「それとは別に、議事録、を取ります。これは、何時もノエルがやってるね」
「はい、議事録なら任せて下さい」
「会談の場には、ご主人様とノエルが行くといいと思います。飲み物、の用意仕方は、後で教えます。ノエルは知っているけど、一応ご主人様にも教えておきます」
「うむ、頼むぞ」
こうして、エルクとノエルは、闇の御神の従者という大役に望んだ。
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そして、エルクとノエルは、大役を終え、困惑した顔で戻ってくる。
出迎えたリアが、不思議そうに聞く。
「お兄様、どうされました?」
「うむ・・・」
あまり会談の内容を広めるのは不味い。口止めした上で、何があったか話す。
「それは・・・何があったのだろうね・・・?」
ジャンヌがきょとん、として首をひねる。
何故かセリア、パラス、アレクシアが苦しそうに笑っていた。