0章 始まりの始まり
この世界には、『穢れ』が存在する。
『穢れ』とは何か。
それは不浄なるモノ。
誰の心にも住み付き、誰もがなりうるモノ。
『穢れ』に取り憑かれた者は決して人に戻れない。
では『穢れ』に取り憑かれた者はどうするのか。
人では決して祓うことは出来ない。『穢れ』は伝播するため、近付くことさえ許されない。
しかし、いつの世も『悪』がいるように『正義』もいる。『取り憑く者』がいれば『祓う者』もいる。
突如現れ、『穢れ』と闘い、祓った者達。
彼ら彼女らはいつしかこう呼ばれるようになった。
『穢多族』
と。
人を殺すこと、動物を殺すことを良しとしないこの世界では、命を断つことは『穢れ』を持つとされている。故に人助けのためとはいえ『何か』を断つことを穢れとされ、皮肉にも『穢れ』を『多く』持つ者と呼ばれるようになった。
穢多族の容姿は人間と大して変わらない。
しかし、その身体の一部には紋様が刻まれている。それは穢多族である証。穢れを祓うことによって霧散される穢れの粒子が、その紋様に集まる。それと同時に紋様も広がる。
紋様の大きさは、その穢多がどれだけ『穢れ』を祓ってきたかの証明。
その『穢れ』はいずれその身を貪り、命を喰らう。
だが『穢多族』はたった一つの悲願のために穢れを祓う。
例え、命を落とそうとも。
これは、穢多族の男と人間の女の子の物語である。