2. 再会
あの日から7年が経った。
シュンの年齢も22になり、集落でも立派な大人として働いている。
ほとんど毎日『穢れ』と戦い、その身に宿していった。
しかしこの日は戦いから離れ、この国・ユーゲルの首都であるコラルであの日のように買い物をしていた。
だが、あの日と違うのは父親のナオトが来ていないこと。
ナオトの右腕の紋様が手首にまで広がってしまい、念のため同行するのをやめたのだ。
故にこの日はシュン1人で買い物をしている。
この街に来るのは久しぶりだった。
あの日『穢落ち』と戦ってから、何となく避けてきた場所なのだ。
日用品などは他の街に行けば買うことが出来るから、この街に来なくても生活はできる。
だからこの街に来るのは、大きな街でしか買うことが出来ない物を買う時だけと決めていた。
この日は祖父の誕生日だから、ケーキを買いに来ている。
集落の女性いわく、『コラルには世界一のケーキ屋』があるとのこと。
その店の名は『スワディ・トルテ』
今はその店を探して歩いているのだが、首都なだけあって人通りが激しく広いので、探せど探せど見当たらない。
人に訊くにしても、苦手意識のあるシュンには厳しかった。
どうするかと途方に暮れ、なんならそこら辺にあるテキトーな店で買おうかと考えていたら
「あ!おにいちゃんだ!」
後ろの遠くから声が聞こえた。
弟と妹がいないシュンにとっては無視するべき言葉なのだが、その言葉の矛先が自分に向けられていると感じる。
「ねえ、おにいちゃんだよね?!」
駆け寄る音と同時に再び呼びかけられ、渋々振り返る。
シュンはそれと同時に、驚きで目を見開いた。
自分に向けられるその笑顔は、5年前に向けられた笑顔と同じように純真無垢なものだったのだ。
過去の少女と重なる。
よく見ると、結われている髪の毛がひょっこり出ている髪型も、綺麗な瞳も、何も変わっていなかった。
変わっているのは身長と、少し大人っぽくなっている所だけだ。
それに、決定的な物をその子は付けていた。
ひょっこりと出ている髪の毛を結んでいたのは、かつてシュンがあげたリボンの付いているヘアゴムだった。
「おにいちゃんだよね!?ね!」
まるで犬のように駆け寄り、何度も同じ質問を投げかけてくる。
「えっと...シノ...だよな?」
「うん!覚えててくれたんだ!」
忘れるはずがない。忘れられるわけがない。だって、お礼を言われたのはこの子が最初で最後なのだから。
「おにいちゃん...じゃなくて、えっと、、、名前は何て言うんですか?」
「...シュン」
勢い良く訊かれたから答えてしまった。
この子は人との距離を詰める天才なのだとシュンは思った。
「シュンさんって言うんですね」
にへら~と笑うその顔を見ると、拒否しにくいという理由も分かる。
悪意は絶対にないって感じ取れるから。
「そうだシュンさん!あの時のお礼にお茶でもしませんか?いつか言葉だけじゃなくて、何かお返しがしたいと思ってたんです!」
「いや、俺は買い物が...っておい!」
「いいから、いいから。行きましょう!」
シュンの言葉を遮り、シノはシュンの手を掴んで引っ張った。
感謝からくるシノの行動に、シュンは抵抗できずに連れていかれることになった。
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