表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/71

[アレクシア]より美味しく

「さて、ノエル。君には美味しさが足りない。それは気づいているよね」


「・・・はい」


ここは研究塔の地下の一室。アレクシアが部下に命じて、秘密裏に作らせた小部屋だ。ここの存在は一部の者しか知らないし、内部に至っては、今ここにいるノエルとアレクシア、それ以外の者は目にしていない。


地面には複雑な魔方陣が描かれており、無数の魔力結晶から魔力を供給されている。中央には水槽があり、水がたゆたっている。水は水、ただの水だ。


「エルク様は優しい。それは言わないし・・・むしろ、味が薄いので飲みやすい、くらいに思われていると思う。でも、それでは・・・」


「はい、私は自分が許せません。セリアさん、パラスさん、アレクシアさん、他の方に対する飲んだ時の反応と、私の血を飲んだ時の反応、明らかに違います」


「それをどうにかしたい、だね?」


「はい!」


「そう思ったから、この部屋を作った。ただ一つ、御願いがあるんだ」


「御願い、ですか?」


「そう、御願い、だ。これは味に直接関係するか分からないが・・・でも、現在の我が国のバランスから言って、この選択は非常に重要だと考えている。君はこの先、手が届く場所に毒々しい存在をすぐに感じ取れるだろう。これを拒否して欲しい。そしてその先に手を伸ばし・・・ひたすら水をイメージして欲しいんだ」


「水・・・ですか?」


「そう、水だ。だから、そこに水を用意した。その水に浸かった状態で、力を求めて欲しい」


「・・・分かりました。私も、毒よりは水が良いです」


「うん、頼んだよ」


ノエルは水槽に入ると、意識を澄ます。思い浮かべるのは、水のイメージ。力への渇望。やがて浮かんでくる、毒々しい気配。それを、拒む。避け、ひたすら泳ぐ。水を求めて。その先・・・やがて掴む。水・・・逃げる・・・掴む・・・支配する・・・水・・・水を・・・支配する。頭の中が水のイメージで溢れ・・・はっと気づく。


「成功したようだね」


アレクシアがにこっと笑う。


「何だか・・・不思議な力が・・・」


「うん。君の能力、水、だ。何が出来るかは、自分で理解できていると思う。さし当たってして欲しい事は分かるね?」


ノエルは、んーっとちょっと考えた後。


「溜め池ですかね?」


「正解。早速御願いできるかな?」


「はい」


ノエルはにっこり笑うと、溜め池に向かって歩き出した。


その晩、油断していたエルクが、ノエルの血を吸い尽くそうとして、慌てて謝っている光景が見られた。別に吸い尽くせる物でもないし、すぐに回復するので大丈夫なのだが。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ